おじさんがいないと始まらない~「ダイの大冒険」におけるおっさんキャラを考える~

おじさんがいないと始まらない~「ダイの大冒険」におけるおっさんキャラを考える~

「ダイの大冒険」といえばクロコダイン談議になるのはなぜでしょう。今もやられキャラとしてネタになるほど愛されているクロコダインは、男気に溢れ、己の美学を貫こうと努力し続ける、かっこいい大人の男でした。そんな「ダイ」に登場する魅力的なおじさんキャラと、ダイの魅力をご紹介します。


DRAGON QUEST 「ダイの大冒険」とは

「ダイ」は友情、コンプレックスとの付き合い方、成長、男の在り方について教えてくれる漫画でした。
ふと気づくと何度も読み返し、話の展開は分かっているのに涙したり、感動したり、何回読んでも新しい発見がある素晴らしい漫画です。

アニメ化されましたが、こちらは残念ながら作画のほうがあまり良くなかった覚えがあります。
残念ながらTV局の改編のため「龍騎衆バラン編」の途中で終了してしまったのですが、再度リニューアルしてアニメ化してもらえないものでしょうかね。今年はドラクエ30周年の年でもありますし、ずっと読み継がれるべき漫画だと思います。三条陸先生&稲田浩司先生コンビの「冒険王ビィト」がこのほど連載再開されるということで、5月31日までダイ130話無料キャンペーンがありました(現在は終了)

ポップがどんどん強くなる過程や、ダイとの友情、敵とのバトルにも重きがおかれているのですが、作中どんどん重みを増していくのが、しぶいおじさんキャラです。「ダイ」は彼らの活躍も大きなウェイトをしめた漫画であり、敵、味方を問わず、魅力的な中年男性キャラが多く登場しました。
彼らを紹介しながら、ダイの魅力をお伝えしていきたいと思います。

[冒険王ビィト]10年ぶりにマンガ連載再開 | マイナビニュース

通り名は「おっさん」 獣王クロコダイン

軍百獣魔を率いる団長で、ハドラーのあと、ダイたちの前に初めて立ちはだかる軍団長。
「我が名は獣王クロコダイン、魔軍司令ハドラー様が指揮する6軍団の一つ、百獣魔団の軍団長だ!」
名乗りは武人の嗜みです。でも次のセリフがすごい。「ハドラー様の勅命によりお前を討つ!」いや、殺す気で来てるじゃないですか!名乗っても意味ないんじゃ・・・と突っ込むとヒートブレスを浴びせられそうです。

かっこいい!獣王クロコダイン

ハドラー様から直々に討伐を命じられた対象、ダイ。侮った訳ではなかった。
しかし少年の稀有な才能と素質の前に、男は屈辱の敗退を喫する。
軍団長の誇りを汚されたクロコダインは「覚えていろよダイ・・・お前はオレの手で必ず殺す・・・必ずだ!」というセリフを残し、立ち去っていく。

屈辱の負傷・・・それが誇り高き男を変える

葛藤を捨てられない潔癖な武人

軍団長ザボエラに、卑怯な手を使ってまでも勝つべきではないかと焚き付けられる。
あくまでも誇り高いクロコダインはそれを拒むのだが・・・「魔王軍に居場所がなくなるぞ・・・」
その一言に急所を突かれるクロコダイン。誇り高い武人であるとともに、人間くさい部分をもちあわせている。
ザボエラみたいな人っていますよね!クロコダインとて、魔王軍に所属する歯車であることを表している一コマ。汚れ仕事を躊躇う会社員のようでリアルですね。

誇りも名誉も失う・・・それだけは耐えられない

人質を取るなど、自らの信念に背いた戦法をとったクロコダインは、武人として恥ずかしくないのか、と皆に責められ、怒りを爆発させる。これはふがいない己に対する怒りでもあるのだと思います。

「武勲のない武人など張り子の虎同然!何とでも言うがいい!誇りなど・・・とうに捨てたわッ!!」
己の信念に背いてまでも決して失いたくなかった武人としての武勲。生粋からの軍人なんですね。

しかしそんなクロコダインを利用して駒にしようとするザボエラ。

己に対する怒りを爆発させる!!

恐怖から一度はダイを置いて逃げたポップ。ニセ勇者のおじさんに励まされ、恐怖を堪えてクロコダインに立ち向かう。魔法力さえ尽きて、もう殺されるのを待つばかりのポップにクロコダインは問いかける。

ポップの言葉に思わず言葉を失うクロコダイン。
こんな無力な少年が、友情のため自らの命をかけて戦っている。それにひきかえ自分は何なのか。
軍人でありながら、卑怯な手を使って・・・と葛藤するクロコダイン。

仲間を見捨てて自分だけぬくぬくと生きてるなんて・・・死ぬよりカッコ悪ィやって・・・そう思っただけさ・・・

ポップに惚れる名シーン22選!『ダイの大冒険』魔法使いポップの成長まとめ | Next Innovation Style|日々の気づきからイノベーションを

クロコダインの名言の一つだと思います。「勝つならば正々堂々と勝ちたい!」という潔癖さを持った軍人は、ハドラー軍においてはクロコダイン、ヒュンケル、バランなどの王道軍人タイプ。

その対極に位置するのが、ザボエラ、フレイザード、ミストバーンなどの性悪系軍人です。かれらにとって卑怯は褒め言葉です。陰謀、仲間を利用するなど、うまく渡っているタイプで、王道系軍人の潔癖さ、フェア精神、武士道すら彼らは利用するのです。

翻弄されるクロコダインの悲しさが現れたシーンです。

「男の誇りを失ってまで得る価値のある勝利かっ・・・?」と葛藤する

覚醒したダイによって一打を浴びせられたクロコダインは己の負けを悟り、自ら戦いに幕を引く。信念を曲げた償いのように、自ら崖から身を躍らせるのだった。

最後は誇り高く、自分らしさを貫こうとする名シーンです。かっこ良い男の引き際を教えてくれるシーン。

負けるなよ・・・勇者はつねに強くあれ・・・!

クロコダイン再び!

ヒュンケルとダイ一行が出会う。同じ師に学んだ兄弟子を、アバンの使徒の仲間と喜ぶダイたちだったが、ヒュンケルの正体は、ダイ抹殺命令を受けたハドラー軍不死騎団の団長だった。ヒュンケルは、ダイたちの甘さを切り捨て、ダイに一撃を浴びせたが・・・・!

なんと死んだと思っていた敵のクロコダインが自らの身を挺してダイを庇うのだった

なぜ元軍団長のクロコダインがダイを庇うのか・・・!理解できず、動揺するヒュンケルに、クロコダインは語り掛ける。
「人間は強い・・・そして優しい生き物だ!ともに力を合わせ喜びと悲しみを分かち合うことができる。
ただ強いだけのオレたち魔物とは違う・・・」
穏やかに説くクロコダインの言葉に、動揺を抑えきれないヒュンケル。
「その素晴らしさが・・・人間であるお前に分からぬはずがない・・・お前は見て見ぬふりをしているのではないのか・・・」
クロコダインの言葉は人間を憎んで生きてきたヒュンケルの胸を抉り、それを振り払うようにヒュンケルはクロコダインに斬りつける。

まさかの助っ人が!

「ヒュンケル・・・いいぞ・・・人間は・・・今度生まれ変わるときは・・・俺も人間に・・・」
言い残して倒れるクロコダイン。
その言葉で揺さぶられた心を必死に押さえつけるヒュンケル。

刃を交えたことで相手を憎むのは簡単である。しかし相手を認め、「その相手のようになりたい」と願える者はどれほどいるのだろう。クロコダインの器の大きさが現れたシーン。
クロコダインはすでに彼が憧れる「人間」そのもの。誰よりも人間らしい心を持つ男だったのである。

刃をあえて受ける

軍団長フレイザードによって、死火山が活動を始める。
ダイたちを守るため、ヒュンケルは自らの身を挺してマグマに沈む。
人間を憎み、その感情に逃げ込んでいた自分の愚かさを恥じ、最後はせめて彼らを救いたいと心から願う。

「クロコダイン・・・今ならわかるお前の気持ちが・・・!この一瞬だけでいい!お前の剛力をオレに貸してくれ!」

クロコダインが命を懸けて訴えた言葉が、冷たく閉ざされていたヒュンケルの心に届き、伝播した名シーン。

伝播する魂

命を落としたと思われていたヒュンケルはクロコダインの手によって助け出される。
恩師の助けになるどころか、彼を恨み、魔王軍に入り弟弟子たちを殺そうとしてしまった自分。
いっそあのまま死んでいれば良かったと悔やむヒュンケルに、クロコダインは語り掛ける。

「オレは男の価値というのはどれだけ過去へのこだわりを捨てられるかで決まると思っている
たとえ生き恥をさらし万人にさげすまれようとも 己の信ずる道を歩めるならそれでいいじゃないか・・・」
小さなプライドに拘っていてはダメだと強く、しかし優しくクロコダインは語り掛けます。そうできるのは自分が間違った経験を重ねたから。

人は時に間違うこともある、しかし人はそれを間違っていたと認めることで、その行動を正しいものに変えることができる。おそらくクロコダインは、ヒュンケルがこのままで終わる男でない、ということを心から信じていたのだと思います。だからこそ、こうして言葉を掛けることができた。自分のことだけでなく、周囲にまで心が配れる男の優しさが溢れた名シーン。

間違った判断をすることもある、けれどそれに囚われてはならない

名脇役のおっさんたちが支える「ダイ」

クロコダイン戦のとき、ポップは怖じ気づき、体が動きません。意気地なし!ポップ最低!と罵るマァムの気持ちはわかり過ぎるくらい分かります。読者もマァムと同じようにヘタレだったポップにちょっとイライラしたと思います。しかし、大人になった今、また見方が変わってきます。

ポップは冷静で、頭がいいから、絶対に自分がクロコダインに勝てないことが分かっている。ダイのように捨て身で飛び出していくことが、どうしても怖くてできないのです。しかし、今後このポップの自分の力量を客観的に分析する能力と頭の回転、それがダイたちを何度も救っていくことになります。

しかし、可愛いなあと思ってる子に「あんたなんか最低よ!」と言われてぶん殴られてぶっ飛ばされても、ポップの足は動きません。そんなポップの背中を押したのは一人のおじさんでした。

怖気づくポップをマァムの厳しい言葉が打つ

夢破れし魔法使い~まぞっほ

魔物たちが攻めてくる!と皆が逃げ去った宿にこそこそと表れたおっさん。
彼の名はまぞっほ。いわゆる火事場泥棒である。彼は大げさなパフォーマンスと中途半端な力で勇者を名乗り、金稼ぎを重ねる「偽勇者」の一味であった。彼らの一味に誘われるが、そんな彼らを軽蔑するポップ。自分は「アバンの使徒」なのだから、小悪党の彼らとは違う、そうポップは切り返す。

しかし、まぞっほに「お前だって仲間を見捨てているではないか」と逆に指摘され、言い返すこともできないポップ。

偽勇者一味のうちの一人

怖じ気づいたものの、ダイたちの様子が気になって仕方ないポップにまぞっほは水晶玉を手渡す。
そこには倒れたダイ、身動きが取れなくなったマァムの姿が映し出されていた。

「なんとかしてぇ・・・なんとかしてやりたいけどおれ一人の力じゃ・・・!」
葛藤するポップにまぞっほは発破をかける。

「勇者とは勇気ある者ッ!! そして真の勇気とは打算なきものっ!!  相手の強さによって出したりひっこめたりするのは本当の勇気じゃなぁいっ!!!」

まぞっほはポップに畳みかける。「早く行けっ・・・!胸に勇気のかけらが一粒でも残っているうちに・・・。小悪党にはなりたくなかろう?」
その言葉に背中を押されたポップは、ダイを助けるため宿屋を飛び出していく。

彼の一言がなければ、ポップはヘタレの弱虫キャラのままでした。魔法使いを目指し、それに耐えられず、夢を諦めた一人の老いた男。しかし、彼はポップを仲間に引き入れることもせず、ポップの背中を押し、自分が果たせなかった夢を叶えてもらいたいと願うのです。かつて挫折した、弱い自分だからこそ、自分の力に疑問を持ち、進めずにいる若者の背中を押すことが出来る。
勇者にも、魔法使いにも、ヒーローにもなれないけれど、こうして誰かの力になることができる。

人生の先輩としてのバックアップ。それは年を重ねたからこそできる援助のやりかたかもしれません。

のちに彼とは意外な形で再会することになるのですが、それはまたもう少し後の話です。


ちなみにまぞっほの声優さんの青野武さんのもうひとつの役は、なんと「ハドラー」!驚きですね。

男のひとことが少年の勇気に火を灯した

ポップに惚れる名シーン22選!『ダイの大冒険』魔法使いポップの成長まとめ | Next Innovation Style|日々の気づきからイノベーションを

善き力がなによりの武器~老兵バダック~

ヒュンケルに襲われたダイとポップを助けてくれたおじいさん、バダックさん。
好々爺のように見えますが、レオナ姫のお付きの兵士を務めていることから、剣の腕は相当なものなのでしょう。自称「パプニカ一の剣豪」または「パプニカの発明王」を名乗っているおちゃめなおじいさんです。


バダックさんはただの「自称発明家」ではありません。クロコダインの武器を自国「パプニカ」の金属で作り替えてあげ、さらに改良までしてしまいます。

フレイザードとの戦いが終わり、一人盃を傾けるクロコダイン。彼は魔物である自分が人間たちと楽しく酒を飲んではいけない、と線を引き、ひとりストイックに飲んでいたのでした。そんな彼にバダックさんが声を掛けます。
「勝利の立役者に怪物も人間もあるかい!!」本来ならば、レオナ姫を襲撃した魔王軍に属していたクロコダインにわだかまりをもってもおかしくないのに、バダックさんはそんな壁など簡単に乗り越え、クロコダインとの間に友情を築いてしまいます。

彼はクロコダインを一流の武人だとまっすぐな視線で眺め、そこに全くフィルターを入れません。この柔軟さは発明家という属性ゆえでしょうか、好奇心も旺盛で気持ちが若く、物事に囚われないキャラクターです。
彼の楽天的で明るいキャラは、深刻になりがちなメンバーに笑顔をもたらします。





最後まで人を利用し、嘲り、挙句の果ては命を奪うことすら躊躇わないザボエラ。かつて同じ軍団長として戦ったクロコダインにすら、彼はあくまでその手段で生き延びようとする。そこには誇りなどなにもない。そんな彼の最後まで卑怯であった生涯にクロコダインは思いを巡らす。

自分はダイたちと戦い、人間の素晴らしさを知ったから今こうしてここにいる。
しかし、その出会いがなかったならば、自分はどうなっていたのだろうか。ザボエラの姿は、ダイと出会えなかったもうひとりの自分の姿だったのではないのか、と。
そんなクロコダインにバダックは声を掛ける。



「ワシの誇るべき友人 獣王クロコダインはたとえ敵のままでであったとしても、己を高めることに生命をかける 尊敬すべき敵であったろうと・・・ワシは思うよ」
友として、クロコダインの高潔さと己を高める意識の髙さを信じている。バダックの「善き力」は、クロコダインの心に刻まれます。


魔法が使えなくても、みんなの盾になれなくても、物事を曇りのない目で見てだれかの心を励ますことができる。バダックさんの武器は、クロコダインが思う「人間の善き力」そのものなのだと思います。

戦場で芽生えた友情

無私の熱血魔法使い~大魔導士マトリフ~

マトリフはかつてアバン先生とチームを組んで、ハドラーを倒した魔法使いでした。ところが相談役として迎え入れられた王宮で、平和になったとたん手のひらを返し、冷淡になった人間の態度に嫌気がさし、バルジ島に隠居していました。彼は気まぐれから、フレイザードから逃れたダイたちを助けることになります。

人間関係に嫌気がさして隠居中

「ルーラなんて覚えたって戦いの役には立たねえじゃんか」と魔法を教えてもらっているのにぶつぶつこぼすポップ。そんな彼をマトリフは一喝。
「生意気ぬかすなっ!!魔法使いの魔法は仲間を守るためのものなんだ!」

マトリフは小さな魔法一つも疎かにせず、どうすれば自分の魔法で仲間を守れるか考えろ、とポップに自覚を促します。

おまえの役割は何だ、とマトリフ激怒

「人間風情がベギラゴンを使うとは」かつて対決したハドラーとマトリフの因縁対決シーン。
「てめぇの専売特許とでも思ってたのか?おめでてぇヤツだ」

ただのすっとぼけたおじさんに見えたマトリフが、かつて大魔王を倒したほどの魔法使いである、という凄みが伝わってきます。マトリフさんのこの憎まれ口が本当にかっこ良い!

「よお・・・三流大魔王・・」・マトリフ因縁の対決

師から教え子へ~受け継がれる魂~

マトリフさんは、ハドラーを倒した時から仲間のために体に負担のかかる禁呪法を使い続けていました。
その無理がたたり、大きな呪文を唱えるとそれに耐えられず、体がボロボロになっていました。
「命が縮まって100年なら長いほうだ。いいかポップ おまえはまだ若い無理せずともいずれは強力な呪文が身につく・・・」
衰弱した体にも関わらず、弟子と見込んだポップのために、マトリフは禁じていた魔法を使うことを決意します。
体を犠牲にして、失敗すればポップも吹き飛び、消滅するという巨大な呪文を。

マトリフさんはアバン先生と違って褒めて伸ばしません。ただ厳しい状況に置いて、相手の生命力で覚えさせるという荒業を使います。ポップが戦友であるアバンの弟子だから、というだけでは自分さえもどうにかなりかねない技の練習など、引き受けるはずもありません。
ポップがそれに値する力を持っていると信じているからこそ、老体に鞭打ってこの特訓を引き受けたのです。

極大呪文、それをポップに授けるために

呪文の大きさに弱腰になるポップ。しかしその魔法を使うために、自分のために、どれだけマトリフが体を酷使しているかということに思い至ると、恐怖を抑えてその魔法に正面から向き合い、一切手加減せずにマトリフにも魔法を掛けることを決意します。

「こいつを避けたら・・・二度とあの人を師匠と呼べねえっ・・・」

「ありがとよ」それを受けて立ち、不敵にほほ笑むマトリフ。
一対一の真剣勝負ができるのは、お互い全力を尽くすと信じているからこそ。

自分が身に着けた力を、若い世代に繋いでほしい、マトリフはそれを継いで行ける相手が現れたことに喜びを感じていたのではないかと思うのです。

こいつを避けたら・・・二度とあの人を師匠と呼べねえっ・・・

なんとマトリフさんとまぞっほは師弟関係だった!
象徴的な一シーンです。かつてポップを奮起させた男、まぞっほ。
「相手の強さで出したり引っ込めたりするのは本当の正義じゃないっ!」という言葉はマトリフからまぞっほ、まぞっほからポップへ受け継がれた言葉だったのです。

彼を通じて出会う前から引き継がれた正義の魂。
黒の核晶を凍らせようとするマトリフ。MPが切れてしまったため、まぞっほにそれを託す。

「最後にチョコッと手を出すだけで英雄になれるんだ。こんなボロイ役はねぇ…!!」

英雄になれなかった男がヒーローになった瞬間。マトリフさんの言葉が沁みます。

おめぇも男なら 一生に一度くれぇ本物の英雄になってみせろ!

真のサムライに化けた男~ハドラー

「ダイ」全編を通して、彼ほど顔の変わった男もいないでしょう。まずこちらの顔を見てください。噛ませ臭がぷんぷんしますね。実際、「覚えてろよ~」(とは言わないけど)そういう退却の仕方をします。
すごんでるんだけど、どこか哀れを誘う虚ろな笑顔です。
このときのハドラーは、「目的」よりも「名誉欲」のほうが上回っていたように思えます。

しかし徐々にハドラーは小物から「サムライ」へと進化していきます。
行動も、顔も見違えるほどいい顔になっていく。



成長していく精神に伴って、敵ながら尊敬できる相手に変わっていく。
「人は変われる」それを体現しているのが、ハドラーです。

どこかヤケクソにも見える顔

いやぁ、かつては魔王としてモンスター軍団を束ねて世界征服を目指していた男が、大魔王の下請けとして登場したわけなんですが、これってもう、この間まで社長だったんですが、倒産して涙目だったところ、別会社の部長として雇ってもらいました!!感じで、ものすごいかっこ悪いです・・・。 しかも、このドヤ顔の小物臭がひど過ぎるw さらに、ベルトのバックルがバーンの影をモチーフとしていて、ものすごい媚売ってる感がします。 もうひとつ言うとベルトの装飾が五芒星(この世界では聖なるもの)で六芒星(この世界では魔族の象徴)じゃ無くてものすごい間違ってる感が切ない。 しかし、ハドラーって、最初の方は悲しいくらい小物で哀れな奴なんですが、物語を通して最高にカッコいい奴に成長します。 ダイの大冒険って、悪役もちゃんと成長していくのが良いですよね。

http://manga.zoku-sei.com/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%82%B9%E3%83%88%E3%80%80%E3%83%80%E3%82%A4%E3%81%AE%E5%A4%A7%E5%86%92%E9%99%BA/%E5%B0%8F%E7%89%A9%E8%87%AD%E5%85%A8%E9%96%8B%E3%81%AE%E9%AD%94%E8%BB%8D%E5%8F%B8%E4%BB%A4%E3%83%8F%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%81%AE%E8%87%AA%E5%B7%B1%E7%B4%B9%E4%BB%8B%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%B3

ガンジーも助走をつけて漫画を読むレベル 小物臭全開の魔軍司令ハドラーの自己紹介シーン

ハドラーさんのリーマン日記

えーと、わかりやすくするためこんな一覧を作ってみました。

作ってて、「ハドラーさん頑張ってんな・・・」と思いました。ブラック企業に勤める企業戦士みたいで本当頑張ってる。一番不憫だったのが、エース級の部下バランに出世追い越されないように、微妙に足引っ張ってみたりするところです。ここらへんまで、やっぱりハドラーさんはサラリーマンぽさが抜けないんですよ。でも、この後どんどんかっこよくなっていきます。

部下にこんなことまで言われてました

みんなにボコボコにされててハドラーさんがかわいそうになってきました

落ちるとこまで落ちたとまで言われる

もう後には引けない・・・男の決意がハドラーを変える

今まで卑怯な手も使った。あれこれ小細工もした。しかし、どれも自らの身を切って行った作戦ではなかった、そのことにようやくハドラーは気が付きます。だから、人体実験ともいえる「超魔生物」への転身を決意します。どうあっても勝ちたい!ダイたちはそれだけの価値のある敵である、ということを初めてハドラーは自覚します。すでに敵に対する敬意が芽生えているのがわかります。

禁断の魔改造を自らの体に施す

オレに最後のチャンスをくれるなら・・・たとえ相手が神でも悪魔でもかまわん!

多分初期の頃のハドラーだったら、ダイが行方不明になったならこんなことは言いません。
しかし今のハドラーは違います。
「死ぬなよダイ。この程度で死なれては この身を魔獣に変えた甲斐がないぞ!」と、男らしく言い切るのです。相手にたいするリスペクトが生じた言動をし始めてから、ハドラーはぐっとかっこ良い男になります。

死ぬなよダイ!という言葉を口にするとは

一度はダイを撃退したものの、バーンの采配次第では自分は処罰されるかもしれない。
最後を迎えるかもしれないことを悟ったハドラーは、これまで自分がミストバーンを疎んじていたこと、けれど今では感謝している、と言葉を重ねます。
団長の中で最も自分に誠意を見せてくれた男はお前ではなかっただろうか、と。

自分の最後に幕引きをしようとし、最後に自分に誠実であった男にも礼儀を忘れない。
そこにはほんの僅かながら、友情のようなものが芽生えていたのかもしれません。

友情のようなものもたしかに芽生えていた

もはやバーンのことなどどうでも良い。「ただ自分はダイと真剣に戦いたいだけ」その目的に目覚めたハドラーは、身を挺してダイやポップを庇います。

急げポップ!骸が動いたのだ!もうけものと思え!!

最後は師のように

くじけそうになるダイたちを鼓舞、「お前たちの力はそんなものか!」とどやしつける。
間違いなくこの時のハドラーはダイたちの師であり、もう一人の「アバンの使徒」となっていました。

このときのハドラーは、間違いなくもう一人のアバンの使徒だった

死の淵で初めてハドラーが見せた涙。自分などを助けるために、ポップも巻き込まれて自分と一緒に死ぬことになってしまった・・・。その心にハドラーは初めて涙を流す。こんな男と戦えてよかった。自分は今ここで死ぬけれど、こんな男と出会えてよかった、と。

自分を救ったポップ。その気持ちに涙が止まらない

そうして男は心から願った。この男の命をどうか救ってくれと。

この下りは本当に神がかっています。ずっと自分の居場所がなくて苦しい思いをしてきたハドラーは、自分の命が残り少ないときになって初めて、自分を慕ってくれる部下、生きる目的、本気で戦える真の敵など、自分がほしかったものを全て手に入れたのです。彼の命は残念ながら尽きてしまいますが、最後の満足げな微笑みは満ち足りていました。

俺のような悪魔のためにこいつを死なせないでくれっ!!!

ここまで「ダイ」におけるおじさんキャラの紹介をしてきました。他にもバランとか、ロンベルクさんとか、かっこいいおじさんがたくさん居るのですが、紹介しきれませんでした。

ダイがこれまでの漫画と違っていたのは、味方だけではなく、敵にも様々な葛藤がある、それぞれの立場がある、ということをクローズアップし、あまり注目されてこなかった敵キャラの心情描写をしたことだと思います。単なる敵でも奥行きのある人物として描かれていて魅力的です。また、敵と味方の間にも友情に似た感情が芽生えることがある、というストーリーが感動を生みました。

人生の甘さも苦みも両方知っている、そんなおじさんキャラたちがいて、主人公たちを陰で支えたり励ましたりしている。そんな「ダイ」を読むと、誰にも人生のストーリーがあって、それぞれの人生を生きている、そういうことに改めて気づかされます。「ダイの大冒険」はそういう素晴らしい漫画でした。

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