留まることを知らないのは性への探求心だけではありません。シリーズも底なしのエマニエル夫人

留まることを知らないのは性への探求心だけではありません。シリーズも底なしのエマニエル夫人

独特の映像の美しさ で70年代に大きな話題となった官能映画エマニエル夫人。当時としてはセンセーショナルだった性の解放というテーマが受け、パリにある「凱旋」という映画館では11年間も上映を続けました。その後、数々の続編が作られていきますが、エマニエルと名のつく作品は全世界で70を超えるほどになっています。


Emmanuelle

エマニエル夫人、なんと官能的な響きなのでしょう。映画の内容を知っていようといまいと関係なく、官能的な世界に引っ張り込まれそうになります。

監督:ジュスト・ジャカン
脚本:ジャン=ルイ・リシャール
製作:イヴ・ルッセ=ルアール(フランス語版)
主演:シルヴィア・クリステル
音楽:ピエール・バシュレ
撮影:リシャール・スズキ
配給:ヘラルド
公開:1974年6月26日
上映時間:91分

エマニエル夫人

「エマニエル夫人」とは、1974年に公開されたフランス映画です。ファッション写真家として有名だったジュスト・ジャカンが監督しており、そのためか、ソフト・フォーカスを基調とし、全てのシーンがまるで絵画のような美しい映像となっています。
官能映画であるにも関わらず「エマニエル夫人」は世界的に大ヒットし、パリのシャンゼリゼ通りにある「凱旋」という映画館では何と11年間も上映を続けたそうです。

映画が大ヒットした要因のひとつにピエール・バシュレが担当した美しい音楽があげられます。聴けば映画と直結するテーマ曲も世界的にヒットしています。

Raymond Lefevre 映画「エマニエル夫人」 Emmanuelle - YouTube

1974年フランス制作で監督はジュスト・ジャカン。主演のシルビア・クリステルはオランダ出身でモデルの仕事をしていましたが、1972年に映画界にデビュー。2作目となった「エマニエル」で一躍有名となり、その後十数本の映画に出演しました。音楽担当のピエール・バシュレはロック・バンドでの活動をしていたようですが、「エマニ...

そして、主役のエマニエル夫人を演じるのは、これが2作目となるシルビア・クリステルです。美しくも初々しいシルビア・クリステルは、まさにはまり役といえます。

生年月日:1952年9月28日
没年月日:2012年10月17日(満60歳没)
出生地:ユトレヒト
国籍:オランダ

シルビア・クリステル

この映画が画期的だったのは官能恋愛映画だったにもの関わらず、多くの女性が映画館に足を運んだというところにあります。当時は社会現象となるほど珍しいことでした。
エロチックではあっても嫌らしくない、美しい映像と音楽、そして何よりもシルビア・クリステルの初々しい魅力があったからこそ多くの女性ファンをも獲得したといえます。

【ストーリー】
エマニエルは、バンコクに住む外交官の妻で、幸せな日々を過ごしていました。しかし、裕福ではあっても刺激のない毎日に退屈していたところ、エマニエルは知人の紹介で「性の儀式」を受け入れることになります。最初は戸惑い大人しかったエマニエルですが、南国の明るい日差しの中、徐々に性の解放とその真理を追求するため自分を開放し、大胆な女性へと変貌していくのでした。

この後、続編が作られますが、性に目覚めたエマニエルが「真実の愛」を見つける旅を続けるというのがシリーズを通してのテーマで、内容としては変わりません。

映画:「エマニエル夫人」より

Emmanuelle 2

「エマニエル夫人」の大ヒットを受けて、翌年1975年には続編となる「続・エマニエル夫人」が公開させます。主演はもちろんシルヴィア・クリステルですが、監督も脚本も、そして音楽も担当は変わっています。

原題:EMMANUELLE II L'ANTI VIERGE
製作:1975年
公開:1975年12月20日 フランス映画 90分
監督・脚本:フランシス・ジャコベッティ
脚本:ロベール・エリア
出演:シルヴィア・クリステル

続・エマニエル夫人

注目すべきは、やはり音楽でしょうね。前作があまりにも素晴らしかったので、後任の音楽担当はかなりのプレッシャーがかかったと思いますが、「続・エマニエル夫人」の音楽はフランシス・レイです。
フランシス・レイといえば、「男と女」、「愛と哀しみのボレロ」、「ある愛の詩」など数々の映画音楽を手掛けている巨匠ですね。さすがに前作に負けず劣らず素晴らしい楽曲を提供しています。

シルビア・クリステルの歌声が、なんとも初々しく可愛らしいですね。

Goodbye Emmanuelle

前作「続・エマニエル夫人 」から2年後、シリーズ最終作「さよならエマニエル夫人」が公開されます。1977年のことです。

続編とはいえ、またまた制作スタッフは監督はじめ脚本も音楽も変わっていますが、内容に大きな変化はありません。タイトルからも分かるように、これがシリーズの最終作です。

監督:フランソワ・ルテリエ
製作:イヴ・ルッセ=ルアール
脚本:フランソワ・ルテリエ、モニク・ランジェ
撮影:ジャン・バダル
音楽:セルジュ・ゲンズブール

さよならエマニエル夫人

フランシス・レイの後釜となると、音楽はこれまた大変だったことでしょう。受ける音楽家が居ないのではないかと、こちらが思わず心配してしまいそうになるほどです。しかし、フランスという国は懐が深いですね。この大役を立派に努め上げたのは、なんとジェーン・バーキンの長年のパートナーであるフランスの問題児、セルジュ・ゲンズブールです。
心配無用の美しい曲ですね。

いくら人気があるとはいえ、同じような内容でのシリーズには限界があったのでしょう。シルビア・クリステルは相変わらず美しいとはいえ流石に飽きてきます。
しかし、ここで終わらないのが「エマニエル夫人」の面白いところです。ここから「エマニエル夫人」は迷走ともいえる予想外の展開をみせます。

and more

実は「エマニエル夫人」には原作があります。エマニュエル・アルサンが書いた小説「エマニエル夫人(原題はエマニエル)」がそれで、日本では浪速書房より1970年に発行されています。

この小説を原作として映画は作られているのですが、シルヴィア・クリステル主演の「エマニエル夫人」の何と5年も前の1969年に日本では未公開ながらイタリアで「アマン・フォー・エマニュエル」という映画が製作されており、これが最初の映画「エマニエル夫人」です。

さて、「さよならエマニエル夫人」で最後と思われたシリーズですが、エマニエル人気は衰えることがなく新作が7年後の1984年に「エマニュエル(原題:Emmanuelle 4)」として公開されます。
エマニュエルを演じるのは、シルヴィア・クリステルとミア・ニグレンのダブルキャストです。

ミア・ニグレン

何故エマニエル(この作品ではエマニュエル)が2人登場するのかといいますと、かつての恋人を見かけたシルビア・クリステル演じるエマニュエルは、歳を取った容姿に不安を覚え美容整形手術を行い、ミア・ニグレン演じる若々しいエマニュエルとして生まれ変わって登場するという驚きの展開となります。驚愕といっていいかもしれません。

永遠ともいえる若さを手に入れたエマニエルは、主演女優を変えながら次々と新作を発表していきます。

1986年「エマニエル ハーレムの熱い夜(Emmanuelle 5)」 監督:ヴァレリアン・ボロヴツィク 主演:モニーク・ガブリエル
1988年「エマニエル カリブの熱い夜(Emmanuelle 6)」 監督:ブルーノ・ジンコーネ 主演:ナタリー・エール
1992年「エマニエル パリの熱い夜(Emmanuelle 7)」 監督:フランシス・ルロワ 主演:アニー・ベラック

エマニュエル・ザ・ハード

7作目の「エマニエル パリの熱い夜」ではヴァーチャル・リアリティ器械を使って快楽を得るまでになっています。なんとも凄まじい限りですね。しかし、本作にはシルヴィア・クリステルが出演しているのがファンには嬉しいところです。

世界を飛び回って大活躍のエマニエルですが、1993年にはついに「エマニュエル・ザ・ハード (Emmanuelle made-for-TV films)」というフランスのテレビシリーズとなります。

テレビシリーズは、1994年にはアメリカでも「アメリカ・スペースシリーズ -Emmanuelle in Space series」として制作されるようになり、2000年「アメリカ・2000シリーズ -Emmanuelle 2000 series」、2004年「プライベートコレクションシリーズ -Emmanuelle Private Collection series」、2011年「スルータイムシリーズ -Emmanuelle Through Time series」とその人気は衰えていません。

その他にも、世界各国でエマニエル名義の作品が作られており、Black Emanuelle(1975年)」があれば、「White Emmanuelle (1976年)」も「Yellow Emanuelle(1977年)」あり、「Hong Kong Emmanuelle (1977)」とくれば、「Tokyo Emmanuelle (1975)」といった具合に70作品以上に上るとされています。

もう、何が何だか分からなくなりますが、「エマニエル夫人」という言葉にはいつの時代にも人々を惹きつける魔力が潜んでいるということなのでしょうね。

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