あさきゆめみしとは

『源氏物語』54帖がおおむね忠実に描かれています。
作者の大和和紀さんが平安朝の生活様式などを詳しく調べ、独自に解釈しその上で緻密に漫画化を実現しており、古典の中でも特にベストセラーな『源氏物語』の世界を漫画という
形で簡易に視覚的描写を助け、古典への興味を持たせた功績は今なお大きいです。
大手予備校の書棚に置かれるなど(!)特に受験生必携の書ともなっています。
また瀬戸内寂聴さんも高くこの物語を評価しております。
あらすじ
身分は低いけれど大変、帝(天皇)に愛された女性(桐壺更衣)がいました。
その女性を妬み、弘徽殿の女御を筆頭に後宮の女性も、虐めます。
更衣は、妊娠し、皇子を出産しますが、元々体が丈夫でなかったこともあっていじめからくる心労などがたたって、病死します。
生まれた皇子は、光輝く美しさから「光る君」と呼ばれるようになります。
これが源氏物語(あさきゆめみし)の主人公・(光)源氏です。
成長した光る源氏は、父帝に新しいお妃を迎えることを知ります。
そのお妃は、亡くなった母・桐壺更衣にそっくりな美しい女性でした。
藤壺の宮と、呼ばれるこの義理の母は、光る君より5歳年上。
意気投合する2人に、お互い、結ばれないと知りつつ惹かれあいます。
そして、元服(大人になる儀式)を果たすと藤壺の君と会えなくなり、源氏の君はこの“寂しい”という感情を恋だと知りますが、
相手は義理の母。叶わぬ思いを引きずり、源氏はさまざまな女性と浮名を流すのでした。
どうして光源氏はモテたの?

正直、ぶっちゃけて“身分が高かった”ためです。
(源氏は身分の低い女性の元に生まれましたが、父親は当世を司る帝でした。)
わかりやすく言うと、例えばバブル期の男のモテステータスといえば三高(「高学歴」、「高収入」、「高身長」)が罷り通っていました。
源氏物語の舞台となる平安時代では、生まれ持った家柄に依存するため、身分の低い者の美女は身分の高いものに対しては強く拒絶できなかったということもあるのかもしれません。
それだけでしたら悪評になるのですが、この主人公・源氏の君、身分が高くて、弓も和歌も楽器も得意で政治屋(今でいうビジネスマン)で、書にも優れ教養深く神々しいほどの美男子でしたので、女も魅了されずにいられなかったのも一因でしょう。
まぁ、ありえない設定なところがファンタジーですね。(笑)
光源氏は「身分が高い、教養高い、女に欲求するレベルが高い」といった三高でしょうか。
“三高”の光源氏の身の上の内訳話(理想の女を探し求めるわけ)

幼少の時に恋をした義理の母である藤壺の君が忘れられなかったためです。
幼い頃、共に過ごしていた藤壺の君との思い出がとてつもなく、桃源郷のように、楽しかったためでしょうか。
大人になってからもあの心地よい境地を再び味を占めたかったのかもしれません。
まあ、作品中、藤壺の君と思いは一夜のみならず数回、父親の目をかいくぐって寝たりして想いは遂げられるんですが、
光源氏は生まれ持った美男子の性質をうまく巧みに使って浮気性も相成って、「幻想」を追い続けます。
その背景には、一個の人間が抱えきれない複雑な身分の上(帝の子でありながら身分の低い女性から生まれて臣下に下った、その後の人間関係の確執など)の、知らずに負担があってそれを女性に癒しを求めたのかもしれませんね。
“三高”の光源氏が狙った数々の女性との恋愛
まずはかの有名な紫の上ご紹介したいところですが。
それは後回しにします。
ほぼ全員が美女です。(一人除いて)
バブル期にも「アッシー」や「メッシー」、「貢ぐ君」などといったバブル期の言葉がございますが、
光源氏は己の地位を持ってして、みな平等に健気に足を運び、せっせと和歌の手紙を絶やさず書いたり、贈り物をしたりします。こりゃモテます。
藤壺の宮(日の宮、女院)
元々の初恋の人。
父親の妻。
光源氏永遠の理想にして最愛の女性。
義母相手では恋も叶わず、恋心を紛らすかのように光源氏のヘタレた浮気性には拍車がかかる事に。
長い間光源氏の求愛を退けて来たが、遂に襲われた上に妊娠してしまいます。
そんな不義理を果たしたこともあった光源氏は懲りることなく“理想の最愛の女性”を探し求めるのでした。
葵の上
左大臣家の高飛車お嬢様。
16歳で光源氏最初の妻となるが、素直になれず、ある意味旦那のヘタレ浮気性の要因となった張本人。でも大体光源氏の移り気のせい。
26歳で光源氏の子を身篭り、打ち解ける様子を見せるものの、出産直後、六条御息所に呪い殺されてしまいます。
六条御息所
前帝の妃という高貴な女性。
源氏は彼女の高潔さに藤壺の面影を求めるが、彼女の執着を疎ましく思うようになり、
彼女の娘(のちの梅壺の中宮)が伊勢に下るのを機に疎遠になる。
存命中は生霊となり、死後もその霊は源氏にゆかりの女性の運命を変えてしまう。
源氏物語のカギを握っていた女性です。
朧月夜の君
行きずりの関係の政敵右大臣の娘で帝の女。要するに光源氏は兄嫁を寝取った事。
事が済んで一息ついていたところに右大臣が来て不倫が発覚。
光源氏は須磨の地に流されます。
その後、都に戻っていても、いけないこととわかっていながら、
浮気のスリルを捨てきれないという意味では源氏と最も気が合っていた女性。
明石の上
身分は低いが深い教養があり気品のある女性。
朧月夜との一件がばれて須磨に退居、さらに明石に下った光源氏に目をつけられ口説き落とされる。
光源氏亡き後は孫に囲まれ平和な老後を送った幸せな人。
源氏物語において、珍しく謙譲語が使われている人。しかし娘には尊敬語が使われている。
夕顔
細身でか弱い印象の女性だが、その外見によらず逆ナンで光源氏を引っ掛け恋仲になった猛者。
所謂一般庶民で光源氏とは身分の差があり、周囲に隠れて光源氏と絆を築く。それを知った六条御息所に呪い殺される。
なお江戸時代に源氏物語がブームとなった事があり、当時のオタク男性ファンの間では人気の高いヒロインだったもよう。
儚げで慎ましい女性なところがミソだったからでしょうか。
末摘花
源氏物語中では比較的綺麗でない女性として書かれた稀有な人物。
むしろ外見での評価できるところは美しい髪だけで、後は座高が高い(胴長)、やせ細っていて顔が青白い、大きく先が垂れ下がっていて先端だけが赤い鼻、顔が長い、
ファッショもダサいとボロクソな言われようでありました。
しかも当時の貴族の必須教養だった和歌も下手で、家柄も没落貴族でしたが、成り行きで囲うことに。
花散里
光源氏にとっては、珍しく性欲のための恋人というより、精神的な支えとなった愛人。
ただしこれはあまり美人でなく光源氏のタイプでなかったためらしい。
良妻賢母な優しいお姉さん系。光源氏の浮気にも寛容で、逆に面白がっていた節もある程と作中に描かれています。
三の宮

40歳間近の光源氏の正妻となった14歳の女の子。
お人形が好きだったりと和歌の内容が子供っぽく光源氏のタイプではなかったが、藤壺のゆかりのものだったので迎え入れた。
しかし藤壺には全く似ておらず、かえって光源氏は一人勝手に幻滅する始末であったのでした。
ちなみに40代にそろそろ突入する紫の上の存在を脅かした存在。
この他にも作中には女性と寝ていたらしい節がございます。
時代が時代だったこともありますが、
三高の源氏は己の能力をかこつけてアピールし、無理矢理に行為に及んだ時点でそれ……では…?(;'∀')と思われる節がところどころございます。
藤壺に生き写しの紫の上との出会い そして<光源氏計画>へ
光源氏は、18歳の時に、庭先で泣いていた所を「藤壺の君に似ている……!」と見初め、周囲の反対を押し切って屋敷へ連れて帰ってしまうのですが、どう考えても誘拐です。
光の源氏は紫の上に目に入れてもいたくないほど可愛がります。
呑み込みの早い紫の上はそれによって光源氏に愛されます。
そして、光源氏は彼女を理想の妻とすべく親代わりに彼女をあれやこれやと教え育てます。
俗にいう有名な、光源氏計画です。
光源氏計画とは、自分がいいなと思う年下の人物を自分にとって理想的な「大人の女性」に育てようとする計画のこと。そんな思惑や様子のことを指します。
言葉自体は、『シティーハンター』で冴羽が海坊主(伊集院隼人)と美樹の関係を「光源氏計画」と呼んだことが最初。
(ただし海坊主自身にその意図はなく、冴羽が勝手にそう呼んだだけのこと)。
それが広まり、現代では主に自分を慕う子供や後輩を、自分の理想の立派な大人に育てる意味で使われる。
その慕う相手は自分にとって年下で、ほとんどが男が年下の女子に対してすることに使われ、年上女性が年下男子に対しての場合、「逆光源氏計画」と呼ぶ。同性の場合もあるのこと。
因みに、光源氏計画に成功した作品とキャラクターはこちら。
海坊主(シティーハンター)

シャア・アズナブル(機動戦士ガンダム)

健気に光源氏を兄か父のように慕い続け、
14歳で彼の正室格になった後は子供の世話好きという一面を見せます。
藤壺の姪に当たり、彼が紫の上に惚れたのは藤壺の面影があった事も重要な理由の一つです。
六条御息所の怨霊に危篤に陥れられたりもしており、光源氏最大の被害者とも言われる。
一部では紫式部自身の投影とも言われてるとのこと。
紫の上の死後、源氏は女との関係を断ちます

紫の上は、心労から37歳の厄年に重病にかかり、その後数年生きるも回復を見る事はなかった、
晩年はさかんに出家したい心境を訴えたが、最後までそれを許されぬまま、源氏に先立って病没した(「御法」)。
彼女の完璧さを頼りに安心しきっていた源氏は、悲しみの中で改めて彼女が隠してきた苦悩や孤独を痛感し、
その後の一年あまり紫の上を想い続けたことが「幻」(あさきゆめみし10巻)巻で綴られ、源氏52歳の一年間が語られますが、紫の上亡き後、源氏は悲しみにくれながら出家に向けての準備をします。
季節の移ろいも、共に愛でる人の無い源氏には何の慰めにもならず、栄華を極め、光り輝いていた頃の源氏を知っている者達は涙し、心配するのです。
源氏の初恋の相手で、永遠の恋人であった藤壺中宮が薨去された時も大変塞ぎ込みましたが、まだ紫の上が居たから気を取り直してやって来れたのですが、
紫の上の死去は、源氏にとって再起不能の打撃になりました。
その後、原作の方もあさきゆめみしの方も、源氏がほかの女性と関係を持った記述はなく、あんなにあちこち女の元に通っていた源氏の性根は紫の上の死によって尽き果ててしまったようです。
感想

母は早世し、初恋の人は父の妻。正妻(葵上)はお産で亡くなり(もしくは取り殺される)、年上の貴婦人はとても嫉妬深い、
やっと知り合った女性もその貴婦人に取り付かれて亡くなってしまったり、のちに迎えた正妻(女三宮)はよその男に奪われ、最愛の妻は先に亡くなったり、
……身分では報われているのに、恋愛についてはいろいろ成功(?)している割にはわりと報われてない源氏。
源氏の君が「女御に似ている…!」と呼ぶシーンが何度かありました。
「同じ理由で突っ走った結果、二回も失敗しているのに!学習能力は備わっていないのか!」と思うほどの
へたれっぷりが多くの女を不幸に陥れますが(特に紫の上や六条御息所)三高のステータスをなんだかあんまり使いこなせてないような。
(たくさんの女性と関係を持つことには成功はしてはいるけど、)
最愛の女性に先立たれ、その後の源氏は心がひからびた状態になってしまっているようですね。
“三高”といっても、見掛け倒しなだけで、本当の幸せにつながるというわけでもないかもしれませんね。