シンガーソングライター
今更改めて言う程のものでもありませんが、シンガーソングライターとは、自分で歌う曲の、作詞、作曲を自分自身で手掛けるミュージシャンのことをいいます。
そもそも、ポップ・ミュージックの世界では、曲を作ることと歌うことは分業で行われていました。それは、アメリカやイギリスそして日本でも同じです。それが60年代になると自分で曲を作り、歌うといったミュージシャンが現れます。
その代表的なアメリカのミュージシャンといえば、ボブ・ディランでしょう。

ボブ・ディラン
更にイギリスからは、ビートルズがデビューし、大旋風を巻き起こします。

ビートルズ
しかし、ボブ・ディランにしろビートルズにしろ60年代に活躍したミュージシャンの多くは自分たちで曲を作ってはいましたが、シンガーソングライターとは呼ばれていませんでした。まだ、60年代にその言葉はなかったのです。
シンガーソングライターという言葉が出てきたのは70年になってからのことで、そのきっかけはアメリカでジェームズ・テイラーが注目されたことから始まります。
60年代に自分たちで曲を作っていたミュージシャン達、特に60年代後半の作品はベトナム戦争などの影響もあり、平和や革命、または怒りといった大きなテーマを主にするものが多くを占めていました。それが70年代に入ると、そういったものとは一線を画し、身のまわりの出来事や自分の内情をさらけ出したナイーブな作品が出てきます。シンガーソングライターのブームが静かにはじまりました。
ジェームス・テイラー
シンガーソングライターという存在そのものを知らしめることになった1970年の名作「スウィート・ベイビー・ジェイムス」です。これはジェイムス・テイラーの2ndアルバムにあたります。
デビューはビートルズが運営していたアップル・レコードから1968年に発売された「ジェームス・テイラー」ですが、残念ながら当時は話題になることはありませんでした。
アルバム「スウィート・ベイビー・ジェイムス」は、プライベートな体験を題材に人々の悲哀を描き出すというナイーブな内容となっていますが、メッセージ性がなくても受け入れられるということを証明してみせました。
本作に収録されており、ジェームス・テイラーの代表作のひとつである「ファイアー・アンド・レイン」は、友人の自殺を綴った作品と言われています。
翌1971年には、キャロル・キングが作ったシングル「君の友だち」が世界的に大ヒットしています。

スウィート・ベイビー・ジェイムス
Amazon.co.jp: ジェームス・テイラー : スウィート・ベイビー・ジェイムス - ミュージック
キャロル・キング
キャロル・キングといえば、「君の友だち」ですね。多くのミュージシャンがカバーしている大名曲です。
そのキャロル・キングは、作曲家として1960年代から既に知られる存在でした。しかし、一般的に知られるようになったのは1971年のアルバム「つづれおり」が大ヒットしたことによります。このアルバムは、全米で15週連続1位となり、その後は約6年にわたってチャートにランクインしていました。
ジェームス・テイラーが歌って大ヒットした「君の友だち」のオリジナルが収録されているのもこのアルバムです。
因みに、作曲家だったキャロル・キングに自らも歌うよう勧めたのはジェームス・テイラーだそうですよ。
60年代には、自作自演のミュージシャンというと、フォーク、ロックを問わずギターを弾いていることが多かったのですが、キャロル・キングはピアノを弾いていました。
キャロル・キングによってポップミュージックの世界でピアノがメインの楽器として注目されることにもなりました。

つづれおり
エルトン・ジョン
ジェームズ・テイラーが注目されたことに続き、アメリカではキャロル・キングが大活躍しましたが、イギリスでは何と言ってもエルトン・ジョンでしょう。
エルトン・ジョンとキャロル・キングが注目されたことで、シンガーソングライターといえばピアノというイメージが出来ました。
この時期のエルトン・ジョンを代表するアルバムと言えば、1970年発売の2ndアルバム「僕の歌は君の歌」です。原題はシンプルに「Elton John 」ですが、邦題は同名の大ヒットしたシングルに合わせてあります。

僕の歌は君の歌
永遠の名曲「ユア・ソング(僕の歌は君の歌)」を収録し、世界的なブレイク作となったセカンド・アルバム。自身のピアノやポール・バックマスターによるストリングスなど、厳かで品の良いアレンジが光る
https://www.amazon.co.jp/%E5%83%95%E3%81%AE%E6%AD%8C%E3%81%AF%E5%90%9B%E3%81%AE%E6%AD%8C-%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3/dp/B01K24FDY6Amazon.co.jp: エルトン・ジョン, バーニー・トーピン, ポール・バックマスター : 僕の歌は君の歌 - ミュージック
エリック・ジャスティン・カズ
最後に、大ヒットしたというわけではありませんので知る人ぞ知るといった感じではありますが、70年代のシンガー・ソングライター・ブームの真っ只中で発売された1972年のアルバム「イフ・ユアー・ロンリー」をご紹介します。
アーティストはエリック・ジャスティン・カズ。エルトン・ジョンやキャロル・キングに比べると知名度では1歩も2歩も引けをとりますが、作品は最高です。
ジャズ・ミュージシャンによる洗練された演奏で奏でられるフォーキーなサウンドは、エリック・ジャスティン・カズのみならず、70年代のシンガー・ソングライターの代表作といえます。

イフ・ユアー・ロンリー
このアルバム、プロデューサーがBLUE NOTEのMichael Cuscunaで、ストリングス・アレンジがEumir Deodato。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A4%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%A6%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BC-%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%BA/dp/B00004U8WA/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1496893735&sr=1-1&keywords=%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%BAAmazon.co.jp: エリック・ジャスティン・カズ : イフ・ユアー・ロンリー - ミュージック
60年代後半の、今にも暴動を起こしそうなロックに対するアンチテーゼのような「シンガーソングライター」。しかし、時代は繰り返す!70年代後半にはシンガーソングライター・ブームのアンチテーゼのようにグラムやパンクといった新しいロックが出てくることになるんですね。
ただ、70年代の音楽と言うのは、今の時代にはピッタリのように思えます。聴いていてとても心地よいです。お試しください。