シリーズ新三部作のスタートとなる、エピソード7「フォースの覚醒」に続き、昨年はスピンオフ作品である「ローグ・ワン」も公開。更に今年はエピソード8「最後のジェダイ」公開が控えている、息の長い人気映画。それがミドルエッジ世代の永遠のバイブル、「スターウォーズ」シリーズだ!
思えば、自分が最初に眼にしたのは、1978年に劇場公開されたエピソードⅣの「新たなる希望」だった。未だにその衝撃と感動は我々の胸に刻み込まれて色褪せないのだが、幸い今ではDVDやブルーレイのソフト化と、高画質大画面TVの普及により、いつでも好きな時にあの感動を自宅で楽しむことが出来るようになっている。

これは当時の日本の雑誌に掲載されたイラスト。
だが、やっぱり思い出すのは、初めてVHSビデオを借りて見た時の、あのドキドキと感動!
そこで今回は、この「新たなる希望」の初版VHSソフトの日本語字幕翻訳について、もう一度振り返ってみたいと思う。
今では当たり前となっている訳語が、まだ定着していなかったこの時代。実はトンでもない日本語訳が出現するので、マニアの中にはこのVHSソフトを大事に保管していたり、また中古ソフト屋を探している方もいるくらいだ。
今や主流となりつつあるネット配信。それが始まる遥か昔の80年代、初めて自分の家で眼にしたスターウォーズに、まさかこんな日本語字幕が!?
さあ、今こそその思い出を振り返ってみよう。
まずは、有名なOPシーンから。

後の伝説は、この字幕から始まった!この部分の翻訳は、現在と比べて余り変化は無い。

残念ながら、初版VHSリリースの時点で、既に「EpisodeⅣ」の字幕が入ってしまっているのが、お分かり頂けると思う。
この初版VHSビデオでは、いわゆる「特別編」製作以前のバージョンで収録されているので、CG合成シーンやラストのXウイングによるデススター総攻撃など、今見ると多少安っぽい印象が強いのが残念だ。また、一部音楽や効果音も違っていたりするので、マニアの方はその辺りも聞き比べてみては?

これが当時リリースされた、記念すべき初版VHSビデオ!

こちらはその後再発されたビデオ。この時はプラスチックのパッケージに変更されていた。
この初版VHSソフトで目立つのは、TVの地上波放映では当たり前の、「ある親切な配慮」が、この時点で既に行われていること。
その配慮とは・・・、なんと、今どの場所で物語が展開しているか?視聴者にちゃんと字幕で教えてくれるのだ!
例えば、

『反乱軍宇宙艇・内部』の字幕

『惑星タトウィーン』の字幕

『ファルコン号内』の字幕

『惑星ヤヴィン』の字幕
などなど。
どうだろう?まるで日テレで放送中の映画でも見ているかの様な、このサービスっぷり!
まるで現在の洋画TV放映状況を、予言したかの様なこの日本独自の収録こそ、まさにコレクターにとってのマストアイテムと言えるだろう。
マニアが一番気になる訳語はどのように翻訳されていた?
さて、次はマニアが一番気になる部分。
現在ではもはや日本語化している様な訳語、「フォース」「ライトセーバー」「ジェダイ」などが使用されず、何故か無理に漢字の訳語が多用されている点だ!
果たして初版VHSソフトでは、どの様な日本語で訳されていたのだろうか?
まずはキャラクターの固有名詞から。
日本語字幕では、「砂男」

逃げたR2D2を心配する、ルークとC3PO。 しかし、「砂男」って・・・。

原語の「サンドピープル」を直訳して「砂男」となったようだ。
現在の字幕では、もちろん「砂の民・サンドピープル」に修正されている。
日本語字幕では、「ロボット」

これも公開当時の認識を良く現した字幕だと言える。

これは、わざとチューバッカにチェスで負けろ、とハン・ソロに言われてC3POが返したセリフ。
現在では「ドロイド」に統一されている。
日本語字幕では、「大猿」

「大猿」って・・・。いくらなんでも見たまんまじゃないか。

ちなみに、ハン・ソロはちゃんと「チューイー」と言っている。
これも、現在では「ウーキー族」に修正されている。
日本語訳字幕では、「機動歩兵」

エピソードⅣの中でも、屈指の色っぽいシーン!
現在この部分の字幕は、なんと「チビッコ部隊」!
続いて、有名過ぎる用語から。
日本語字幕では「光速圏」

ハイパースペースという訳語が完全に定着している現在では、「光速圏」という言葉の選び方と語感に惹かれる部分もあったりする。
現在のソフトでは、もちろん「ハイパースペース」に統一。
そして、いよいよ最重要単語である「フォース」「ライトセーバー」「ジェダイ」!
日本語字幕では「光線剣」に「共和騎士」

光線剣に共和騎士。確かに言いたいことは判るのだが・・・。
これは当然、「「ライトセーバー」と「ジェダイ」に修正されている!
日本語字幕では、「理力」

現代風に言い換えると、「フォースのダークサイド」。

この当時、「理力」の他に「原力」という訳語が使用される場合もあった。
これも現在では完全に「フォース」に統一されている。
現在では、もはや英語の通り「フォース」が一般的だが、この初版VHSの頃は、まだまだ英語表記をそのまま受け入れる感覚が無かったようだ。
そのため、他の翻訳では「原力」という?な訳語が使用されるなど、様々な日本語表記への努力と試行錯誤が行われていた形跡がある。
次に紹介したいのが、登場キャラの言葉使いだ。
まだシリーズ全体の感じが掴めていないためか、現在の視点から見ると?なセリフ回しが、結構多いことに気付く。
まるで時代劇の様な古臭い言い回しが多かったり、「えーっ、このキャラはこんな話し方しないよ!」というのが随所に見られるのが困り物だ。

フォースの力で気に入らない奴の首を絞める、ダース・ベーダー。
現在では、「私を疑うのか」と非常にシンプルな字幕となっている。

ファルコン号に乗り込む直前のシーン。
現在の字幕では、「お急ぎのようだから、早く乗ってくれ」。
やっぱり皮肉を込めて、若干丁寧に言っていることが判る翻訳になっているようだ。

これは、ルークがファルコン号を見て、その予想外の外見に思わず「ガラクタじゃないか!」と言うシーン。
現在の字幕では、「ポンコツだ」。
どちらも、けなしているのには違いが無い。

原語では「プロトン・トーピード」となっているこのシーンのセリフ
ここは、キャラの言葉使いとは趣旨が外れるのだが、どうしても紹介しておきたいシーン。
このシーン、実は「プロトン魚雷」が正しいのだが、何故かこのビデオでは「爆雷」と訳されている。
さて、どうだろうか?見てて頭がクラクラして来そうな、これら当時の日本語訳が持つ、独特の言葉のセンス。
果たして劇場公開フィルムにはどの様な訳語で出ていたのやら?当時劇場で鑑賞して、覚えておいでの方がおられたら、是非情報提供して頂ければ幸いです。
もはや有名過ぎるベイダー対オビワンの決闘シーン。
ここで、このVHSソフトの、日本語字幕翻訳以外の見所を一つ紹介しておこう。
これは、もはや有名過ぎるベイダー対オビワンの決闘シーン。

シリーズを追う毎に派手になって行く、ライトセーバー同士のアクションシーンだが、公開当時のバージョンで見ると、今となってはかなり地味な印象を受ける。
だが、現在の特別編とは違い、ライトセーバーの光線が後から足されていないため、一部で光線の合成が消えてしまっているカットが存在する!

画像の通り、完全に光線の処理が消えているカットなのが判る。
このシーン、実は現在のバージョンでも完全には修正されていなかったりするので、ここは要チェックだ!
「May The Force Be With You」の訳語
最後に、ファンなら誰でも知っているであろう有名なセリフ、「May The Force Be With You」。この訳語部分を紹介して終わることにしよう。
今でこそ、「フォースと共にあらんことを」や、「フォースと共にあれ」以外の訳は考えられないのだが、前述した様にこの時代は、「フォース」の訳語自体がまだ定まっていない時期。
ちなみに、この初版VHSでは基本的に「理力」と訳されているのだが、各シーンで微妙に「May The Force Be With You」の日本語訳の言い回しが異なっている。

現在の訳として一般的なのは、「フォースと共にあれ」辺りだろうか?
現在では、この部分は「フォースはいつも、君と共にある」。

ここは、最後のデススター攻略戦に向かう時に言うセリフ。
こちらのシーンも、現在では「フォースと共にあれ」。

このハン・ソロのセリフの訳も、「フォースの守りあれ」となっているのだが、これは逆にハン・ソロのキャラには合わない様な気がしてならない。
現在のバージョンでは、この部分は「フォースがついてるぜ」となっていて、実にハンソロっぽい!名訳だ!

ラストの決戦に向かう、共和国の戦闘機。
今回紹介した「スターウォーズ」シリーズ。実はソフトの再リリースの度に細部が修正・変更されて発売されることでも有名となっているが、この様に字幕の変遷に注意してシリーズを見返すのも、また面白い楽しみ方かも知れない。
まだお家に当時のVHSソフトをお持ちの方は、このGWの休みにでも是非チャレンジしてみては?