29歳にして35億円の借金を抱えた…さだまさし監督の映画『長江』

29歳にして35億円の借金を抱えた…さだまさし監督の映画『長江』

さだまさしが初監督を務めたドキュメンタリー映画『長江』。1年半もの撮影期間をかけて完成した同作は、配給収入は約5億円とまずまずのヒットを記録したものの、撮影スケジュールの超過などにより制作費がかさみ、結果として、さだは35億円もの借金を背負うこととなってしまいました。 本稿では、そんな映画『長江』がつくられた経緯やその内容、そして、さだが借金をどのように完済していったかについて取り上げました。


35億円の借金を背負ってしまった、さだまさし

35億…。今では、ブルゾンちえみの代名詞となっていますが、かつて、この数字といえば、さだまさしでした。もちろん、地球上にいる男の数云々ではありません。彼がこしらえた借金の総額が35億円だったのです。サラリーマンの生涯賃金が2億円あまりと言われている中で、なんという途方もない金額でしょうか。さだがこれほどの負債を抱えてしまったすべての原因…。それは自身が監督・主演を務めたドキュメンタリー映画『長江』にありました。

今年で65歳を迎えたさだまさし。『長江』撮影時は、まだ20代だった。

さだまさし

祖父、父母が暮らした中国への憧れが、さだを突き動かす

なぜ、さだが長江を題材としたのかというと、彼自身のルーツに関係があります。さだの祖父はもともと中国駐在の諜報員として活動していた人物であり、父と母の出会いも同国において。そのため、さだはかねてより、この家族の思い出が眠る地へ憧れを抱いていたといいます。
かくして1980年、さだの個人事務所『さだ企画』と中国中央電視台(CCTV)との共同制作というかたちをとり、この壮大なるプロジェクトは動き出したのでした。

祖父や父母が暮らした大陸に、さだは昔から強く惹かれていた

中華人民共和国全土地図のフリーデータ

実父たっての希望もあって映画化は実現した

なお、この映画はさだというよりも、さだの父・佐田雅人氏が熱望したために実現したといいます。さだ曰く、雅人氏常には大きいビジョンを持ち、その実現のためには金に糸目はつけない、勝負師気質な人物だったのだとか。その父を映画『長江』における「製作総指揮」という重要なポジションにおいたこともあり、息子・さだの苦難は始まったのです。

ハチャメチャな実父につぃて書いた、さだの著書

『かすていら』さだまさし著

かすてぃら | さだまさし |本 | 通販 | Amazon

撮影は難航し、当初の予定を大幅に超過する

長江(揚子江)の最初の一滴を見たい…。そんなコンセプトのもと、ドキュメンタリー映画『長江』の撮影はスタートしました。河口から源流へ向かう中で、さだは周囲の街並み、名所、そしてこの地で生きる人々の姿を丁寧にフィルムへ収めていきます。

当初はテレビ用ビデオカメラを使用しての撮影でしたが、途中から映像の劣化を防ぐために、35ミリ映画フィルムにチェンジ。時には、立ち入り禁止区域である源流地域への撮影を行うべく、中国当局にかけあったりもしたために、撮影スケジュールは当初の予定より大幅に超過(結局、源流地域への立ち入りは叶わなかった)。結果、1980年のはじめから1981年7月にかけて、約1年半もの期間を費やすこととなったのでした。

国交もあやしかった当時の中国での撮影は過酷を極めた

撮影に立ち会う若き日のさだまさし

さだまさし 映画「長江」で背負った28億円の借金が「やけくその起爆剤」に(4):イザ!

全国120の映画館で上映され、配給収入は約5億円のヒットを記録

過酷な撮影の後に完成した『長江』は、市川崑総監修のもと、約148分にも及ぶ大作へと仕上がりました。1981年11月7日から全国120もの映画館で公開され、配給収入は約5億円。ドキュメンタリー映画としては上々のヒットといえるでしょう。

名監督の力も借りて、『長江』はまずまずの結果を残した

総監修を務めた市川崑

Se descubre el anime más antiguo | EsAsia

製作費の膨張によって、天文学的な借金をこしらえる

しかし、さだのもとには、28億円もの膨大過ぎる借金が残ってしまいました。利息も含めると、総額35億円。理由は、先述したように、撮影スケジュールがあまりにも超過したことや、空撮用に中国軍ヘリをチャーターしたことなどによる、制作費の膨張に他なりません。

しっかりとお金を管理すれば良かったのですが、さだが資金面にノータッチだったこと、実父が予算度外視でバンバンお金をつぎ込んでいったことが、これほどまで負債が大きくなってしまった原因だったようです。

膨大な借金をまえに、さだは途方に暮れたという

映画「長江」パンフレットより

年間100回以上のコンサート開催により、借金返済を試みる

しかし、さだはこの壮絶な借金苦を、とてつもないバイタリティで弾き返していきます。もっとも力を入れたのは、コンサートの開催。公演数は、年間にして100回以上。多いときで、162回を記録しています(1982年実績)。
こうした多忙な公演日程をこなすために、体調管理を徹底することはもちろん、喉を傷めぬよう、トークの割合多めの公演スタイルへとシフト。その結果、ステージトークのみを収録したCDが定期的に発売されるほど、話芸が磨かれていったのです。

借金と向き合い、さだは歌い続けた

さだまさしオフィシャルサイト

ソロ・コンサート通算4000回達成の際に「完済宣言」をする

時は流れて、2013年7月17日。さだは、日本武道館での公演をもって、ソロ・コンサート通算4000回を達成。その際に、ファンの前で借金を返し終わったことを告げる「完済宣言」をしてみせました。映画『長江』の撮影よりもはるかに長い苦難の道のりを乗り越えて、本人は安堵したに違いありません。

なお、『長江』は共同制作に当たった中国中央電視台によって再編集されて、テレビ放送されています。その中には撮影に臨む若き日のさだの姿も、ちらっと映っているので、気になる方はぜひご覧になってください。

(こじへい)

関連する投稿


抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

高校時代からモデル活動を始め1986年に「カネボウ・スイムウエアイメージモデル」として脚光を浴びた広田恵子さん。現在は家族で〇〇を組んで活動している・・・。


「世界・ふしぎ発見!」のミステリーハンターも務めた女優『ジュリー・ドレフュス』!!

「世界・ふしぎ発見!」のミステリーハンターも務めた女優『ジュリー・ドレフュス』!!

1991年3月にミステリーハンターとして登場されると出演回数8回で、出演回数ランキング33位となるジュリー・ドレフュス さん。2013年出演のドラマ「老舗旅館の女将日記」を最後にメディアで見かけなくなり気になりまとめてみました。


「ひとりでできるもん!」の主人公で3代目まいちゃんの『伊倉愛美』現在は?!

「ひとりでできるもん!」の主人公で3代目まいちゃんの『伊倉愛美』現在は?!

2000年4月から『ひとりでできるもん!』に主人公・今田まい(3代目まいちゃん)役としてレギュラー出演した伊倉愛美さん。現在は結婚されお母さんに・・・。


中学3年生でモデルデビューした「ワンギャル」第4期生でモデルの『 竹下玲奈』!!

中学3年生でモデルデビューした「ワンギャル」第4期生でモデルの『 竹下玲奈』!!

鹿児島県奄美大島で生まれ育った竹下玲奈さん、15歳当時の中学3年生時にスカウトを受け、1997年に雑誌『プチセブン』誌上でモデル業を開始しワンギャルとしても活躍されていました。


田村正和主演のドラマ「さよなら、小津先生 」の名子役『池田 貴尉』!!

田村正和主演のドラマ「さよなら、小津先生 」の名子役『池田 貴尉』!!

数々の作品で名子役ぶりを発揮した池田貴尉さんこの方も引退されています。懐かしく思いまとめてみました。


最新の投稿


司馬遼太郎没後30年。不朽の名作『坂の上の雲』がついにオーディオブック化、森川智之が魂を吹き込む

司馬遼太郎没後30年。不朽の名作『坂の上の雲』がついにオーディオブック化、森川智之が魂を吹き込む

司馬遼太郎没後30年を記念し、代表作『坂の上の雲』がAmazonオーディブルでオーディオブック化決定。2026年5月1日より第1巻の配信が開始されます。ナレーターには人気声優の森川智之氏を起用。明治という激動の時代を駆け抜けた若者たちの青春群像劇が、圧倒的な表現力で耳から楽しむ新たな読書体験として蘇ります。


あの熱狂をもう一度!千葉で「昭和歌謡ショー」開催。20名超の演者が贈る100分間のノンストップ公演

あの熱狂をもう一度!千葉で「昭和歌謡ショー」開催。20名超の演者が贈る100分間のノンストップ公演

NPO法人ひこうき雲が、2026年5月23日に千葉市で「昭和歌謡ショー」を開催します。従来の合唱スタイルとは一線を画し、大音響と光の演出、20名以上の演者による怒涛のダンスとパフォーマンスで昭和の大型音楽番組を完全再現。名曲40曲をノンストップで繋ぐ、中高年世代が心から熱狂できる唯一無二のエンタメ空間です。


昭和100年、未知への挑戦を辿る。国立公文書館で南極・深海・宇宙の特別展イベントが開催

昭和100年、未知への挑戦を辿る。国立公文書館で南極・深海・宇宙の特別展イベントが開催

国立公文書館で「昭和100年記念特別展」が開催中。昭和の日本人が挑んだ南極・深海・宇宙という3つのフロンティアをテーマに、JAXA名誉教授や南極観測隊長ら豪華講師陣によるスペシャルトークセッションや展示解説会が実施されます。歴史的公文書と共に、未知なる領域へ挑んだ先人たちの情熱と軌跡を深掘りする貴重な機会です。


昭和100年記念!邦画5社が垣根を越え集結、新文芸坐で「いま観たい」名作10本を厳選上映

昭和100年記念!邦画5社が垣根を越え集結、新文芸坐で「いま観たい」名作10本を厳選上映

昭和100周年を記念し、東宝・松竹・KADOKAWA・東映・日活の邦画5社がタッグを組んだ特集上映が池袋・新文芸坐で開催。山田洋次監督のトークショーや最新の4Kリマスター技術を語るイベントも実施されます。銀幕のスターが蘇る名作10選とともに、日本映画の黄金期をスクリーンで体感できる貴重な機会です。


『サザエさん』生誕80周年!名作『いじわるばあさん』と共に待望の電子書籍化、昭和の記憶を次世代へ

『サザエさん』生誕80周年!名作『いじわるばあさん』と共に待望の電子書籍化、昭和の記憶を次世代へ

1946年の連載開始から80年。昭和を代表する漫画家・長谷川町子の名作『サザエさん』全68巻と『いじわるばあさん』全6巻が、ついに初の電子書籍化。戦後日本の生活や家族の姿を鮮やかに描いた不朽の名作が、スマホやタブレットでいつでも楽しめるようになります。時代を超えて愛される原作の魅力に迫ります。