『ガンプラり歩き旅』その78 ~16年ぶりの1/550 モビル・アーマーガンプラ! 『逆襲のシャア』のα・アジール!~

『ガンプラり歩き旅』その78 ~16年ぶりの1/550 モビル・アーマーガンプラ! 『逆襲のシャア』のα・アジール!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、メカ単位での紹介をする大好評連載。 新展開では『機動戦士Zガンダム』(1985年)『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(1988年)まで、旧キットから最新のHGUCまで、商品の発売順に、再現画像と共に網羅紹介していこうという趣向になっております!


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宇宙を進む、無垢な少女が乗り込んだ巨大モビル・アーマー、α:アジール

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回紹介するのは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』上映当時のリアルタイムガンプラキットから、いや懐かしい響きの「1/550 モビル・アーマー」キットのα・アジールです!

α・アジール 1/550 1988年8月 9 1000円

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α・アジールキットのボックスアート。

今回紹介する1/550 α・アジールは、『逆襲のシャア』ガンプラシリーズで最後に商品化され、正規ガンプラ史上唯一のキット化された商品である。
正規ガンプラで「可変型ではない」純粋なモビル・アーマーが、1/550スケールで発売されたのは、最初の『機動戦士ガンダム』(1979年)劇場版三部作が全て終わった1982年の夏、7月のブラウ・ブロとアッザムの商品化以降16年ぶりであった。

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正面から見た完成状態。タンクの白やアポジモーターの赤黒はシールで補完されている

『逆襲のシャア』ガンプラシリーズの特徴だったネジ止め、多色成型は使われていない。しかし、最低限の2色成型はされている上にシール補完が的確で、部分塗装だけでも完成度は高く仕上がる仕様になっている。
α・アジール自体が「ガンダムラスボスのイメージ」としてのジオングがオマージュ元になっているため、脚部がない設計になっているが、劇中でも装着されていた、下半身の巨大な2つのプロペラントタンクが脚にも見立てられるデザインにしあがっている。

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よく見ると星形の形状をしているメインコンセプト

そのため、ガンプラでは(やはり旧シリーズの1/550モビル・アーマーシリーズを踏まえて)定番の、飾りスタンドが付属しており、プロペラントタンクがあってもなくても飾れるように出来ている。

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α・アジールのサイドビュー。プロペラントタンクがやはり脚に見える

劇中の役割的には、思い込みの激しいローティーンのニュータイプ少女のエゴの発露となって、アムロの恋人からの攻撃によって沈んでいくモビル・アーマーだが、富野由悠季氏の小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』ではアニメ版と異なり、ハサウェイの乱射の直撃を受けて撃沈されてしまう。

そういったロールプレイを前提にした時、この巨大モビル・アーマーが、『機動戦士ガンダム』(1979年)でララァ・スンが乗り込んだモビル・アーマー、エルメスにも通じるサイコミュ兵器・ファンネルをリアスカートに蓄えている理由もなんとなく理解できようというものだ(富野台詞口調)。
また、キットでは再現されている「隠し腕」だが、隠し腕という概念や、形状や収納の仕方など、この作品に至る前の『Zガンダム』でのラスボス、ジ・Oの隠し腕や、キュベレイの飛行形態の腕の収納の延長上でデザインラインが構築されているようにも見えて、当時のガンダムオタクにはすんなり受け入れられた異形さではある。

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バックビュー。リアスカートに9基のファンネルが見える

キット自体は最初にも書いたが、シリーズでは最後半になる1988年の8月に発売された。シリーズはその次に、『逆襲のシャア』ガンプラ歴史的決定打ともいうべき「1/100 νガンダム」を送り出して終了するのだが、商品化規格としてはα・アジールの時点で(ワンポイントで登場したホビーハイザックを除いて)ガンダムシリーズでは1st依頼の「全モビル・スーツ、モビル・アーマーキット化」が果たせた作品として希少である。

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劇中再現より。口から放つ大容量メガ粒子砲

キットとしては、2色成型だが最低限頭部だけでも塗装するだけで雰囲気は充分再現できる(隠し腕は、劇中では隠したままで出番がないまま終わる)。肩アーマー先端の5連装砲座も、3本の砲塔が独立して可動するように出来ている。

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肩アーマー。先端の5連装砲座が印象的

また、ポリキャップはあまり多用されていないが、全身可動箇所の塊であり、α・アジールもプロペラントタンクを外し、腕を畳んでバックパックが後ろからスライドしてくる「着陸形態」へと完全変形することが可能である。

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着陸形態に完全変形。この形態が人型からは一番遠いシルエットになる

しっかり変形する上に、バーニア類やスカートの中の着陸アームやディテール等がしっかり作り込まれており「ガンプラの非人型メカにハズレなし」はここでも健在である。
モビル・スーツ群の関節軸問題の阿鼻叫喚地獄絵図騒動が、まるで嘘であったかのように、1/550 α・アジールは凛として完璧なプラモデルとして完成されているのである。

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UPで写した頭部。ここだけをじっくり塗り分けてやるだけでも、出来栄えはかなり違ってくる

しかし、登場する各モビル・スーツで設定された武装や内蔵兵器は、ほぼ全て演出で活かされた『逆襲のシャア』において、α・アジールの隠し腕だけが存在にも触れられていないことは、劇中のメカ描写の細やかさからすると逆に意外であった。

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プロペラントタンクを付け、隠し腕を展開した状態。劇中ではこの形態にはならないが、見た時に一番人型に近いのがこの組み合わせであろう

当時のガンプラの流れを、『逆襲のシャア』シリーズの流れで俯瞰してみよう。
ちなみに『逆襲のシャア』以前の「アニメ化された『ガンダム』シリーズのガンプラ」としては、『ガンダムZZ』の1/144 ザクⅢが1986年の11月で最後であり、正規ガンプラとしては、その間に模型雑誌主導企画『ガンダムセンチネル』の1/144 フルアーマーダブルゼータガンダム(1987年7月)から1/144 Ex-Sガンダム(1988年11月)までのシリーズが間を埋めている。

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底面から見上げたスカート内部のディテール。バーニアや着陸脚等がしっかりと細部まで再現されている

1/144 νガンダム(1987年12月)800円
1/144 リ・ガズィ(1987年12月)800円
1/144 ヤクト・ドーガ(ギュネイ・ガス専用機)(1988年1月)800円
1/144 サザビー(1988年2月)1000円
1/144 ジェガン(1988年3月)500円
1/144 ギラ・ドーガ(1988年3月)700円
1/144 ヤクト・ドーガ(クエス・パラヤ専用機)(1988年4月)800円
1/144 νガンダム(フィン・ファンネル装備型)(1988年7月)1000円
1/550 α・アジール(1988年8月)1000円
1/100 νガンダム(1988年10月)2500円

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劇中再現より。幼きエゴの塊と化したニュータイプ少女が、巨大なる魔神を操りはしゃぎ飛ぶ後ろを、ギュネイのヤクト・ドーガが必死に追う

ガンプラの歴史は、その後OVA作品の、アニメでは初の富野由悠季氏以外の監督作品になった『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(1989年)のモビル・スーツのガンプラ化へ移行していく。
『ポケットの中の戦争』に登場するザクやゲルググは、当初はデザイナーの出渕裕氏(『逆襲のシャア』からの継続登板であった)的には、最初の『機動戦士ガンダム』に登場したザクやゲルググと同じ機体であり、いわゆる2018年の現代ガンプラビジネスでいうところの「リファイン」「当時より解像度を上げた」ものとして新たなスタンダードを目指してデザインされたが、まだその頃にはバンダイサイドにリファインビジネスの成功例がなかったために、全ての機体が別モビル・スーツとされてしまい、「ズゴックE」「ザクFZ」「ゲルググJ」等といったMSV的な売り方をされてしまった。

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劇中でも多かったアングル。変形の都合上、首がかなり動くため、微妙な表情もつけやすい

『ポケットの中の戦争』ガンプラはズゴックE(1989年3月)からスタートし、「出渕裕版RX-78 ガンダムリファイン」の二度目となるアレックスは、シリーズ後期のNo.9で、ガンダムNT-1(1989年8月)として発売された。

全体的に『逆襲のシャア』と『ポケットの中の戦争』のガンプラを比較してみると、僅か一年の差とは思えないほどに、パーツの色分けやスナップフィットの設計技術が向上しており、むしろこのα・アジール等は、古き良き時代のガンプラの要素に満ちた最後のガンプラだったのかもしれない(後に狙い過ぎのFG等が出たが)。

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リアスカートに並んだ、9基のファンネル

部品をニッパで切り取り、接着して色を塗る。細かい突起や銃身などは別パーツで、失くさないように慎重にランナーから切り出して、しっかり接着剤で本体に固定する。
そういった「プラモデルの当たり前」を、塗り替えようとしていた80年代後期のガンプラにおいて、このα・アジールは、逆に古い模型の在り方を選ぶことで、リファインの必要のない完璧さを手に入れたのかもしれない。

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ファンネルは別パーツなので、スカートに付けずに単体でもディスプレイ可能

ラインナップの半分以上のキットの肘関節設計がおかしい、プラモデルなのになぜビスをドライバーで回し止めて作らねばならないのか、等々、黎明期ゆえの迷走が随所に見られた『逆襲のシャア』シリーズであっただけに、トリを務めるのが「古い時代の“模型作り”」の原点に戻ったこのα・アジールと、ポリキャップ以外にも合金パーツ等を積極的に取り入れ、今や隠れファンからは「初代マスターグレード」とまで呼ばれるほどの出来を誇った1/100 νガンダムであったことは、それぞれそれなりに意味のあったことだったのかもしれない。

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劇中再現より「行け! ファンネル!」

その後、νガンダムは、1/144でも1/100でも、HGUC、MGでそれぞれ、さらに完成度の高い、さらに出来の良い決定版をが繰り返されているが、2018年現在、一部のコレクションフィギュア関連を除いて、α・アジールがプラモデルとしてリファイン、リメイクされたことはない。

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迫りくる禍々しさは、『逆襲のシャア』という作品全体を象徴している

大河さんの世代でいえば、この作品と、『ポケットの中の戦争』を挟んで、『機動戦士ガンダムF91』(1991年)辺りから、ガンプラは「模型の1タイトル」ではなく、「ホビーの1ジャンル」になっていったなという想いが強い。
なのでこの連載も、ほどなくHGUCキットを取り上げていくことになるのだが、その前に、2つほど「あの時代を象徴したガンプラ」を紹介しておかねばなるまい。
というわけで、『ガンプラり歩き旅』は、まだまだ続きます!

市川大河公式サイト

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