映画「キャリー」、物語の背景
スティーブン・キングの原作を映画化した「キャリー」は小さな町で暮らす女の子の哀しい物語です。
母親マーガレットはキリスト教の狂信的信者で、何事にもキリスト教をこじつけてキャリーとまともに向き合おうとしません。家庭内での人間関係が上手くいかないキャリーは学校内での人間関係も上手く築けませんでした。
小さな町特有の閉塞感が漂う人間関係の中で、思春期を迎えるキャリーは苦悩の真っ只中にいます。

映画「キャリー」の主な出演者達
この映画に出演した役者達の中には、この後大きな飛躍を遂げる人もいます。
皆がよく知っている役者が自身のキャリアをスタートさせた作品でもあります。
●キャリー役:シシー・スペイセク(Sissy Spacek)

●クリス役:ナンシー・アレン(Nancy Allen)

●スー役:エイミー・アーヴィング(Amy Irving)

●トミー役:ウィリアム・カット(William Katt)

●ビリー役:ジョン・トラボルタ(John Travolta)

●マーガレット役:パイパー・ローリー(Piper Laurie)

コリンズ役:ベティ・バックリー(Betty Buckley)

物語のあらすじ(途中まで)
●超能力の覚醒
アメリカのとある高校、内気な女の子キャリーは体育の授業中に行われていたバレーボールの試合で相手チームから狙われてミスをしてしまいました。試合は負けでクラスメイトからはなじられるもキャリーは言い返せずにオロオロするだけでした。
授業が終わりクラス全員でシャワーを浴びている時、キャリーの身体に異変が起きました。彼女がシャワーで身体を洗っていると突然流血して彼女は呆然とします。初潮を迎えたのです。
初潮の事を知らずパニックを起こしたキャリーはクラスメイトに助けを求めるものの、クラスメイトからは生理用品を投げつけられバカにされる始末。騒ぎに気付いて駆けつけて来た体育教師コリンズは何とかしてキャリーを落ち着かせようとします。抱きかかえようとするコリンズをキャリーが絶叫とともに突き放したその時、シャワー室の電球が割れて周囲は騒然とします。

結局この日は早退する事になったキャリーは校長室に呼ばれます。校長の机の上にある灰皿を眺めるキャリー。校長は何度もキャリーをキャシーと呼び間違え彼女をイラつかせ、そのイライラが伝わっているかのように灰皿が揺れ始めます。イライラが頂点に達しキャリーが校長に向かって自分の名前を絶叫した時、灰皿がひっくり返り床へ落ちました。そしてキャリーは急いで校長室を出て行きます。
歩いて帰宅中のキャリーに近所の悪ガキが自転車に乗って近づいて来ました。通りがかりに暴言を吐く悪ガキをキャリーが睨むと、悪ガキは自転車ごと転倒して何故転倒したのかわからず呆然とします。

●狂信的信者の母親
帰宅後、学校からの電話で昼間の出来事を知った母親マーガレットはキャリーを慰めるどころか聖書で彼女を叩き説教を始めました。初潮は悪魔の仕業だとしてキャリーを物置の中に監禁してしまいます。キャリーは物置内にあるキリスト像に向かって許しを乞います。

●クリスとスー
先日のシャワー室での一件で、キャリーをからかったクラスメイト達は一週間放課後に居残りコリンズのシゴキを受ける事になり、拒めば三日間の停学とプロムパーティーへの参加禁止という厳しい処分が下されました。渋々シゴキを受けるクラスメイト達ですが、クリスだけはコリンズに反抗します。

スーは反省し、お詫びとして自らプロムパーティーの参加を辞退してボーイフレンドのトミーにキャリーを誘うよう彼に頼み、トミーは仕方なく了承しました。
トミーに誘われたキャリーの事を知ったコリンズはスーが何か企んでいるのか勘繰りますが、スーの改心は本物でした。一方クリスはキャリーに対する憎悪を益々深め、ボーイフレンドのビリーと彼の仲間達を利用してキャリーに対して復讐する計画を企てていました。



●プロムパーティーへの参加を決心したキャリー
母親マーガレットの反対を無視し勇気を振り絞ってプロムパーティーへの参加を決心したキャリーは、街へ行って化粧品を買い自らドレスを仕立てました。始めは嫌がっていたプロムパーティーですが自分を変えるきっかけにしようと前向きにとらえ楽しんで準備をしました。
プロムパーティー当日、髪を整え化粧をして自ら仕立てたドレスを身にまとったキャリーを見たマーガレットは取り乱しプロムパーティーへの参加を止めるよう強く迫りましたが、キャリーはマーガレットを超能力で拘束して迎えに来たトミーと一緒に家を出て行きます。
●幸せの時間を過ごしたプロムパーティー
会場に到着したキャリーをクラスメイト達は好奇な眼差しで見つめます。戸惑いながらも会場の雰囲気を満喫しているキャリーの側にコリンズがやって来て、キャリーの見違えった容姿を褒め昔の自分の失敗談を語りキャリーにプロムパーティーを楽しむよう促しました。
会場がスローダンスの時間になるとトミーはキャリーをダンスに誘います。最初は踊れないと断るキャリーでしたが、トミーに任せる事にして初めてのダンスを踊りました。思わずトミーに抱きついてしまうキャリー、彼女の人生で初めて味わった幸せな時間でした。

●幸せの絶頂から物語はクライマックスへ・・・
プロムパーティーの終盤、キングとクィーンを選ぶベストカップルの投票が行われ候補者達の名前の中にトミーとキャリーのカップルがありました。実はこの投票はクリスが仕掛けたイカサマ工作によってトミーとキャリーが選ばれるようになっていたのです。何も知らず選ばれた事を素直に喜ぶトミーとキャリー、人生最高の瞬間を台無しにして皆の前で恥をかかせようとするクリスの報復が始まろうとしています・・・。
(※是非観ていただきたいので、ここから先のあらすじは割愛します。
物語のクライマックスと衝撃のラストは自身で観て下さい。)

古今東西、変わらないスクールカースト
映画「キャリー」の主人公キャリーは何処にでもいる平凡で普通な女の子です。母親の影響で年頃の女の子なら知っていて当然の知識を知らなかったり、内気で失敗する事を恐れるが故に他人と上手く接する事ができなかった事がいじめられる原因の一つだったと思われます。人見知りする人なら学生時代あるいは社会人になってからもキャリーのような出来事を体験していると思うので彼女に共感できると思います。
映画が上演されたのは1976年ですが、映画上演当時から現在においても学校内の環境はほとんど変わっていません。人気者のグループを頂点とした所謂スクールカーストは古今東西変わらず存在しています。しかも現在はSNSがあるので学校の外でもいじめられるという昔以上に悲惨な状況にあると言えます。
「キャリー」はいじめられっ子の気持ちを反映した映画
いじめは社会人になれば終わるものではなく、職場内においてもパワハラやモラハラ等のいじめが存在します。人間生活を営む限りいじめからは逃れられないのかもしれません。
キャリーは超能力を身に付けた事で結果としていじめっ子達に復讐を果たしますが、現実では超能力が身に付く事はまずありません。いじめられっ子は心の底ではやり返したいと思いながらも、もしやり返して失敗したらもっといじめられる事を恐れてしまい、実際は嵐が過ぎ去るのを待つようにじっと耐えて生活しています。
映画「キャリー」はいじめられっ子達にとって自分の気持ちを投影できて慰められる映画です。ホラー映画にジャンル分けされるので観る事を敬遠している人もいるかもしれませんが、まだ観た事無い人に是非お勧めしたい映画です。

映画「キャリー」に関するブログを一部紹介
既に何人もの方々が自身のブログにて映画「キャリー」についてコメントしています。
ネタバレを含む内容があるので話を知らない方は閲覧する際注意が必要ですが、
それぞれ独自の視点から映画を観ていて感想をまとめています。
参考にしてみてはいかがでしょうか。
【映画感想】キャリー(1976年)~何年経っても色褪せない衝撃のラスト!だが炎の少女の結末は切ない・・・※ネタバレあり - びーきゅうらいふ!
サイキック少女と毒親の破滅を描く 映画『キャリー』(原作スティーブン・キング) | sanmarie*com