実は戦争について歌った邦楽の名曲たち

実は戦争について歌った邦楽の名曲たち

好きだの会いたいだのを連呼する、甘っちょろくて浮薄な恋愛ソングだけが、J-POPではありません。平和な国・日本においても、「戦争」への問題意識を暗に散りばめた、聴きごたえのある骨太なメッセージソングが存在するので、本稿ではその一部を紹介していきます。


『情けねえ』(とんねるず)⇒湾岸戦争における日本の対応を批判した歌

1990年8月2日、イラク軍によるクウェートへの侵攻が開始されます。世にいう“湾岸戦争”の始まりです。
現地より配信された、無数の光弾が闇夜に舞う国際映像は、まるでコンピューターゲームさながら。そのために「ニンテンドーウォー」などと呼ばれ、当時、世界中の人に衝撃を与えたものです。

日本にとって、対岸の火事で済まされなかったのは、アメリカが多国籍軍を率いて軍事介入したためでした。この好戦的な同盟国から、日本は度々非協力的な姿勢を非難されていたために、立つ瀬がなく、結局金で立場を買うかのように、135億ドルもの拠出金を提供。さらには、実働部隊である自衛隊を現地へ派遣するべく、政令改正までしようとしたのでした。
もはや、弱腰を通り越して、傀儡と表現してもさしつかえないほどの軟弱な外交姿勢ではありませんか。そんな我が国の体たらくに多くの国民が思っていました。「情けねぇ…」と。

CDのジャケットは、日の丸を連想させるデザインだった

とんねるず『情けねえ』

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改めて歌詞を見てみると、かなり直接的に自国の対応を批判しています。おそらく、当時から毎年多額の税金を納めていた作詞担当の高額所得者・秋元先生からしたら、国民の血税を湯水のように戦争協力費へ流用してしまった日本政府に、相当ご立腹だったに違いありません。

『島唄』(THE BOOM)⇒沖縄戦の鎮魂歌

THE BOOM最大のヒット曲として知られる『島唄』。同曲はドレミの「レ」と「ラ」を抜く、琉球音階を取り入れていることでも知られていますが、Bメロだけは、西洋音階、つまり、本土で使用されている音階で歌われています。以下が1番と2番のBメロです。

THE BOOM『島唄』

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『島唄』はTHE BOOMのボーカル・宮沢和史が、「沖縄戦の際、ガマ(洞窟)で亡くなった人たちの魂を空へ解放したい」との想いを込めて書いた鎮魂歌。その中でBメロは、まさに、ウージ(さとうきび)の下(ガマ)で自決した人たちのことを描写しています。

この箇所を本土の音階にした背景には、「本土の犠牲になった人のことを唄うのは、本土の音階でなければならない」という、宮本の強い信念があったのだとか。かくいう宮本も、山梨出身で本土の人間。本土の勝手で、沖縄に多大な被害をもたらしてしまったことへの忍びなさが、彼に沖縄音階の使用を躊躇わせたのでしょう。

『さよなら人類』(たま)⇒ハルマゲドンで人類が滅ぶ歌

『平成名物TV・三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS系)の14代目イカ天キングとなってメジャーデビューした『たま』。そのデビュー曲といえば、オリコン初登場1位を獲得し、売上げ58.9万枚の大ヒットを記録した『さよなら人類』です。

たま『さよなら人類』

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幻想的なメロディラインで、コミックソングの気さえある同曲ですが、その荒唐無稽な歌詞をよく見てみると、ハルマゲドン的世界観が描かれていると気づきます。特にゾッとするのが、3番の歌詞。

ブーゲンビリアとは、熱帯性の低木で、下の写真のような形状をしています。

ブーゲンビリアの木

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そう。原爆のキノコ雲を連想させるのです。

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