
廃墟に等しいシャングリラコロニーで、一人の少年、ジュドー・アーシタが、Zガンダムに乗り込んだ!
私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』( https://shimirubon.jp/series/146 )での、 再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。
今回紹介するのは、『機動戦士Zガンダム』の主役・Zガンダムの1/144旧キット。
ゼータガンダム 1/144 13 1985年8月 500円

1/144 Zガンダムのパッケージ。MSVパッケージのリアル箱絵から、再びカラフルなデザインに戻った
というわけで、久々の「ガンプラ」復帰第1回は、ツボを抑えまくった『機動戦士ガンダム』(1979年)の続編『機動戦士Zガンダム』(1985年)中盤から登場する、真の主役ガンダム、Zガンダムの1/144 キットの紹介である。
『機動戦士ガンダム』のガンプラは、試験的商品であったフルカラーモデルを除けば、1983年3月の段階で、1/60 ゲルググ、1/100 ゾゴック、1/1200 マゼランで終了しており、その後、1983、1984年は、バンダイがメインスポンサーを務める、富野由悠季監督・サンライス制作の『聖戦士ダンバイン』『重戦機エルガイム』に登場する、オーラバトラーやヘビーメタルのキット化と並行して、ガンプラシリーズの自社二次創作とでもいうべき「モビル・スーツ・バリエーション(MSV)」が並行して展開していた。

2色で成型されたランナーとポリキャップ
その商品ラインナップも、アニメ版で没になったデザインから、メカデザイナーの大河原邦男氏によって独自に描かれたオリジナルMSの商品化、そしてその大河原氏に、商品化を前提に依頼した新規バリエーション機体、また当時大ヒットしていたガンプラ漫画『プラモ狂四郎』で登場したオリジナルモビル・スーツのキット化まで、一口にMSVといってもストリームは多岐にわたっていて、エンドユーザーも、完全スケールキットからの移行派や、ガンダム設定マニア、『プラモ狂四郎』ファンなど、多層構造でシリーズは2年に渡って展開された。
商品化ロボットが登場するアニメ原作がないロボットキットで、この規模で商品化が継続して盛り上がった例は、今に至る模型界でも他に例を見ない。
その中で、ガンプラも様々に試行錯誤を繰り返してそのフォーマットや技術レベルもブラッシュアップが積み重ねられていった。
関節可動も、首回転、肩回転、肩開き、上腕ロール、肘曲げ、手首回転、股間開脚、膝曲げ、足首自在接地など、初期ガンプラで個々にあった長所が均一で基本装備になり、その上で「首が前後に傾けられる」「肩が前後にスウィングする」等も取り入れられるようになっていた。

封入された塗装解説書では、まだこの頃はランナーに塗装する仕様で塗装が開設されていた
それら新技術と新規フォーマットが、この『Zガンダム』ガンプラでは、基本的に踏まえられることになる。
一方、MSVと並行する形でキット化が進んでいた『銀河漂流バイファム』(1983年)から、今では常識になったポリキャップが関節軸の保持に用いられることが基本になるようになり、ガンプラも『Zガンダム』からは、基本上腕ロール以外は殆どの関節保持にポリキャップが用いられることになった。

塗装して完成した1/144 Zガンダム
『Zガンダム』におけるZガンダムは、冒頭でも記したようにシリーズ中盤から登場する「真の主役機」であり、これは『戦闘メカザブングル』(1982年)以降の富野アニメの法則に従って「シリーズ中盤で主役メカが交代する」を、意図的に踏襲した結果、発想を逆転させるところから始まったアイディアであった。
他ならぬ「『ガンダム』の続編」であれば、その主人公メカには、「初代ガンダムと相似形」という要素と「新ガンダムとしての斬新さ」という要素の、2つの「続編で欠かしてはならないデザイン要素」が求められる。

Zガンダムのサイドビュー
「それ」を、サンライズ、富野監督サイドは、まず序盤をガンダムMK-Ⅱという、誤解を恐れない言い方をすれば「元のガンダムを“エルガイムのメカっぽく”パーツ配置やディテールなどをブラッシュアップしたデザインのモビル・スーツ」を主役として登場させて活躍させる。
静止画ならともかく、派手に動いているだけであれば、ガンダムMK-Ⅱのシルエットとカッコよさは、初代ガンダムに極めて近いものがある。

Zガンダムのバックビュー
その上で、満を持して第21話『ゼータの鼓動』から、タイトルにもなっているZガンダムが颯爽と登場。ガンダムでありながら初代ガンダムとは顔や配色にその痕跡を遺すだけの意匠で、スパルタンなシルエットから高速戦闘機に変形して、シリーズ後半の敵と渡り合うという展開構想は、主役機交代劇が当たり前になっていた1985年でも、十分なインパクトがあった。

付属するオプション一覧。ビーム・ライフル、シールド、ビーム・サーベル×2本。どれもノンギミック
さて、ここでようやく、今回の主役、1/144 Zガンダムのキットの解説に移ろう。
このキットは、テレビでZガンダムが初登場(1985年7/27)した直後の、1985年8月に、『Zガンダム』ガンプラではNo.13で登場した。
商品化順では13番でも、間に1/100のガンダムMK-Ⅱ、ハイザック、ガルバルディβ、リック・ディアスを挟むので、1/144としては9番目の商品である。
また、同月にリリースされた1/144のザクタンク、グフ飛行試験型、ザクキャノン等は、実質はMSV商品のパッケージ替えなので、『Zガンダム』完全新作の1/144 キットとしては、前月のマラサイに続き6番目の商品として捉えるのが正解かもしれない。

腕の構造状態。基本、可動すべき部分には全て可動軸が仕込まれているが……
ここまでの1/144『Zガンダム』キット化は、ガンダムMK-Ⅱ(=ガンダム)、ハイザック、マラサイ(=ザク)、リック・ディアス(=ドム)、ガルバルディβ(=ゲルググ)と、どれも何かしら最初の『ガンダム』登場のモビル・スーツの、デザイン上の延長にある機体ばかりで、それらは手法的にはMSVデザインの系譜にあり、1/144 Zガンダムの直後のジムⅡも挟むと、MSVの箱替えキットがラインナップされているのを前提にすれば、バンダイ的には『Zガンダム』のビジネスというのを、MSVキットのユーザーを、そのまま取り込む意図があったことが推察できる。

組み上がった状態での可動範囲。まずは肩から、これが通常状態

肩ブロックの形状と上腕のデザインのため、精一杯広げてもここまでが限度。ほとんど広がっていない
その中で、少なくともこの時点では、Zガンダムというデザインと存在感は、商品としては異端であった。
もっともアニメの方では既に、メッサーラやアッシマー、ギャプラン等の可変型モビル・スーツが先だって登場していたので、作品の画的にはそれほど極端な異端ではなかったといえよう。

MSV辺りからガンプラは、肩を前後にスウィングする機能を付け始めたので、このZガンダムでも若干ではあるが肩のスウィングが可能
さて、肝心の1/144 Zガンダムのキットの方だが。
満を持しての真打登場であり、主役のキットだけあって、基本的なシルエットとプロポーションの両立は、アニメ設定で見ても満点に近い。
今「アニメ設定で」と書いたのは、Zガンダム自体可変MSであり、ウェイブ・ライダーへ変形することを前提に置くと、胸のコクピット周りの青のパーツの配置や角度など、アレンジ云々以前の問題で、モビル・スーツ時とウェイブ・ライダー時で矛盾が多いのだ。

肘はこの時期にしては珍しく100度近く曲がり、また手首受けブロックも独立可動するので、この時期にしてはかなり優秀な可動領域を誇る
その上で、「アニメどおりに変形するZガンダム」は、バンダイはその後の10月に、1/100で商品化しており、誤解を恐れぬ言い方をするのであれば、「アニメでの変形」を正解とするのであれば、37年間のガンプラの歴史の中で、唯一「完全変形するZガンダム」は、この時の1/100しか、今はまだ存在していないのである。

続いては脚部の可動を見ていこう。まずは開脚。これが通常状態

腰のサイドアーマーが邪魔をして、精一杯開脚をしても殆ど見栄えが変わらない
なので、1/144 Zガンダムは、変形機構を最初からオミットして、モビル・スーツ時のプロポーションの再現に全力を注いだ結果、今の目で見ても「アニメ版としては」最高峰の出来を誇るクオリティに至っている。
その後、90年代のHG以降は、バンダイが「模型化しやすいように」「二次元の嘘に整合性をとれるように」元デザイン自体を変える手法が定着していったので、HG以降のZガンダムは、細部のデザインは純粋なテレビアニメ版とは細かく違ってきているので、そういう意味でもこのキットの存在価値は、現代においても色あせるものではないと言い切れる。

脚部の内部構造写真。膝裏の、2枚のプレートフレームが膝の屈伸を邪魔することになるのが分かるだろうか
キットの方は、上でも書いたが『Zガンダム』1/144 では、関節にポリキャップが標準装備されるようになっている。
この時代なので、ポリキャップは基本「小さくて、ストッパーが角で固定されるB」と「大き目で、ストッパーが円柱軸で、回転可動も可能なA」の2種類を使い分けており、典型的な運用例としては、肘や膝の可動はB、肩、股関節、足首にはAという使い分けが慣例的であった。

2枚のプレートフレームは、デザイン上は必須なので、この時期のバンダイは、愚直に立体化するしか選択肢がなかった
ランナーの方は、このシリーズから『機動戦士ガンダムZZ』(1986年)時期までの1/144は、2色のランナーで構成されるフォーマットで統一されるようになる。
例えば、ガンダムMK-Ⅱであれば「グレーと紺」、ガルバルディβであれば「ピンクと赤茶」といった感じであり、このZガンダムも「青と白」であり、赤や黄色、グレーなどの部分は一切ないが、一切塗装せずに組んでも、意外と雰囲気はアニメイメージを崩さないレベルでとどまっている(いや、あくまで当時の印象の話なだけではあるが)。

なので膝関節の可動範囲もここまでどまりである
間接可動の方は、これは現代でこそ、デザインとガンプラ技術開発がコラボして新メカを開発するという足並みが揃っているようになったが、この当時は(特に前年の『重戦機エルガイム』辺りから顕著に)プラモデル技術力の上昇と、メカデザインのインフレとが、悪い意味でバッティングしあった結果のキットというのが増えていた。

それでもなんとか、それらしく動かしてみる
これがまだ、大河原邦男氏辺りのデザインだと、格好良さと可動性の実現を常に念頭においた新デザインを発信してくださるのだが、当時の新進気鋭のメカデザイナーの多くは、画としてのメカの格好良さや斬新さには尽力するのだが、それがいざ模型メーカーでキット化するとなった時に、そのデザインで果たして関節が動くのかというエクスキューズへの配慮は、充分とは言えないデザインも多く、ロボットプラモ界は、だからじりじりと市場規模が縮小へ向かっていた。

ビーム・ライフルの取り回しは、心配したほど不自由ではない
市場規模縮小への危機感が「ここはやはり『ガンダム』の続編を」という意見を主流にさせたのだが、では肝心の新主人公ガンダムのガンプラはというと、いざ出来上がったものは、二次元をガンプラ化したものとしては及第点で、ポリキャップなどのマテリアル技術点もハードルをクリアしているのだが、組んだ人ならば分かると思うが、このキット、肘と手首以外は、想像以上に「動いてくれない」キットなのである。

肘と手首の可動は優秀なので、ビーム・サーベルを持たせるとポージングは悪くない
各関節にポリキャップは一通り仕込む仕様にはなってはいるし、肩のスウィングや開脚も設計段階で盛り込まれており、この時期には革新的に、手首ブロックも独立しながら内側へ可動までする。
肩の回転も、背中のバインダーとの干渉をギリギリ逃して、360度回すことは可能になっている。

シールドは左前腕に、比較的自由な角度でホールドできる
しかし、肩アーマーと肩プレート(肩付け根の、白い六角形の板)が、最初の素立ち状態から干渉しあっているので、肩は殆ど開くことはできない。
開脚は、見栄えを無視して股関節軸から脚部を左右に引き出せばある程度は開けるが、腰アーマーを設定画からの解釈そのままに、脚部側に固定してしまったので、それが腹部と干渉してしまい、脚を踏み出す事すらままならない。

せっかくサーベルが2本ついているので二刀流で
膝関節も、変形してウェイブ・ライダーになるときのフレームプレートが、わざわざ別パーツで(ディテール部分は徹底的にアニメ設定画に忠実)膝裏に付くので、これが可動領域を占領するので、ほぼ曲がらない結果を呼んでいる。
アニメデザイン至上主義がある種の絶対的な価値観となってしまえばこうなるという見本。それが「全身にポリキャップを仕込みながらも、首と肩の回転と、肘と手首以外は殆ど可動しないデクノボー」という1/144 Zガンダムという結果を生んだ。
キットには、ビーム・ライフル、ビーム・サーベル(2本)、シールドと、ガンダムお約束の三種の神器は付属してくる。
パーツ分割は細かく、背部腰アーマーのバーニアが全部別パーツになっているところなどは、MSVで培われてきたバンダイのディテール主義が良い意味で結実しているといえるだろう。
なので、ポージングしようにも、どうしても腕の角度や武器の持ち方で印象を変える程度の小技しか通用しないのである。

この時代の、このデザインの立体化という部分では、充分及第点ではないだろうか
では、そもそもシミルボンの『機動戦士ガンダムを読む!』再現画像用にガンプラを集めている市川大河が、なんの目的でこのキットを入手したのか?
それはまぁ、シミルボンのためというよりは、この『ガンプラり歩き旅』連載で、かなり長い事イデオンやらスーパーロボットの紹介を続けてきたので、『Zガンダム』以降編再開においては、やっぱり主役ガンダムをまずは紹介しなければなぁと思ったというのもあるが、そこは転んでも大河さん(笑)「シミルボン連載での再現に、このキットでこそ」という使い道を思いついたからでもある。

キットをもう一つ用意して、ボディを丸ごと新たに作る。コクピットハッチ部分は切り欠く
このキットは、先ほども書いたように無変形キットであり、アニメ版に一番忠実なキットでもある。その利点は何かで活かせないか?
そうだ、と思いついたのが、まずは「『Zガンダム』作品内の再現」ではなく、むしろ次作『機動戦士ガンダムZZ』冒頭時の再現であった。

ハッチを改めて開放状態で接着し、ジュドーに見立てた1/144フィギュアをそれっぽく塗装して接着する
上でも書いたが、この時期のサンライズ(だけではないが)ロボットアニメの多くは、シリーズが1年ある場合、初期と中期以降で主役メカを交代させるビジネスを展開していた。
それが『Zガンダム』の場合は「ガンダムMK-ⅡからZガンダムへ」だったのだが、新作続編の『ガンダムZZ』では、その露払い前座役を、『Zガンダム』では主人公メカだったZガンダムが務め、真の主人公ガンダムのZZガンダムは早くも第11話『始動!ダブル・ゼータ』から登場するのであるが、それまでの間主人公ジュドーは、前作後半の激闘で半分壊れかけのZガンダムに乗り込んで活躍するのである。
前作と打って変わったコメディタッチの演出や作風を推し出すためと、Zガンダム自体がガタがきてボロボロなのを画で示すため、第2話などのジュドー初出撃では、Zガンダムは「肝心のコクピットハッチが閉まらない」状態で、敵ネオジオンの美形艦長・マシュマーのガルスJ(こちらも整備不良でハッチが閉まらない辺りがギャグ)と、チグハグな戦闘を行うという辺りが『ガンダムZZ』初動の印象的な演出なのである。

顔と手足は共通なので、これでZガンダムジュドー初陣Verの出来上がり
そこで「ハッチが開いたままのポンコツZガンダム」に、このキットのカスタムを使えばいいのではないかと考案。
なぜなら、90年代の初代HG Zガンダム以降のZガンダムキットは、全てなにかしらの手法でウェイブ・ライダーやウェイブ・シューターに変形させられるので、コクピットハッチを開ける加工をしても、その内部が何かしらのパーツが埋まっていて、狙い通りの加工がしづらいというのがまず挙げられる。
その上で、多少は拙い(筆者の)工作である方がポンコツ度合いがちょうど醸し出せるし、何より「アニメ設定への忠実度」でだけなら群を抜くこのキットにも、出番があるというのはシミルボン再現画像的にも意義がある。

ブライトの前で「ガンダムに乗り込む民間人少年」3人目だったジュドー
なので、差し替えで「『ガンダムZZ』初期ハッチオープン状態」パーツだけでも作って再現すれば……と考えて、腕を動かしてしまっていきなり後悔(笑)
このキット、胸のコクピットハッチがそのまま、腰や腹部や背部のバインダーと一体になる構造で、完成後の差し替えをポリキャップ接合部分で逆算すると、結局頭部と腕部と脚部以外は、ボディは背中のバインダーとスラスター含み、全部をもう一個作り足す羽目になった(笑)

ズタボロのアーガマから、今出撃する!
その上で、コクピットハッチだけを切り出し、内部を少しコクピットっぽくディテールを詰め込んで、その上で一番の肝として、『ガンダムZZ』の主人公であるジュドーを、同じ1/144のNゲージから、ストラクチュアとして売られているフィギュアを購入してきて、ジュドーの服の色に塗って、ハッチが開いたコクピット部分に固定して立たせてみる。

ジュドーに見立てたフィギュアはNゲージの物だが、Nゲージの方が先んじて、1/144国際標準スケールなので、サイズはちょうどよくコクピットに収まる
ジュドーのせいでせっかく作り込んだコクピットがほぼ見えなくなったが、それでも『ガンダムZZ』序盤のZガンダムらしさは出せたように思える。
キット本来の可動範囲の狭さも、ジュドーの慣れてない操縦の拙さの表現ということでカバーできる。

ライフルの長さ、大きさはこの時点ではベストであろう
その上で、この連載でキットのノーマル状態を紹介するために、四肢以外は丸ごともう一つキットを買って作り上げた。
……と、そこで再びスケベ心がムクムク顔をもたげる。
こちらの、ハッチが閉じた、ノーマル版Zガンダムも、この連載での紹介写真を撮ってしまえば用済みになってしまう。
それももったいないと思って考えたところ、ちょうど良いアイディアが浮かんだ。

Zガンダム、ラストシューティング固定モデルへクラッシュモデル固定化
Zガンダムは、『ガンダムZZ』では基本的に、男勝りの美少女、ルー・ルカが搭乗するのだが、シリーズクライマックス、最終回の一歩手前で、ネオジオンの巨大モビル・スーツ、クイン・マンサと、アクシズのモウサの中で死闘を演じる。

左腕、左足、頭部側面をダメージ状態にして、右足を膝立ちポーズで固定した
その果てで、Zガンダムは顔の左半分、左腕、左足の、左半身の殆どを失いながらも、最後の最後、右膝立ちでライフルを撃ち、クイン・マンサにとどめを刺すのだ。
このシーンの再現では、既存のZガンダムのキットを一つ消費することは大前提で、逆に関節可動は必要がなく、膝立ちの固定ポーズが取れれば、後はダメージモデルとして作ればいいだけ。

一番苦労したのは、実は右脚を如何にして膝立ちにするか。腰アーマーもサイドアーマーもこのキットでは脚部に直付けなので、一度切り離してポーズを付けてから再接着した
「ガンダムのラストシューティング」というと、誰もが最初のガンダムの、ジオングとの相打ちのあの仁王立ちポーズを思い浮かべるし、それをガンプラで再現してきたモデラーは無数にいるが、同じ「ガンダムのラストシューティング」でも、『ガンダムZZ』での、Zガンダムを固定モデルで作った人もあまりいないのではないかと思い、一度塗装などをしっかり施して完成させた素組のZガンダムを、左腕と左脚をモーターツールでカットし、頭部左側をハンダゴテで焼きつぶし、それらに艶消し黒を塗り、ポーズを決めてしっかりと作り上げた。

完成したZガンダムラストシューティングカット
一年半の長丁場を戦ってきたZガンダム最後の雄姿、作ってみるのも悪くないかもしれない。
さて、それらの前提となる塗装について。
塗装の方は、このシリーズの統一フォーマットが2色で、Zガンダムは青と白のランナーなため、ほぼ全塗装が大前提。
青はキャラクターブルー、白はGXクールホワイトで塗装し直し。
赤はキャラクターレッド、黄色はイエローで脚部のスラスター関係の黄色だけキャラクターイエロー、フレームなどはミディアムブルー。ライフルや背中のバインダー、サーベルの柄はファントムグレー
Zガンダムの目はデイトナグリーンで、一通り塗り上げた。

全ての「Zガンダムのガンプラ」歴史は、ここから始まった!
可動に関しては、MSVでの蓄積を台無しにするほどのデクノボーぶりだが、それもこれも新世代的デザインのディテールや構造概念を全て拾い集めたから。
いろいろな意味で、当時の「新時代のガンプラとは」が伺える佳作キットである。
市川大河公式サイト