
宇宙を駆ける白馬の木馬!
今回は、『機動戦士ガンダム』(1979年)前番組の『無敵鋼人ダイターン3』(1978年)で アイディアとラフデザインが決められていた、母艦・ホワイトベースの大型キット(当時)の紹介です!
ホワイトベース 1/1200 1980年12月 1000円

同スケールのガンダム、ガンキャノン、ガンタンクだけではなく、ガンペリーまで付属していた豪華キット!
スケール違いのガンダムを2つ別個に数えると、この1/1200ホワイトベースは、事実上のガンダムプラモシリーズ第8弾。
しかし、大型サイズのキットのためか、この1/1200ホワイトベースは、ベストメカコレクションにはカウントされていない。
少し考えれば当たり前と思うかもしれないが、大きさが違うとはいえ、同じ1/1200スケールのムサイが既にベストメカコレクションにはラインナップされており、後の1981年4月には、小サイズ版ともいえる1/2400ホワイトベースが発売されるのだが、こちらはベストメカコレクションのラインナップに入っているのを考えると、どうやらこちらの大サイズ版ホワイトベースの方が、バンダイ的にはイレギュラー商品なのだと受け止めた方が良いだろうと理解できる。

プロポーション、出来的には満点! 最新のEXモデルよりもアニメどおりの優雅な雄姿!
模型としての出来自体は、ジャンル的にはSF艦船キットに入るので、ヤマトのメカコレクションシリーズで培ってきたSF艦船プラモのノウハウが惜しみなく投入されていて、プロポーションも構造もスケールモデルレベルの満点だと言えよう。
一方で、オマケの同スケールガンダム、ガンタンク、ガンキャノン、ガンペリーが付属(それ自体は、後のモビルアーマー等のシリーズでも、恒例のオマケ要素として定着するフォーマット)して、ホワイトベースの両サイドや中央のハッチが開いて、それらを収納できるというギミックは、この時期まだ残っていた「プレイバリューのある玩具」への残心が垣間見れるようで興味深い。

「ほーこれか! さ、さすが我が連邦軍の新鋭戦艦だな。この艦とガンダムが完成すれば、ジオン公国を打ち砕くことなど雑作もない」
また、初期バンダイのロットでは、箱の中にキャラクター設定図を彩色したポップ台紙が飾り用についていたこともあり、これらはある意味で、『機動戦士ガンダム』(1979年)企画が当初「主役メカがロボットではなく、白馬型ペガサスの宇宙船だった」つまり『宇宙戦艦ヤマト』の亜流的企画から始まっていたことを改めて考察に組み込んで咀嚼すると、ある意味この1/1200ホワイトベースは、実は主役メカの玩具だという仮想見立ても可能であり、いろいろな状況が俯瞰出来て面白い。

全体的なバランスも良く、シルエットも完璧。これがベストなホワイトベースだ!
この1980年12月のガンプラは、1/1200ホワイトベースと共に、1/144量産型ザクが新発売ラインナップに入っていた。
「子ども向けの玩具っぽい(幻の)主役メカ」の発売と同時に、金型流用とはいえ、これまでのロボット漫画ビジネスでは絶対に商品化されなかったであろう「ファンがガンダムという作品と、従来までの子ども向けロボット漫画との、一番違いを認識してブームを象徴したメカ」である、1/144量産型ザクより先に発売されたという事実も、実に面白い。

正面から見たホワイトベース。両サイドのハッチと、艦中央部のハッチが開いて、ガンダムやガンキャノン、ガンタンクやガンペリーを収納できるギミック付き!
もっとも、この1/1200ホワイトベースプラモデルは、「主役メカ玩具」の側面があるからといって、さすがに1/100ガンダムのようなクローバー仕様ではなく、スケールモデル準拠のリアルな出来。
若干、ボディ中央のガンペリーハッチの開閉ギミック用の爪などが興を削ぐが、気にしなければ気にしないでも構わないレベル(気になるのであればカットして、ハッチを接着で、はめ殺ししてしまえばいいだけのこと)。
アニメではメイン武装となる、左右ドーム部からのメガ粒子砲の展開収納ギミックなどを取り入れなかったのは、残念だが正解か。

リアビューも、巨大なエンジンブロックが迫力満点! 基本的に赤のパーツは赤いプラで成型されているのもポイント高し!
近年ではEXモデルで、もっと精巧で今風のプラモデル版ホワイトベースが、高価な価格で発売されたが、あれはあくまでガンダム歴史の隙間産業の生み出した派生戦艦デザインなどとの整合性を保つためのリファインであり、スパルタンすぎるシルエットといい、明らかに長すぎる機体前方両サイドのブロックといい、EX版はあくまで初作の『機動戦士ガンダム』に登場したホワイトベースとは似て非なる「ペガサス級の戦艦(しかも、後付けででっち上げられた設定からきている)」と割り切った方が良いだろう。

シリーズ中盤、地球上では何度もジオンの攻撃にさらされ被弾させられ、沈みかけたことも一度や二度ではない。
結果として、「組立てトイ」にも「純粋なディプレイモデル」にもなり切れずに、玩具テイストのプレイバリューを遺したスケールモデル風という、不思議な商品バランスに仕上がった(それはある意味で、この大型キット(当時)が、ガンプラ的には1/60ガンダム等と共に、1980年のクリスマス商戦用のアイテムであったことも関係していると思われる)が、上記したように玩具的な部分をオミットして制作すれば、ディスプレイモデルとしても充分な出来栄えに完成しやすい程度には、バランスは練られている。昨今厄介になっているPL法も、この頃はまだ施工前だったので、艦橋上部のブレードアンテナの薄さと尖り具合もちょうどいいシャープさに仕上がっている。

艦橋付近も緻密な出来。悠々とした名馬の首を思わせる!
逆に障害になった玩具要素としては、箱を開けた瞬間の見栄えと、塗装ができない小児層による組み立てでもそれっぽくなれるようにとの配慮で取り入れられた、この時期まだ珍しかったランナー単位の成型色分けなのだが。
色の部品ごとにランナーが分けられ、それぞれの色で成型されていること自体は、近年でもガンプラの基本仕様ではあるし、そうしたパーツ分割は塗装をする身としてもありがたい仕様ではあるのだが……。
こと、このキット(というか、この時代?)の赤色プラが、なんとも安っぽく、軽く、質の悪いプラスチックで構成されているのだ。
まだそれでも、最終的に赤く塗装をする部分が最初から赤いのであれば、筆者のようなサーフェサーフィニッシュを前提にしない部分塗装派でもうれしいのではあるが。

宇宙を、戦場を翔ぶホワイトベース!
なぜかこのキットの赤ランナーには、本来であれば白ランナーに付けられているべき、メインボディフロントブロックのインテークパーツと、艦橋両脇のアンテナ基部が含まれているのだ。
まだ百歩譲って、フロントのインテークパーツは、へこんだ内側の色設定が赤なので、赤ランナーに配置された理由も理解できなくもないが、艦橋両脇のアンテナ基部に関しては、デザイン上では普通に白いパーツでしかないので、白ランナーのどこかに組み込んでおけばいいだけの話であったのだ。
おそらく、設計とパーツ分割が終わってからの、ランナー配置のコストの段階で仕方なくこのパーツは赤ランナーに組み込まれたのだろうが、グレーサフ立ち上げでもしない限り、赤(特にこの手の安い赤プラ材質)の上に白を塗るのは面倒であり、今回ばかりは筆者も仕方なく全塗装をしなくてはいけなかった(おまけにメインの白のプラパーツも、透けそうなほどには安い材質なので仕上がりが期待できないというのもある)。
まず、メインのボディの白は、Mrベースホワイトのスプレーを吹く。
先にウィング先端や機首脇の赤いラインを、キャラクターレッドで塗っておいてから、マスキングをしてベースホワイトを吹いたのだが、今回の一連のガンプラ作成作業では、最初で最後、マスキング作業を行う事例かもしれない(やればできるのよ)。
その上で、赤いプラパーツの白部分をMrカラーGX1クールホワイトで塗装。
改めて塗装する時に用いるは、赤箇所は今も書いたキャラクターレッド、ブルー箇所はキャラクターブルー、黄色箇所はイエローで、メガ粒子砲を内蔵しているはずのレドームの内側だけをガンダムカラー15 MSファントムグレーで、それぞれ塗装して、艶消し黒でノズル内部やカタパルトハッチのディティールなどを塗って、最後は墨入れで仕上げた。

劇場版第1作目のラスト。ギレンの演説が巻き起こした「ジーク・ジオン」の連呼の中、ホワイトベースは雲の上を、ただただ進み行く……。
ガンプラでは、その後正式にベストメカコレクション入りする1/2400が、1981年4月劇場用映画版『機動戦士ガンダム』公開とほぼ同時に発売されていて、そちらも出来は良いのだが、塗装する時にかかる手間やスケール感等を考えると、こちらの1/1200の方が、思い入れもあるしより的確だろうと判断。
シーン単位で、メガハウス「コスモフリートコレクション ACT1」のホワイトベースと、使い分けることにした。
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