『狂い咲きフライデーナイト』⇒タモリ
以前『ミュージックステーション』で、出演アーティストの「好きな楽曲」を発表する企画が放送されていました。桑田の番になると「桑田くんのは、興味あるねぇ~」というタモリ。そこで桑田が堺正章の『さらば恋人』と共に挙げていた楽曲こそ、この『狂い咲きフライデーナイト』でした。モニターにレコードのジャケ写が映し出されて歌が流れた瞬間、無表情を決め込んでいたタモリが、ワイプ越しに思わず破顔した光景は今でも忘れられません。
『狂い咲きフライデーナイト』は、タモリ4枚目のアルバム『ラジカル・ヒステリー・ツアー』用に桑田が書いた楽曲。大のマイルス・デイヴィスフリークで、ジャズをこよなく愛するタモリに合せたのか、同曲はジャズテイスト全開。いかにも桑田っぽい淫靡な歌詞とメロディを、洒脱に飄々と歌うタモさんの歌唱も必聴です。
『恋人も濡れる街角』⇒中村雅俊
桑田の手掛ける楽曲には、主に、3つの街が登場します。茅ヶ崎と東京、横浜です。描かれ方としては、茅ヶ崎は青春の地で、東京はうらぶれた孤独な街。そして横浜ですが、こちらは大人のデートスポット。具体的にあげると、『LOVE AFFAIR~秘密のデート』『涙のアベニュー』『思い出のスター・ダスト』などがあり、いずれも、大人の切ない恋愛をうたっています。
『恋人も濡れる街角』も、そんな港町・横浜(それも「馬車道」というかなりローカルな場所)を舞台とした、アダルトな雰囲気漂うムード歌謡。中村雅俊の17枚目のシングルとして書かれた同曲は、オリコン週間5位という結果を残すだけでなく、同氏の代表曲にも数えられる名曲として知られています。
必殺のサビ「愛だけは~」と歌うところを「アーイー!だけは~」と女性の喘ぎ声とひっかけているところが、なんとも桑田らしい遊び心といいましょうか。
『六本木のベンちゃん』⇒小林克也&ザ・ナンバーワンバンド
桑田自身も参加した、小林克也&ザ・ナンバーワンバンド。世良公則やサザンの野沢ケガニ、村上"ポンタ"秀一、鈴木雅之など、錚々たるミュージシャンもメンバーだった同グループのために、桑田は、ベンチャーズ歌謡アレンジの効いた、ホモをテーマにしたコミックソング『六本木のベンちゃん』など、計5曲を提供しています。
『Miss You Baby』⇒上田正樹
京都出身のシンガーソングライター上田正樹。彼と言えば『悲しい色やね〜OSAKA BAY BLUES』(1982年)が有名ですが、そのレコードをリリースした翌年に、桑田の提供楽曲『Miss You Baby』は発表されています。

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『アミダばばあの唄』⇒明石家さんま
当時、爆発的人気を誇っていたフジテレビのバラエティ番組『オレたちひょうきん族』。その人気キャラクターアミダばばあ(明石家さんま)&タケちゃんマン (ビートたけし)に提供したのが、この言わずと知れた名曲です。たけしのパートはほとんどないので、明石家さんまの曲といって差し支えないでしょう。
ちなみに、サザン25周年の野外ライブツアーでは、このツアー用に事前収録した明石家さんまの歌唱映像とともに桑田が歌うという、初のデュエットも実現しています。
『萎えて女も意志をもて』⇒ジューシィ・フルーツ
『ジューシィ・フルーツ』は、近田春夫のバックバンドだった『BEEF』がベースとなって結成された歌謡ロックバンド。桑田の提供曲『萎えて女も意志をもて』は、1984年に放送された日本テレビ系ドラマ『女ざかり』の主題歌にも起用されました。
この曲の管弦編曲を担当したのは、アレンジャーの八木正生。ジャズ界の大御所としても知られる彼の手によって、同曲はホーンセクションを交えた、スウィングテイストの曲調に仕上がっています。

ジューシィ・フルーツ 『萎えて女も意志をもて』(1984年)
ジューシィ・フルーツ/萎えて女も意志をもて(7インチ) | JAPANESE | | MEGURU RECORDS
『夢見る頃を過ぎても』⇒古舘伊知郎
古舘の話芸を「実況という名のラップ」と評価していた桑田。お互いプロレス好きということで意気投合したのでしょうか。1988年に『夢見る頃を過ぎても』という楽曲を提供しています。

『SEA SIDE WOMAN BLUES』⇒ビートたけし
正式にビートたけし名義でCD化はされていないものの、『SEA SIDE WOMAN BLUES』は、桑田がたけしのために書いた曲だといいます。たけし本人が、テレビ番組などで度々そう言っているようです。
たしかに、深夜番組『足立区のたけし、世界の北野』(フジテレビ系)のエンディングで、たけしが歌っていたこともあり、なんとなく、たけしのイメージが強い同曲。しみじみと情けない男の哀愁をうたった名曲であり、特に「“愛”という字は真心で、“恋”という字にゃ下心」という歌詞は、くりぃむ上田が、自身のラジオ番組で電話をかけてきた恋愛に悩むリスナーへ説教するときに引用したほどの名言中の名言です。
以上のように、お笑いBIG3に楽曲を提供してミュージシャンは、桑田をおいて他にないでしょう。もう不可能かもしれませんが、サザン・ソロの活動の合間に、また、誰かびっくりするような有名人へ曲を提供してもらいたいものです。
(こじへい)