フロッピーディスクに保存?ソニーが生んだ個性派デジカメ『デジタルマビカ』
1997年に誕生し異彩を放ったデジタルカメラ
『ソニー デジタルマビカ(Digital Mavica)』
当時は内蔵フラッシュメモリかメモリーカードにに記録するものが主流。
内蔵フラッシュメモリは容量がいっぱいになるとそれ以上撮影できないのが悩みであった。
メモリーカード対応のデジカメはカードドライブや専用ソフトによるシリアルケーブル転送など読み取るための機器が別途必要だという弱点があった。
そこで、ソニーが目を付けたのがパソコン用に広く普及していた3.5インチのフロッピーディスクを記録媒体に使うことであった。
3.5インチ2HD (1.44MB) のフロッピーディスクに保存することで、一般的なパソコンであればどれでも簡単に読み込むことができる。
そして、フロッピーディスクは1枚数十円程度と非常に安かった。
撮影時に何枚か用意しておけば容量がいっぱいになれば空のフロッピーディスクと差し替えるだけ。
パソコンへのデータ転送の容易さと記録媒体のランニングコスト低減の両方を一挙に解決。
画期的なデジタルカメラと言われた。
デジタルマビカの前身『Mavica(マビカ)』

SONY Mavica(MVC-C1)
1997年7月10日発売 初代デジタルマビカMVC-FD5
現在は1000万画素以上が当たり前だが、MVC-FD5は41万画素(有効38万画素)のCCD。
フロッピーディスク1枚にファインモードで約20枚前後、ノーマルモードなら30~40枚程度の写真が保存できた。
2.5型TFT液晶を搭載し、記録モードはVGA(640×480ピクセル)。
画像形式はJPEGで、特別なソフトが必要なく手軽にパソコンで使用できた。

MVC-FD5(1997年7月10日発売)
動画で見るデジタルマビカの使い方
利便性が評価され「デジタルカメラ=ソニー」というブランドイメージを確立した『デジタルマビカ』シリーズ
フロッピーディスクを格納するためにサイズは通常のデジカメよりも大きく、記録速度が遅く約10秒もかかってしまうなどデジタルマビカにも弱点はあった。
しかし、コストパフォーマンスに優れコンビニでも購入できたフロッピーディスクを記録媒体に使った利便性が高く評価され、官公庁・教育現場を中心に法人に受け入れられ、そして欧州・北米などの海外市場でも人気商品となった。
ソニーはデジタルマビカシリーズの新製品を続々と市場に投入。
「デジタルカメラ=ソニー」というブランドイメージを確立することに成功した。
主な『デジタルマビカ』シリーズ製品

MVC-FD71(1998年8月1日発売)

MVC-FD91(1998年10月10日発売)

MVC-FD90(2000年6月1日発売)

MVC-FD75(2001年発売、日本国内未発売)

MVC-FD200(2002年2月13日発売)
モデルチェンジを重ねるに従い記録速度や記憶媒体の能力向上も図られ、4倍速ディスクドライブやフロッピーディスク型のメモリースティックアダプタを利用できる製品も発売。
中期の製品以降はディスクドライブとメモリースティックスロットの両方を搭載するモデルが標準となった。
高画質化によるデータ容量増加に対応していくため、2000年以降はCD-Rドライブを搭載し、8cmサイズのCD-Rを記録媒体に用いる「CDマビカ」シリーズも並行して発売。

MVC-CD1000(2000年8月1日発売)
フラッシュメモリが大容量化、コストも安くなるにつれ、フロッピーやCD-Rに保存できるメリットは薄れていき、デジタルマビカシリーズは2002年に、CDマビカシリーズは2003年をもって新製品の発表を終了した。
しばらくは日本国外を中心にその後も販売され続けたものの、2000年代中頃にはソニーのデジタルカメララインナップからは姿を消し、ソニーの製造・発売するデジタルカメラ製品はサイバーショットシリーズへと統合された。
現在では「フロッピーって何それ?」なんて若者も多く、デジタルカメラ自体の性能だって当時とは比較にならない程に進化している。
だが、フロッピーに保存するという画期的なアイデアや、初期のゴテっとした愛らしいフォルムは多くのユーザーの記憶に残り続けている。