伊丹十三監督「ミンボーの女」。多才にしてマルチな人間、故伊丹監督作品とともに振り返る。

伊丹十三監督「ミンボーの女」。多才にしてマルチな人間、故伊丹監督作品とともに振り返る。

あるホテルを舞台に、暴力団とホテル側と民暴(ミンボー)の専門弁護士との対決を描いた、コミカルにして痛快な映画。そして、現実社会で様々な事件に巻き込まれていく伊丹監督を振り返ってみましょう。


作品紹介

「マルサの女」に次ぐ「✖✖の女」シリーズ。
一般人対ヤクザという構図で、スリリングな事件をコミカルに描き、従来のヤクザ映画とは一線を画した作品。
ロケは開業前の長崎ハウステンボスの「ホテルヨーロッパ」で行われました。
劇中でもそのままのホテル名が使用されています。
開業前とはいえ、内容が内容なだけに、ホテル側はよくぞという感じですね。

1992年5月公開。

【あらすじ】
暴力団のゆすりを受け続けている名門ホテルヨーロッパ。この現状を打開すべく雇われたのが、民事介入暴力(ミンボー)専門の女弁護士・井上まひる(宮本信子)でした。井上は法律を武器に、組織と堂々と渡り合い、従業員たちに屈服しないことを身をもって示していくのでした。そして、従業員たちの意識と行動が徐々に変化していく中で、井上が襲撃に会います。しかし、ホテル側は敢然と立ち向かい、警察との協力によって一網打尽にし、組織の排除に成功するのでした。

従来のヤクザ映画では、主人公=ヤクザ=ヒーロー的なものが多かったのですが、この映画の主役はあくまでも「一般人」。そして、一般人の武器は「法律」。
「弱きを助け、強きをくじく」「ペンは剣より強し」的なストーリーを、笑いと涙で見事に調和させ、興行収入15億円超えの大ヒットとなりました。
しかし、この映画の公開後、伊丹監督は大きな事件に巻き込まれて行きます(後述)。

女弁護士対ヤクザ(ガッツ石松)

始まりのワンシーン。
ホテルのプールサイドに偶然居合わせた井上まひる(宮本信子)が、大声を張り上げているヤクザ(ガッツ石松)達に啖呵を切るシーン。
「おう!
黙って聞いてりゃいい気になりやがって。
てめえら山手線の内側でガンつけるの間違ってんじゃねえのかぁ?
隅田川にはフタはねぇんだ!
チンタラしてねえでとっととうせやがれ!」
う~ん。。意味不明なのですが、、迫力はありましたね。

ホテルへ怒鳴り込み

ホテルのレストランでゴキブリをラザニアに仕込み、イチャモンをつけて圧力を強め、地元ヤクザとの抗争をネタにホテルへ怒鳴り込んで脅しをかける伊場木(中尾彬)。
堂に入ってますね。

鉄砲玉

井上まひる(宮本信子)を襲撃する鉄砲玉役のギバちゃん。
若いですねぇ。

毅然と立ち向かうホテルマンたち

ラストシーンでは押し寄せる暴力団に、堂々と渡り合うホテルマンたちがいました。
屈服しないという井上まひるの信念が実ったシーンです。

主な出演者

宮本信子  弁護士;井上まひる

暴力や圧力に法律で立ち向かう女弁護士役。
ホテルの従業員たちの先頭に立って、皆を牽引していく主人公。

女優・ジャズシンガー。
故伊丹十三の妻。

テレビ・映画・舞台等で活躍する傍らで、ジャズシンガーとしての活動も精力的にこなし、ライブ活動も行っている。

出演作品 「マルサの女」「あまちゃん」等々

宝田明  ホテルヨーロッパ;小林総支配人

総支配人という役職にありながら、賭けゴルフ・ハニートラップ等、見事にヤクザの罠にはまってしまう。何とも憎めない役を演じています。

テレビ・映画・舞台・司会と様々なシーンに登場する俳優。
ミスユニバース日本選出大会の司会も務めたことがあります。

伊東四朗  ヤクザの大親分;入内島

小林総支配人を賭けゴルフの罠に落とし込む大親分。
元々こわもてだけに、結構決まってます。

コメディアン時代、「てんぷくトリオ」のメンバーとして一世を風靡する。その後、バラエティー、司会、俳優としてコメディーからシリアスな役まで演じ、何でもこなすマルチタレント。

中尾彬  ヤクザの親分;伊場木

ホテルへの嫌がらせや締め付け等々、このこわもてでやられたらたまりません。
ハマリ役ですね。

独特の雰囲気をかもしだす名俳優。
美術的才能もあり(武蔵野美大中退)、絵画の個展を開くなど多才な面をもつ。

その他にも、津川雅彦・大滝秀治・柳生博・大地康雄・柳葉敏郎・櫻井淳子・ガッツ石松等々、豪華なメンバーが顔を揃えスクリーンを盛り上げてます。

伊丹十三

1933年5月、映画監督・伊丹万作の長男として京都に生まれました。
高校時代に執筆活動をはじめ、大江健三郎氏(ノーベル賞作家)との親交がはじまったのもこの頃です。のちに、大江氏は伊丹氏の妹と結婚されます。
デザイナー・イラストレーターとして活躍した後、俳優・監督等マルチタレントとしても活躍し、妻・宮本信子を起用したコミカルな社会派映画の制作に取り組みます。
1997年12月20日、自宅マンションで自殺(後述)。64歳でした。

映画監督として1984年、
実体験をもとにした「お葬式」でデビュー。
翌1995年に公開した「タンポポ」からコミカル的な作品が主流となります。
そして1987年あの「マルサの女」が公開されます。✖✖の女シリーズの第1作です。この映画は日本アカデミー賞の数々の部門で表彰されました。
翌1988年に「マルサの女2」が公開。
1990年には大流行語になった「あげまん」が公開されます。男子は特にこの「あげまん」という言葉を使ってましたねぇ。
そして1992年「ミンボーの女」が公開されます。
その後、1993年に「大病人」、1995年「静かな生活」、1996年「スーパーの女」と立て続けに制作。
1997年、自身の体験をヒントに描いた「マルタイの女」を発表。
本編が遺作となりました。

女査察官シリーズ第2弾。
宗教法人を隠れ蓑にした脱税行為を暴いていく。

愛した男が次々と運気上昇していく、という芸者と男たちの物語。

末期の癌患者の生き様を描くとともに、医者と患者のあり方にも一石を投じた作品となっています。

幼馴染が経営する売れないスーパーマーケットを一人の主婦が立て直していくサクセスストーリー。
食品偽装にいち早く切り込んだ、社会派映画でもあります。

殺人事件の目撃者、彼女を執拗に狙う宗教団体、目撃者の女性(マルタイ)を守る警察の三つ巴を描いた作品。
伊丹監督の遺作となった映画です。

襲撃事件

「ミンボーの女」公開直後、1992年5月22日夜、自宅近くの駐車場で複数の男達に刃物で襲撃され、全治3か月の重傷を負います。犯人は5人の暴力団員。12月に逮捕され実刑判決を受けています。原因は映画の内容等いろいろ言われておりますが、伊丹監督自身、プロモーションビデオに上半身入れ墨を施して登場したり、ある記者会見では「私は、この映画でヤクザに喧嘩を売ったのです」という発言をしたり、ある種の挑発と取られる行為をしていたことがありました。五社英雄氏(映画監督 鬼龍院花子の生涯・極道の妻たち等)は、「あの男はやられるかもしれない」と関係者に言っていたそうです。

スクリーン切り裂き事件

翌1993年5月、復帰作「大病人」公開初日、日劇東宝で上映中にスクリーンが切り裂かれるという事件が起きます。犯人は自称右翼の男でしたが、反社会勢力の脅迫行為は続いていました。

突然の訃報

1997年12月20日、東京麻布のマンション下にて遺体で発見されます。
投身自殺と判断されましたが、様々な憶測が飛び交いました。

真相が闇の中にあるのかどうかさえ、我々には知るよしもありませんが、親しき人たちにとってはあまりにも急すぎる悲しい出来事でした。
生前の本人の希望により葬式等は行われず、弔問もお断りしたそうです。

妻 宮本信子さんは

伊丹氏の死後10年間はスクリーンから遠ざかり、2007年に「眉山 びざん」で復帰を果たします。その間はジャズシンガーとして活動し、ライブやアルバム作成などを手掛けておりました。
伊丹氏の死から5年後の2002年12月20日、宮本信子さんはホテルオークラにて「感謝の夕べ」と題しディナーショーを開催しました。親交のあった方々を招待したその席で、過去のことを「本人が決めたことですからしかたないですけれども。。」と胸の内を述べています。

伊丹十三記念館

妻・宮本信子さんにより、2007年5月愛媛県松山市に設立されました。
遺品や愛車が展示されており、「女房として最後の大仕事」と言われたとおりの出来栄えとなっております。
伊丹十三賞も創設し、第1回受賞者には糸井重里氏が輝きました。

関連する投稿


昭和ノスタルジー全開!淡路島ゴジラコラボルーム「昭和東宝怪獣資料室」12/20オープン

昭和ノスタルジー全開!淡路島ゴジラコラボルーム「昭和東宝怪獣資料室」12/20オープン

淡路島のラグジュアリーヴィラ「GRAND CHARIOT 北斗七星135°」に、ゴジラコラボルーム『昭和東宝怪獣資料室』が2025年12月20日(土)オープンします。昭和東宝特撮映画に登場した怪獣たちが大集合し、複製台本や兵器の立体展示に加えて、ちゃぶ台や座布団を配した“昭和レトロ”な空間を再現。宿泊者限定でキングギドラのデザイン画アートボードなどの特典も充実しています。


レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」より『トラぶるCHASER 第1話』『3Dテニス』が配信スタート!!

レトロゲーム関連の復刻・配信ビジネスなどを行うD4エンタープライズが運営するレトロゲーム配信サービス「プロジェクトEGG」にて、新規コンテンツ『トラぶるCHASER 第1話 トラブルは空から未来から(PC-9801版)』『3Dテニス(MSX版)』の配信がスタートしました。


抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

抜群のスタイルで💦世の脚光を浴びた『広田恵子』現在は?!

高校時代からモデル活動を始め1986年に「カネボウ・スイムウエアイメージモデル」として脚光を浴びた広田恵子さん。現在は家族で〇〇を組んで活動している・・・。


「おかあさんといっしょ」の『にこにこ、ぷん』が令和に復活!公式YouTubeチャンネル開設&グッズ展開決定!!

「おかあさんといっしょ」の『にこにこ、ぷん』が令和に復活!公式YouTubeチャンネル開設&グッズ展開決定!!

NHK「おかあさんといっしょ」の人形劇コーナーとして1982年から1992年までの10年間にわたり放送され、累計2,000話以上の物語が制作された人気シリーズ『にこにこ、ぷん』が、令和の時代に新たなかたちで帰ってきます。


「世界・ふしぎ発見!」のミステリーハンターも務めた女優『ジュリー・ドレフュス』!!

「世界・ふしぎ発見!」のミステリーハンターも務めた女優『ジュリー・ドレフュス』!!

1991年3月にミステリーハンターとして登場されると出演回数8回で、出演回数ランキング33位となるジュリー・ドレフュス さん。2013年出演のドラマ「老舗旅館の女将日記」を最後にメディアで見かけなくなり気になりまとめてみました。


最新の投稿


昭和100年を祝う夜!グランドプリンスホテル広島でTEPPANの歌謡ライブ&打ち上げ花火が開催決定

昭和100年を祝う夜!グランドプリンスホテル広島でTEPPANの歌謡ライブ&打ち上げ花火が開催決定

2026年5月5日、グランドプリンスホテル広島にて「昭和100年」を記念したスペシャルイベントが開催される。広島発の4人組ボーカルグループ「TEPPAN」による昭和歌謡ライブに加え、夜空を彩る打ち上げ花火も予定。ライブ観覧は無料。さらにホテル上層階のレストランではCD付きの特別ディナープランも登場する。


樋屋奇応丸の倉庫から幻の音源発見!デューク・エイセスが歌う昭和のCMソングが高音質で蘇る

樋屋奇応丸の倉庫から幻の音源発見!デューク・エイセスが歌う昭和のCMソングが高音質で蘇る

「ひや・きおーがん」のフレーズで親しまれる樋屋製薬の社内倉庫から、長らく歌唱者不明だった過去のCMソング音源が発見された。調査の結果、昭和を代表するコーラスグループ「デューク・エイセス」による歌唱と判明。当時のクリアな歌声を再現した「高音質版」が公開され、昭和歌謡ファンを中心に大きな話題を呼んでいる。


福岡の食のテーマパーク「直方がんだ びっくり市」が50周年!大盛況で幕を閉じた「半世紀祭」をレポ

福岡の食のテーマパーク「直方がんだ びっくり市」が50周年!大盛況で幕を閉じた「半世紀祭」をレポ

1976年の創業から50周年を迎えた福岡県直方市の「直方がんだ びっくり市」にて、2026年4月17日から19日までアニバーサリーイベント「半世紀祭」が開催された。銘柄牛が50%OFFになる「肉袋」や名物セールの復活、地元ヒーローの参戦など、半世紀の感謝を込めた熱気あふれる3日間の模様を振り返る。


『メタルスラッグ』シリーズ30周年記念プロジェクト始動!新作開発や特設サイト、記念映像が一挙公開

『メタルスラッグ』シリーズ30周年記念プロジェクト始動!新作開発や特設サイト、記念映像が一挙公開

アクションゲームの金字塔『メタルスラッグ』が2026年4月19日に誕生30周年を迎えた。株式会社SNKはこれを記念し、シリーズの再燃・リブートを掲げた記念プロジェクトを始動。新作ゲームの開発を含む多彩な企画の推進や、歴史を振り返る記念映像の公開、特設サイトの開設など、世界中のファンへ向けた展開が始まる。


山下達郎ソロ・デビュー50周年記念!JOURNAL STANDARDとコラボした限定Tシャツが発売

山下達郎ソロ・デビュー50周年記念!JOURNAL STANDARDとコラボした限定Tシャツが発売

ソロ・デビュー50周年を迎えた音楽界のレジェンド・山下達郎とJOURNAL STANDARDが特別なコラボレーションを実現。1stアルバム『CIRCUS TOWN』収録の名曲「WINDY LADY」をテーマにしたTEEがリリースされる。音楽史に刻まれた名盤の空気感を纏える、ファン垂涎の記念アイテムが登場だ。