“強く自由な生き様” と “美女” を教えてくれた『銀河鉄道999』
松本零士が描く“強く自由な生き様”と“美女”が好きだ。
こんなふうに書くと納得していただける方も数多くいると思う。
少年のころ、松本零士の世界にどっぷりとハマった。
あれから30年以上経ち、大人になり、その魂の足跡すら辿れていない。
ハーロックやエメラルダス、トチローの強く自由な生き様や揺るぎのない義侠心、
鉄郎の無垢な冒険心や、その何もかもは、
指の隙間からさらさらと零れ落ちていってしまったように思う。
だからこそ、久しぶりに観た劇場版『銀河鉄道999』には、
甘いノスタルジーとともに、自分が失ってしまった何かを
思い出す機会を与えられたような気がした。
いま、万感の想いを込めて、『銀河鉄道999』と松本零士の世界を辿ってみたい。

劇場版『銀河鉄道999』とは?
「少年キング」に連載されていた松本零士の同名漫画の劇場アニメ化作品(1979年)。続編には、『さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅』(1981年)がある。原作、テレビアニメ版、劇場アニメ版はそれぞれ別の展開をしていて、結末も異なっている。なお、1998年公開の『銀河鉄道999 エターナル・ファンタジー』は、アンドロメダ編(前2作)から1年後の設定。
アニメ映画がほとんど評価されなかった時代だったが、配給収入16億5000万円で1979年度の邦画1位を獲得。翌年の日本アカデミー賞で特別賞(話題賞)を受賞するなど、初期のアニメブームの象徴的な作品のひとつとなった。
●製作総指揮 今田智憲 ●企画・原作・構成 松本零士 ●脚本 - 石森史郎
●作画監督 小松原一男 ●美術監督 椋尾篁、窪田忠雄
●監督 りんたろう ●音楽 青木望 ●監修 市川崑 ●配給 東映
●主題歌 ゴダイゴ
あらすじ
未来の地球…貧しい生身の人間はスラム街で暮らし、機械の体を手に入れた富裕層は贅沢な銀河鉄道での旅行を楽しんでいる。機械伯爵の人間狩りで母を殺された貧しい少年星野鉄郎は、機械の体をタダでくれるというアンドロメダ星に行こうと仲間と銀河鉄道999の無期限パスを盗もうと試みる。機械化人の警察に追われているところを謎の美女メーテルに救われる鉄郎。「わたしを一緒に連れてってくれるならパスをあげるわ」という条件をのんだ鉄郎は、アンドロメダ星への無期限パスを片手にメーテルと一緒に銀河鉄道999に乗り込むのだった。さまざまな人たちとの出会いと別れ、機械伯爵への復讐ののちに辿り着いたアンドロメダ星で鉄郎を待っていた運命とは?


美しく強く自由な生き様を魅せるハーロック、エメラルダス、そしてトチロー
自分の信念のもとに己の旗を掲げ、大宇宙を生きる宇宙海賊キャプテン・ハーロックは、星野鉄郎のような少年たちの憧れだ。同時に、彼の生き様は僕ら現代を生きる人間たちにとってもお手本となるべきところが多い。
僕らの社会(こと日本の社会)では、自分の信念のもとに生きようとすると、軋轢が生じることが多い。空気が読めないと疎まれるような、同調が美徳のようなこの社会で、いつしか信念などという言葉は形骸化されてしまっている。
ハーロックは、そんな現代人と対極にいる。誰にもおもねらず、強い信念を持ち、自由で誇り高い。ほんの少しでもいいから、彼のように生きたいといまさらながら思うのだ。少年のころ、初めてハーロックを観たときはそのビジュアルや強さなどのカッコ良さだけに憧れた。いまはその生き様そのものに強く惹かれる。
トチローやエメラルダスも同様だ。自分の身が滅びようとも信念を曲げることはしない。信じる者や愛する者のためには命を懸けることもいとわない。その生き様はとにかく自由で美しい。



松本零士作品の美女はまさに “青春の幻影" だ!
とにかく、松本零士の描く美女は、まあ、美女界きっての美女ばかりだ。美女美女言っててなんだかわからないかもしれないが、メーテルはその中でも最高の美女だった。
髪は長く美しく風との相性もばっちりで、宇宙だろうが、999の中だろうが、どこでもいい具合になびくなびく。さらに、長いまつ毛に覆われた、いくつもの宇宙が抱いた大きな瞳は国宝級で若干垂れ目な感じが可愛くもある。小泉今日子もびっくりの逆三角(▽)の完璧な顎のラインも切れ味鋭いし、スタイルなんざ、漫画だからとせせら笑うやつらの度肝を抜く、こちらもパーフェクトなラインを誇り、黒いお洋服がよく似合っていた。
ほかにもエメラルダスやらクレアやら、まあ美女のオンパレードで中間がいない。美女じゃないとおばちゃん風で、その徹底ぶりがいい。トチローの年老いた母上も昔は美女だったと思われる(たぶん)。



次ページは、メーテル映像集から!!
松本零士はもっともっともっと評価されていいと思う…。
1970年代中頃から1980年代前半にかけて、松本零士はその巨大な才能を世に華々しく放ち、僕らはそれを全身で浴びた。ブームともいえるその時間を作り出すきっかけとなったのは、『宇宙戦艦ヤマト』である。その大ヒットで、『銀河鉄道999』『宇宙海賊キャプテンハーロック』などが次々とアニメ化されていった。ただ、厳密にいえば松本零士は『宇宙戦艦ヤマト』の原作者ではない(らしい。詳細は下記のウィキの「創作・著作権に対するスタンス」を確認されたし)。とはいえ、松本零士がいなければ、あの『宇宙戦艦ヤマト』は存在しえないし、あの『宇宙戦艦ヤマト』がなければ、「子供のもの」と考えられていたアニメが、若者や大人も楽しめる “文化” のひとつに昇華するまでにはならなかったと思う(なったとしても、もっと時間がかかったかもしれない)。その意味で松本零士の功績は大きいものだし、もっともっともっと評価されてもいいはずだ。

松本零士 - Wikipedia
ああ、ひたすら感動の、松本零士の世界










松本零士オフィシャルサイト
監督は、りんたろう。『999』の面白さは、りんの手腕によるところも大きい!?
『銀河鉄道999』の面白さは、監督のりんたろうの手腕も大きいんだろうと思う。東映動画や手塚治虫が創立した虫プロダクションを経て、フリーの演出家となった人で、監督としての代表作は、『銀河鉄道999』や『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』(1981年)だが、ぜひ観てほしいのは『幻魔大戦』(1983年)だ。
『幻魔大戦』は、平井和正、石ノ森章太郎共作の漫画や平井和正の小説を原作をアニメ化したもの。大友克洋の初めてのアニメーション制作と知られ、その後の大友のアニメ制作への情熱のきっかけとなった作品とも言われている。
同年のアニメ映画の興行収入首位の成績となっているが、なんといっても絶好調だったころの角川映画のアニメ第1弾として製作されたもので、世界的なシンセ奏者でスーパーロックグループ、ELPのキースエマーソンに音楽をやらせたり、当時人気だった角川の秘蔵っ子、原田知世(タオの声)まで引っ張り出しての力の入れようだったから当然といえるだろう。
この『幻魔大戦』、何がいいって、大友克洋の絵は素晴らしいし(リアルで臨場感あふれる街や人物の描き方も最高)、りんたろうの演出も最高、キースの音楽は作品に納得のいかない平井までもが絶賛するほどで、まあ、スキのないアニメ映画なのだ。
りんたろうの手腕が存分に発揮されている『幻魔大戦』を観ると、『999』の面白さも、その手腕によるところが大きいのかとなおさら思えてくる。ということで、その実力を『幻魔大戦』の名シーンで確認してください。
さあ、再び『銀河鉄道999』の世界に戻りますよ!
いやいや、突然ですが、立体モノもいいっすなあ。





【敦賀観光案内サイト 漫遊敦賀/敦賀市街地を散策「シンボルロードコース」】一般社団法人 敦賀観光協会
120万枚の大ヒットを記録した主題歌『銀河鉄道999』! アニメ主題歌史上、最高ソングのひとつと言えると思う。
主題歌を歌ったのは、「ガンダーラ」「モンキーマジック」「ビューティフルネーム」などのヒットで当時、人気絶頂だったゴダイゴ。まあ、あまりにも有名な歌なのでミドルの人でよもや知らない人は少ないとは思う。オリコンのシングルチャートで最高位2位となり、TBSの伝説的歌番組「ザ・ベストテン」では最高位1位を獲得した。シングル売り上げ枚数はなんと約120万枚。当時のアニメ主題歌として歴代最高売上枚数を記録している。
アニメ主題歌をずっと追い続けているわけではないが、この『銀河鉄道999』はアニメ主題歌史上でも最高ソングのひとつと言えるだろう。なぜ、そう思うか。思い入れがあるからですかねえ。
ところで…本当はどこに行けたんだろうか、この無期限の定期で・・・。
あの頃、このパスが欲しかった。どこかに、行けるような気がした。どこにでも、行けるような気がしていたんだ。星のずっと彼方に、行くことができると思っていた。
でも、どこかとはどこで、星の彼方には何があるかなんか、ちっとも考えちゃいなかった。だから、僕はどこにも辿りつけていない気がしてしまう。
ま、僕は銀河鉄道999に乗ってないんだから当たり前だけど。でも、そんな気分にもさせる、なんか大きなロマンがある物語なんです。なんかわかりにくい話というか、意味不明な話してますけど…。つい、そんなことを口走ってしまう、いろんな意味で深い物語なんす、『銀河鉄道999』は。
