2015年10月29日殺陣師・林邦史朗さんが亡くなりました。
林邦史朗さんは日本を代表する殺陣師のお一人でした。
あらゆる武術に精通していて、日本のテレビ、映画、舞台での立ち回りを数多く振り付け、俳優さんへの指導をされてきました。
後進を育てること、武術や殺陣を一般の人の健康作りや護身術に役立てることにも熱心な方でした。
膵臓癌(すいぞうがん)で亡くなられたそうです。
殺陣師だけではなく、役者やまた違った活動をしていきたいと意欲的だったそうで残念でなりません。
故・林邦史朗さんのプロフィール
NHK大河ドラマを50年間支え続けた 林邦史朗さん
林さんを語るには大河ドラマは欠かせません。
何しろ50年間ですよ!
作品の一覧見るだけでも、その長さと存在の重みを感じます。
様々な武術を身につけていた林さんは、作品の時代考証にあった殺陣、役者の個性や技量にあった振り付けをする殺陣師として大変貴重な存在でした。
理にかなった、そのリアルな殺陣は作品に緊迫感を与えてくれました。
林邦史朗 - Wikipedia
遺作となった大河ドラマ「真田丸」をご紹介します。
NHK大河ドラマ『真田丸』
注目は第2回放送「決断」
堺雅人さん演じる真田信繁が主人公ですが、大きなコンセプトとしては真田家が、あたかも一艘の船のように一族の知恵と絆で戦国の荒波を乗り越えていく物語です。
その真田家が仕えるのは名門・甲斐の「武田家」
有名なのは何と言っても「武田信玄」ですね。
1988年の大河ドラマはズバリ「武田信玄」でした。
ですが、真田丸は信玄公の急死により跡目を継いだ息子の勝頼の時代の話。
勝頼が重臣たちの裏切られ、織田信長軍に攻め込まれ、いわば「武田家滅亡」から物語が始まるのです。
そして早くも第2回「決断」は「武田家滅亡の回」です。
切腹する勝頼の前に現れた信玄公

武田勝頼最期の時
いよいよ後が無くなり、自ら切腹をする武田勝頼。
偉大すぎる父親に思いを馳せたその時、不思議な静けさと光の中に現れる信玄公の亡霊。
平岳大さんの勝頼の演技は素晴らしく早くも名場面と評判になりました。
信玄公のオーラがすごい!

青い光の中に浮かび出でる信玄公
haco
平さんの無言の演技もさることながら、この浮かび出でた信玄公はあまりにも幻想的で美しく印象的でした。


この信玄公を演じたのが林邦史朗さんだったのです。
haco
帰らぬ人となった林さんが帰ってきてくれた!
この信玄公の撮影はおそらく昨年の撮影開始すぐの頃だったのでしょうね。
ご自身の病気についてご存知だったかどうかは知る由もありませんが、
重たい甲冑はかなり体力的にはきつかったのではないでしょうか?
放送された時にはすでに故人になられていたとは…
しかも亡霊の役とは…
信玄公の姿を借りて林さんが帰ってきてくれた…
そんな不思議な気持ちになりました。
撮影スタッフの気持ちが伝わる映像
実は私(haco)は、最初、林さんと知らずにこのシーンを観たのです。
その時、このシーンを観ながら…
「信玄公の青白い光に包まれた姿。立派な甲冑。映る時間の長さ。
かなり撮り方に力が入っているなあ。
もちろん、勝頼の父ですし偉大な武将なのはわかるけど
もしかして誰か有名人の特別出演?平さんの本当のお父さんの平幹二朗さんだったりして?」
と、そこまで深読みしてしまいました。
そして、後から林邦史朗さんだと知ったのです。
ある意味、本当に特別出演ですよね。
お弟子さんに名前と大河ドラマの殺陣師の立場を譲られた林さんへの
これまでの感謝と、病に打ち勝ってほしい願いを込めた
大河スタッフさん達の渾身の「武田信玄」だったのではないかと思うのです。
林さんと知って余計に忘れられないシーンになりました。
総集編でこの林さんの武田信玄に再び会えることを楽しみにしています。
亡くなる直前の新聞のインタビュー記事

真剣 本物の重みを理解する
「みなさんへ、お知らせ」のブログ記事一覧-林邦史朗☆オフィシャル・ガイドブック
お弟子さん達も活躍されています。
中川邦史朗さん
1994年に林さんのが創立した若駒アクションクラブに入所、1999年に若駒に入り、林さんの元で殺陣師として研鑽を積み、林さんの「邦史朗」のお名前を継がれ、真田丸から殺陣、武術指導をされています。

殺陣師 中川邦史朗さん
特集 さなイチ 別冊!インタビュー ~殺陣武術指導 中川邦史朗さん~|NHK大河ドラマ『真田丸』
林さんの殺陣の技術、振り付け、精神を、イベント、DVDなどでプロ、アマ問わず広め残していく活動をされています。
林さんがいかに安全に殺陣を楽しんでもらいたいかがわかる、お人柄も滲みでる動画を見つけました。それは逆に、立ち回りは真剣にやらないといかに危ないかという事を実際に目の当たりにしたご経験からだと思います。
たくさんのお弟子さんに慕われた林さん
武劇ライブというイベントでたくさんのお弟子さんの活躍の場と、一般の方にも殺陣に親しんでもらう活動をしていらっしゃいました。
林さんのDVDだけでなく著書も様々出版されてます。
殺陣、立ち回りを見るだけのものでなく、一般の人にも楽しんで役立ててほしいという使命感があったのでしょうね。
長年、大河ドラマに携わることで、殺陣に縁のなかった俳優さんや女優さんに立ち回りを振り付ける経験がその裏付け、動機付けになっているんだと思います。
まとめ 時代劇は無くならない!
残念ながら林さんは亡くなられてしまいましたが、こうして調べてみるとお弟子さんもいっぱい、時代劇を志す若者も数多いことがわかりました。
昔の日本人はチャンバラごっこが好きでしたよね。
お友達の怪我をさせる、危ないと最近のお子さんは思い切りチャンバラごっこはさせてもらえないのかもしれません。
でも、林さんの残してくださった言葉をちゃんと伝えてあげて、ぜひ、チャンバラごっこをさせてあげたいなと思いました。
ルールさえ守れば、殺陣は「相手と呼吸を合わせる」「力を入れてないけない」「敏捷性を身につける」と心にも体にも良いものだと思います。
そして、自分もちょっとやることで、時代劇をもっと面白く観られると思います。
林さんの志を受け継いでいく方々がいて、立ち回りの面白さを知って観る人がいれば、これからも時代劇は絶対になくならないと思いませんか?
東京オリンピックに壮大な立ち回りを開会式とかで世界の皆さんに見て欲しいですね。
きっと、天国から林さんが応援してくれますね。
最後に林さんの立ち回りと演技についてのコメントをご紹介します。
改めて林邦史朗さんのご冥福をお祈りいたします。
さあ、林さんの遺作でもあり、大いに盛り上がった今年の大河ドラマ「真田丸」の総集編を楽しみにしましょう!スタッフさんと林さんの渾身の武田信玄をお見逃しなく!
若駒プロ