飽きさせないストーリー展開!
「ゾンビ」の収録時間は115分、ほぼ2時間です(※日本劇場公開版での時間)。
ゾンビ映画、いやホラー映画としてはどちらかというと長めですが、実際見てみると長いからといって冗長に感じる事はありません。
恐怖感以外にも窮地に立たされてどう切り抜けるかという緊張感や、友人との友情を描いた感動シーン、そして時にはゾンビをからかってみるちょっぴり笑えるシーンなどのお陰で、長いと感じる間もなくあっという間に見終えてしまう内容になっています。
「ゾンビ」での1シーン
『ゾンビ』 ジョージ・A・ロメロ 1978 : なにさま映画評
実は奥深いメッセージも
「ゾンビ」はホラー映画なのですが、現代社会へのメッセージを持つ社会風刺映画の一面も持ち合わせています。
主人公たちが篭城を決め込む大型ショッピングモールは消費社会となった現代への警鐘が含まれていますし、ゾンビ相手に銃を武器にするというのも銃社会となったアメリカを暗に示しているといえるでしょう。
そしてこの映画で描かれている「ゾンビに感染すると理性をなくし、ただ本能のままに動く」というゾンビ像。人間が理性を亡くしてしまえばいとも簡単にモンスター化するのだ、というのも改めて考えると実に深いですね。
この辺りも「ゾンビ」が名作と言われる所以であると言われています。
トム・サヴィーニによる優れた特殊メイク
なんと言っても、この映画の存在感を際立たせたものの一つにその特殊メイクがあります。
「ゾンビ」で特殊メイクを担当したのはトム・サヴィーニ。
「13日の金曜日(1980年)」や「バーニング(1981年)」、「悪魔のいけにえ2(1986年)」と数々の特殊メイクを手がけたトムですが、この「ゾンビ」は一躍彼をスターダムにのし上げた作品とも言えます。
既存のゾンビ映画にはかつてなかった映画「ゾンビ」でのリアルな描写・残酷度具合は、見るもの全ての人の肝を冷やし、80年代ホラー映画の発展と進化にかなり貢献する事になります。
ちなみにトムは特殊メイクだけでなくスタントマンや俳優としても様々な作品を手がけており、「ゾンビ」でも暴走族役として出演しています。
トム・サヴィーニ
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「ゾンビ」をたっぷり楽しもう!
数多くのバージョンが存在する「ゾンビ」
「ゾンビ」には当初のバージョンの他、数多くのバージョンが存在します。
サウンドトラックの違いやシーンのあるなし等、その違いは多岐に渡りますので、色々と見比べてみると更に深く楽しめるかもしれません。
●「米国劇場公開版」(本編127分)
北米で劇場公開されたバージョンで、日本で最初にソフト化されたもの。
ロメロ独特の暗い味付けが特徴。
●「ダリオ・アルジェント監修版」(本編119分)
アジアやヨーロッパなどで世界中で一番多く劇場公開されたバージョンで、日本劇場公開版のオリジナル版でもある。
サバイバルアクション風な編集が特徴で、音響効果も全てダリオ・アルジェントによる編集で差し替えられており、ファンの多いバージョンである。
●「日本劇場公開版」(本編115分)。
日本ヘラルド映画配給。『ダリオ・アルジェント監修版』を元に残酷シーンの修正・削除、オープニングでのゾンビ発生理由を説明するシーンの追加、エンドクレジット削除などがされている。
●「ディレクターズ・カット版」(本編139分)
ロメロがカンヌ国際映画祭出品のために作ったバージョン。
ロメロ自身は後のインタビューで「不満足な出来だ」と公言している。
この他にも本当のノーカットオリジナルが収録されている「ラフカット版」(約3時間)や、アルジェント版をベースにディレクターズカット版のシーンを編集したドイツ語の「ファイナルカット版」(約156分)等があるようですが、残念ながらソフト化には至ってないようです。
舞台裏をのぞいてみる!
リアルなゾンビが数多く出現する「ゾンビ」。1990年に製作された「ドキュメント・オブ・ザ・デッド」では、そんな「ゾンビ」の舞台の裏側を見る事ができます。
「ゾンビ」の撮影風景やトム・サヴィーニのメイクアップ風景、当時のスタッフ・キャストのインタビュー等が収録され、、特にジョージ・A・ロメロの談話が興味深いです。
ロメロの劇場映画の名場面等も紹介されており、ロメロファン垂涎の作品になっています。
なお2012年にはこのオリジナル版に加え、リマスタリングと更に編集を加えた最終版をあわせ、製作35周年特別版として製作発表されています。
「ドキュメント・オブ・ザ・デッド」製作35周年特別版