イデオン1機に襲い来る、バッフ・クランのメカの大群!
今回の番外編で紹介していくのは、シミルボンでもその流れで『伝説巨神イデオン』の作品紹介をするので、その『イデオン』に登場した、 主人公ロボットイデオンの様々な立体を中心に、敵役の重機動メカ等も含めてイデオンの立体物歴史を俯瞰していきたいと思います。
今回は、イデオンに次々と戦い挑んだ、バッフ・クランメカのイデプラを6つ紹介したいと思います!
必殺のイデオン・ガンが、バッフ・クランの大群を駆逐する!
この連載のこれまででも触れてきたが、イデプラの、イデオン以外のメカのメインストリームは、1981年2月スタートの、300円箱サイズ統一の「アニメスケール」シリーズと、1981年11月から、改めて開始された「1/600スケール」シリーズの二段構えで構成されている。
それは何かアオシマに戦略的意図があったとは言えず、当初は箱サイズ統一でのコレクション性だけで展開していたシリーズが、いざ並べてみた時に、等しいスケールのメカが一組もないという現実が、1/144統一スケールガンプラに慣れた消費者から、今一歩反応が悪かったというのがまず考えられる。
しかし、そこでアオシマを攻めるのも酷であり、『ガンダム』と明確に、戦闘シーンの展開を差別化しようとした富野監督以下の意図により、イデオンの敵側バッフ・クランメカは、ことさらメカ単位で大きさや形状が激しく異なっていた。
なにせ、同じ300円サイズに収めようとすると、最大のガルボ・ジックが1/1550で、重機動メカとしては最小のアディゴが1/350なのだ。
バッフ・クランメカはそもそも、モビル・スーツのような人型ではなく、異星人のメカとして特徴を出すために、わざと奇形や異形を取り入れた、非人間型の構造が多く、ミリタリー色は強くない。
例えば、苦しまぐれにバッフ・クランメカの共通性を抽出しようと思ったら、「割と三本足メカが多い」という印象ぐらいは抱けると思う。
これは、一つの「異星人メカの象徴」として、また「地球人の発想では出てこないメカニズムの典型」として、古典SFの名作、Herbert George Wellsが1898年に発表した『宇宙戦争(The War of the Worlds)』で、地球に攻めてきた火星人の侵略兵器・トライポッドの意匠(三本足メカ)を借りているからだと思われる。
もう一方でのバッフ・クランメカの共通性としては、これも地球人には理解不能なガジェットとして、バッフ・クランメカのには、どこかに必ず、キャノピーに水玉模様というシンボルが配置されている。
バッフ・クランメカ共通の模様
これは一説には、外套膜マルチバイオセンサーと解釈されているが、イデプラのモデラーの間では「オーメ」とも呼ばれている特徴的なシンボルであり、大きさや形状がバラバラのバッフ・クランメカに、統一感をもたらしたデザインセンスは秀逸である。
しかし、その「そもそもミリタリー色が薄いSFメカ」「劇中でのサイズの大小が極端に別れている」が仇になったか、アニメスケールシリーズは売り上げが伸び悩んだのだろう。
それでもガンプラより早くキャラクターフィギュアを商品化したり、箱サイズ統一規格であることを逆手にとって、1/30で一人乗りメカのガタッカを商品化したかと思えば、超巨大要塞母艦バイラル・ジンを、1/20000というあり得なさすぎるスケールで商品化するなど、挑戦的な商品展開にアオシマは挑み続けていた。
しかし、やはり先行して社会現象を起こしていたガンプラに対し、作品的には充分対抗できるキラーコンテンツの『イデオン』を、もっとうまく商品展開活用することで、『ガンダム』並みのビジネスをしようと悩んだ結果、アオシマは「イデオンを基準に、小型戦闘機から大型重機動メカまで、全てのメカを1/600で改めて出し直す」という英断を下したのだ。
その結果、さすがに1/600では無理だったバイラル・ジンや、未発売に終わった戦闘機メカもあるとはいえ、作品内に登場したメカのほとんどを、第19弾までシリーズ化し続けたという快挙を、アオシマは成し遂げた。
このことはWikiにも「この規模でシリーズ化されたアニメプラモは、1/144のガンダム、1/72のダグラムと当シリーズだけ」とある。
ある意味バンダイよりも愚直で正直なアオシマが、当初のアニメスケールではイデオンを1/810、続けて発売された、重機動メカの中で最もイデオンに近いサイズのジグ・マックを1/760とスケール表記したことから始まった再商品化なのだが、今にして思えば、両者それぞれ、スケール表記は1/80ぐらいの誤差の範囲内なのだから、共に1/800としてしまえば二度手間にはならなかっただろうにとは思える。
おまけに、アニメスケール版ドグ・マック等は、最初から1/610スケールだったものだから、さすがに1/600シリーズで新設計するのもおかしな話なので、アニメスケール版をベースに、さらに追加パーツなどをつけてバリューアップすることで、1/600として出し直すにあたってクオリティを高めたという例もある。
そんなイデプラから、今回はシミルボンの連載で再現画像に用いた、アニメスケールから2つ、1/600シリーズから4つの、計6つのバッフ・クランメカのキットを紹介してみたいと思う。
アオシマ 1/600 アニメスケール バッフ・クランメカ
1/600 ジグ・マック 1981年11月 500円
ティーンズ向けの1/600シリーズ共通のボックスアートのジグ・マック
まず1/600シリーズで紹介するのは、『ガンダム』で言えばザクに当たるのだろうか。バッフ・クランの一般量産型としては最も出番が多かったジグ・マックである。
完成した1/600 ジグ・マック。プロポーションは悪くない
デザインラインとしては、バッフ・クランメカでは一番人型に近いメカで、そういった要素が合わさって、重機動メカとしては戦闘を切って、イデオンと同時に発売されたのだろう。
ジグ・マックのサイドビュー。股関節は大きく前に踏み出せるが、膝関節はあまり曲がらない
昭和の「宇宙人とは」の「空飛ぶ円盤」を鏡餅のように重ねたところに、それこそ現代地球の重機のような腕と脚が生えている構造で出来上がっていて、上手くモビル・スーツとのコンセプトの差別化に成功している。
このキットのポテンシャルの高さを誇る腕の可動領域。このデザインで肩がここまで広がる構造は当時のアニメロボットキットでは珍しい
このキット自体も、先行していたアニメスケールシリーズをブラッシュアップした形で、主に関節可動アクションが強化された。
股関節が開かないのは大きく損をしてしまっている部分だが、逆を言えばこのデザインを与えられて、肩が両脇に広げられるポーズがとれるように設計されたことは称賛に値する。
また、手の先の、これも重機のような爪も可動して、ここも表情付けには大きなポイントとなる。
ジグ・マックのリア・ビュー。バックノズルなどもデザインに忠実に再現されている
プロポーション的には、重機動メカの異形性が逆に幸いして、特にアニメ作中描写とのギャップは感じられない。
実際の商品では、多層構造の円盤が互いの位置をずらした「飛行形態」とコンパチで組むことが可能になっているのだが、コンパチなのでどちらかを選ばねばならず、今回は迷わず直立形態を選択した。
ジグ・マックのアップショット。微妙な曲面構成の上部円盤の面取りも正確に立体化されている
塗装は、成型色をベースに、各部をミディアムブルーで塗った他は、オーメ部分を艶消し黒とピンクで塗装して、全身に墨入れをしている
1/600 ガンガ・ルブ 1982年1月 1000円
ガンガ・ルブのボックスアート。当時の重機動メカの中では一番人気であった
ジグ・マックがザクだとすれば、シリーズ中盤以降メインメカになったこのガンガ・ルブは、『ガンダム』におけるドムだろうか。
バッフ・クラン重機動メカを象徴する三本足メカのフラッグシップメカである。
完成したガンガ・ルブ。独特のシルエットを正確に再現している
イデプラのシリーズでも、1/600でこそジグ・マックに初陣を譲ったが、アニメスケールシリーズでは、逆にこのガンガ・ルブがまず一番手として商品化され、続いてジグ・マックが続く形になった。
巨大な二つのスラスターノズルもしっかり再現されている
ガンガ・ルブは、先ほど書いた「トライポッド型」として、統一感のないバッフ・クランメカの中では、印象が強いシルエットとなったことは間違いはない。
このキットの特徴としては、一つに「ガンプラ(バンダイ)より先がけて、可動ロボットプラモデルの関節にポリキャップを装備」と「オーメ部分のクリアパーツ化」が挙げられる。
劇中でも印象深かったサイドビューも忠実に再現
もっともポリキャップの装備は、後のバンダイのような「関節保持力を高めて、プラ同士の摩耗を防ぐため」というよりは、単に特徴的な構造の関節軸に、可動領域を仕込もうと思ったら、ポリキャップのような特殊素材を用いるしか、ほかに手段がなかったという辺りが正解なのかもしれない。
その証拠に、このキットの直前のジグ・マックにも、このキットの後のアディゴにも、なにより主役の合体版イデオンにもポリキャップは使われていないからだ。
このガンガ・ルブのキットでは、両肩の丸い球体関節が丸々そのままポリキャップで、それはそれで保持性も可動性も悪くないのだが、当時ポリキャップを塗装する手段は模型製作の界隈では皆無であり、この辺りも全塗装モデラーを遠ざけてしまった理由に繋がっているのかもしれない。
下から見たガンガ・ルブ。脚の裏のバーニアもしっかり再現
また、クリアパーツの使用は、このキットが『イデオン』を代表する敵メカとして、アオシマの「光る」シリーズに金型が流用される予定があったからである。
「光る」シリーズはその名のとおり、内部に電飾を組み込んで、光るギミックが搭載できるプラモデルシリーズであり、その始まりは映画『トラック野郎』(1975年)ブームに便乗した「光るデコトラ」シリーズからであった。
「光る」シリーズは他でも、『無敵超人ザンボット3』(1977年)や『最強ロボ ダイオージャ』(1981年)等の主役ロボが選ばれており、『イデオン』からは、主役のイデオンが「光るイデオン」として、1/420 アニメスケールの金型と追加パーツで、そしてこのガンガ・ルブの金型で「光るガンガ・ルブ」が発売された。
大サイズで高価格帯のキャラクター商品枠で、敵メカが選ばれたのは『イデオン』からだけであり、その辺りからもアオシマの気合の入れ方と期待の込め具合が伺える。
上から見下ろしたガンガ・ルブ。複雑な面取りと立体構造のフロント形状は、同時期のガンプラと比較しても劣らない
キットでは一応、劇中で演出された、脱出カプセルの脱着も可能。
各部ディテールもかなり正確である。
しかし、この1/600 ガンガ・ルブは、目指す理想に、技術と精度とノウハウが追い付いていなかった残念な商品でもある。
キットの塗装は、成型色のパープルを活かしつつ、シャアピンクや量産型ザクのグリーン等、『ガンダム』と共通するだろうアニメカラーで塗装してみた。
1/600 アディゴ 1982年5月 300円
当時、メカファンに大人気だったアディゴのボックスアート
3番目に選んだ重機動メカは、シリーズではNo.8、重機動メカでは3つ目に当たるアディゴであった。
完成したアディゴのキット。巨大な加粒子砲に2本脚が付いたというコンセプトが秀逸である
『イデオン』では、イデオンの驚異的パワーに一対一で立ち向かえるメカをと、バッフ・クラン側の重機動メカはどんどん巨大化していきインフレを起こすのだが。
その果てで、バッフ・クランなりに発想を変えて「質より数。パワーより機動力」という、真逆の戦略思想で、この小型重機動メカアディゴが、群れを成してまるでスズメバチの大群のように、イデオンを襲う描写が続出した。
その演出は、後に『超時空要塞マクロス』(1982年)等で広くアニメファンに知られることになる、板野一郎氏による作画、通称「板野サーカス」により『イデオン』戦闘シーンの白眉になって、アディゴの群れVSイデオンの戦闘シーンの完成度は未だに語り継がれている。
これはなんとしてでも再現しなくてはならない。
膝関節も可動するが、劇中では殆ど、この前のめり姿勢で板野サーカスで舞い飛んでいた
通常の1/600シリーズだと、殆どのメカがアニメスケールより大きくなるので、その分ギミックやディテールが進化するのだが、アディゴはアニメスケールでは1/350版が1981年8月に一度発売されており、単体での出来も悪くなかった。
そこで、統一スケールでダウンサイズで出し直す1/600シリーズでは、膝関節を簡素化して、飛行形態と着陸形態のコンパチにした上で、一箱に2機分のパーツを揃えて300円での販売になった。
再現画像より。群れを成してイデオンに襲いかかる小型機動メカの群体
キットの出来的には、2脚の付け根の関節部分の形状が設定とは異なるが、足首の可動がアニメ演出を再現して、ほぼ90度折りたためるので、股関節が開かなくてもあまり問題はない。
メインボディ後部の白と、バーニア内部の赤が印象的
上では小型と書いたが、『イデオン』は、そもそも主役のイデオンが100m級なので、対比する敵メカも基本的に小型と言えど巨大で、このアディゴも劇中だと小型メカに見えるが、サイズ的には『ガンダム』の巨大モビル・アーマー、ビグ・ザムに匹敵する。
比較写真。左からジグ・マック、真ん中が『機動戦士ガンダム』(1979年)の1/550 ビグ・ザム、そして右側がアディゴ
この写真では、アディゴとジグ・マックが1/600で、ビグ・ザムが1/550なので、ほぼ同スケールの対比と思ってもらえばよいだろう。
塗装では、アディゴのオーメだけなぜか赤茶色に黄色の配色なので、そこだけシャアザクの赤茶色とイエローで塗装。あとはクールホワイトとザクグリーンで細部を塗り分けた。
1/600 ザンザ・ルブ 1982年6月 1500円
劇場版用特別なメカらしく、純白で幽鬼的なシルエットが描かれているボックスアート