ダシール・ハメット
ハードボイルドのファンにとっては知らないものはいないと断言できるダシール・ハメット。なぜ断言できるのかと言えば、ダシール・ハメットこそがハードボイルドを確立した代表的な作家だからです。偉大な人物です。偉大過ぎると言ってもいいでしょう。が、ハードボイルドに興味がない人にとっては、特にここ日本においては、これほど偉大な作家であるにも関わらず知る人ぞ知るといった存在。ある意味マニアックとさえも呼ばれてしまうしまつ。
いかん、こんなことじゃいかんぞ!ということでダシール・ハメットです。

ダシール・ハメット
そもそも日本では何故ダシール・ハメットの認知度は低いのか?活字離れ。それはあるでしょうね。作品が古いから。これも否定できませんね。そもそもハードボイルドというジャンルが人気がないのではないか。という気がとてもしますね。。。
となると、ダシール・ハメットの作品を読んでもらうには相当にハードルが高いということですね。であれば、先ずダシール・ハメット自身を知ってもらうことにします。それに最適な映画があるんです。
ハメット
1982年に公開された、ダシール・ハメットを主人公としたミステリー・サスペンス映画「ハメット」。ピンカートン探偵社の探偵だったころのダシール・ハメットを主人公とした物語で、主役のフレデリック・フォレストがダシール・ハメットそっくりに扮しています。

フレデリック・フォレスト
ハードボイルドといえば、内藤陳。ハードボイルドの良き理解者である内藤陳に映画「ハメット」の魅力を語ってもらいましょう。
作品同様にダシール・ハメットの生涯は波乱万丈で非常に面白いのですが、映画「ハメット」はダシール・ハメットの伝記というわけではありません。ジョー・ゴアズが書いた同題小説を原作しており、ストーリー自体は架空のものなんです。

ハメット
血の収穫
よく「報告書のように簡潔な」筆致と称され、冷徹とも非常とも言われる独特なハードボイルドスタイルを確立したダシール・ハメットの長編作品は全部で6冊。最初の長編が「血の収穫」です。

血の収穫
探偵コンチネンタル・オプを主人公とした壮絶なバイオレンス小説です。「血の収穫」は、アメリカの「タイム」誌が「1923年から2005年までの英語の小説ベスト100」に選んでいます。
また、黒澤明の名作映画「用心棒」は、「血の収穫」からモチーフがとられていることは有名です。
マルタの鷹
長編の三作目、「デイン家の呪い」に次いで発表されたのがダシール・ハメットの代表作である「マルタの鷹」です。
完全客観のカメラアイスタイルが後のハードボイルド作家たちの手本となった作品で、ダシール・ハメットが作り出した有名な私立探偵サム・スペードが登場する唯一の長編でもあります。

マルタの鷹
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余りにも非常で冷徹な結末に驚いてしまいます。この作品でハードボイルドというジャンルは確立したといってもいいでしょう。
しかし、「マルタの鷹」を有名にしたのは映画かもしれません。ボギーことハンフリー・ボガートの初主演作、名匠ジョン・ヒューストン監督のデビュー作。
それにしてもハンフリー・ボガートはカッコイイ!見事なはまり役です。

マルタの鷹
原作に忠実に映像化しており、フィルム・ノワールの傑作となった作品です。
いくら原作に忠実に映画化したとはいえ、やはり原作の面白さとは異なります。原作では心理描写や説明が徹底して排され簡潔な文体(ハードボイルド文体)で構成されています。このことによって、登場人物が何を考えているのかとか、なぜそのような行動を取るのかとかが分からないということがおこるんですね。これが独特なスタイルというか、ムードを醸し出しているんです。
ガラスの鍵
「マルタの鷹」に続いて発表された長編4作目となる「ガラスの鍵」。ダシール・ハメットがもっとも好きだった作品だと言われています。

ガラスの鍵
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男の義理と友情、命を賭けた駆け引き。今となってはハードボイルド探偵小説の王道ともいえるテーマが盛り込まれています。
探偵役を務める主人公のネド・ボーモンは、ダシール・ハメットの全作品中でも本作にしか登場しません。サム・スペードかコンチネンタル・オプかに探偵を統一していたらもっと読者に認知されたのかもしれません。が、サム・スペードもコンチネンタル・オプも、いえネド・ボーモンにしても魅力的ですからねぇ。無理、というか意味ないですよねぇ。

ダシール・ハメット
本名サミュエル・ダシール・ハメット、通称はサム (Sam) 。ダシール・ハメットはピンカートン探偵社で実際に探偵として働いていたということと、作品に登場する人物は全て知人をモデルにしているということが作品にリアリティがある秘密なのかもしれませんね。
活字離れと言われている若者に是非手に取ってもらいたい作家、作品です。