セリカのシャシーを使った4ドアセダン
トヨタ・カリーナは1970年から2001年まで発売されていたトヨタの小型セダン。直列4気筒・後輪駆動のごく普通の成り立ちですが、シャシーは同クラスのコロナではなく、スペシャルティカーのセリカと共用したため、スポーティさを売りにしていました。
1971年に追加されたGTは、セリカGTと同じ2T-G型エンジンを搭載。直列4気筒1600ccのDOHCエンジンは、三國工業製のソレックスキャブレターを2連装し、最高出力は115PSと高性能でした。

初代カリーナの4ドアセダン
Toyota Carina 1400 Super Deluxe 4-door Sedan (TA10) 1973–75 wallpapers
CMには俳優の千葉真一が起用され、「足のいいやつ」のキャッチコピーを初めて使用。ファミリーカーのコロナよりもスポーティで、日産ブルーバードの中でもスポーツグレードのSSSをライバルとする位置付けられていました。
1974年のマイナーチェンジでは、2ドアハードトップに直列4気筒2000ccの18R-G型エンジンを搭載した2000GTが追加され、スポーティイメージを強固なものにしました。
デザインは一般的な4ドアセダンですが、Cピラーからトランクにかけての流麗なラインと、縦長のテールランプが特徴です。ボディ形状は4ドアセダンと2ドアセダンをラインナップ。1972年に追加された2ドアハードトップは、ボンネット以外はセダンモデルとまったく異なるデザインとなりました。また、1975年にはライトバンが追加されました。

初代カリーナの2ドアセダン

普通のセダンボディに、1600ccのDOHCエンジンとセリカの足回りを備えた1600GT
Pictures of Toyota Carina 1600 GT 4-door Sedan (TA12) 1973–75

ボンネット以外は、セダンとはまったく異なるデザインとなった2ドアハードトップ。
トヨタ・カリーナ - Wikipedia
スポーツセダンとしてのイメージを確立
初代は7年に渡って製造され、1977年にセリカとともに2代目にモデルチェンジ。初代よりも角張ったデザインになり、小型スポーツセダンとして精悍なデザインになりました。ボディ形状は4ドアセダンと2ドアハードトップ、さらにライトバンが設定されました。
当初は丸型4灯のヘッドライトでしたが、1979年のマイナーチェンジで、当時流行していた斜めに傾斜したスラントノーズを採用。ヘッドライトも角形4灯に変更されました。

角張ったセダンボディを採用した2代目
Images of Toyota Carina 4-door 1977–79
初代の後半から引き続いて排ガス対策に悩まされた時代でしたが、スポーツグレードとして直列4気筒1600ccの2T-GEU型エンジンを搭載する1600GTと、直列4気筒2000ccの18R-GU型エンジンを搭載する2000GTを設定。標準的なエンジンを搭載するスポーティグレードとしてSTが設定されました。
初代から続いて「足のいいやつ」のキャッチコピーが使われ、カリーナのスポーティなファミリーカーというイメージは定着していきました。

角形4灯のテールライトが、カリーナ流のスポーティデザイン
Toyota Carina 4-door 1977–79 pictures

マイナーチェンジで、前面が傾斜したスラントノーズを採用。ヘッドライトが角形4灯になり、スポーティ感が増した。
Toyota Carina ST White Selection (A40) 1979–81 photos
長寿になった最後のFRモデル
1981年にフルモデルチェンジをした3代目は、やや複雑な歴史をもちます。フルモデルチェンジでは4ドアセダン、2ドアクーペ、ライトバンを設定。遅れてステーションワゴンが「サーフ」の名で追加されました。
スポーツグレードとしては、直列4気筒1600ccの4A-GE型エンジンを搭載する1600GTと、直列4気筒2000ccの18R-GEU型エンジンを搭載する2000GTが設定されました。
さらに1982年、直列4気筒1800ccの3T-GTEU型エンジンを搭載するGT-TとGT-TRが追加されます。このエンジンは日本初のDOHCターボエンジンで、同じエンジンを搭載するモデルがセリカ、コロナでも同時発売されました。

3代目は、2代目の後期型を踏襲したデザイン
Toyota Carina SE-Extra Edition 4-door Sedan (A60) 1981–83 images
しかし、モデル途中にFF車が追加され、併売されることになりました。その結果、非常に長いモデル寿命を保つことになったのも、3代目の特徴といえるでしょう。
ちなみに、筆者も3代目カリーナの記憶はありますが、どちらかというとお買い得モデル「マイロード」の方が、街で見かけたものです。カリーナにとって、スポーティなイメージは営業ツールでもあったのです。

日本初のDOHCターボとなった1800GT-T
Pictures of Toyota Carina GT-T 4-door Sedan (TA63) 1982–83

長寿モデルとなった3代目のライトバン
Toyota Carina Van JP-spec (A60) 1982–84 images
FF方式を採用。途中からGTを追加
1980年代前半は、日本の自動車メーカー各社で前輪駆動にシフトし始めた時代で、トヨタでもFF方式を本格的に採用し始めました。しかし、何事にも慎重なトヨタでは、カリーナとコロナはFFとFRを併売する戦略が採られました。
そのため、4代目は3代目が発売中の1984年5月にデビュー。シャシーはFFコロナと共通とされましたが、丸味のあるデザインのコロナに対し、カリーナでは角張ったデザインを採用して、スポーティな印象に仕上げられました。
ボディ形状は4ドアセダンのみ。当初は1800cc、1600cc、1500cc、2000ccディーゼルのみのラインナップでしたが、1985年8月に直列4気筒1600ccの4A-GELU型エンジンを搭載する1600GTと1600GT-R、直列4気筒2000ccの3S-GELU型エンジンを搭載する2000GT-Rを追加。一方で、FRモデルではセダンのスポーツグレードは廃止され、クーペも生産終了。セダンの一般グレードとサーフ、バンのみ製造が継続されました。
ちなみに、筆者が4代目モデルを初めて見たときは、カリーナがずいぶんと小さくなったと感じたものでしたが、実際は全長が3代目よりも25mmほど長く、ホイールベースも15mm長くなっています。コンパクトで凝縮感があるデザインは、今見てもカッコイイと思いますし、FFの先達であるフォルクスワーゲン・ゴルフあたりのドイツ車の影響も受けたのではないでしょうか。

カリーナ初のFF方式となった4代目
Pictures of Toyota Carina SE (AT150) 1984–86

4代目カリーナのスポーツモデル、2000GT-R
トヨタ・カリーナ - Wikipedia
「足のいいやつ」は1988年に消えたが……
1988年5月に5代目にフルモデルチェンジ。ここで3・4代目ともに、すべて生産終了となりました。一転して丸味のあるデザインとなった5代目では、4ドアセダンとサーフ(ワゴン)、バンをすべてFF方式でラインナップしました。
エンジンは1800cc、1600cc、1500cc、2000ccディーゼルで、直列4気筒1600ccの4A-GE型を搭載する1600GTもラインナップされましたが、「足のいいやつ」のキャッチコピーは使われなくなりました。

一転して丸味のあるデザインになった5代目
Images of Toyota Carina SG Super Road (T170) 1989–90
その後も6代目、7代目とモデルチェンジをし、特に7代目では、6代目で消滅した「GT」が復活したものの、「足のいいやつ」のキャッチコピーは使われませんでした。
しかし、これまでに「カリーナ=足のいいやつ」のイメージは定着。公には1988年には使われなくなったキャッチコピーですが、販売店提供のラジオCMやチラシなどでは使用されていたため、印象に残っている人は多いのではないでしょうか?

6代目では環境性能を重視してリーンバーンエンジンを設定。一方でGTが消滅した。
Toyota Carina (T190) 1992–96 pictures

7代目で4年ぶりの復活となったカリーナGT
Pictures of Toyota Carina (T210) 1996–98
スポーティな印象を根付かせたカリーナですが、実際の販売台数からすると、スポーツグレードの数は大したことはありません。しかし、開発サイドとしては、カリーナがあることでセリカのプラットフォームのコストを償却できたでしょうし、営業サイドとしては、スポーティなイメージでコロナと差別化し、一般グレードであっても勧めやすかったでしょう。カリーナに「足のいいやつ」というイメージを定着できたことは、開発サイド、営業サイドにとって好都合だったことは間違いありません。
カリーナは、後継のアリオンにバトンタッチして消滅してしまいました。しかし、今でも30代後半以上の人であれば、「足のいいやつ」のキャッチコピーは記憶に残っているはずです。業界にいる身としては、そういうコピーを考えた人も素晴らしいし、定着させたカリーナも、また偉大だったと改めて思います。