『ガンプラり歩き旅』その55 ~イデオン編・3 アオシマ アニメスケールシリーズの誕生!~

『ガンプラり歩き旅』その55 ~イデオン編・3 アオシマ アニメスケールシリーズの誕生!~

ガンプラ! あの熱きガンダムブーム。あの時代を生きた男子であれば、誰もが胸高鳴り、玩具屋や文房具屋を探し求め走ったガンプラを、今改めて当時のキットから現代キットまで発売年代順に、メカ単位での紹介をしてきた『ガンプラり歩き旅』。 今回は全8回で、ガンプラブームと共にロボットプラモブームを牽引した、『機動戦士ガンダム』(1979年)の日本サンライズ・富野由悠季監督の次作品『伝説巨神イデオン』(1980年)のアオシマ製プラモデル群から、現代に至るまでのイデオンフィギュアを、追いかけてみたいと思います!


アオシマイデオンプラモデルの新しいステージ。1/810と1/420の、2種の「アニメスケール」のイデオンだ!

私、市川大河が、書評サイトシミルボンで連載している、 『機動戦士ガンダムを読む!』での、再現画像で使用しているガンプラを、 古い物から最新の物まで片っ端から紹介していこうというテーマのこの記事。

今回の番外編で紹介していくのは、シミルボンでもその流れで『伝説巨神イデオン』の作品紹介をするので、その『イデオン』に登場した、主人公ロボットイデオンの様々な立体を中心に、敵役の重機動メカ等も含めてイデオンの立体物歴史を俯瞰していきたいと思います。
今回は、それまで児童層向けのイデオンプラモデル(イデプラ)しか発売してこなかったアオシマが、ガンプラブームを意識し始めて展開を開始した「アニメスケール」シリーズの幕開けとなる、2種のスケールのイデオンをご紹介!

アオシマ イデオン アニメスケール 1/420 1980年11月 1000円

普及版のパッケージアート。迫力のあるイラストでイデオンがそびえ立っている

試験販売期のパッケージアート。セル画を使ってアニメ版を強く意識させた、当時としては珍しいロボットプラモデルの箱絵

いきなり余談から入ってしまうが、アオシマのイデプラの話題になると、避けて通れない事件が近年あり、マニアはそれを「駿河屋の乱」と呼んでいる。
駿河屋とは、プラモデルに限らずオタクグッズを扱うECサイトなのであるが、ことは2011年に突如起きた。
おそらく駿河屋が、どこかのルートで、イデプラの大量のデッドストックを有している、倉庫か問屋の破綻からタダ同然で手に入れてきたのだろう、未曽有の物量のイデプラが、100個で500円とかの破格値で、ある日突然通販されたのだ。

1/420 イデオンの立ち姿。プロポーションは言われているほど悪くはない。今回は2種とも未塗装で素組

その情報は瞬く間にネット上のアニメ系モデラーに知れ渡り、やがてそれは低レベルな転売を大量に生み出し、Amazonマーケティングプレイスなどにも余波が及んだが、この事件を「貴重な当時品のデッドストックが、イデオンに知識も思い入れもないイマドキのマニアにネタ消費されて憤慨」するか「どうせこのまま死蔵されていても、いつか破棄されて処分される運命にあったのだから、どんな形であれ消費されたことを感謝」するか、人それぞれではあるが、今回のイデプラコラムはそんな枕から始まる。

横から見た1/420 イデオン。アオシマロボットプラモデルは、トップヘビーと、横幅が薄いのが共通した作風

まず、今回最初に紹介する、アニメスケール 1/420 イデオンは、イデプラでおそらく初めて、スケールモデルの概念と、アニメ設定やディテールを尊重する設計と、アニメに近い3機合体変形を意識した商品であり、一言で言うなら、ガンプラに影響を受けたイデプラ第1号であると言い切れる。

1/420 イデオンのバックショット。

今回用意した1/420 イデオンは、翌月発売される「光るイデオン(1980年12月発売2400円)」のテスト版の色合いも強く、「光るイデオン」には、このキットに発光装置と新規ランナー2枚が追加され、よりアニメ設定どおりのイデオ・デルタ、イデオ・ノバ、イデオ・バスタへと、3機分離変形できるようになるのであるが、今回は入手の都合でこのキットの紹介で我慢していただきたい。

1/420 イデオンの頭部パーツ。「光るイデオン」流用前提からか、ゴーグルがクリアパーツで出来ている

1/420 イデオンの腹部のイデ・ゲージもクリアパーツ

3機のメカへの分離変形という意味では、先行していた児童向けのイデプラ「合体巨神イデオン」が先に挑戦していたが、それらは成功しているとは言い難いものの、その段階で、今回はさらに高いハードルへの挑戦が観られるようになった。

1/420 イデオンは、まずはこうして、両腕、上半身、下半身に分離出来る

「合体巨神イデオン」が、3種の車両形態からイデオンへの変形合体を再現したとすれば、(後述するが)この1/410 イデオン(からの「光るイデオン」)は、3種の飛行形態からのイデオンへの変形合体を目指して作られたキットであるといえた。

特に両腕などは「光るイデオン」の追加パーツ抜きでも、拳さえ外すことが出来れば、シルエットもディテールもかなり正確なアニメ版イデオ・デルタに変形することができる。

アニメスケール版の1/420 イデオンでも、両腕だけでここまでイデオ・デルタに近づく

また余談だが、そうした飛行メカ3機分離ギミックは、「光るイデオン」の方で補完されたからか、追加パーツのないこのアニメスケール版キットでは、組み立て説明書では一切言及されていない。

拳さえ外せれば、ほぼイデオ・デルタの完成形

しかし、今書いたように、イデオンの両腕からイデオ・デルタへの変形は、このキットでもほぼ完璧に再現できているのだが、それはイデオンの両肩に、ヒンジで追加された、白の延長パーツ(パーツナンバー61から64)が、普段は肩の後方に折れ曲がって隠れている物が、ヒンジで前に置き上がってきてイデオ・デルタの機首を構成するからなのであるが、先に書いたようにこのキット単独では、イデオ・デルタへの変形は組み立て説明書では言及されていない。

1/420 イデオン組立説明書より。肩パーツの組立

そうなると、『イデオン』のアニメや合体変形設定を見た事がない人が、説明書のまま組み立てると、この61から64のパーツを、上へ向けて突き出させたまま肩を組み立ててしまうことになる。

1/420 イデオン組立説明書より。この図の指示だと、知識のない人は、肩パーツのイデオ・デルタ機首を伸ばしたまま胴体に接続するのが正解だと思ってしまう

筆者は、このキットを組むのは、実は今回が初めてなのだが、実際のキットを手にする以前、まだそれが「光るイデオン」での3機変形合体構造のテスト版だと知らなかったころに、ネットでこのキットの画像検索をしてみると、素組の人から、丁寧なディテール追加や塗装、プロポーション改修までしているような凄腕モデラーまでもが、皆この、イデオ・デルタ機首用の白いパーツをそのまま肩の延長部として扱ってる作例や紹介が殆どであった。

肩の白いブロックは、イデオン時にはこうして後ろへ倒しておくのが正解

もともと「1/420 イデオンは、イデプラの中でもプロポーションは良い方」と聞いていたのに、ずいぶんとまぁ肩の上方突き出しだけは無意味に長いなぁと思っていたのだが、筆者がこのキットの隠れコンセプトを知らない代わりに、ネットでこのキットの作例をアップしている多くの人が「そもそもイデオンを知らない」のだと、今回実物を手にしてようやく理解できた。
これも一つの、「駿河屋の乱」の功罪と言えるだろう。

1/420 イデオンの可動範囲。腕も脚もこの程度まではアクションが出来る

閑話休題。
このキットには「アニメスケール」というシリーズ名が冠されていて、同じ大型「アニメスケール」では、『無敵超人ザンボット3』等もラインナップされているが、その後アオシマがイデオン関係のプラモデルで展開した同名のプラモデルシリーズは、300円の箱スケール統一シリーズ、ガンプラでいうところの1/144だけでともいえた。

1/420 イデオンの腕は、肩関節も肘関節も自重に負けてしまうので、ポーズを付けて飾るときはかなり大胆な位置づけが必要

キットのボックスアートは、初期は描きおろしのセル画バージョンであったり、パッケージのいたるところに「アニメ」「ANIME」と書かれてあったり、しかもその「アニメスケール」のロゴが、露骨に当時急激に発行部数を伸ばしていた徳間書店のアニメ雑誌『アニメージュ』のロゴとそっくりであったりと、いろいろと「当時」がその商品外観からも伺える。

1/420 イデオンの脚部ライン。意外と湖川ラインが再現されている

キットの出来の方は、その後のイデプラでは捨て去られるような良質のアイディアの部分もあり、一方ではまだまだ玩具テイストの処理から抜け切れていない部分もある。
なかなか一言で言及するには難しい。しかし決して失敗作ではなく、筆者がこのキットを「アオシマ版大型イデオンキットVer.1.0」と呼ぶにはそれなりの理由がある。

まずは、全身のディテール、パネルラインモドキなどは、「合体ロボット」シリーズや「ポケットパワー」シリーズとは一線を画して、あきらかにガンプラに影響を受けた、ティーンズ志向のテクスチュアで構成されている。

変形の名残か、脚はこの時期のロボットプラモでは珍しく、八の字に開いて立つことが出来る

しかし、上記でも書いたように、このキットもまた「3機合体ギミック」を目指した痕跡があるので、そこが玩具っぽくも感じてしまう人も少なからずいるだろう。

また、玩具的要素としては(3機合体のイデオ・ノバ形態にも影響してくるのだが)全身のあちこちのカバーが開いて、中からほぼアニメ演出描写とは関係のないレーザーやビーム砲が出現してくるのだが、このキットのギミックのほとんどが、合体の名残とこの隠し武装ギミックとに費やされ、ポージングがほぼおろそかにされているのも、合体ロボット版からアニメスケール、1/600版への過渡期と呼べるキットの理由かもしれない。

全身のハッチフルオープン状態。全身内蔵武装の塊のイデオンをうまく表現している

ここでふっと気づかされるのは、前回紹介した「合体ロボットイデオン」シリーズは、簡易的ながらも、ソル・アンバー、ソル・バニア、ソル・コンバーの、3種の車両形態への分離変形合体をギミックとして備えていた。
それに対して、今回のこの1/420 イデオンは、イデオ・デルタ、イデオ・ノバ、イデオ・バスタの、3種の飛行戦闘メカ形態への分離変形合体を、簡易的ながらも再現している。

これらの全身武装は、玩具的アレンジのアオシマオリジナル設定のように見えるが……

イデオンの合体・変形は、当時としても複雑を極めたシステムだったが、これらの技術的蓄積と布石が、後の1/600 イデオンを生み出したのかもしれない。

太ももから展開してくるビーム砲

ちなみに、太ももから出てくる謎のビーム砲は、トミーのサウンドフラッシャーイデオンのパッケージイラストに描かれていた「イデオンビーム砲」という武装らしく、サウンドフラッシャーイデオンには、同じように両脇ブロックが展開してミサイル銃が現れるギミックも共通して描かれており、これが玩具設定独自の存在なのか、アニメ版イデオンの内部メカ初期設定で、作品に使われなかった設定なのかは、今一歩定かではない。

当時のトミーの「サウンドフラッシャーイデオン」パッケージイラスト。肩脇ブロック内や太腿内部の武装が既に描かれている

一方で、この商品を「イデオンの3機メカ合体を再現しようとしたキット」として見た時は、後の1/600版や、近年のバンダイスーパーミニプラ版にはない、黎明期ゆえの愚直なまでの懸命さが、あちこちにその残り香を匂わせている。

腹部両脇から出てくる武装は、アニメ版のグレンキャノンか?

まず、イデオ・デルタへの変形は、上でも言及したが、「手首が取り外せない」という致命的な部分以外は、なんと差し替えなしの完全変形である(ロケットノズルがない、などの半端さはあるが)。」

各2枚の垂直尾翼も水平尾翼も、それぞれ別パーツを後付けするのではなく、ちゃんと腕内部に収納されているし、イデオン時の見栄えを損なってはいるが、イデオ・デルタの機首は上記したように、最初から折りたたまれて肩後部に隠されているので、これも差し替えパーツ扱いではない。

イデオ・ノバというよりは……。全ハッチオープンの上半身としか見えない辺りが苦しい

イデオ・ノバに関しては、本来のデザイン以上にあちこちハッチが開く上、アニメ演出では存在しなかったミサイル銃などという代物もあり、イデオ・ノバ変形の最大のギミックである両脇ブロックの後方展開もないが、その代わり腹部両脇のグレンキャノン展開や、腹部内部にしっかりと、イデオ・ノバの特徴的な形状のアンテナが収納されているなど、「合体ロボット」版よりも、踏み込んだアニメデザインへの挑戦は伺える。

それでも腹部ハッチをオープンすると、あのイデオ・ノバの特徴的なアンテナが、しっかり内蔵されていたりするので、やはり意外とアニメ初期設定準拠なのかもしれない

その分、イデオンの頭部の脱着が出来ないので、「いろいろハッチがパカパカ開いた、イデオン上半身」にしか見えないという弱点はあるが、そこもおそらく「光るイデオン」の追加パーツがフォローしているのだろう。

イデオ・バスタ“のようなもの”にしか見えない……

イデオ・バスタへも「変形っぽい」以上の変形は、「光るイデオン」の追加パーツを使わなければ出来ないらしい。
1/420 イデオン版だけだと、なにより機首がないので、どこをどう見ても「ただの下半身」にしか見えない。

それでも、足首の変形など、果敢に「イデオ・バスタに見える方向へ」は頑張っている

しかし、一応両脚は、縮みこそしないものの、外側への回転開脚が可能になっており、これを利用して立ち方に一手間加えるだけで、ぐっとイデオン状態での仁王立ちポーズが様になってくれるという付加価値があったりはする。

後方から見た、変形後のイデオ・バスタ風メカ

というより、このキットでのイデオ・バスタ変形でのエポックは、小さく貧相ながらも、腿内側のイデオ・バスタ主翼が、ちゃんとめくれて左右に展開するギミックだろう。

イデオ・バスタの主翼展開を再現したイデオンプラモデルは、2018年現在、他に存在しない

これはイデオ・バスタ変形のクライマックスだが、腿の内側と、主翼としての面積に整合性がとれないからか、『イデオン』放映当時でも、ちゃんと再現したのはトミーのメイン商品『奇跡合体 イデオン』ぐらいで、アオシマのイデプラでこの変形を再現したのはこの1/420 イデオンのみ。
その後現代に至るまででも、この主翼展開をしたイデオンアイテムは、それこそバンダイの超合金魂版ぐらいのものではないだろうか。

一方、合体完成したイデオンの形態に、今一度話を移せば。
今の目で見るとこのプロポーションは確かに評価し辛く、当時のガンプラ1/100群と比較してみても、秀でているとは言い難い。

1/420 イデオンの太腿部のUP。意外とディテールは細かい

それでも、このキットをして「当時のイデプラの中ではプロポーションは良い方」というのは、合体ギミックに引っ張られ過ぎなかったからという偏見が強いのではあるまいか。

これは、アオシマのイデプラ全体に言えることだが、どうも全てのイデオンがトップヘビーに仕上がっていて、上半身のボリュームが過多で、下半身が華奢に仕上がっているキットがほとんどなのである。

今回は使用しなかったが、このキットにはデカールが豊富についている。これを使えば黄色とグレー以外は殆ど色分けが再現できるのではないだろうか

たとえるなら、前回の合体ロボット版のイデオンの上半身に、1/420 イデオンの下半身をジョイントさせるとプロポーションが格段によくなると言われていて、同じことは、アニメスケール版の1/810 イデオンの上半身に、1/600 プロポーションタイプイデオンの下半身をジョイントさせるとちょうど良いなどというお約束が、イデプラマニアの間ではまことしやかに流されている。

しかし、「光るイデオン」への布石とはいえ、ゴーグルやイデゲージにクリアパーツを使った意欲的な構成。今回は経年劣化が怖くて使わなかったが、塗装をサポートするデカールの充実。なによりも(全身兵器内臓が、アニメ版未使用デザインだとすれば)余計な玩具要素を排した、アニメ版イデオンのティーンズ向け大型キットへの初の挑戦という意味で、筆者はこれをして、「アオシマ版大型イデオンキットVer.1.0」と呼んでおきたい傑作プラモデルである。

アオシマ イデオン アニメスケール 1/810 1981年2月 300円

1/810 イデオンのパッケージ。アニメブームを意識したプロダクツデザインがガンプラとはまた違った味わいを出していた

パーツランナー構成。実際のキットは、ガンプラブームの影響を受けて白一色成型

「『伝説巨神イデオン』のプラモデル」と聞いて、『イデオン』という作品に特別な思い入れがなかったり、作品を観たことが無かった人でも、ガンダムとガンプラに入れ込んでいた人であれば、当時の模型屋の店頭でまず確実に手に取ったであろう、またロボットプラモデルマニアであればまず買ったであろうイデプラが、ここで紹介するアニメスケール1/810 イデオンである。

1/810 イデオンの素組完成品。赤白2色の理由は本文で

まずはなにゆえスケールが1/810なのか。
ガンダムの1/144と同じで、まずは箱の大きさとコストと価格(300円定価)からサイズが決められ、スケールはそこから逆算されたとはいえ、そもそも実物のない二次元の設定の話なのだから、このサイズで1/80のスケール差など、誤差の範囲なのだから、きりよく1/800にしてしまえばよかったのにと誰もが思うのだが、それもこれもアオシマの(よく言えば)筋の通った頑固さなのだ(ガンダムの場合、商品が出来てからスケールをつける時に、厳密には1/144ではなかったものの、国際標準スケールに近くて聞こえが良いので、1/144を名乗ったという話は有名である)。

見えにくいが、1/810 イデオンの頭部。アオシマのイデオンシリーズの頭部は、個々で違いはあるがどれも酷い出来の物はない

パッケージは、1/420初期と同じセル画版。
これはアニメスケール初期の、サンライズ4大ロボット、イデオン、ダイターン3、ザンボット3、トライダーG7までは共通した仕様。その後のイデプラ重機動メカシリーズは絵画調のボックスアートになる。

アオシマのロボットプラモはどれもトップヘビーだが、こうして煽りで撮影すると、その独特なプロポーションが逆に長所に見える

そういった様々を踏まえて、ガンプラが一人勝ちして社会現象を起こす流れに、いち早く追従したアオシマのイデプラが、『ガンダム』主役メイン商品の1/144 ガンダムに酷似したフォーマットで送り出してきただけに、この1/810 イデオンの認知度は高い。

1/144 ガンダムと、価格も大きさも模型としてのクオリティもほぼ一緒。
1/810 イデオンは、同じアニメスケールの1/420 イデオン以上に、全ての余計なギミックを排し、アクションフィギュア的な関節の可動に、その模型的ギミックのほぼ全てを注ぎ込んだ。

アオシマの一連のイデオンでは、ポージングの幅とポーズ固定の安定度は抜群に高い。イデプラを代表する商品だけのことはある

それまでのイデプラでは当たり前に無視していることが多かった、股関節の脚の前後可動なども実現。肘関節の曲がり可動も、これまでのイデプラでは全て、ソル・アンバーの変形のギミックをそのまま流用していたために、可動軸が腕前面に偏り過ぎていたが、今回のキットではその可動位置も微調整。

1/810 イデオンの肘可動をサイドからチェックしてみる。伸ばしている状態では、腕のラインも自然に繋がっている

足首が爪先だけが独立可動する辺りは、イデオ・バスタの変形の名残は見えるが、股関節が開脚できない、上腕にロールがないので腕が内側や外側に曲げられない、といった弱点は、これは先行したガンプラの1/144 ガンダムと全く同じだったので引き分けだろう(もっとも、このイデオンが発売された辺りのガンプラでは、既にそれらは1/144でもクリアされていたが)。

肘の曲がりはほぼ90度。しかも間接部分も不自然ではないようにパーツ同士が組み合わさっている

むしろ、この1/810 イデオンでもっとも評価されるのは、イデオンのデザインを与えられた時に、玩具的、模型設計的に、前時代であれば絶対に設計に組み入れられないだろう「脇の開きギミック」が取り入れられていたこと。
イデオンのように、肩が上方へ突き出ているデザインの場合、ガンダムやダイターン3などと違って、脇に腕が開くギミックを実体があるプラモデルに仕込むのは、単純に面倒だし、オミットされるのがまだこの時代では普通であった。

脇がアニメ作画的に開く革新的なキットだけに、こうしてアングルを俯瞰にすると、トップヘビープロポーションも手伝ってぐっとリアルになる

ところが、当時のアオシマは、イデプラ中でも低価格帯に属するこのアニメスケール1/810 イデオンで、それをやってしまった。
それだけではない。イデオンのデザインで「脇を開く」だけなら、その後の1/600や1/600 プロポーションタイプがやってみせたように、上方に突き出た肩ごと脇を開かせてしまう方が、簡単に設計が成り立つのだが、なんとこのアニメスケールイデオンは、300円サイズながら、両肩が真っすぐ上方に突き出たまま、両腕が左右に脇が開いて、アニメ劇中のイデオンさながらにファイティングポーズがとれる設計で成り立っているのだ!

しかも、まだそれだけではない。
そこで脇が開く際、ボディと腕との接続回転軸を肩上方突き出しパーツに設置して、上腕と前腕の、腕メインパーツは、その肩の外側下部に設置されることで、肩の回転と、肩の開きがオフセットされて自然なシルエットを形成しているのである。

アクションポーズの多彩さは、初期ガンプラに引けを取らない

この腕可動概念は、平成になってアクションフィギュアやスーパーロボットフィギュアが新たな商品を生み出してイデオンに辿り着くまでは、この1/810 イデオンが、マスプロ商品としてはオンリーワンであった。

なおかつ、このイデオン。ガンプラでいえば1/144サイズであるにも関わらず、ガンプラでは1/100でもなかなか再現されないキットも多かった「足の裏」を、このサイズで丁寧にディテール再現しているのだ。これはもっと評価されていいと思われる。

300円サイズで「足の裏ディテール」は、ガンプラでもほぼなかった時代

あと、今回写真で紹介している「紅白の1/810 イデオン」について。
実際に1981年に発売された1/810 イデオンは、1/144 ガンダムに倣ってか、白一色の成型色であったが、これまでの『ガンプラり歩き旅』で紹介してきた、MSハンガーやビームジャベリンと同じように、KADOKAWAの『電撃ホビーマガジン』が「伝説巨神イデオンTV放映30周年記念スペシャルキット」と題して、当時のアオシマの1/810 イデオンの成型色だけ、深紅に変えたバージョンを、2010年8月号の付録につけて販売した。

『電撃ホビーマガジン』「伝説巨神イデオンTV放映30周年記念スペシャルキット」パッケージ

そのランナーパーツ状態。これだけのキットがランナー2枚で納められている

なので、当時品と2010年付録品の両方を持っていた筆者は、今回のイデオン番外編の冒頭で、『ガンダムVSイデオン』のビジュアルを飾るにあたって、双方真っ白のキット同士では味気ないだろうと、あえて2種の1/810 イデオンをミックスさせて、紅白2色の1/810 イデオンに仕上げてみた。

肘と膝の可動角度は、1/144 ガンダムを凌駕する

ちなみに、このサイズで、このレベルの2色成型というと、ガンプラでは『機動戦士Zガンダム』(1985年)の1/144キットがちょうどこのような色分けの案配であったことを思い出す。

背中のバックパックの形状やディテールもアニメ設定に忠実に造形されている

プロポーション的に、やはりトップヘビー感があるとはいえ、両脇の開き方が唯一リアルな当時キットであり、一番普及したイデプラだけに、キットは単体で何もオプションが付いていないので、せめて別売りで同スケールのイデオン・ガンを発売するなり、できれば同スケールで絡めるガンガ・ルブやジグ・マックが欲しかったというのが、当時イデプラにも熱中したファンの、正直な思いであったりもする。

(取材協力 青島文化教材社)

市川大河公式サイト

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