スポーツセダンだったブルーバード
今では「ブルーバード」と言われてもピンと来ない若者も多いでしょうが、我々が子どもの頃は、普通によく見るセダンでした。皆さんも、ブルーバードSSS(スリーエス)に乗っている友達は「お父さんがクルマ好き」という印象を持っていたのではないでしょうか。1980年代前半のブルーバードはFR方式の910型で、当時大スターだったジュリーこと沢田研二のCMで人気を集めていました。
1983年のフルモデルチェンジでU11型となり、初めてFF方式を採用。前期型では引き続き沢田研二をCMキャラクターに起用していましたが、後期型は有名人キャラクターの設定をやめてしまいました。角張ったデザインのU11型はマイナーチェンジでさらに四角くなり、定番ブランドだけにそれなりに売れてはいましたが、910型のようなクルマ好きの人気は得られず、普通のファミリーカーになってしまいました。

直線的なデザインと沢田研二のCMで大ヒットした、910型ブルーバード。
Nissan Bluebird Sedan (910) 1979–83 wallpapers

マイナーチェンジで四角さを増したU11型ブルーバードの後期型。
Nissan Bluebird SSS Sedan (U11) 1985–87 wallpapers
新鮮なデザインと4WDを引っ提げて8代目デビュー
そこへ誕生したのが1987年9月デビューの8代目、U12型です。デザインは一変して丸みを帯びた形状になり、特にハードトップはスポーティ感が大幅に増しました。この頃の日産は社長が交代したこともありイメージチェンジを図っていて、同年6月に登場したY31型セドリック・グロリア以上に、変化する日産を印象づけました。
それ以上に衝撃的だったのは、「ATTESA(アテーサ)」と命名されたフルタイム4WDシステムです。当時、乗用車の4WDといえば、スバル・レオーネが代表的な存在で、他社からポツリポツリと出始めたころ。技術的にもパートタイム方式が主流でした。
グレード設定も意欲的で、スポーティタイプは引き続きSSSと命名、一般的なタイプはアーバンサルーンシリーズとして設定されました。ボディ形状はどちらも4ドアセダンと4ドアハードトップを用意。ステーションワゴンとライトバンは従来型が継続されました。

U11型から一転、自然な丸味でスポーティさと上品さを両立したデザインとなったU12型
Nissan Bluebird Sedan (U12) 1987–91 pictures

4ドアセダンのリアスタイル。まとまりのいいデザインをしていた。
Nissan Bluebird Sedan (U12) 1987–91 wallpapers

外観だけでなく、内装もソフトな印象に変わったU12型。写真はSSSシリーズ。
Nissan Bluebird SSS Twin Cam Hardtop (U12) 1987–91 wallpapers
鮮烈だったDOHCターボエンジン
エンジンはガソリン2000ccが廃止され、1800ccと1600cc、2000ccディーゼルの3種類となりましたが、1800ccには175PSのDOHCターボを筆頭に、135PSのDOHC、88PSのSOHCの3種類を用意。1600ccは79PSのSOHC、ディーゼルは67PSでした。特にDOHCターボは最上級スポーティグレードのSSS アテーサ・リミテッドのみの設定で、U12型ブルーバードのイメージリーダーとなりました。デザインもさることながら、この高性能モデルには、皆さんも子どもながらに憧れたものではないでしょうか。
また、かつてブルーバードといえば、ラリーで華々しい活躍をしてきましたが、U12型ではラリーバージョンの「SSS-R」が設定されました。日産の特装子会社のオーテックジャパンが開発。日産自動車で製造、NISMOで販売されました。エンジンは185PSに強化されたDOHCターボを搭載していましたが、競技ベース車のため内装は最廉価グレードと同等でした。

175PSのDOHCターボを搭載した、最上級グレードのアテーサ・リミテッド。
Nissan Bluebird SSS Twin Cam Hardtop (U12) 1987–91 wallpapers

4ドアハードトップのリアスタイル
Images of Nissan Bluebird SSS Twin Cam Turbo Hardtop (U12) 1987–91

ボンネット上のエアインテークが勇ましい、ラリーバージョンのSSS-R。
Nissan Bluebird SSS-R (U12) 1987–91 wallpapers
マイナーチェンジでオーバー200PSに
U12型は、1990年10月にマイナーチェンジをしました。最大の変更点はエンジンで、1800ccは従来のCA型からSR型へ変更。併せて2000ccが復活しました。ラインナップは2000ccが205PSのDOHCターボ(ハイオク指定)と140PSのDOHC、1800ccが110PSのDOHCで、1600ccと2000ccディーゼルは従来のエンジンが継続されました。また、内外装にも多少手が加えられましたが、前期型が好評だったため、ライト周りなどごく一部の変更でした。
ユニークなところでは、1991年5月に追加された5ドアハッチバックのブルーバード・オーズィーがあります。2000ccエンジンを搭載。オーストラリア工場で製造された逆輸入車なので右ハンドルでしたが、販売台数は1300台弱と言われています。

マイナーチェンジ後の4ドアハードトップのSSS アテーサ・リミテッド
Nissan Bluebird SSS Twin Cam Turbo Hardtop (U12) 1987–91 wallpapers

マイナーチェンジ後の4ドアセダンのリアデザイン
Nissan Bluebird Sedan (U12) 1987–91 pictures

5ドアハッチバックといいつつも、ステーションワゴンのようなスタイルだったブルーバード・オーズィー
Pictures of Nissan Bluebird Aussie (HAU12) 1991
本当の意味での最後のブルーバードだった?
U12型は1991年9月にフルモデルチェンジしてU13型となり、「ブルーバード×2計画」と銘打って、セダンのSSS、ハードトップのARXという2本立てになりました。しかし、アメリカでデザインされた尻下がりスタイルのセダンは売れず、販売に苦戦しました。
その後、U14型ではセダンのみとなりましたが、時代はミニバンが主流となっており、セダンスタイルが好きな中高年層が主な購買層になってしまいました。U14型の販売中に、並行してブルーバード・シルフィが登場。「ブルーバード」の名と型番はU14型を最後に打ち切りとなり、後継となったシルフィが現在も販売されています。
ちょっとスポーティで誰でも乗りやすい……。そんなU12型は、最後のブルーバードらしいブルーバードだったと言えるのではないでしょうか。

尻下がりのデザインが不評だった、U13型ブルーバードのSSS
Nissan Bluebird (U13) 1991–95 wallpapers