力道山なら勝てる!アメリカに勝てる! 敗戦で傷ついた日本人に勇気を与えたヒーロー

力道山なら勝てる!アメリカに勝てる! 敗戦で傷ついた日本人に勇気を与えたヒーロー

敗戦により荒廃し、占領された日本で、からだの大きな外人レスラーを叩きのめして、投げつけることで、鬱積とした日本人の感情を力道山は爆発させ勇気を与えた。


新田新作(中央)

その後、力道山はタニマチである新田建設の新田新作社長の下で働いた。
新田新作は全身に入れ墨が入った博徒だったが、アメリカ人捕虜収容所に勤めていたとき、その待遇があまりにひどいため上司の目を盗んでタバコやお菓子を差し入れをしたりした。
戦後、解放された捕虜が、恩を忘れず東京の下町一帯の復興事業を新田新作に任せた。
アメリカから入ってくる潤沢な資金で新田新作は財を成した。
力道山は新田建設の資材部長となり、建設資材の調達と現場に運ぶ仕事をした。
しかし生活は力士時代に比べ質素になった。
力士としてさらに上を狙える力を持ちながら廃業した力道山は、抑えることができない何かを酒とケンカでまぎらわせた。
そんなある日、アメリカ軍兵士のための慰問興行のために来日していたプロレスラーに出会いプロレスラーになることを薦められた。
数日後、力道山は彼の練習場を訪れ、プロレスの練習を開始した。
昼間は新田建設で働き、夜は練習。
車にもダンベルが置くほど、暇さえあれば体を鍛えた。
数週間後にはエキシビションマッチながらリングに上がりプロレスラーデビューした。
その後、慰問興行に参加し各地を周った。
目的が在日米軍を対象とした慰労興行だったため、観客はほとんどアメリカ人で日本人はほとんどいなかった。
プロレスは、まだ日本ではまったく未知のものだった。

アメリカで人気を得る

3ヵ月後、力道山は新田新作社長の許可を得て、プロレスラー修行のためにハワイに旅立った。
だるまホテルに泊まり、毎日YMCAジムに通った。
180㎝、130㎏、お腹が大きい相撲体型だった。
相撲は瞬発力だが、プロレスには持久力も要求される。
相撲は投げられたら負けだが、プロレスは寝技に移行したり立ち上がって戦わなければならない。
毎日、バーベルやダンベルを使ってウエイトトレーニングを行い、ワイキキビーチを走った。
力士時代のただただ詰め込むという食事ではなく、高タンパク食を摂った。
首を鍛え、スクワットは3000回行った。
プロレスの関節技や投げ技も練習した。
脚が太くて短く高く上がらないので、蹴りは相手の下を狙った。
そして相撲の張り手を発展させ、空手の手刀、つまり空手チョップを打った。
チョップとは、材木などを「叩き切る」という意味。
まさに力道山は、プロレスという未開の地を、その手で叩き切るようにして開拓していく。
ハワイからアメリカ本土まで及んだ修業は13ヵ月間。
その間に力道山の肉体は改造された。
130㎏だった体重は110㎏に、ウエストは120㎝超から100㎝以下になり、そのかわりに首や胸や腕が太くなった。

グレート東郷

来日全外国人レスラー名鑑 グレート東郷

また力道山はアメリカ人に媚びる日本人、日系人を嫌った。
アメリカでは真珠湾で不意打ちを食らわした日本に対して卑怯というイメージがあった。
当時、アメリカで活躍していたグレート東郷というプロレスラーのリングネームは、日本軍の元帥:東郷平八郎に因んでいる。
グレート東郷は、相手に攻められピンチとなると両手を合わせやめてくれと懇願し、相手が背中を向けた途端に殴りかかった。
彼を含めた多くの日系プロレスラーは、アメリカ人観客の感情を逆なですることで結果的に人気レスラーとなり稼いでいた。
力道山はそういうやり方を憎み軽蔑した。
そして自身はガチガチのストリートファイトを行い、一直線に前に出て、全力で攻めた。
日系のショーマンレスラーに慣れていたアメリカ人は、一心不乱で妥協のない力道山のファイトに驚き、声援を送った。
世界最大の格闘技誌「ボクシングマガジン」は、力道山を世界のプロレス最強ベスト10に入れた。

相撲の力道山、柔道の木村政彦、空手の大山倍達

エリオ・グレイシー(右)と握手する木村政彦(左)

同時期、力道山同様、海外でリングに立った日本人格闘家が数人いた。
柔道の遠藤幸吉、大学1年ですでに柔道5段だった山口利夫、史上最強の柔道家:木村政彦、そして後に極真空手を創始する大山倍達である。
木村政彦は、ブラジルでグレーシー柔術のエリオ・グレーシーを大外刈りで叩きつけ、その腕をへし折った。
大山倍達は、ショーであるプロレスは拒否し、空手のデモンストレーションや賞金つきのリアルファイトなどを行った。

力道山道場

帰国後、力道山は、日本でプロレスを普及させるために動き始める。
まずプロレスラーになる日本人をスカウトしに奔走した。
すでに柔道の遠藤幸吉は確保していた。
相撲で先輩だった駿河海は、膝のケガで引退し日本橋浜町でトンカツ屋をやっていた。
そこに連日押しかけ口説いた。
駿河海は、相撲をやめてすでに6年が経っていたので断り続けていた。
新田新作社長の許可を得て、新田建設の資材置き場を力道山道場にすることになった。
材木などはたくさんあったので力道山は自分でつくることにした。
それに相撲時代の後輩も手伝い、やがて駿河海も参加した。
彼らは結局、プロレスラーになった。
屋根と柱と壁しかない倉庫に、太い丸太を何本も通してその上に3㎝の板を釘で打ちつけてリングをつくり、入り口に「力道山道場」の看板を掲げられた。
力道山道場の道場開きで、力道山はプロレスの公開練習を行った。

vs ルー・テーズ

力道山は、世界ヘビー級チャンピオン:ルー・テーズへの挑戦者決定トーナメントに参加するためにハワイに旅立った。
ルー・テーズは、936連勝を誇る不滅のプロレス界の「鉄人」である。
プロレスは、観客がいなければ成立しない。
単に強くて、すぐに試合を終わるのはダメ。
自分の技を出し、相手の技を受け、観客を喜ばせなければならない。
勝敗にこだわらず、観客の受けを狙うだけのレスラーもいる。
だが力道山は、勝つことにこだわった。
妥協せずにがむしゃらに闘い、相手を痛めつけるため「セメントレスラー」といわれた。
力道山は、ハワイのトーナメントで勝ち、チャンピオン:ルー・テーズへの挑戦権を得た。
そして同じくハワイで行われたルー・テーズ戦では、試合開始後、頭突きを放ち、空手チョップを乱打した。
無敵のチャンピオンにケンカファイトしかけ続けた力道山だったが、43分、ヘッドロックにいったところをルー・テーズのバックドロップに返されてマットに沈んだ。

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