イージーリスニングも新時代へ
1970年代の中頃になると、音楽の世界ではディスコ・サウンド・ブームが起こります。 イージーリスニングの世界でもこのディスコ・サウンド・ブームの影響を受けて、ディスコ調にアレンジされた曲はもちろんのこと、 過去の代表作までもディスコ調にアレンジし直したものが発売されたりもました。
”グランド・オーケストラ”から”ソロ楽器”を中心とするスタイルへ
上記のようなディスコ・サウンド・ブームが、その後のイージーリスニング界にも変化をさせることになります。 元来イージーリスニングの魅力は、管弦楽器の音色と心地よいサウンドによって織り成される美しい演奏にあり、 ディスコ・サウンド・ブームでの作品は当初のそれとはかなり違い、違和感を持つ物になってしました。 この頃から〝グランド・オーケストラ〟の人気は徐々に下降線を辿り、それに代わり、ピアノなどのソロ楽器を中心としたイージーリスニングに 注目が集まるようになります。その代表格はリチャード・クレイダーマンであり、彼の優しいピアノの音色は世界的に大人気を得ることになります。 これはイージーリスニング・ファンが、ディスコ・サウンド・ブームの反動から心地よい優しい音楽を求めていた結果なのかもしれません。
リチャード・クレイダーマンの他にも、トランペットやパン・フルートなどを使った数多くのアーティストが登場しましたが、 彼らの特徴はオリジナル曲を数多く発表したことが挙げられます。 従来のグランド・オーケストラが、カヴァー演奏を中心とするアルバム製作に重点を置いていたことと比べれば、まさに対照的な結果です。
イージーリスニングからニューエイジ・ミュージックやヒーリング・ミュージックへ
1980年代に入ると、ジョージ・ウィンストンなど、自然の風景などを連想させるどこかピュアーでクリアーな サウンドを特徴とするアーティストが登場します。 これらのアーティストのサウンドは、それまでの「イージーリスニング」とは方向性が異なるもので、「ニューエイジ・ミュージック」と呼ばれ、 現在の「ヒーリング・ミュージック」へと繋がっていきます。
では、「イージーリスニング」と「ニューエイジ・ミュージック」ではどこに違いがあるのでしょうか? 一番の違いは、聴き手側にあるのではないでしょうか? 「ニューエイジ・ミュージック」や「ヒーリング・ミュージック」は、聴き手が音楽性よりも癒しそのものを求める度合いが強いように思われます。しかし、従来の「イージーリスニング」は、聴き手がより積極的に音楽性を楽しむ存在と言えるのではと思います。
最後に
1980年代中頃と言えば、日本がバブル経済の時代が終焉した頃ですが、その頃は、世界的にも今までがんばってきた人々が肉体的にも精神的にも疲れ果てていた時代なのではなかったのではないでしょうか?そういった時代だからこそ、なおさら心の均等を求めてイージーリスニングは 「ニューエイジ・ミュージック」や「ヒーリング・ミュージック」として姿を変えて生き残っているのではないでしょうか??
