グローイング・アップ
車と女の子とロックンロールといえば、50年代を舞台にした青春映画の定番ですね。スターウォーズ・シリーズ等で知られるジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」がその代表です。その「アメリカン・グラフィティ」が公開されたのは1973年ですが、それらか5年後にオマージュともいえる作品が登場し大成功を収めます。
それが、1978年公開の「グローイング・アップ」です。
グローイング・アップ
「グローイング・アップ」は、「アメリカン・グラフィティ」に比べるとお色気度が高いというか、主人公は女の子のことにしか興味がないといった感じです。まさにB級映画というか、低俗といってよいかとも思います。
つまり、70年代に青春時代を過ごした男の子にとっては、「グローイング・アップ」の方がリアルだったりするのです。
物語は他愛もありません。シャイな笑顔が印象的なベンジー、イケメンのボビー、太っちょのヒューイの悪ガキ3人によるひと夏の笑いあり涙ありの青春映画です。
時代設定は1958年ということで、ポール・アンカの「 ダイアナ」やボビー・ヴィントンの「ミスター・ロンリー」などといったオールディーズのヒット曲が「アメリカン・グラフィティ」同様に絶えず流れています。なのでついアメリカ映画なのかと思ってしまいますが、これはイスラエル映画なのです。
因みに「アメリカン・グラフィティ」は1962年夏の設定です。
主役のベンジー役を務めたのはイフタク・カツールです。シャイな笑顔が当時の女の子たちのハートを射止めました!
イフタク・カツール
因みにブランキー・ジェット・シティのボーカルだった浅井健一のあだ名「ベンジー」は、ここからきているのだそうです。なるほど、なんとなく似てますね。
浅井健一
グローイング・アップ2/ゴーイング・ステディ
「グローイング・アップ」の成功を受けて、翌年には早速「グローイング・アップ2/ゴーイング・ステディ」が公開されます。
グローイング・アップ2/ゴーイング・ステディ
公開:1979年
監督 : ボアズ・デヴィッドソン
出演 : イフタク・カツール/ジョナサン・サガール/ツァッチ・ノイ
脚本 : ボアズ・デヴィッドソン/エリー・テイヴァー
撮影 : アダム・グリーンバーグ
「グローイング・アップ」はシリーズ化され、なんと8作も作られたのですが、最も人気があるのが本作「グローイング・アップ2/ゴーイング・ステディ」と言われています。
やはり前作が世界的な大ヒットとなったからでしょうか、制作陣にも主役の3人にも勢いが感じられます!それを証明するかのように音楽も留まることを知らないかの如く、最高のロックンロールがてんこ盛りです。
サウンドトラック盤
物語は、前回同様に悪ガキ3人組が繰り広げるドタバタ青春お色気コメディーです。
あらすじ
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今回の恋のお相手 タミー
当時この映画を観た男の子は、「ベンジーになりたい」もしくは「俺こそがベンジーだ」と思ったことでしょう。そして、「ベンジーのような彼氏が欲しい」と思った女の子は多かったはずです。
そうした人にとって、この映画のラストシーンは忘れられないものになったと思います。
ベンジーに憧れた男の子も女の子も今や子供がベンジーの年齢となっていることでしょう。もしかすると、今再びこの映画を観ると自分の子供にはこう言うのかもしれません。「ベンジーのようにはなってはいけない」「ベンジーのような男と付き合ってはいけない」と。いかがでしょうか?
ベンジー
ラストシーンも冷静にみると、人の車は壊すは、他人の家には侵入するはでムチャクチャです。ベンジーは自分のことにか考えていません。他人のことなんて知るもんか、自分さえよければそれでいい。ただそれだけです。
なんとパンク的なのでしょう。青春って身勝手なものですよね。分別のある大人となった今では許しがたいベンジーの行動です。大人も身勝手なものですよね。
グローイング・アップ3/恋のチューインガム
シリーズ3作目は1981年に公開されました。悪ガキ3人組ももちろん健在です。
今回はその3人が彼女を伴って海にやってきます。ベンジーの彼女はドリス。前回のラストシーンでの熱い愛の誓いをあっさりチャラにして今回もベンジーの恋心は音楽同様にノンストップです。
グローイング・アップ3 恋のチューインガム
しかし、イスラエルの学生というのはこんな「アメリカン・グラフィティ」さながらの生活をしていたものなのでしょうか?まさかね!というくらいに今作もアメリカンな作りで、前作までと同様に50年代のファッションやポップスを背景におバカな3人組のひと夏の経験が描かれます。
よくもまぁ飽きずに毎回毎回ナンパばかりしているものだと呆れてしまいますが、青春とはそんなものでしょう。
しかし映画的にはマンネリになってしまうのではないかと思わず心配してしまいますが、それも余計な心配です。マンネリというよりもこれは青春映画の王道、ツボなんですね。
それを証明するかの如く「グローイング・アップ3/恋のチューインガム」以降
グローイング・アップ4/渚でデート(1983年)
グローイング・アップ5/ベイビー・ラブ(1984年)
グローイング・アップ6/恋のネイビーブルー(1984年)
グローイング・アップ7/恋の卒業パーティ(1986年)
グローイング・アップ8/サマータイム・ブルース(1988年)
と制作されています。
更には、ついに1982年「グローイング・アップ/ラスト・バージン」が本家ともいえるアメリカで制作されました。
グローイング・アップ/ラスト・バージン
公開:1982年
監督・脚本:ボアズ・デイヴィッドソン
撮影:アダム・グリーンバーグ
出演:ローレンス・モノソン、スティーヴ・アンティン、ジョー・ラボ、ダイアン・フランクリン他
「グローイング・アップ/ラスト・バージン」は、「グローイング・アップ」のリメイクで現代アメリカ版となっています。なので音楽も当時流行っていたにはコモドアーズやクイソシー・ジョーンズの曲が使われています。
また、制作陣は監督をはじめほとんど同じメンバーですが、主役の3人組はベンジーではなくゲイリー、そしてイケメンのリック、太っちょのデビッドと役者も役名も変わっています。
グローイング・アップ
どうしようもない悪ガキ3人組ですが、やっぱり「グローイング・アップ」はこのメンバーでなくっちゃですね。「グローイング・アップ」それは永遠の青春です。