気だるい夏はやっぱりチルアウト!『サマージャム'95』!
今日も寒~い1日になりそうだなと思い続けた冬が終わり、待ちに待った春が来た。
桜が咲いて、GWが来て、そして気付けば暑っつう~な夏が近づいて来る。
すると自然と頭の中でこんな曲が掛かったりしてね!と毎年夏になると聴きたく一曲、スチャダラパーの『サマージャム'95』。

シングル『サマージャム'95』
スチャダラパーお得意のユルめリリック(歌詞)に、涼しげな心地よい音を絡めたサマーチューン。ダラダラとしたよくある夏の一日を描いた名曲だ。
若者の目線で構成されたリリックで、1番から3番まで夏の情景を連想させる。
1番のリリックは、昼真っ只中の"炎天下"で過ごす過酷さを歌い、2番では同曲タイトルにもなっている”サマージャム'95”という夏がテーマのテープをせっせと作り、ドライブでキャワユイギャルを乗っけて”この曲好き”なんて言わせたいと妄想する。

スチャダラパーの3人(左からシンコ、ボーズ、アニ)
3番は、昼下がりから夕方、夜にかけての時間をどうすれば有意義に過ごせるかを歌っている。
具体的には”昼間はね 奴でも食って”や”夕方からフロ ザバッといって”といかに涼をパーペキに楽しむかを描きつつ、最後は”夏、クラブ、ナンパ、思い出!”とやはり女の子を求めてしまう。また、そうした青年の致し方ない習性を痛快にリリックへと落とし込んでいる。
他にも"プール帰り"、"週間予報は晴ればかり"、"再放送のドラマ"など、夏休みらしいフレーズを散りばめ、暇な大学生かフリーターの1日を描いている(注:筆者の勝手なイメージ調べ)。
アルバムからシングルカットされた『サマージャム'95』
スチャダラパーの10枚目のシングルである『サマージャム'95』。
同曲は1995年4月26日に発売されていたアルバム「5th WHEEL 2 the COACH」からシングルカットされた。シングルとしての発売は、同年の夏ど真ん中、7月19日だった。

アルバム「5th WHEEL 2 the COACH」
同曲は、オリコンチャートに3回登場し、最高位は56位だった。
作詞・作曲・編曲はもちろんスチャダラパーだが、他の収録曲では、「サマージャム'95 (DIAMOND-D Remix)」「サマージャム'95 (クボタタケシ・リミックス)」などアレンジの異なる同名曲があった。
本当に作られた『サマージャム'95』のテープ
2014年に大阪で開催されたイベント「大LB博覧会」において"サマージャム'95 ORIGINAL"なるテープが販売された。
同イベントは、スチャダラパーとTOKYO No.1 SOUL SETのデビュー25年目を祝うもので、Little Bird Nation(略してLB)というスチャダラパーに近しいアーティストが多数出演した。
その際、本稿『サマージャム'95』のリリックで登場する、夏用のテープ”サマージャム'95”が実際に販売されていたという。

テープ「サマージャム'95 ORIGINAL」

ちなみに『サマージャム'95』プロモ12inch
販売に至る経緯やテープの制作者の情報に関して、公式のアナウンスはないが、1995年の同シングル発売当時に、MCのアニがセレクトした”サマージャム'95”が作られており、そのマスターテープが発見され、同イベントに合わせ生産されたという。
このテープはイベント会場でしか購入できなかったため、関西に多く購入者がいると予想されている。
情報によると、同曲の元ネタであるボビー・ハッチャーソン の「 モンタラ 」 が1曲目にセレクトされているそう。そこにアニのユーモアを感じられる。
サザンオールスターズの名曲の歌詞からインスパイア!?
サマーチューンである『サマージャム'95』だが、同じく夏を感じさせるアーティスト、サザンオールスターズの名曲から歌詞を引用している。
引用の該当楽曲は、1982年に発売されたシングル「夏をあきらめて」。発売は7月21日とこちらも夏ど真ん中で世に放たれたサマーチューンである。ただし、こちらは切ないバラードとなっている。
桑田佳祐が若い頃、歌詞に登場する「Pacific Hotel」という上原謙・加山雄三父子が、神奈川県茅ヶ崎市で経営していたホテルでアルバイトをしており、ホテルでの出来事を題材として取り扱っている。

「夏をあきらめて」が収録されたアルバム「NUDE MAN」(1982 Original Analog LP)
2番の歌詞に、女性とホテルの一室で過ごす様子を語る際に用いられた”熱めのお茶”と”意味シンなシャワー”というフレーズがあり、『サマージャム'95』でも”熱めのお茶””意味深なシャワー”というリリックが用いられている。
『サマージャム'95』の場合は、このリリックの前に、車に”キャワユイギャル乗っけて”ドライブをしており、そこで”サマージャム'95”をBGMに夢を語り、ウットリさせるという描写がある。
そして、”そーなるって事はもーあれだ”と含みを持たせた直後に、前述の引用したリリックが登場する。
つまり、ホテルでの男と女を歌ったシングル「夏をあきらめて」の歌詞を引用することで、ホテルへ直行したい健康成人男性の思惑をムフフと表現しているのだろう。
そう考えると、なんて危険なリリックなんだろう。当時最凶のギャングスタラップだったかも知れない。

『サマージャム'95』の次のシングルは「クライング・ドゥービーマン」!
『サマージャム'95』がシングルカットされる前年に、小沢健二との「今夜はブギーバック」のヒットがあった。『サマージャム'95』は、日本語のユニークなラップが一般に浸透し始めた頃のなんともユルい一曲であり、いまだに愛される名曲である。
ちなみに近年では、鎮座DOPENESS、環ROY、U-zhaannによる同曲のカバーも制作されており、日本語ラップのクラシックのひとつであることを改めて確認することができる。
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