ビッグバン・ベイダー物語は猪木秒殺事件から始まった!空飛ぶ巨漢が新日UWF全日ノアで大暴れ!

ビッグバン・ベイダー物語は猪木秒殺事件から始まった!空飛ぶ巨漢が新日UWF全日ノアで大暴れ!

日本マット界にビッグバンを起こした皇帝戦士ベイダー。170キロの巨漢で空中殺法を炸裂させるプロレスラーは他に類例がない。ベイダーの新日本マット登場から、UWFインター、全日本プロレス、プロレスリング・ノアでの激闘を振り返り、強さの秘密に迫る。


猪木秒殺事件

1987年12月27日、両国国技館。
マサ斎藤は、とんでもないモンスターを連れて来てしまった。
伏線は、TPG(たけしプロレス軍団)のメンバーが、新日本プロレスに来て、アントニオ猪木に挑戦状を叩きつけようとする。
しかし鬼軍曹の山本小鉄は灰皿をぶん投げて「百年早い!」と怒鳴った。
これで引き下がるTPGではなかった。今度は猪木に直接挑戦状を渡し、一応受諾する形となる。
TPGだけならまだしも、正真正銘のプロレスラーであるマサ斎藤が特別顧問のような形でついたため、俄然意味合いが違ってきた。
マサ斎藤は、ビッグバン・ベイダーという巨漢レスラーを連れて来る。
プロフィールは伏せていたが、放送席がボクシングをやっていたことと、フットボールの選手だったことを知っていたので、多少の前情報はあったようだ。
ベイダーはただの大男ではなく、AWAやCWAで活躍してきた正真正銘のプロレスラーだ。
だが、当時の新日本プロレスファンは、アントニオ猪木の過激なプロレス。長州力の叩き潰す戦慄のプロレスに魅せられていた。
技と技、力と力の真っ向勝負をするストロングスタイルが新日本スタイルで、そこに誇りを持っていた。だから芸能人がリングに上がるだけで拒絶反応を起こす。
ビートたけしといえば人気絶頂のスター。しかし両国国技館は殺気に満ちた「帰れコール」が巻き起こった。これはTPGも誤算だったのではないかと思う。

ビッグバン・ベイダーは何しろこの甲冑。それに190センチ、170キロの巨漢とあって不気味さが漂う。
最初は藤波辰巳、木村健吾VSマサ斎藤、ビッグバン・ベイダーのタッグマッチがベイダーの新日デビューのカードだった。
ところがマサ斎藤がリングで「猪木! この男と闘え!」と迫る。
しかしメインイベントはアントニオ猪木VS長州力のIWGPヘビー級選手権が決まっている。ファンも猪木と長州の一騎打ちを観に来たのだ。
リング上は、猪木、長州、斎藤、TPG、そして素顔を甲冑で隠したビッグバン・ベイダー。さらには新日本プロレスの主力選手や若手セコンド陣が皆上がっていた。場内は騒然。
まず長州力がキレた。心の師であるマサ斎藤に猛然とつかみかかる。斎藤もこれは誤算だったのか、必死に長州をなだめるが怒りは止まらない。
長州力には焦りがあった。もう猪木は、ストロング小林やボブ・バックランドと熱闘を繰り広げていた全盛期ではない。
年齢的にも強さのピークを過ぎていたのは明らかで、今がギリギリのチャンスだった。すなわち、「強いアントニオ猪木」に勝たなければ猪木越えにはならない。
こんなところでベイダーに譲っている暇はないのだ。
しかし、猪木がベイダーとの一騎打ちをやると言ってしまったので、今度は長州は猪木に殴りかかろうとしてセコンド陣に止められる。
ファンも納得しない。暴動寸前の危険な雰囲気になっていた。

過去にも暴動事件はあった。
1984年、第2回IWGP優勝戦。あの猪木失神事件の翌年も、アントニオ猪木VSハルク・ホーガンの優勝決定戦になった。
前年と同じ形になり、場外でアックスボンバーが炸裂し、猪木が鉄柱に激突してダウン。悪夢が蘇る蔵前国技館。
そのあとホーガンが猪木を鉄柱にぶつけようとしたのか長州力にぶつけようとしたのか定かではないが、ホーガンは猪木を投げた。その猪木に長州力がリキラリアット!
その瞬間、観客席から一斉に長州に物が投げつけられた。ホーガンは長州にアックスボンバー・・・しかしリキラリアットと相打ち。
ホーガンが場外でダウンしている間にセコンド陣が半失神している猪木をリングに上げて猪木のリングアウト勝ち。この結末に怒りが爆発したファンが暴動を起こした。
暴動は良くないことだが、それだけファンは真剣だった。試合を壊す行為は絶対に許さない。

もしもフロントが、TPGが歓声で迎え入れられると思っていたとしたら、全くファン気質を把握していなかったことになる。
誤算が重なり、混乱に拍車をかけたのは、長州力、マサ斎藤VS藤波辰巳、木村健吾のタッグマッチを始めてしまったことだ。
観客席から罵倒が選手に浴びせられる。「やめろ!」と怒号が渦巻くなか、長州がリキラリアットで木村健吾からピンフォールを奪い、猪木戦をやると宣言。
それに対して猪木も受けて立ったので、一旦はファンの怒りもおさまったかに見えたが、一試合闘った長州力のスタミナの消耗は激しく、猪木の卍固めで動きが止まる。
長州は絶対にギブアップしないだろうと思ったセコンドの馳浩が試合を止めたが、長州力もファンも不完全燃焼。
やはりきちんとした形で一騎打ちを観たかったという思いは消えない。

そして、ファンの気持ちはとりあえず棚上げで、マサ斎藤とTPGの要望通り、アントニオ猪木VSビッグバン・ベイダーの試合が行われる。
もしもこの試合で猪木が圧勝すれば本当に茶番劇になってしまう。
理想は、ブルーザー・ブロディが新日本プロレスに初登場した時のように、猪木と歴史に残る白熱した名勝負を展開すれば、結果が両者リングアウトでも、ファンは猪木とブロディに喝采を送った。
しかし、猪木VSベイダーの試合は、全く予想外の結末が待っていた。

アントニオ猪木はリング上で臨戦態勢。甲冑で素顔を隠したビッグバン・ベイダーがリングに上がる。
再びマサ斎藤がマイクを持って「猪木! この男と闘うか? どうする!」
猪木はもちろん受けて立つ。ベイダーが甲冑を取る。その時猪木が背後から襲いかかる。ここでゴング。
場内に歓声は少ない。騒然としたざわめきがずっと続いている。ファンはこの対戦に納得していない。
マスクをしていない素顔のベイダーがヒグマのように両腕を上げて大きさを誇示する。
ベイダーが行く。ベイダーハンマー連打で猪木が卒倒する。ベイダーは猪木を軽々と持ち上げてリフトアップ!
猪木をリフトアップした状態でリングを回り、コーナーに叩きつけ、上からベイダーハンマーを振り下ろし、猪木をコーナーで逆さ吊りにする。
離れたベイダーは逆さまの猪木にフットボールタックル! ダウンした猪木が何とか立ち上がるが、もう一回タックルで吹っ飛ばす。
猪木は防戦一方。やはり長州力と一試合闘ってスタミナは残っていないか。
ベイダーが170キロの全体重を浴びせたジャンピングエルボードロップ! 今度はハイアングルのジャンピングエルボードロップ!
何もできない猪木。ベイダーは猪木を抱え上げてアバランシュホールド! まさかのカウントスリー。
再び怒号と大ブーイングが巻き起こった。
猪木は半失神状態で立てない。ベイダーはセコンド陣を蹴散らし、猪木にストンピング。
こんな試合を観に高い入場料を払って来たわけではない。ついに怒りが頂点に達したファンが暴動を起こした。
日本相撲協会は新日本プロレスに対し、両国国技館の使用を禁止した。

新日本プロレス事件簿

TPGは両国国技館の暴動事件以来、二度と新日本プロレスのリングに上がることはなかったが、ビッグバン・ベイダーのその後の大活躍を考えると、とてつもなく大きな置き土産を残していったといえる。
ベイダーが実力者だったのが救いだ。日本マット界では強いレスラーは評価される。
今までも新日本プロレスには、アンドレ・ザ・ジャイアント、スタン・ハンセン、ハルク・ホーガン、ブルーザー・ブロディなど、日本勢を総なめにしそうな強豪大型レスラーが来襲した。
それがある意味、外国人レスラーの重要な役目だと思う。力道山以来の日本人レスラー対外国人レスラーという対決の図式はわかりやすい。
次々まだ見ぬ強豪が来日すれば、それだけ鮮度を保てる。やはり同じカードばかりではファンが飽きてしまう。
そういう意味でビッグバン・ベイダーは、久しぶりの黒船来襲といえる強豪外国人レスラーなのだ。
新日本プロレスでは、ベイダーが来るまでは日本人レスラー同士の対決が主流になっていた。
主に、猪木越えをテーマに、長州力と藤波辰巳と前田日明が猪木とのシングルマッチを要望し、争っていた。
新日本プロレスは本当に事件が多い。
1987年11月19日、東京・後楽園ホールで行われた6人タッグマッチ。長州力、マサ斎藤、ヒロ斎藤VS前田日明、木戸修、高田延彦。
長州力が木戸修にサソリ固めを掛けようとした時、前田が背後から長州の顔面にハイキック!
前田は、皆が胸板にミドルキックをするのを見て「なぜ顔面を蹴らないんだ?」と前から言っていた。
前田日明にとってプロレスは真剣勝負だ。しかしこの時はわざと顔面を蹴ったわけではなく、長州が顔面に来ると思って交わそうとしたため、返って目のあたりにキックが決まってしまったというのが真相。
しかし当時は長州もほかのレスラーもそうは思わない。前田日明が上田馬之助に対しても藤波辰巳に対しても、容赦のない顔面キック連打をするのは有名だ。
長州の右目はみるみる腫れ上がり、サソリ固めを解いた長州が前田のほうに歩み寄ると前田も向かって来ようとする。
ほかの4人が一斉にリングに入り、両者を分ける異常事態になった。マサ斎藤もミスター高橋も前田に対して激怒している。
ロープをくぐりエプロンに立った前田に長州が顔面パンチ! 場内騒然。
長州はミスター高橋に「試合が終わっても前田を帰すな」と告げたらしい。
前田とセメント(真剣勝負)をやる気だったのだ。
試合は、マサ斎藤が高田をショルダースルー。長州がロープに飛んでリキラリアットでカウントスリー。
高田はツーで返せたが、見るからに長州の右目の腫れが危険な状態なので、わざと試合を終わらせたという意見も多い。
プロレスは殺し合いではない。
前田は故意の危険な顔面キックで長州力に重傷を負わせたということで、無期限出場停止となる。これは前田が新日本プロレスを離れ、UWF、リングスへと格闘プロフェッショナルレスリングという理想を追い求めるきっかけとなった。

新日本プロレスの暴動事件は、1984年の蔵前国技館、1987年の両国国技館以外にもある。
1987年3月26日、大阪城ホール。アントニオ猪木VSマサ斎藤の一騎打ちだ。
長州力、藤波辰巳、前田日明が猪木越えを競い合っている時、マサ斎藤も猪木との決着を迫っていた。
しかし試合中にアイスホッケーの覆面を被った謎の海賊男が乱入し、マサ斎藤に手錠を掛けて連れ去るという意味不明なことが起きてしまった。
演出だとしても個人の乱入としても、新日本プロレスファンの気持ちを何もわかっていないことは明らかだ。
真面目に純粋に試合を観に来ているのに、なぜこんなことをするのか? ファンの怒りは爆発し、大暴動が起こる。
昔の新日本プロレスファンが熱かったのか。そんなことはない。2004年にも暴動寸前の出来事があった。
10月9日、両国国技館で行われたIWGPヘビー級選手権。佐々木健介VS藤田和之。まさに夢の対決だ。
健介も関節技を特訓し、海外で総合格闘技の試合にも出場し、相手選手をなぎ倒しでギロチンチョークで秒殺圧勝。
だからPRIDE常連の藤田和之にも堂々と渡り合える準備をしてきた。
試合は藤田がスリーパーホールドで健介を攻める。両肩がついたのでレフェリーがカウントを数える。藤田は慌ててツーで技を解いた。カウントに気づかなかったのだ。
またスリーパーで攻める。健介はグイッとブリッジで反り、藤田の両肩をつける。そのまま、まさかのカウントスリー。藤田はカウントに気づかなかったらしいが、誰が信じるのか。
場内は騒然。まだ試合開始して2分しか経っていないので、当然延長かと思われたが、試合は健介のフォール勝ちで終わってしまった。
大ブーイングの嵐が巻き起こったことは言うまでもない。リングサイドにいた北斗晶が大激怒して草間社長に襲いかかりキック!
いくら藤田がPRIDEが主戦場とはいえ、正真正銘のプロレスラーだ。カウントに気づかないわけがない。リング上には物が投げ込まれ、暴動寸前の状態になった。
ファンは真剣にプロレスの試合を観に来ているのだから、堂々とストロングスタイルの真っ向勝負を見せればいいのに、なぜ余計な演出をするのか。それも全然面白くない演出をするのなら始めから何もしないほうがいい。
そういう意味でビッグバン・ベイダーは、新日本プロレスファンを大満足させる熱闘を展開する、根っからのファイターだった。

ビッグバン・ベイダーVS藤波辰巳

長州力と藤波辰巳の猪木越えへの執念の凄まじさが見えた試合がある。
1987年10月19日、アントニオ猪木、山田恵一VS長州力、藤波辰巳のタッグマッチ。
長州が山田からリキラリアットでピンフォールを奪うと、猪木が2対1でやると言い出す。
怒った長州と藤波が受けて立ち、ハンディキャップマッチが行われる。しかし2対1ではさすがに苦しい。藤波のジャーマンスープレックスホールドで猪木がカウントスリーかと思った瞬間、長州が藤波にキック!
怒りの藤波は半失神の猪木を場外に放り投げ、長州と対峙。セコンド陣が両者を分けた。
2対1で猪木からフォールを奪っても猪木越えにならないことは明らかだが、自分が先に首を獲るという執念は凄まじい。
だが、両国でビッグバン・ベイダーが猪木をフォールしたことを考えると、そのベイダーを倒して新日本プロレスの牙城を守ることこそ、猪木越えの一要素といえる。

1988年、実質的に新日本プロレスに参戦したビッグバン・ベイダーは、その強さを発揮する。
パワーとスピードは文句なし。しかも170キロの巨漢で空中殺法を繰り出すのだから相手選手はたまらない。
またベイダーハンマーも厄介だ。たまにベイダーハンマーと見せた単なるパンチも混ざっているので、あの重い連打で試合の流れが変わってしまう。

1988年6月26日、名古屋レインボーホールで行われたIWGPヘビー級選手権。
藤波辰巳は、ビッグバン・ベイダーの猛攻に耐えに耐え、最後は逆さ押さえ込みでベイダーからカウントスリーを奪う。
炎の飛龍・藤波辰巳が猪木越えに一歩近づいた。
ベイダーは1985年のデビューなので、経験は圧倒的に藤波のほうが上なのだ。
しかし、ベイダーは藤波や長州、そして猪木と対戦していくうちに、いろいろな技や駆け引きを覚え、隙がなくなっていく。
もともとパワーは文句なしだが、それに小技や駆け引き、試合運びの上手さが加わっていったのだ。
あのハルク・ホーガンが猪木との闘いで日本式のプロレスリングを吸収したように、ベイダーの急成長は著しかった。
1989年4月24日、東京ドーム。藤波は、さらに強くなってしまったビッグバン・ベイダーと闘うことになる。

1989年4月24日、東京ドーム。
この日は、新日本プロレスが「闘強導夢杯争奪トーナメント」と銘打ち、ビッグバン・ベイダーも参戦。
トーナメントの1回戦で蝶野正洋をビッグバンクラッシュで破り、2回戦は藤波辰巳と対戦。公式戦30分1本勝負。
藤波がヘッドロックするとベイダーはいきなり強烈なバックドロップ! たまらず場外にエスケープする藤波。
ベイダーはフロントヘッドロック、ヘッドバット。ロープに飛ばしてベイダーラリアット! 飛ばしまくる。
藤波もバックを取ってバックドロップ・・・はさすがに無理か。行った。藤波はベイダーの巨体をバックドロップ!
ローキック連打で攻める藤波だが、すぐにベイダーがアームロック。グラウンドで腕を攻め、その腕にニードロップ! 170キロの巨漢がやるとつなぎ技も必殺技になりかねない。
ベイダーが行く。ベイダーハンマーからブレーンバスター・・・は藤波がブレーンバスター返し! さらにドロップキックでベイダーは場外へ。
藤波が場外を見る。勢いよくロープに飛んでまさかのドラゴンロケットかと思ったが、ここは慎重に思いとどまる。
ベイダーがスライディングして藤波を転ばし、脚を極める。何というクレバーなベイダー。
ラフファイトも得意だ。藤波に痛烈な張り手。藤波も張り手で返す。ベイダーの顔面に張り手連打。 
ベイダーもボディスラム、ベイダーアタック。しかしベイダータックルを藤波がホイップして腕ひしぎ逆十字固め! 大歓声。ロープブレイク。
ベイダーのブレーンバスターを藤波がバックに回ってバックドロップ! カバーに入ったが、ベイダーが返すと藤波は宙に浮いてしまった。
藤波は腕を攻める。ベイダーが叫び声を上げて痛がるが演技か本気か。
ベイダーは一本背負いで藤波を投げ、ベイダーハンマーからロープに飛ばしてベイダーラリアット!
場外乱闘はベイダーが攻勢。藤波を鉄柱に叩きつけ、リングに上げる。
藤波はベイダーの腕にキック連打から延髄斬り! そして腕固め! 決まるか。ベイダーはロープ。
ベイダーは藤波をコーナーに投げてベイダーアタック! 
藤波もドロップキック。コーナーポスト最上段からダイビングボディアタックはベイダーが受け止めて、そのまま藤波の首をトップロープにギロチン!
ベイダーが攻める。藤波をロープに飛ばしてショルダースルーを藤波がローリングクラッチホールド・・・を粘りヒップドロップ!
藤波が苦悶の表情で立てない。チャンスだ。ロープに飛んで170キロのビッグバンクラッシュ! カウントスリー!

蝶野正洋、藤波辰巳を撃破したビッグバン・ベイダーは決勝で橋本真也と激突。
決勝は闘強導夢杯&IWGP王者決定戦、60分1本勝負。
ベイダーは見事にベイダーラリアットで橋本真也を破り、優勝とベルトを勝ち取った。
ビッグバン・ベイダーは第4代IWGPヘビー級チャンピオンに君臨した。

ビッグバン・ベイダーVS長州力

ピストル音が鳴り、パワーホールが流れると、場内は嵐のような大長州コールが巻き起こる。
カリスマ性でも人気でもアントニオ猪木と肩を並べる唯一の存在が長州力なのだ。
1989年8月10日、因縁の両国国技館。チャンピオンの長州力は、ビッグバン・ベイダーの挑戦を受ける。
しかし、ビッグバン・ベイダーは、まさかのローリングクラッチホールドで長州力からカウントスリーを奪い、IWGPヘビー級チャンピオンに返り咲く。
これでベイダーは、第4第、第7第と二度もIWGPヘビーのベルトを腰に巻くことになる。

ビッグバン・ベイダーは、チャンピオンとして防衛戦を重ねる。
クラッシャー・バンバン・ビガロ、橋本真也、スタン・ハンセンと強豪を退け、強さを証明していく。
しかし、ハンセン戦で目を負傷してしまったことが痛い。これは明らかに試合に支障をきたしてしまうからだ。
1990年、8月19日、縁深き両国で、チャンピオンのビッグバン・ベイダーに挑戦する長州力。
新日本プロレスの最後の砦として、長州力が必勝の決意で臨んだ。

甲冑姿で入場して来たチャンピオンのビッグバン・ベイダー。花道で白煙を上げ、リング上でもコールされる時に白煙を上げた。
マスクを被ったベイダー。ゴング。長州はいきなり張り手! 怒ったベイダーもベイダーハンマー。パンチが混ざっている。
長州をロープに飛ばすと見せかけて腕を取ったままのベイダーラリアット! カウントツー。
ベイダーは寝ている長州の脚を極めながら上からパンチ。そして掟破りのサソリ固めに行こうとする。長州が苦しい表情。
ベイダーハンマー連打で長州は場外転落。長州はキレたか。エプロンに立ち、ベイダーが襲いかかるところをベイダーの右目にヘッドバット!
ロープをくぐった長州は猛然とベイダーにパンチ連打。ダウンするベイダーにキック連打! 「テメーこらあ!」と目を剥いてパンチ連打。ベイダーは場外へエスケープ。
場外乱闘。ベイダーは長州をフェンスに叩きつける。そして鉄柱! 長州が流血。リングに上がったベイダーはマスクを外す。
リングに上がろうとする長州にベイダーがブレーンバスター! 
長州はまだ宿敵ベイダーから一度もピンフォールを奪ったことがない。ベイダーは長州から二度もフォール勝ちをしている。
ベイダーラリアット! 流血している長州の額にサイドキック! ボディスラムからのビッグバンクラッシュ! カウントツー。大長州コール。
ロープに飛ばすと見せかけてのベイダーラリアット! エルボードロップ! カウントツー。やはり強いベイダー。長州苦しいか。

ベイダーがコーナーポスト最上段に上る。危ない。しかし長州が素早くコーナーポストに上り、ベイダーの巨体を雪崩れ式ブレーンバスター!
形勢逆転か。長州が延髄斬り! ロープに飛んでリキラリアット! 右腕を押さえて痛がる長州。もう一度リキラリアット! 腕が痺れる。
ベイダーの太い両足を取りサソリ固め! 大歓声。ベイダーはロープをつかむ。
ベイダーも右目を痛がる。長州をコーナーに投げてベイダーアタック! パンチが混ざったベイダーハンマー連打をレフェリーのタイガー服部が注意する。
もう一度長州をコーナーに飛ばしてベイダーアタックを狙って突進したところを長州がカウンターの右目パンチ!
怯むベイダーにリキラリアット! 倒れないベイダー。ロープに飛んでリキラリアット! 倒れない。ロープに飛んでぶん殴りラリアット! 今度は後頭部ラリアット!
四つん這いの形でダウンするベイダー。長州は渾身のリキラリアット! カウントスリー!
パワーホールが流れ、嵐のような大長州コール。悔しがるベイダー。
IWGP王座がついに移動。ベイダーは5度目の防衛に失敗。しかしベイダーの強さを嫌というほど思い知らされた試合だった。

ビッグバン・ベイダーはこのあとも、1991年1月17日、横浜文化体育館で藤波辰巳をベイダーラリアットで撃破し、第10代IWGPチャンピオンとなる。
結局新日本プロレスで3度もIWGPベルトを腰に巻いたのだ。
IWGPタッグもクラッシャー・バンバン・ビガロとのコンビで獲得している。
 

ビッグバン・ベイダーVSアントニオ猪木

両国の初対決でビッグバン・ベイダーに秒殺されたアントニオ猪木。もちろんあのまま終われるわけがない。
猪木とベイダーはその後も名勝負を繰り広げるのだ。
1988年7月29日、有明コロシアム。アントニオ猪木はビッグバン・ベイダーと対戦する。
あの時は長州力と一試合闘ったあとでスタミナを消耗していたのは間違いない。ベストコンディションで臨むシングルマッチ。猪木は喧嘩殺法でベイダーを攻めまくり、最後は16分45秒、必殺腕固めでベイダーに勝利した。

アントニオ猪木は、数えきれないほどの強豪外国人レスラーと闘ってきた。
タイガー・ジェット・シン、ボブ・バックランド、スタン・ハンセン、ハルク・ホーガン。
猪木に勝ったレスラーは何人もいるが、何度も対戦したライバルレスラーなら、たいがい猪木が対戦成績で勝っている。
あの世界の大巨人アンドレ・ザ・ジャイアントも猪木の必殺腕固めでギブアップした。アンドレからギブアップを奪ったレスラーは世界でも猪木一人だろう。
ただ、猪木も完全無欠ではない。ローラン・ボックとブルーザー・ブロディからは一度もピンフォールを奪えなかった。
ローラン・ボックと猪木は一度も完全決着がつかないまま、ボックが引退。
ブロディと猪木は7度も対戦しているが、両者リングアウトや時間切れ引き分け。あとはどちらかの反則負けで、猪木はフォールはもちろん、ブロディにリングアウト勝ちもしたことがない。
ビッグバン・ベイダーも、猪木が一度も勝てなかったレスラーになるかと思ったが、見事に腕固めで両国の借りを返した。

月日は流れ、1996年1月4日、東京ドーム。
アントニオ猪木はすでに53歳になっていた。引退のカウントダウンは始まっていた。皇帝戦士ビッグバン・ベイダーとシングルマッチをやるのは無謀というもの。
ベイダーは全く容赦しない。投げっ放しジャーマンスープレックス! チョークスラム! ドラゴンスリーパー!
何度も死にそうな顔でダウンする猪木。ベイダーがコーナーポスト最上段からムーンサルトプレス! まさに圧殺刑だ。

170キロのビッグバンクラッシュは息ができなくなるのではないか。ベイダーハンマーも藤波辰巳が言うには脳震盪を起こすと。
ベイダーは猪木にベイダーハンマーを連打しながら「ガンバッテー、ガンバッテー」と叫ぶ。頑張ってほしかったらベイダーハンマーは勘弁してほしいところだが。
思えばこの1.4の猪木戦ほど、ベイダーが大技を連発させた試合はほかにないかもしれない。尊敬する猪木に対して全力を出し切ることがファイターの恩返し。

最後は執念の腕ひしぎ逆十字固めでベイダーがギブアップ! 猪木の奇跡の大逆転勝ちだ。
猪木にとっても、晩年にビッグバン・ベイダーという強豪レスラーと出会えたことは大きいのではないかと感じる。
ベイダーにとってはもちろん、アントニオ猪木と何度も対戦した経験は、その後のプロレスラー人生で生きたはずだ。

スーパー・ベイダーVS高田延彦

ビッグバン・ベイダーは、新日本プロレスと契約中だったが、1993年にUWFインターナショナルのリングに上がる。
ベイダーの本名は、レオン・ホワイト。今までもいろんなリングネームでファイトしてきたが、UWFインターではスーパー・ベイダーとして激しい熱闘を繰り広げる。
1993年5月6日、日本武道館で中野龍雄と対戦。中野のキックとベイダーの打撃。乱打戦を制したのはベイダーだった。中野龍雄をTKOで破り、UWFにもベイダー旋風を巻き起こす。
同年8月13日は山崎一夫のキックに大苦戦しながらもベイダーがKO勝利。
そして12月5日、神宮球場の大舞台でついに高田延彦と激突。
鉄人ルー・テーズ認定のプロレスリング世界ヘビー級選手権。
チャンピオンの高田延彦に挑戦するスーパー・ベイダー。
ベイダーの掌打やベイダーハンマーに苦戦する高田だが、キック攻撃と関節技でベイダーを追い込む。
ベイダーはUWFインターのリングに上がるために、キックボクサーと猛特訓を積んできたのだ。この努力家なところが、ベイダーの強さの秘密だ。
ベイダーはUWFスタイルにも順応した。そしてベイダーはもちろん打撃だけでなく袈裟固めもやれば、オクラホマスタンピートで高田をマットに叩きつける。
だが、最後は高田の腕ひしぎ逆十字固めに敗れる。

もちろんここで終わるベイダーではない。1994年6月10日、日本武道館であの田村潔司と対戦する。
田村の徹底したローキックに大苦戦するスーパー・ベイダー。
さらにミドルキック、ハイキック、関節技とベイダーを攻めていくが、何しろこの体格差。ベイダーハンマー一発で流れが変わる。
スーパー・ベイダーの二階からの投げ捨てパワーボムはまさに殺人技。田村をKOで破った。
ベイダーの勢いは止まらない。
同年8月18日、両国国技館で再び高田延彦と対決するスーパー・ベイダー。
高田のキック攻撃や関節技に苦しみながらも、必殺投げっ放しジャーマンスープレックスが火を噴く。
最後は投げ捨てパワーボム、ベイダーハンマーで高田をKO!
プロレスリング世界ヘビー級チャンピオンに輝いた。
ベイダーはIWGP、CWA、WCWに続き団体トップのメジャータイトルを獲得する。
控室でスーパー・ベイダーを祝福するルー・テーズと、懐かしの人間風車ビル・ロビンソンの姿もあった。

高田延彦こそ、このまま引き下がるわけにはいかない。
1995年4月20日、名古屋レインボーホールでプロレスリング世界ヘビー級選手権。
巨大な壁、チャンピオンのスーパー・ベイダーに高田延彦が挑む。

ゴングが鳴る前にベイダーはいきなり高田に張り手! 怒る高田。ゴングと同時にローキック連打、ミドルキック連打でベイダーは場外転落。高田が追う。場外でミドルキック連打!
リング上。「カモン!」と気合十分の高田。しかしベイダーハンマー、張り手、チョークスラム! 高田ダウン。
グラウンドの展開。ベイダーが上になる。重いから簡単には跳ね除けられない。ベイダーが寝ている状態の高田の顔面にニーパット! これは反則でブレイク。ブーイングが起こる。
高田がローキックで攻める。ベイダーも張り手。そしてベイダーハンマー連打で高田ダウン。
軽快なフットワークで高田がローとミドルのコンビネーション。ベイダーも張り手で応戦するが、高田が脚にニーパットからローキック、ハイキック! ベイダーダウン。
立ち上がるベイダーに高田はローキック5連発でダウンを奪う。ベイダー苦しい表情。
ベイダーがプロレス殺法。ベイダータックルで高田をコーナーに押し込み、ベイダーハンマー連打でダウンを奪うが上から張り手連打! これは反則。レフェリーが「ブレイク」と何度も叫ぶ。大ブーイング。
怒りの高田。ローキックからハイキック連打、ローキック連打、そして腕を取って腕十字。ベイダーが両手でロックして防御。高田はしごいてロックを外すがベイダーが上になる。
ベイダーの高度なテクニックが見える。
高田攻勢。ローキック連打から張り手、さらにローキック連打からハイキック! ベイダーダウン。
10分経過。
高田が上になりスリーパー狙い。ベイダーが防ぐと高田はフェイスロックからキャメルクラッチ。

高田がミドルキック連打。しかしベイダーハンマーでダウン。高田が立ち上がるとベイダーが張り手! 一発の打撃でダウンを奪ってしまう。いかにベイダーの打撃が強力かがわかる。
ベイダーが行く。高田にベイダーラリアット! ダウンした高田は立ち上がってもふらつく。チャンスか。ベイダーがパワーボム・・・は高田が何とか逃げた。
高田苦しい。ベイダーラリアット! 張り手で追い込む。もう一度高田を抱え上げて投げ捨てパワーボム! ダウン。高田コールが湧き起こる。
ベイダーの引き出しは多い。まさかの脇固め! 高田ピンチ。セコンドか観客か、「高田耐えろ!」の声援が飛ぶ。
ベイダーの技が止まらない。ドラゴンスリーパー! 悲鳴混じりの声援と高田コール。
高田が反撃。ハイキック! ミドル、ミドル、ハイ、ミドルキック・・・しかしベイダーが張り手一発で高田ダウン。何というパワー。
高田の執念。猛然とベイダーに立ち向かう。膝蹴り連打からハイ、ミドル、ミドル、ミドル、フロントキック! 最後は顔面ハイキック! ベイダーが卒倒する。
ベイダーは何とかロープをつかんで立とうするがカウント10でKO負け。
絶対勝利の執念を燃やした高田延彦がベルトを奪還することができた。

スーパー・ベイダーのUWFインター上陸は短期間だったが、新日本プロレスとはまた違った好勝負をファンに見せることができた。
そしてベイダー自身の言葉で言うと「危険な闘い」を経験したことは大きいと思う。
このあとベイダーは新日本プロレスに戻るが、1998年に、いよいよ新天地・全日本プロレスのリングに登場する。

ベイダーVS小橋健太

きのうの敵はきょうの友。ベイダーは、あの宿敵・スタン・ハンセンとコンビを組み、全日本プロレスの世界最強タッグ決定リーグ戦に出場する。
1998年11月14日、後楽園ホールで三沢光晴、小川良成組と対戦。何とベイダーはセカンドロープからのリバーススプラッシュ(フライングボディプレス)で三沢からフォールを奪ってしまった。
ブロディ&ハンセン以来の「組むこと自体が反則」のコンビかもしれない。
優勝候補の小橋健太、秋山準組も、ハンセンがウエスタンラリアットで秋山からフォール。
ベイダーとハンセンは、ビッグバンクラッシュとウエスタンラリアットで無敗の快進撃を続け、ついに公式戦7戦全勝の快挙を成し遂げた。
最強の証明をしたが、優勝決定戦で小橋、秋山組と再び激突。
ベイダーが小橋を羽交い絞めにし、ハンセンがウエスタンラリアット・・・かと思った時、秋山がコーナーポスト最上段からのダイビングニーアタックでハンセンがよろけたところを、小橋がラリアット! ハンセンからフォールを奪い、小橋、秋山組が優勝。
ベイダーとハンセン組は準優勝だったが、ベイダーの恐るべき強さを見せつけた大会だった。

1999年1月2日、全日本プロレスのスーパーヘビー級バトルロイヤルでベイダーと小橋健太の因縁が勃発。
ベイダーが場外で小橋を襲い、観客席から悲鳴が上がるほど顔面パンチ連打。大流血の小橋も殴り返し、秋山準も加わり大乱闘。何と小橋は14針を縫う怪我を負わされた。
そんな中迎えた1月15日、横浜文化体育館での特別試合。これがシングル初対決だ。
最初から小橋はベイダーにパンチとチョップの連打。頭には痛々しい包帯。
ベイダーも非情。傷口にパンチ、ベイダーラリアット、ベイダーハンマー! 
ベイダーは場外で小橋を抱え上げて投げ捨てパワーボム! さらに脳天をイスで殴打!
リング上。ベイダーが小橋にビッグバンクラッシュ! カウントツー。小橋コールが湧き起こる。
怒りの小橋がベイダーのボディにソバット! DDT! コーナーに追い込み、チョップ連打からローリングケサ斬り!
場外にいるベイダーに小橋がトップロープを両手でつかみ、飛んだ! これは珍しい小橋健太のブランチャー!
リング上。小橋がベイダーの巨体をブレーンバスターで投げた。大拍手。さらにバックドロップ!
小橋はベイダーをボディスラムで投げ捨て、拳を握った。コーナーポスト最上段からムーンサルトプレス・・・はよけられて自爆。

小橋とベイダーのラリアットは相打ち。
ベイダーアタックで小橋をダウンさせたベイダーがセカンドロープに上るが、小橋はデッドリードライブ気味のパワースラムのような形でベイダーを叩きつける。
小橋はボディスラムから、今度こそ。コーナーポスト最上段からムーンサルトプレス! 決まった。しかしカウントツーで返すベイダー。
ベイダーが傷口にパンチ。小橋をボディスラムでダウンさせ、今度はベイダーがコーナーポスト最上段に上がる。危ない。ムーンサルトプレス! 
カウントは、ワン、ツー・・・WOOOOOOOOOO! カウント2.99で返した小橋。大拍手。
しかし小橋苦しい。ベイダーハンマーが強烈。バックを取ったベイダーが投げっ放しジャーマンスープレックス! 
ベイダーがセカンドロープに上り、ロープをつかんでリバーススプラッシュ! カウントツーで返す小橋。
大技が止まらないベイダー。もう一度セカンドロープから必殺ビッグバンクラシュ! カウントスリー!
ベイダー強し。小橋無念。



 

ベイダーの勢いは加速度を増す。
川田利明が右腕骨折のため王座返上。1999年3月6日、三冠ヘビー級選手権王座決定戦が行われた。
田上明VSベイダー。
ベイダーは田上明をベイダーハンマー連打で追い込み、最後は必殺パワーボムでフォール。三冠ヘビーのベルトを奪う。これでベイダーは、IWGPと三冠の2大タイトルを獲得する快挙を達成したのだ。
そして全日本プロレス春の祭典・チャンピオン・カーニバルにもベイダーは堂々の出場。
ベイダーは、秋山準、田上明、ジョニー・エース、ゲーリー・オブライト、高山善廣、新崎人生、大森隆男から勝ち点をもぎ取る。
しかし小橋とは時間切れ引き分け。三沢には破れ、ベイダーは小橋健太と優勝決定戦。
小橋健太はベイダーを止められるか。そして、1.15の借りを返すことができるか。

チャンピオン・カーニバル優勝決定戦は、1999年4月16日、日本武道館。
試合はベイダーハンマーと小橋のチョップの乱打戦。ベイダーが押す。ベイダーハンマー、ベイダーラリアット3連発。小橋もラリアットでなぎ倒し、ベイダーの上に乗り顔面パンチ連打。
場外でもベイダーをフェンスに叩きつけ、顔面パンチ連打、頭部へのキック連打。
ベイダーはハンマー、ラリアットで小橋をダウンさせ、170キロのヒップドロップ! 鎖骨のあたりを押さえて痛がる小橋は立てない。
セカンドロープからのビッグバンクラッシュ! 二階からのパワーボム! 小橋ファンから悲鳴にも似た声援が飛ぶ。
小橋もジャーマンスープレックス! コーナーポスト最上段からのムーンサルトプレス!
激しい大技合戦にファンも大興奮。
小橋のラリアットをベイダーが交わしたが、小橋が後頭部ラリアット! もう一度ラリアット・・・はベイダーが交わしてバックを取り、投げっ放しジャーマンスープレックス!
今度はベイダーがコーナーポスト最上段からムーンサルトプレス! カウント2.99で返した小橋だが、ベイダーは休まずパワーボムを狙う。粘る小橋にベイダーハンマー連打からパワーボム!
最後はベイダーアタックでそのまま覆いかぶさりカウントスリー! 19分11秒。
ベイダーがチャンピオン・カーニバル初優勝。


 

ベイダーVS三沢光晴

ビッグバン・ベイダーは、もともと桁外れのパワーファイターだったが、新日本プロレスとUWFインターで、テクニックや駆け引きなど多くのものを吸収し、完成度が高くなった。
おそらく全日本プロレス時代のベイダーが一番強かった時期ではないかと思う。

1999年5月2日、東京ドーム。全日本プロレスの最後の砦・三沢光晴が、ベイダーの三冠ヘビー級ベルトを奪いに、いざ出陣する。

イントロと同時に「ミ、サ、ワ! ミ、サ、ワ!」と嵐のような三沢コール。そしてあまりにもドラマティックなスパルタンXが流れるなか、三沢光晴が入場してくる。場内にはレインボーの光が舞う。
リング上にはすでにチャンピオンのベイダーが待っている。
60分1本勝負。
ベイダーハンマーとエルボーの乱打戦。強烈なベイダーハンマーを頭部に叩き込まれ三沢ダウン。
ベイダーはグラウンドの展開に持ち込みフェイスロック。何というクレバーな巨漢。
三沢をコーナーに投げてベイダーアタック! さらにベイダーラリアット! ジャンピングエルボードロップ! 飛ばしまくるベイダー。
三沢をコーナーに投げてベイダーアタックは三沢がWキックで迎撃。さらにエルボーはベイダーが交わしたがすぐに側頭部にエルボー!
三沢が素早くセカンドロープに跳び乗ったが、ベイダーハンマーで三沢が場外に転落。
ベイダーはフェンスの外まで三沢を連れて行き、持ち上げて鉄柵に三沢の首を落とすギロチン!
三沢苦しい。ベイダーは場外でパワーボムの体勢。粘る三沢にベイダーハンマー連打からパワーボム!
三沢コールが湧き起こるが、ベイダーはエプロンに上り、まさかそこから場外へビッグバンクラッシュ!
ベイダーは三沢をリングに上げ、ロープに飛ばしてベイダーラリアット! ひねりを加えたブレーンバスター! 苦悶の表情の三沢にもう一度垂直落下式ブレーンバスター! 
ベイダーがチャンスか。ビッグバンクラッシュ! カウントツー。
まさにベイダータイム。三沢の脚を極めて、さらに顔を極める。これはSTFか。三沢が足をロープに伸ばす。
三沢が反撃。エルボー連打。ロープに飛んでランニングエルボー! ベイダーは一回転して場外転落。
行くか。三沢がロープに飛んで場外にエルボースイシーダ! ベイダーの顔面にエルボーで突っ込んで行った。
場外でもベイダーをエルボーでなぎ倒し、三沢がセントーン! 三沢がいち早くリングに上がったと思ったら、両手でトップロープをつかみ、場外へブランチャー気味のフライングボディプレス!
三沢はベイダーをリングに上げ、コーナーポスト最上段からのミサイルキック!
ベイダーのバックを取った三沢が170キロをジャーマンスープレックス! カウントツー。
三沢が攻める。ベイダーをタイガードライバー・・・は上がらない。エルボーからボディスラム。三沢がセカンドロープからジャンピングエルボードロップ! カウントツー。
三沢がソバット・・・脚をつかむベイダーに顔面蹴り! さらにエルボー・・・を交わしたベイダーが三沢のバックを取り、投げっ放しジャーマンスープレックス! 
ベイダーが勝負を懸けるか。投げ捨てパワーボム! ビッグバンクラッシュ! カウントツーで返す三沢。
そしてベイダーは掟破り。三沢に対してまさかのタイガードライバー! カウントツー。
コーナーポストに上ったベイダーがムーンサルトプレスは三沢がよけて自爆。

 

しかしベイダーはタフガイだ。ベイダーハンマーで流れを変える。三沢をボディスラムで叩きつけ、再びコーナーポスト最上段に上る。三沢はすぐに立ち上がりエルボー! セカンドロープに上り、ベイダーの巨体を雪崩れ式ブレーンバスター!
三沢がコーナーポストからダイビングボディプレス! 三沢がもう一度ベイダーをコーナーに乗せ、雪崩れ式のDDT!
ベイダー苦しいか。三沢がローリングエルボー! カウントツー。決めるか。三沢がランニングエルボーを交わしてベイダーラリアット! ダウンした三沢に170キロのヒップドロップ! カウントツー。
三沢はすぐにベイダーの上に乗り、鬼の形相でベイダーの顔面にエルボー連打! 立ち上がるベイダーに三沢が左右のエルボー! ベイダーがボディブローを返すが鬼気迫る三沢が痛烈なエルボー連打! 三沢がロープに飛んだ。ランニングエルボー! カバーの体勢。ワン! ツー! スリー!
18分7秒。三沢光晴、三冠ヘビー級王座奪還。
しかしベイダーは強かった。最後の最後までどっちに転ぶかわからない白熱した試合だった。
スパルタンXが流れ、大三沢コールが湧き起こる。

思えばビッグバン・ベイダーは、新日本プロレスではストロングスタイルを、UWFインターでは格闘色の強いファイトを、そして全日本プロレスでも王道プロレスで会場を興奮と感動に包んだ。
素晴らしい順応性と適応力を感じる。
ベイダーは、根っからのプロレスラーだ。

ビッグバン・ベイダーが快挙達成

その後も全日本プロレスで活躍したベイダーは、2000年2月20日、神戸ワールド記念ホールで殺人医師スティーブ・ウイリアウムスとコンビを組み、世界タッグ選手権に挑む。
ベイダーとウイリアムスの強豪タッグは、小橋健太、秋山準組を破り、世界タッグ王座に君臨する。
シングルでも、ベイダーは、1999年10月30日、三沢光晴から三冠ヘビーのベルトを奪い返し、第24代王者となっていた。
ベイダーは川田利明の挑戦をベイダーラリアットで退けた。四天王全員に勝ったというのも凄い記録だ。
しかし、小橋健太は2000年2月27日、ベイダーに挑戦。
ベイダーの投げっ放しジャーマンスープレックス3連発にも耐え抜き、ベイダーアタックをカウンターのラリアットで迎撃。
コーナーポスト最上段からのムーンサルトプレスを決めたが、タフなベイダーはカウントツーで返す。
最後はベイダーアタックに怯まず、小橋が豪快なラリアットでベイダーからスリーカウントを奪い、三冠ヘビー級王者に返り咲く。
小橋健太はついにベイダーに勝利することができた。

プロレスリング・ノアが設立されると、ベイダーもノアのリングに参戦。
2001年10月19日、横浜文化体育館。ベイダーはスコーピオとコンビを組み、秋山準、齋藤彰俊組と対戦。見事勝利をおさめ、初代のGHCタッグチャンピオンに輝く。

これでベイダーは、IWGPタッグ、世界タッグ、GHCタッグという日本の3大タッグタイトルを獲得したことになる。シングルのIWGPヘビー、三冠ヘビーをあわせると、さすがにこれだけのタイトルを獲った外国人レスラーは、ビッグバン・ベイダーが史上初だ。
ベイダーは、プロレスリング・ノアでも三沢光晴をはじめ、全日本プロレス時代からの因縁の相手と激闘を繰り広げた。

それから月日が流れ、全盛期を過ぎたビッグバン・ベイダーだが、何度も来日し、いろいろなプロレス団体に参戦し、試合をしている。
ベイダーが日本マット界に残した功績は、あまりにも大きいと思う。

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