クロスオーバーの先駆け、トヨタスプリンターカリブ

クロスオーバーの先駆け、トヨタスプリンターカリブ

今、世界中で人気の「クロスオーバーSUV」ですが、その先駆けともいえるクルマが、1982年にトヨタから発売されました。スプリンターカリブは、コンセプト、デザインともに斬新でした。


モーターショーの参考出品車を市販化

1981年、トヨタは東京モーターショーに参考出品車RV-5を出展しました。今では「クロスオーバーSUV」としてスバルXVやアウディのオールロード・クワトロなど、乗用車ベースのSUVが多々ありますが、当時は世界的にも珍しいカテゴリーのクルマでした。そして翌1982年8月、スプリンターカリブの名で発売されました。スプリンターの名は付いていますが、前面はターセルにそっくりでした。

画期的だったのは、全グレードが4輪駆動車(4WD)のみというラインナップです。エンジンは1500ccの3A-U型のみ。当初は5速MTのみでしたが、のちに3速ATが追加されています。

1980年代前半は、まだ乗用車タイプの4WDは珍しい存在でした。トヨタは、FF車である2代目ターセル・コルサのプラットフォームを基本に、FR駆動の4代目カローラのリヤアクスルまわりを流用して4WDとしました。なお、2代目ターセル・コルサはFFとはいえエンジンは縦置きなので、4WD化が比較的やりやすい構造でした。

ターセル・コルサ系のフロントデザイン、高い車高、台形のリアハッチが特徴だった初代スプリンターカリブ。

Toyota Sprinter Carib (AL25G) 1982–88 pictures

北米では、ターセルのラインナップの一員として、ターセルワゴンの名で販売された。

Images of Toyota Tercel 4WD Wagon SR5 1983–87

斬新だったリアデザイン

外観では、ターセル・コルサ系の顔とハイルーフの屋根、そして台形のリアハッチと縦長のテールライトが特徴でした。トヨタらしからぬ(!?)斬新なデザインと4輪駆動の機動性、そしてスキーブームが始まりかけたこともあり、初代スプリンターカリブは人気を集めました。

1984年、1986年と2度のマイナーチェンジが行われ、1988年2月に2代目にバトンタッチしました。

北米仕様であるターセルワゴンのリアデザイン。台形のリアハッチ、縦長のテールライトが斬新だった。

トヨタ・スプリンターカリブ - Wikipedia

スプリンターベースとなった2代目

1988年2月、スプリンターカリブはフルモデルチェンジをし、2代目になりました。2代目はようやくスプリンターがベースとなり、6代目スプリンターと同様のフロントデザインとなり、型式もスプリンターの系列となりました。すでにRVブームの真っ只中にあり、2代目は発売と同時に好調な売れ行きを示しました。

メカニズム面では、初代と同様に全車4WDですが、パートタイム式からフルタイム式に変更。車高調整が可能な油圧式ハイトコントロールを採用し、走行中でも地上高を30mm上げることができました。エンジンはハイメカツインカム16バルブの1600ccを搭載し、100PSを発揮しました。

外観は、スプリンターに準じたデザインとなりましたが、高い車高は引き継がれました。縦長のテールランプも継続され、リアウインドーと同じ高さに設置されたデザインは、その後、多くのクルマで見られるようになりました。

1990年にマイナーチェンジが行われ、エンジン出力は110PSに強化。1993年にも再度マイナーチェンジが実施され、運転席エアバッグを標準装備するなど、安全性が強化されました。そして、初代と同じく日本車では珍しく7年半にわたるスパンを経て、3代目へとバトンタッチしました。

ようやくスプリンターの顔つきとなった2代目。ほどよいスポーティ感と購入しやすい価格で、カリブ随一のヒット作となった。

トヨタ・スプリンターカリブ - Wikipedia

2代目スプリンターカリブが採用した、リアウインドーと同じ高さのテールランプは、その後、多くのクルマに模倣された。

Pictures of Toyota Sprinter Carib (AE95G) 1988

カリブ初のFF車も設定

1995年8月にデビューした3代目は、セダンタイプのスプリンターを1世代飛ばし、8代目がベースとなりました。2代目がデビューした頃のRVブームとは違い、4WDといえばハイラックスサーフやパジェロのようなクロカンタイプが人気を集め、また、エスティマやタウンエースなどのワンボックスカーも一般的になっていたこともあり、従来の独立した存在よりも、スプリンターのステーションワゴン版という位置付けが感じられるようになりました。

当初は4WDのみの設定でしたが、1996年にスプリンターカリブ初のFF車が設定され、従来とは違う位置付けにあることが感じられました。実際、RVブームを経たことで、スプリンターカリブのユーザーには4WDが必要ない人も多くいました。RVが各社から発売されている中で、価格を下げて販売台数を増やす必要性もあったのでしょう。

エンジンラインナップも大きく変わりました。廉価版は従来通り1600ccなのですが、上級グレードの4WDは1800ccを採用。一方で、レビン・トレノなどに搭載している1600cc・20バルブDOHCエンジンの4A-GE型を搭載したモデルが、FF専用のグレードとして設定されました。

リアデザインは、引き続きテールランプが高い位置に設置されたが、すでに多くのクルマに模倣され、2代目ほどのインパクトはなかった。

Photos of Toyota Sprinter Carib (AE110G) 1995–97

3代目スプリンターカリブに設定された4A-GE搭載車。FFのスポーティ仕様だ。

Images of Toyota Sprinter Carib (AE110G) 1997–2002

欧州仕様のフロントデザインを追加

1997年4月のマイナーチェンジでは、安全性を高めるとともに、4A-GE型搭載車のMT車が5速から6速になりました。1998年には丸型ヘッドライトのロッソが追加されました。これは、欧州仕様(カローラワゴンの名で販売)のフロントデザインです。

クロスオーバーワゴンの先駆けとなったスプリンターカリブですが、2002年に販売終了となりました。スプリンターセダンは2000年に製造終了となっており、カリブによってスプリンターというブランドが2年ほど生き延びたことになります。

RVブームによって急成長した一方で、RV市場が豊富になったために自らの寿命を縮める結果になったといえるかもしれません。昨今のクロスオーバーワゴンの隆盛を見ていると、もう一度復活してもらいたい、個性的なクルマでした。

1998年に追加されたスプリンターカリブ・ロッソ。欧州仕様と同じ丸型ヘッドライトが特徴。

Toyota Sprinter Carib Rosso 1998–99 photos

関連する投稿


雑誌『OPTION2025年9月号』が発売!R30スカイライン、Z31フェアレディZなど「ネオクラシック80's」特集!

雑誌『OPTION2025年9月号』が発売!R30スカイライン、Z31フェアレディZなど「ネオクラシック80's」特集!

株式会社三栄より、雑誌『OPTION(オプション)2025年9月号』が現在好評発売中となっています。価格は1200円(税込)。


「クラウン」がついに70周年!『別冊ベストカーTOYOTAクラウンSPECIAL』が好評発売中!!

「クラウン」がついに70周年!『別冊ベストカーTOYOTAクラウンSPECIAL』が好評発売中!!

講談社より、雑誌『別冊ベストカーTOYOTAクラウンSPECIAL』が現在好評発売中となっています。


『頭文字D』より、トヨタ AE86 スプリンタートレノを再現したウェットティッシュケースが登場!!

『頭文字D』より、トヨタ AE86 スプリンタートレノを再現したウェットティッシュケースが登場!!

CAMSHOPより、漫画『頭文字D』で主人公・藤原拓海が数々の伝説を作り上げた「TOYOTA AE86 トレノ」を再現したウェットティッシュケースの予約が開始しました。価格は7700円(税込)。


「ハチロク・ヨタハチ TOYOTAの旧車」を巻頭特集!『月刊Gワークス 2025年2月号』が好評発売中!!

「ハチロク・ヨタハチ TOYOTAの旧車」を巻頭特集!『月刊Gワークス 2025年2月号』が好評発売中!!

三栄より、雑誌『月刊Gワークス 2025年2月号』が現在好評発売中となっています。今月号では、『ハチロク、ヨタハチTOYOTAの旧車』を特集しています。


2000個限定!伝説の名車「トヨタ2000GT」がBluetoothマウスになって登場!!

2000個限定!伝説の名車「トヨタ2000GT」がBluetoothマウスになって登場!!

トヨタ2000GT型を再現したBluetooth無線マウス『「TOYOTA 2000GT」型 Bluetooth マウス』が現在好評発売中となっています。


最新の投稿


世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

世界が熱狂!葛飾商店街×『キャプテン翼』コラボ「シーズン2」開催!新エリア&限定メニューで街を駆け抜けろ!

葛飾区商店街連合会は、2025年10月10日より『キャプテン翼』とのコラボイベント「シーズン2」を亀有・金町・柴又エリアで開催。キャラクターをイメージした限定メニューやスタンプラリーを展開し、聖地巡礼と地域活性化を促進します。


キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

キン肉マン愛が英語力に!超人たちの名言・名場面で学ぶ『キン肉マン超人英会話』発売

人気アニメ『キン肉マン』の「完璧超人始祖編」の名言・名場面を題材にした英会話学習書『キン肉マン超人英会話』が、2025年11月29日(土)にKADOKAWAより発売されます。超人たちの熱い言葉を通じて、楽しみながら実用的な英語表現をインプットできます。TOEIC満点保持者やプロレスキャスターなど、豪華プロ集団が監修・翻訳を担当した、ファン必携の英語学習本です。


【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

【カウントダウン】あと2日!古舘伊知郎&友近「昭和100年スーパーソングブックショウ」いよいよ開催迫る!豪華ゲスト集結の東京国際フォーラムは「昭和愛」で熱狂へ!

開催直前!TOKYO MX開局30周年記念「昭和100年スーパーソングブックショウ」が10月16日に迫る。古舘伊知郎と友近がMC、豪華ゲストと共に贈る一夜限りの昭和ベストヒットに期待高まる!


ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブを東阪ビルボードで開催!

ギタリスト 鈴木茂が、『鈴木茂「BAND WAGON」発売50周年記念ライブ~Autumn Season~』を11月13日にビルボードライブ大阪、16日にビルボードライブ東京にて開催する。今回は、1975年にリリースされた1stソロアルバム「BAND WAGON」の発売50周年を記念したプレミアム公演となる。


【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

【1965年生まれ】2025年還暦を迎える意外な海外アーティストたち!

2025年(令和7年)は、1965年(昭和40年)生まれの人が還暦を迎える年です。ついに、昭和40年代生まれが還暦を迎える時代になりました。今の60歳は若いとはと言っても、数字だけ見るともうすぐ高齢者。今回は、2025年に還暦を迎える7名の人気海外アーティストをご紹介します。