世界初のヒールレス・スルーネック構造を発表したB.C.リッチ

世界初のヒールレス・スルーネック構造を発表したB.C.リッチ

その悪魔的とも言われる禍々しいスタイルと凶暴なサウンドからヘヴィ系でもダークなイメージのアーティストに支持され続けているB.C.Richの魅力を解析


はじめに

B.C.Richの歴史は、ギター職人の父親を持つB.C.リッチ創始者のベルナルド・チャベス・リコが、12歳の頃からコア材でウクレレを作るなど家業の手伝いから始まります。現在のブランド名になるのは1966年頃で、エレキギターの生産は1969年頃から開始されるのですが、オリジナルシェイプの製造は1972年Seagullから開始される事になります

「B.C.リッチ」は、鋭角に尖った攻撃的なルックスの変形ギターで知られるアメリカのギターメーカー/ブランドですが、その悪魔的とも言われる禍々しいスタイルと凶暴なサウンドから一号機であるシーガル発表以来、40年以上に渡って一貫してスラッシュメタルやデスメタルなど、ヘヴィ系でもダークなイメージのアーティストに支持され続けています。

1972年発表 Seagull

オリジナルシェイプの発表は1972年からで、この時発表されたSeagullによってスルーネック、アクティブ回路のB.C.リッチが確立します。

ヘッド裏

最初のオリジナルB.C.リッチは1972年から1976年にかけて製造されたSeagullです。 このボディ形状は、ネックスルー、ディープカット、24フレット、コントロール回路を備えたRロゴが特徴でした

フロントPUを外した状態の手書きシリアルが見えるザグリ

バインディングネックのスノーフレークインレイ

オリジナルのSeagull発表は72年となっているんですが実は74年時点では16本しか存在してないようです。
それも大半は出荷前の状態だった様で、オリジナルSeagullは実際には1976年までの2~3年くらいしか製造されていない事になる様で76年Eagle発表になるまで生産されました。

B.C.Rich用に調整されたGuild製ピックアップとバダスブリッジ

スルーネック構造の利点を生かした凹凸の無いボディ裏

ボディが少し薄くバインディングとピックガードが省略され、回路もフルエレクトロニクスでないものがSeagull Jr.として誕生したり、上のホーンの突起が取り除かれたPointless Seagullや、Eagleのアッパーホーンを短くしたようなSeagull2などとマイナーチェンジしていきますが非常に数が少ないそうです。

2Vol 1トーン1バランサ、バリトンなし、ブースターなし。 2タップと1フェーズ

Control Cabity

1976年発表 Seagull 2

B.C.リッチの歴史を拓いた歴史的にも意義のあるSeagullをアレンジして完成させたモデル

1976年製 Seagull 2

メイプルのネックを両サイドから ボディ材でサンドイッチする構造のヒールレススルーネック構造

ネック材がボディエンドまで伸び色の違いで分かりやすいスルーネック構造

76年デビュー「Eagle(鷲)」

1975年製オリジナルSeagullのデザイン手直しによりSeagull IIを経て1976年にEagleが誕生

マスターボリューム、フロントピックアップオンオフ、リアピックアップオンオフ、ブースターオンオフ、フロントピックアップシリーズパラレル、リアピックアップシリーズパラレル、バリトーンオンオフのミニスイッチ類、各ピックアップのボリューム、トーン、ブースターボリューム、バリトーンという仕様

1976年製 Eagle(イーグル)

グローバーインペリアルペグ

エスカッションはリアにもフロント用が使われていますね

個体差の多い仕込み角とネックの太さですが、76年は比較的太めのものが多いようで職人の癖によるところが大きいかも?

1976年は5桁のシリアルナンバーや、雲形インレイ、5ピースボディ、エキゾチックウッドの採用によってB.C.Richの基本が完成します。

ソリッドコア、メイプルのネック、 ウィングによるサンドイッチ構造によるヒールレススルーネック、グローバーインペリアルペグ、バダスブリッジ、ディマジオSuper Distortion 、PAFピックアップ、ストラップロック、ブースター、バリトーンスイッチ、コイルタップ、フェイズアウト回路搭載が採用

1976年「Mockingbird(物まね鳥)」

1976年にJohnny GoGoという男がデザインしニールモーザーが名付け親になったのがモッキンバード

B.C.Richの歴史はこのモデルなくしては語れないと言っても過言ではない、歴史的モデル。 数々の進化を遂げながらも完成されたシェイプが放つ美しさは決して色褪せることはありません。

ハンドメイドならではの作りこみの良さがわかる1本

他の同年代のモデル同様、3点留めのロッドカバー、真中が出っ張ったロゴ、インペリアルが特徴

バリエーションとしてショートホーンモデルも存在しますが、76年から79年位 までに製造された個体が幾つか確認されただけで、その後はロングホーンに統一されています。

ネックの仕込み角がハッキリと判る画像

バダスブリッジ

サイドジャック

3シングル21フレット、トレモロ装備のモッキンバード。1983年製オリジナルとの事

「スルーネック」構造

ネック材がボディの末端まで達する「スルーネック」構造は、B.C.リッチが世界で初めて発表しました。それ以前にあった弦楽器の構造における常識を覆す、極めて斬新な設計です。左手を遮るものがなくハイポジションのプレイアビリティが極めて高い上に、中音域が豊かに響くサスティンのたっぷりある独特なサウンドも実現しています。現在では価格や人気を考慮し、ボルトオンやセットネックのモデルもリリースするなど、ネックジョイントは多様化しています。

使用ユーザーの中には

24フレットのモデルであっても19フレット以降のポジションマークが無い、というのが本来の姿で、この仕様に慣れきっていた故hide氏は、他のギターに持ち替える際に21フレットと24フレットのポジションマークを油性ペンで塗りつぶしていたといいます。

1977年「Bich(???)」

モデル名が造語のギター(?)

Bichと言えばジョー・ペリーかな。最初に思い浮かべた人が彼でした。

弦をヘッド裏からヘッド表に通す個性的な構造

1〜4弦が2本ある「10弦ギター」として完成されたモデル

10弦ギターとして鮮烈なデビューを飾ってから今日におけるまで、B.C.Richを代表するモデルとして君臨し続けてきたBICH。現在はレギュラーの6弦タイプもラインナップに加わり、あらゆるシーンで活躍できる柔軟性も兼ね備えたラインナップとなっています。

ボディトップから見た10弦

83年 Wave(ウェイブ)

シリアルナンバーでは1981年製Wave

70~80年代BCリッチはとにかくレアで確認できないですがネックの仕込み角は少し深めの印象。それとも個体差でしょうか

最期に

そもそもheavy metalって誰が言いだしたの?

当時隆盛を誇っていたパンクロックやニューウェイブに対抗する形で、Iron MaidenやDef Lepard、Saxonなどの新人ハードロックバンドを新しいキャッチフレーズで迎えるため、音楽ライターのジェフ・バートンが、ハードロックの代わりにへヴィメタルという言葉を当てはめ、New Wave of British Heavy MetalとしてSounds紙上で紹介したのが始まりだともされています。

ベスト・オブ・ブルー・オイスターカルト

世界初のヒールレス・スルーネック構造や丁寧な塗装ではなく、攻撃的なボディシェイプのみがメディアでも取りざたされる状況に、創始者ベルナルド氏は心底参っていたという記事を読んだことがあります。ですが、B.C.リッチのギターを語る上、その独特のボディシェイプを第一に語らない訳には行きません。極めてデザイン性の高いボディシェイプはヘヴィメタルのイメージにぴったりで、多くのバンドの鋼鉄サウンドを支えています。

最期にBCリッチの変形ギターを紹介して終わりたいと思います

1980~01年発表Warlock

まさに『ヘヴィーメタル』を象徴するギターと言っても過言ではありません。意外にも立っても座っても右腕のポジションがいい具合に治まり弾き心地の良いバランスです

B.C.Richの歴史を語るうえで決して忘れてはならないのが、Mockingbirdと両壁をなすこのWarlock。変形でありながらも洗練された絶妙なボディバランスをもつB.C.Richのロングセラー・モデルです。

WARLOCK

1982~83年発表Ironbird

1983年に衝撃のデビューを果たしてから、数多くの熱狂的なフォロワーを生み出してきた

Ironbird

83年Stealth(ステルス)

Stealth

DRACO

Vシェイプをベースに、竜をモチーフにデザインされたDRACOは湧き上がる炎にも似た美しい流線形が織りなす曲線美と、究極の攻撃的フォルムとを持ち合わせたモデルです。

DRACO

Draco Ghost

BEAST

BEASTの名にふさわしい、躍動的なシェイプを持つシリーズ。ルックスだけでなくそのサウンドにおいても攻撃的なサウンドを実現。

BEAST

Virgo Celtic

Virgo Celtic

War Beast

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