刑事コロンボとは?
1968年NBCの単発ドラマとして制作された「殺人処方箋」で、ピーター・フォークがコロンボ刑事として初めて登場しました。

元々は舞台で評判だったものをテレビドラマに仕立てたものですが、非常に好評だったため、1971年からNBCミステリームービーの中の1枠としてシリーズ化されました。NBCミステリーの他の番組には「署長マクミラン」「警部マクロード」などがあります。日本ではNHKで土曜夜のゴールデンタイムに放送され、大人気番組となりました。
NBCミステリームービーは1977年に終了しましたが、コロンボは1978年まで、7シーズンに渡って45回放送されました。
その後10年のブランクを開けた1989年、今度はNBCからABCに放送局を移し、「新刑事コロンボ」として制作されます。

人気ドラマが、配役や設定を変えてリメイクされる、という事はたまにありますが、主役も設定もそのままに、テレビ局を移動して放送されるというのは、かなりレアなケースですね。
製作のペースは次第に落ちていきますが、2003年まで24回放送されています。
1968年のパイロット版から数えると、合計69回、足掛け35年に渡って続いた、超ロングランの作品です。
コロンボ作品の特徴
コロンボ作品の特徴と言えば、物語の冒頭に犯人がわかる倒叙モノという点。
推理モノなのに、犯人がわかったところから始まるというのは、とても斬新でした。推理モノは犯罪のトリックに重きをおく場合が多いですが、最初に犯人を見せる事によって、次第に追い詰められていく犯人の心理状態が、物語の肝になっています。
ドラマや映画の場合、犯人が最初に判る利点は、大物の俳優さんをキャスティングしやすいという事。
犯人が判らない場合、登場人物の中に大物の役者さんがいれば、何となくあの人が犯人なんだろうなぁ、と視聴者に察しが付いてしまいがちです。
しかし最初から犯人の役者さんが判っていれば、そのような視聴者の「しらけ」もなく、むしろ役者さんの演技を楽しめます。またドラマの宣伝もしやすいでしょうし、今度は誰が犯人なんどろう、というような楽しみ方も生まれるものです。

実際にコロンボの犯人役には、アカデミー賞やエミー賞、ゴールデングローブ賞などを受賞した、名優さん達がたくさん出演していて、これがまたコロンボの見どころにもなっています。
キャスト
コロンボ:ピーター・フォーク
ロス・アンジェルス市警の刑事。警察の階級は日本とは異なるため、実は警視、もしくは警部補かもしれない説もありますが、吹き替えでは一応「警部」という事になっています。
ヨレヨレのレインコートにもじゃもじゃの髪がトレードマーク。安物の葉巻とオンボロの車を愛用。

ピーター・フォーク
'Columbo' star Peter Falk dies at 83 - TODAY.com
「ウチのカミさんがね」と言うのが口癖。因みに後に放送された「ミセス・コロンボ」は、コロンボの奥さんを連想させはしますが、原作者の反対を押し切って制作された全くの別物。
ピーター・フォークは1927年生まれ。41歳から70歳を超えるまで、コロンボを演じ続けた事になりますね。
コロンボのキャラクターを特異なものにするため、フォーク自身の発案で、雨の少ないカリフォルニアなのに、ヨレヨレのレインコートを愛用するようにしたそうです。しかもフォークの私物だとか。
1989年からの新シリーズでは、フォークもプロデューサーとして製作に加わっています。
フォークはコロンボの演技により、エミー賞とゴールデングローブ賞を受賞しています。
日本語版声優
小池朝雄
日本でコロンボが一躍ヒーローに躍り上がった、功労者と言えば吹き替えの小池朝雄さんの存在は欠かせないでしょう。
気だるくて、チョッと喰えないようなよう口ぶり、ウチのカミさんが~のお馴染みのセリフ回し。コロンボのキャラクターを鮮明にした名吹き替えです。
ピーター・フォーク出演のCMにも、小池氏の声もセットで出演してました。
石田太郎
新刑事コロンボが始まる際には、小池氏は既に他界していたので、同じ劇団の後輩だった石田太郎さんが、後を継ぐ事になりました。
声質も言い回しも、先代の小池氏とよく似た雰囲気で、コロンボの世界の続きを、味わい深く楽しませてくれました。
コロンボの愛車
プジョー403カブリオレ

1959年製
全長×全幅×全高 4,470×1,670×1,485mm
最高出力 53.4ps/4,900rpm
最大トルク 10.7kgm
エンジン 水冷4気筒OHV
総排気量 1,468cc
車両重量 1,090kg
プジョー403がコロンボの愛車に選ばれた理由は特になく、何となく偶然に傍にあったからだそう。1989年に新シリーズが始まる際には、別の車体をコレクターの方から借りたそうです。

愛犬の「ドッグ」と
A Lieutenant’s best friend: Columbo and Dog | The columbophile
偶然の産物にしては、あまりにもコロンボのキャラクターにマッチしていますよね。時々調子が悪くなるのも愛嬌があって、特に同伴する刑事を伴わないコロンボにとっては、愛犬の「ドッグ」と共に、ピッタリの相棒と言えるかもしれません。
刑事コロンボが与えた影響
倒叙モノ
コロンボ登場以前の推理モノと言えば、事件が発覚した後、犯人は誰かを探っていくのが醍醐味というか王道でした。
もちろん現在でもそれは変わっていませんが、最初に犯人が視聴者や読者に知らされて、刑事がいかにして犯人に辿り着くか、そして追い詰められる犯人の心情を楽しむ、という「倒叙モノ」というスタイルは、コロンボが拡めた刑事ドラマのスタイルと言っていいでしょう。
コロンボ以降の倒叙モノの有名な作品としては、田村正和さんの「古畑任三郎」や、福山雅治さんの「ガリレオ」、永作博美さんや壇れいさんの「福家警部補」シリーズなどがあります。

特に田村さんの「古畑」は、コロンボのオマージュとも言える作品で、本家に負けず劣らず、長期間に渡って愛され続けるシリーズとなりましたね。
あと、もう一つだけ
コロンボが容疑者の元を去ろうとして、振り向きざまに言う「最後にあと、もう一つだけ=just onemore thing」と言うセリフがあります。
もう捜査は終わったかと思わせておいてからの重要な質問だったりするので、容疑者のイライラと不安を増大させ、容疑者は追い詰められるわけです。
この「あと、もう一つだけ」というスタイルも、コロンボが後世に残した刑事ドラマのテンプレートと言えるでしょう。
有名どころでは「相棒」の杉下右京(水谷豊さん)もよくやる手口ですね。
1970年代を中心に21世紀まで、ピーター・フォークは35年間も、コロンボを演じ続けました。、
そして現在私たちは、コロンボ風の作りの事件モノを楽しむ事ができています。
「刑事コロンボ」は、刑事ドラマのひとつの転換点をつくった、記念碑的な作品と言えるかもしれません。

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