「パニック映画」(1970年代のパニック映画ブームから80年代中心)16選

「パニック映画」(1970年代のパニック映画ブームから80年代中心)16選

災害や大惨事など突然の異常事態に立ち向かう人々の勇気ある行動、生死がかかった厳しい究極の状況下における人間ドラマがパニック映画の見所です。1970年代のパニック映画ブームの火付け役となった記念碑的作品『ポセイドン・アドベンチャー』『タワーリング・インフェルノ』など有名な16作品をおさらいしてみましょう。


『ポセイドン・アドベンチャー(The Poseidon Adventure)』1972年 パニック映画(ディザスター・フィルム)の不朽の名作

『ポセイドン・アドベンチャー』(The Poseidon Adventure)は、1969年に発表されたポール・ギャリコの小説。そして1972年にこれを原作として映画化され、以降4回映像化されている作品である。 製作は アーウィン・アレンでこの映画製作の後に同じパニック映画の「タワーリングインフェルノ」を製作する。監督はロナルド・ニーム。音楽はジョン・ウィリアムズである。

豪華客船が航海の途中、大晦日の夜を祝うため多くの客が乗り合わせていた時に巨大な津波が押し寄せ船は転覆。パニック状態に陥った乗客たちの中で、たまたま乗り合わせていた牧師が生き残った乗客たちを脱出へと導いていくその苦難と悲劇の物語である。

この作品で当時パニック映画(ディザスター・フィルム)と呼ばれるジャンルが確立して、、アーウィン・アレンを中心とするスタッフが、この時の特撮技術を活かし、2年後に『タワーリング・インフェルノ』を製作した事はよく知られている。

出典 ポセイドン・アドベンチャー - Wikipedia

『ポセイドン・アドベンチャー(The Poseidon Adventure)』1972年

船が地中海に入ってからやがて大晦日を迎えて、その夜に船内ホールで船客のパーティーが開かれた。ところがクレタ島の南西130マイルの沖合で海底地震が起こり、その影響で大津波がやがて巨大な32mの高さで「ポセイドン号」を襲い、船体に問題があったためあっと言う間に転覆した。

ホールでカウントダウンのニューイヤーイヴで楽しい語らいをしていた船客らは緊急警報が船全体に鳴り響いたと同時に、船体が傾き始め、それまでの上部が足元に、足下が頭の上部にひっくり返って、横に身体が振られて、投げ出されて修羅場と化し、落下し壁に叩き落される者、落ちてきたテーブルや物品棚の下敷きになる者など阿鼻叫喚の場となった。

豪華客船ポセイドン号は瞬く間に転覆する。

転覆して180度横転した大食堂のホールには、この時点ではまだ相当数が生存していた。その時に客船の事務長が生き残った皆がこの場に留まることが最善で、救援隊が来るまでここで待機しようと訴えた。

しかし1人の牧師が異を唱えた。フランク・スコット牧師(ジーン・ハックマン)で、留まっていれば海面下に置かれているこのホールはやがて浸水して皆死ぬので、ひとまず上に上がって「船底」(この場合は船底でなく、船の最上部である)の竜骨付近に行ってそこで救援隊を待つことの方がよいという意見であった。

1,400名の乗客の内、生存者はわずか6名。スコット牧師の英断を無視した大多数の保守派はあっという間に命を奪われる・・・非常に示唆に富んだ名作

スコット牧師「ひざまずいて、神に祈っても、全て上手くいくとは限らない。祈っても、真冬のボロ家が暖かくはならん。寒い時は、家具でも家でも燃やせ。教会も祈りだけの場所ではない」

スコット牧師「助けてもらえる所まで行かなきゃ。上に行けば命がある!」

スコット牧師「苦しい時に、神に祈るな。勇気を持って、勝つ努力をせよ。神は努力する者を愛す。自力でやることだ。『内なる神』も、一緒に戦ってくれる」

スコット牧師は、こう叫んで、行動を共にすることを呼びかけたが、「牧師は船のことを知らん!」と叫び返し、彼らは、「動かない」という消極的な行為を選択したのである。

乗客のほとんどが、船の事務長の「救援隊が来るまでここで待つ」と言う言葉に従い、スコット牧師に従ったのはわずか9名。

この二つの選択の成否は、まもなく、悲惨な結果として現出する。

キッチンボイラーが爆発して、あっという間に、「動かない」という行為を選択をした人々の命を奪ってしまったのである。

左からローゼン夫婦、ジェームズ・マーティン(雑貨商)、ロビン(スーザンの弟)、ノニー(歌手)、スーザン(高校生)

たしかに命は大事。そう言われて反論できる人はいない。不慮の事故や病気、災害、あるいは自分の不注意でこれまでに築いてきた信頼や財産を失うこともある。けれど、人間、生きてさえいればなんとかなったりするものだ。

婦人客「上には何があるの?」 スコット牧師「命があります。人間 一番大事なのは命でしょう。」

牧師に付いてきたのは、ニューヨークの刑事マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)と リンダ・ロゴ(ステラ・スティーヴンス)の夫婦、気ままな旅をしていたマニー・ローゼン(ジャック・アルバートソン)とベル・ローゼン(シェリー・ウィンタース)の中年夫婦、雑貨商ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)、ホールで演奏していた楽団メンバーを全て失った歌手ノニー・パリー(キャロル・リンレー)、欧州へ遊びに行く予定だったスーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)とロビン・シェルビー(エリック・シーア)の姉弟の8人と、もともと上にいたボーイのエイカーズ(ロディ・マクドウォール)で、スコット牧師と合わせて10人でエンジンルームを目指した。

生死がかかった厳しい究極の状況下における人間ドラマがパニック映画の見所。

フランク・スコット牧師(ジーン・ハックマン)とスーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)

このような究極までに厳しい状況下では、見栄やエゴは何も意味を持たない。

スコット牧師を救ったベル・ローゼン(中年婦人・元水泳選手)は、目的地に泳ぎついたものの、心臓発作に襲われ、息を引き取った。

スコットは「神よ、なぜこの女性の命を召されたのか」と呻くのであった。

スコット牧師「まだ足りないのか!私たちは、神に頼らず、自力でここまで来た!助けは請わない。だから邪魔するな!何人、生贄が欲しいんだ!」

スコットは「ローゼン夫人は皆を助けるために犠牲となられた。残された我らは勇気を出して生き抜くことが夫人の遺志に報いる道である」と説くのであった。

「神よ、これほど犠牲を払ってもまだ満足なさらないのですか。それならば私の命を御取り下さい。」と叫んでスチームパイプのバルブに飛び移り、バルブの口を自らの身体の重さで閉めながら他の皆がプロペラシャフトに乗り移るように命じた。

この状況では物理的に生存は難しい。身を呈し同士の「糧」となる決断をしたスコット牧師。

英雄の自己犠牲、命をもってしか命をつなげない究極の状況下。

命を賭したベルの行動によって命を助けてもらった時に、スコット牧師も皆のために、道を切り拓くために命を捧げる覚悟はできていたでしょう。

スコット牧師「牧師である自分の命と引き換えに、これ以上、一人たりとも、犠牲者を出さないでくれ」

皆がプロペラシャフトに乗り移った後に、スコット牧師はスチームの洗礼から手を離して落下していった。

勇気を備えた真の英雄たる力強い人間であっても運命の荒波の前に力尽きることは避けられない場合もある。

生死を厳しく問う判断が迫られる極限状況、究極の状況下においては、運・不運・偶発性も結果を大きく左右する要素となる。結果は合理的なものとは限らず不条理なこともあろう。

英雄スコット牧師の死は物語によりいっそうのリアリティと深みを与えている。

力尽きて、スコット牧師もまた、火炎の中に落下し、あえなく、命を落としてしまう。

プロペラシャフトを抜けて「船底」に達した6人は船底を無我夢中で叩きだして、やがて突然に応答が聞こえてきた。救援隊が本当にやって来たのだった。救援隊の船底をこじ開ける作業の音を聞きながら、生き残った6人は様々な思いを胸に後ろを振り返るのであった。

外には救援部隊が来ており、船底の鉄板を焼き切っている。生き残った6名の生存者。

『タワーリング・インフェルノ』(原題: The Towering Inferno ・1974年・アメリカ映画) 「パニック映画ブーム」の中でも最高傑作

『タワーリング・インフェルノ』(原題: The Towering Inferno )は、1974年のアメリカ映画。パニック映画。ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーン主演。ワーナー・ブラザーズ・20世紀フォックス共同製作・提供作品。日本では1975年に公開された。

超高層ビル火災を描いた映画。本作品は1970年代中盤期のいわゆる、「パニック映画ブーム」の中でも最高傑作と評されている。1974年度のアカデミー撮影賞、編集賞、歌曲賞を受賞。

地上550メートル・138階、サンフランシスコにそびえ立つ世界最大の超高層ビルが、その落成式の日に地下の発電機の故障から火災を発し、やがて数百人の生命を飲み込む炎の地獄と化して燃え上がる。その大惨事を中心に、直面した人々のドラマを描く映画である。

出典 タワーリング・インフェルノ - Wikipedia

『タワーリング・インフェルノ』(原題: The Towering Inferno ・1974年・アメリカ映画) 「パニック映画ブーム」の中でも最高傑作

落成式には、ゲイリー・パーカー上院議員(ロバート・ヴォーン)、ロバート・ラムジー市長(ジャック・コリンズ)を初めとする各界の要人や、ビルの80階より上の住居部分の住人である、株専門の詐欺師だったハーリー・クレイボーン(フレッド・アステア)や、富豪の未亡人のリゾレット・ミュラー(ジェニファー・ジョーンズ)も招かれ、135階のプロムナードホールへ集まっていた。ハーリーとリゾレットは、お互いに惹かれて行く。

落成式が135階のプロムナードホールで開催され、大勢のセレブが集まっていた。

81階の物置室は火の海となり、煙が充満して室外に煙が流れ出していた。そこへ駆けつけた警備員達が扉を不用意に開けたため、火が一気に広がり、扉を開けた警備員を助けようとしたウィル・ギディングズは、火ダルマとなって致命傷を負った。現場に駆けつけたロバーツは、火災の状況をみてダンカンに電話し、ただちに式典を中止してビルからの退去を要請したが、ダンカンは、既に出動していた消防隊により鎮火出来ると頑強に信じて応じようとはしなかった。

やがて消防隊が到着した。隊長のマイケル・オハラハン(スティーブ・マックイーン)は、現場の状況を見て火事の酷さを悟り、ただちに79階に司令センターを設置するとともに、消火ホースだけでは81階の火災は抑えられないとして、135階のプロムナードホールへ行き、ダンカンに300人の客の緊急避難を命じた。反発したダンカンであったが、しぶしぶ承知してパーティー会場を1階に移すと招待客に説明して、エレベーターで下に降りるように案内したが、招待客等は、ダンカンの指示に従うような雰囲気では無くなっていった。

オハラハンは、81階の火事の状況から、ビル内部のエレベーターがその階を通過する時に、ショートで停止して扉が開くのではと考え、ダンカンに内部エレベーターの使用停止を進言したが、エレベーターは既に招待客を乗せて降下した後だった。

オハラハンが恐れていたとおり、エレベーターは81階で自動的に扉が開き、火が中に入っていってしまった。再び最上階に上がっていったエレベーターの扉が開くと、火ダルマとなった男が出てきて倒れた。招待客らがパニックに陥る中、ハーリーは、身動きしなくなった男に、着ていたタキシードを掛けるのであった。

ビル内部のエレベーターは81階で自動的に扉が開き、火が中に入っていってしまった。

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