ミドルエッジ世代にとって忘れられない数字と言えば?
そう、それは悪魔の数字「666」!それまで日本には無かったこの概念を、幼少期の我々の脳裏に刻み込んだ永遠のトラウマ映画。それが今回紹介するホラー映画の名作『オーメン』だ!

『オーメン』日本版ポスター
公開当時はまだホラー映画という名称も無く、オカルト映画や恐怖映画というジャンルに分類されていたことも懐かしい本作だが、実は公開時の宣伝の一環として、コミカライズ版が掲載されていたのを覚えておいでだろうか?
宣伝文句にもあった様に「串刺し」「ガラスによるギロチン断頭シーン」など、衝撃の残酷シーンが次々登場する本作が、まさか少年マンガ誌に掲載されていたとは!
少年誌ながら、それらの残酷シーンもしっかり再現されているこのコミカライズ版を、今回は紹介してみたいと思う。
オカルト映画「オーメン』とは?

当時発売された映画雑誌『スクリーン』特集号

ニュー恐怖映画の名称が珍しい!

特集号の中身。やはりダミアンが不気味すぎる!
1974年の夏に公開された『エクソシスト』の大ヒットにより、一気に日本に吹き荒れたオカルト映画ブーム。同じ年に吹き荒れたブルース・リー&空手映画ブームと並んで、ミドルエッジ世代にとってもリアルタイムの体験となった社会現象だけに、今でもその衝撃は我々の記憶に強く残っている。
翌年公開された『悪魔のいけにえ』を経て、1976年に公開されたこの『オーメン』だが、殺人鬼や異常者などの人間による恐怖では無く、『エクソシスト』と同じ悪魔による超常現象対人間の戦いを描いた内容は、ダミアンやオーメン、666など数々の流行語を生むほど日本でもヒットを記録した。ミドルエッジ世代の中には、この作品のお陰で『オーメン』の意味が「予兆」だと初めて知った方もきっと多いのでは?
シリーズとして4作目まで製作され、その後リメイク版やTVシリーズまで製作されたこの『オーメン』シリーズについて、もっと詳しく知りたいと思った方は、以下のリンクからどうぞ。
オーメン - Wikipedia
『オーメン』コミカライズ版概略

掲載誌表紙
この『オーメン』のコミカライズ版が掲載されたのは、『月刊少年チャンピオン』の1976年11月号。作者は同誌で数多くのコミカライズ作品を発表された、たなべせつを先生(この時は、作者名はひらがな表記だった)。さすがコミカライズ作品のツボを知り尽くした田辺先生だけに、映画のストーリーを忠実に再現しながらも、映画では憎らしかったダミアンのキャラを、可愛さ10倍増しで描いたアレンジは大正解!
しかも、既に『エクソシスト』や『ヘルハウス』のコミカライズ版を掲載していた『月刊少年チャンピオン』だけに、少年誌とはいえ残酷描写をマイルドにしようという考えが全く無いのもすばらしい!
『オーメン』コミカライズ版内容紹介

本作の扉絵

あなたの息子は悪魔の子です!

しかも、母親は山犬です!

見せ場その1。神父の串刺しシーン!

見せ場その2.ガラスによるギロチン断頭!
ここで紹介した以外にも、映画『オーメン』の見せ場である数々の残酷シーンが、本作では見事に再現されている。
田辺先生の画力のお陰で、映画よりも断然迫力があるのが凄い!

いよいよその本性を現したダミアン!

ダミアンの頭にあった666の悪魔の数字!

悪魔の本性を現したダミアンの恐ろしい顔!

一転して父の情に訴える悪魔の卑劣な罠!

有名なラストシーンも忠実に再現
このコミカライズ版のすばらしさ、それはこの有名なラストシーンの印象を、映画とは真逆にアレンジした点だろう。
映画では単に不気味なだけのダミアンの表情で終わるのだが、このコミカライズ版では逆に子供の可愛らしさを前面に出すことで、よりダミアンの外見と内面の恐ろしさのギャップを表現していて、映画よりも更に余韻が深まるのが素晴らしい!
確かに、これ程ダミアンが愛らしければ、父親として殺せなくなるのも読んでいて納得出来るというものだ。
最後に
いかがでしたか?
基本的に映画の内容に忠実だが、田辺先生の画力とダミアンの可愛さが増したことで、映画以上に迫力満点の内容となっているこのコミカライズ版『オーメン』。
特に有名なラストシーンでのダミアンの表情は、絶対にこのコミカライズ版の方が上と思えるほど!
そう、こうした漫画家先生による独自のアレンジで本編を越える瞬間こそ、映画コミカライズ版の最大の魅力と言えるだろう。。
実は前述した『エクソシスト』を始め、この頃の恐怖映画がコミカライズされる確率は高く、年齢の関係で当時映画を見に行けなかった我々にとって、それらの作品は貴重な情報源として今でも記憶に残っている。
子供時代の我々ミドルエッジ世代にも、こうして映画の世界を体験させてくれたコミカライズ版の素晴らしさに感謝しつつ、是非映画本編をもう一度見返し頂ければと思う。