映画「ふたり」の内容
1991年公開、大林宣彦監督。
二人姉妹の姉千津子(中嶋朋子)は成績優秀、スポーツ万能、演劇部のスター。平凡な妹の実加(石田ひかり)はそんな姉を尊敬し慕っていた。ある日登校中に姉が事故にあい死んでしまう。
姉の死を受け入れられず精神的に病んでしまう母(富士純子)、家庭の暗さから不倫をしてしまう父(岸部一徳)、そんな家庭を元に戻すために姉が幽霊となり妹の前に現れるようになります。姉が見えるのは妹だけ。妹を応援したりアドバイスをしたりして家族の絆を取り戻そうとする話です。

「ふたり」DVD
キャスト
監督:大林宣彦
1938年生まれ、日本の映画監督。
代表作
「ねらわれた学園」
「転校生」
「時をかける少女」
「天国にいちばん近い島」
「さびしんぼう」
「漂流教室」
「青春デンデケデケデケ」
「はるか ノスタルジィ」など
尾道出身ということで尾道を題材とした作品が多い。
音楽:久石譲
1950年生まれ、日本の作曲家。
映画音楽を中心に作曲を手がけ、ジブリ作品にも多く提供しているため作曲家名を知らずとも曲はどこかで聞いたという人も多い。
北尾千津子:中嶋朋子
主人公。小さな頃からかわいくて賢くて周りの人からもよく褒められる。学生になってからも成績優秀、ピアノが得意、マラソンでは活躍し演劇部では主役になるなど活躍。
登校中に家に戻った時にトラックの事故にあい死んでしまう。のちに妹の実加を助けようと幽霊になって実加にだけ見える形で現れる。
北尾実加:石田ひかり
主人公北尾千津子の妹。いたって平凡な少女だがよくできた姉と比較されドジやのろまなど捉えられている。姉が大好きで劣等感を持つこともなく姉によく頼り仲良くしている。片付けが苦手で部屋が汚い。姉の死後は両親を元気付けるために姉のようによくできた子になろうと努力を重ねる。
その他のキャスト
北尾治子(富士純子):北尾家母。おっとりしていて生前の千津子を頼っていた。千津子の死後は精神が不安定。
北尾雄一(岸部一徳):北尾家父。サラリーマンで出張も多い。北海道へ単身赴任になる。実加を心配している。
神永哲也(厚美としのり):千津子の恋人。毎年第九の演奏会を聞きに行っているが、千津子が死んだことを知らずに今年の演奏会も同じ場所で待っていた。
長谷部真子(柴山智加):実加の親友。いつも実加の味方。実加に意地悪をする万里子には「討ち入り」と称して家まで押しかける。
前野万里子(中江有里):哲也の従兄弟。哲也を慕っている。生前の千津子に嫉妬していたが実加には意地悪をする。
中西敬子(島崎和歌子):実加の高校の演劇部の上級生。主役を取ろうと必死になり実加に意地悪をする。
運転手(大前均):トラックの運転手。
尾道三部作とは
大林監督自身が尾道出身なので、自分の故郷である尾道を舞台にして作り上げた映画3本をいう。
「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」がこれに当たる。
尾道を舞台にするということで地元の住人や関係者が協力したが、映画を観て「あんなに協力したのに尾道の汚いところばかり映っている」と憤慨したらしい。
しかし、そういう場所も当時の人々には古き良き時代が残っている素敵な街並みとして有名になり、より観光客は増えたらしい。

尾道三部作 「転校生」

尾道三部作 「時をかける少女」

尾道三部作 「さびしんぼう」
尾道新三部作とは
1980年代に発表された尾道三部作に続き、1990年代の尾道新三部作。
「ふたり」「あした」「あの、夏の日〜とんでろ じいちゃん〜」

尾道新三部作 「あした」

尾道新三部作 「あした」

尾道新三部作 「あの夏の日〜とんでろ じいちゃん〜」
尾道とは
尾道は広島県にあります。
広島市と岡山市のちょうど間に位置する瀬戸内海に面しています。

尾道へのアクセス
心に残る音楽
この映画をさらにノスタルジックな作品に仕上げたのが音楽です。
曲の担当は今の日本映画界でこの人の音楽があれば映画の人気が上がると言われている久石譲。
久石譲の持つ寂しげなメロディが尾道の独特の雰囲気をさらに盛り上げています。
エンディングで流れる主題歌は歌を監督の大林宣彦と久石譲が歌っています。
おじさん2人が歌っていることは賛否両論ですが、エンディングに出てくるおじさんが映画の最後を綺麗に締めてくれているので、なぜおじさん2人が歌うのかということにもつながります。
こちらは同じ主題歌でも、主人公の中嶋朋子の歌う「草の想い」。
若い女性の歌う透き通る歌声が、はかなさを物語っています。
久石譲の作る曲のピアノスコアは非常によく売れており、
代表作にも「草の想い」は大抵入っているほどの名曲です。
歌詞なしでもノスタルジックな曲調が心に響きます。
多くの人が歌う「草の想い」
劇中で石田ひかりも草の想いを歌っています。
演劇部で演目する劇の中で歌います。
劇中の劇中で(ややこしい...)。
演劇部では劣等生だった実加に嫌がらせをして主役を勝取ろうとする生徒役に島崎和歌子がいます。
島崎和歌子もこの歌を劇中の劇中で歌っています。
それぞれの持つ歌い方の特性が、役の人物像とよくマッチしていてより盛り上げてくれます。
実加の歌い方は不安げな歌い方が応援したくなりますし、
島崎和歌子の歌い方は意地悪をした意味がわかるほど堂々と立派な主役として演じきり歌い上げます。
女優さんというのはすごいのだなぁ、と感心するばかりです。
どの歌も映像を入手することができませんでした。
ぜひ映画で観てもらいたいです。
その他の見所、悲しさと滑稽さ
とても悲しい内容の話ですが、どこか滑稽さもあります。
姉の死を目の前で見てしまった実加の悲しさは父や母以上のものだと思いますが、
実加は明るく生活を送り、そして姉に近づこうと日々努力します。
実加の部屋はとにかく汚く物が散乱しています。
やめていたピアノを続けるために楽譜を探しますが見つけられません。
そんな時に死後そのままにされている姉の部屋に楽譜を借りに行きます。
「おねえちゃん、借りるね」のセリフ。
姉がまだそこにいるかのようなこのセリフは滑稽にも見えますが、
このセリフによって実加が実はまだ姉の死を受け入れられていないことを示唆しています。

父には見えていない千津子
その滑稽さは例えるなら塩をかけたスイカ。
滑稽さをかけた悲しさ。
滑稽さが悲しさを増すのです。
淡々とした実加の成長がより実加の悲しさを表しているのです。
NHKでテレビドラマ化もされている。映画と同時撮影だったためスタッフは同じだがキャストは異なる。
全11話、最高視聴率は14%。
映画では医師は(竹中直人役)ドラマではでてこない。
2003年からは舞台化もされている。
富田靖子が主演のはずがヘルニアのため奥山佳恵が代役として出演。
2004年版は主演がダブルキャストで舞台化された。
ぜひ観るべし
映画化・ドラマ化・舞台化とされるほどの人気があった作品です。
それらの人気を助けたのが久石譲による音楽です。
尾道三部作ほど人気のなかった新・尾道三部作ですが、
この音楽のために「ふたり」は根強い人気があります。
ぜひこの音楽を聴くために映画は観るべしです。