Serge Gainsbourg
ギョロリとした目に無精髭、若い頃に見たセルジュ・ゲンスブールはとてもカッコいいとは思えなかった。それが年を重ねるにつれカッコいいと思えてくる。つまり大人の男。大人の男が憧れる大人の男といってよいでしょう。
ジェーン・バーキンをはじめとして、アンナ・カリーナ、マリアンヌ・フェイスフル、ペトゥラ・クラーク、ブリジット・バルドーにカトリーヌ・ドヌーヴと他にも数えきれない女性と浮名を流しました。
音楽家、映画監督、俳優にして当代随一の色男、セルジュ・ゲンスブール。そして、彼と関りを持った女性に素晴らしい楽曲をプレゼントしたことでも知られています。

セルジュ・ゲンスブール
女性アーティストたちにセルジュ・ゲンスブールが作った曲を歌わせたコンピレーション・アルバム「ゲンスブールを歌う女たち」というものがあります。
収録されている女性は、ジェーン・バーキン 、ブリジット・バルドー、ミレイユ・ダルク、カトリーヌ・ドヌーブ 、バンブー 、クレール・ダスタ、イザベル・アジャーニ、ジョエル・ウルスル、シャルロット・ゲンスブール 、バネッサ・パラディ。
セルジュ・ゲンスブールの娘であるシャルロット・ゲンスブールが含まれていますが、本作は「セルジュ・ゲンスブールの女性遍歴リスト」アルバムとも言われています。それにしても錚々たるメンツがそろったものです。

ゲンスブールを歌う女たち
セルジュ・ゲンスブール自身の曲を女性シンガーたちに歌わせた曲を集めたコンピレーション・アルバム。セルジュの楽曲の普遍性と幅広いアレンジ力、プロデュース力が分かる一枚だ。
https://www.amazon.co.jp/%E3%82%B2%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%96%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%92%E6%AD%8C%E3%81%86%E5%A5%B3%E3%81%9F%E3%81%A1-%E3%82%AA%E3%83%A0%E3%83%8B%E3%83%90%E3%82%B9/dp/B00005FEEOAmazon.co.jp: オムニバス, ミレイユ・ダルク, カトリーヌ・ドヌーブ, バンブー, クレール・ダスタ, イザベル・アジャーニ, ブリジット・バルドー, ジェーン・バーキン, ジョエル・ウルスル, シャルロット・ゲンスブール, バネッサ・パラディ : ゲンスブールを歌う女たち - ミュージック
アルバムの曲目を見てみると、フランス・ギャルの「夢みるシャンソン人形」、フランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」、ジェーン・バーキンの「無造作紳士」、ブリジット・バルドーの「ハーレー・ダヴィッドソン」、アンナ・カリーナの「太陽の真下で」、ヴァネッサ・パラディの「タンデム」、イザベル・アジャーニの「マリン・ブルーの瞳」、カトリーヌ・ドヌーヴの「神様はハバナタバコが好き」などなどめまいがしそうです。
このアルバムを聴くと、セルジュ・ゲンスブールがいかに多くの女性に愛されていたかということと同時に、楽曲を通して多くの女性に愛された理由というものも何となく見えてきます。
素晴らしい才能という他はありません。それではご紹介しましょう。
Je t'aime... moi non plus
多くの女性と浮名を流したとはいえ、セルジュ・ゲンズブールのパートナーといえば、やはりジェーン・バーキンですね。
セルジュ・ゲンズブールと出会ったのはジェーン・バーキンが20歳の時で、彼女の一目惚れだったのだとか。
セルジュ・ゲンズブールは、ジェーン・バーキンとはもっとも長い時間を共に過ごし、もっとも多くの楽曲を提供しています。多くの名曲、ヒット曲がありますが、代表曲となると「 ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」でしょう。
セルジュ・ゲンスブール作詞・作曲によるジェーン・バーキンのデビュー曲となったこの曲は、過激な性描写と彼女のあえぎ声をも含むエロティックな楽曲です。
この曲は反感も買いましたが、イギリス、オーストリア、ノルウェー、スイスなどでチャートの1位を獲得するなど大ヒットとなりました。
「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」は、そもそも女優のブリジット・バルドーと不倫の関係にあった1967年当時、ブリジット・バルドーのために書いたものでした。
しかし、ブリジット・バルドーの当時の夫であるギュンター・ザックスの怒りを買うことを避けるため、この曲はリリースされませんでした。
ブリジット・バルドー・バージョンのこの曲がリリースされたのは1986年のことです。
ブリジット・バルドーによるあえぎ声、セクシーですね。それにしても、大女優や最愛の恋人にこのような卑猥な曲を歌わせるセルジュ・ゲンズブールの大胆さには感動するしかありません。
因みにこの曲は、現在では多くのアーティストにカバーされています。
Les Sucettes
ブリジット・バルドー以外にも、セルジュ・ゲンスブールと関わった大女優といえば、アンナ・カリーナやイザベル・アジャーニなど知的で美しい女性の名が何人も挙がりますが、中でもカトリーヌ・ドヌーブは格別ですね。
セルジュ・ゲンスブールばかりが何故モテる!と思わず妬んでしまいそうになります。が、提供しているのはどの曲も手抜きなしの愛情を感じるものばかりですから当然の結果なのかもしれませんね。
とはいえ、恋愛の対象にならない場合はセルジュ・ゲンスブールはからかってみたくなるようですね。その被害(?)にあったのがフランス・ギャルです。
「ゲンスブールを歌う女たち」にも収録されている「夢見るシャンソン人形」は大ヒットし、フランス・ギャルはフレンチロリータという伝統の始まりとなるほど成功しています。
「夢見るシャンソン人形」以降もセルジュ・ゲンスブールが提供した曲は次々にヒットしているのですが、大きな問題と会ったのが「アニーとボンボン」です。
おそらくセルジュ・ゲンスブールは、フランス・ギャルというよりもアイドルを嫌悪していたのではないでしょうか。楽しげな曲「アニーとボンボン」もヒットしているのですが、この曲の歌詞にある「sucette(スュセット)」という単語はロリポップ・キャンディを意味すると同時に、性行為を意味する隠語でもあったのです。
売出し中のアイドルに対して何ということを!意味が分からなかったフランス・ギャルは当初朗らかに歌っていましたが、意味を知ってからは人間不信になり部屋に閉じこもってしまったのだとか。
そもそも大ヒットした「夢見るシャンソン人形」からして、乗りの良い曲とは裏腹にアイドルに蝋人形という死のイメージをだぶらせているのですから、驚きを通り越してまたもや感動するしかありません。
もっともアイドルだけではなく、セルジュ・ゲンスブールは身内にも容赦はありません。娘のシャルロット・ゲンスブールとデュエットしている「レモン・インセスト」も物議をかもした1曲です。
「レモン・インセスト」はショパンの「練習曲第3番」をベースにしてセルジュ・ゲンスブールが近親相姦を連想させる歌詞をつけたものです。それを録音当時まだ13歳だった娘とデュエットしているのです。
しかも、この曲のミュージック・ビデオでは、セルジュ・ゲンスブールが上半身裸、シャルロット・ゲンスブールがシャツとパンティだけの姿で出演しているという念の入れようなのですから言葉を失ってしまいます。
やりたい放題やって美女にモテまくるなんて、なんと男冥利に尽きることでしょう。だからこそ美しい音楽と共に、セルジュ・ゲンスブールからいつになっても目が離せないんですよね。