おじさんがいないと始まらない~「ダイの大冒険」におけるおっさんキャラを考える~

おじさんがいないと始まらない~「ダイの大冒険」におけるおっさんキャラを考える~

「ダイの大冒険」といえばクロコダイン談議になるのはなぜでしょう。今もやられキャラとしてネタになるほど愛されているクロコダインは、男気に溢れ、己の美学を貫こうと努力し続ける、かっこいい大人の男でした。そんな「ダイ」に登場する魅力的なおじさんキャラと、ダイの魅力をご紹介します。


名脇役のおっさんたちが支える「ダイ」

クロコダイン戦のとき、ポップは怖じ気づき、体が動きません。意気地なし!ポップ最低!と罵るマァムの気持ちはわかり過ぎるくらい分かります。読者もマァムと同じようにヘタレだったポップにちょっとイライラしたと思います。しかし、大人になった今、また見方が変わってきます。

ポップは冷静で、頭がいいから、絶対に自分がクロコダインに勝てないことが分かっている。ダイのように捨て身で飛び出していくことが、どうしても怖くてできないのです。しかし、今後このポップの自分の力量を客観的に分析する能力と頭の回転、それがダイたちを何度も救っていくことになります。

しかし、可愛いなあと思ってる子に「あんたなんか最低よ!」と言われてぶん殴られてぶっ飛ばされても、ポップの足は動きません。そんなポップの背中を押したのは一人のおじさんでした。

怖気づくポップをマァムの厳しい言葉が打つ

夢破れし魔法使い~まぞっほ

魔物たちが攻めてくる!と皆が逃げ去った宿にこそこそと表れたおっさん。
彼の名はまぞっほ。いわゆる火事場泥棒である。彼は大げさなパフォーマンスと中途半端な力で勇者を名乗り、金稼ぎを重ねる「偽勇者」の一味であった。彼らの一味に誘われるが、そんな彼らを軽蔑するポップ。自分は「アバンの使徒」なのだから、小悪党の彼らとは違う、そうポップは切り返す。

しかし、まぞっほに「お前だって仲間を見捨てているではないか」と逆に指摘され、言い返すこともできないポップ。

偽勇者一味のうちの一人

怖じ気づいたものの、ダイたちの様子が気になって仕方ないポップにまぞっほは水晶玉を手渡す。
そこには倒れたダイ、身動きが取れなくなったマァムの姿が映し出されていた。

「なんとかしてぇ・・・なんとかしてやりたいけどおれ一人の力じゃ・・・!」
葛藤するポップにまぞっほは発破をかける。

「勇者とは勇気ある者ッ!! そして真の勇気とは打算なきものっ!!  相手の強さによって出したりひっこめたりするのは本当の勇気じゃなぁいっ!!!」

まぞっほはポップに畳みかける。「早く行けっ・・・!胸に勇気のかけらが一粒でも残っているうちに・・・。小悪党にはなりたくなかろう?」
その言葉に背中を押されたポップは、ダイを助けるため宿屋を飛び出していく。

彼の一言がなければ、ポップはヘタレの弱虫キャラのままでした。魔法使いを目指し、それに耐えられず、夢を諦めた一人の老いた男。しかし、彼はポップを仲間に引き入れることもせず、ポップの背中を押し、自分が果たせなかった夢を叶えてもらいたいと願うのです。かつて挫折した、弱い自分だからこそ、自分の力に疑問を持ち、進めずにいる若者の背中を押すことが出来る。
勇者にも、魔法使いにも、ヒーローにもなれないけれど、こうして誰かの力になることができる。

人生の先輩としてのバックアップ。それは年を重ねたからこそできる援助のやりかたかもしれません。

のちに彼とは意外な形で再会することになるのですが、それはまたもう少し後の話です。


ちなみにまぞっほの声優さんの青野武さんのもうひとつの役は、なんと「ハドラー」!驚きですね。

男のひとことが少年の勇気に火を灯した

ポップに惚れる名シーン22選!『ダイの大冒険』魔法使いポップの成長まとめ | Next Innovation Style|日々の気づきからイノベーションを

善き力がなによりの武器~老兵バダック~

ヒュンケルに襲われたダイとポップを助けてくれたおじいさん、バダックさん。
好々爺のように見えますが、レオナ姫のお付きの兵士を務めていることから、剣の腕は相当なものなのでしょう。自称「パプニカ一の剣豪」または「パプニカの発明王」を名乗っているおちゃめなおじいさんです。


バダックさんはただの「自称発明家」ではありません。クロコダインの武器を自国「パプニカ」の金属で作り替えてあげ、さらに改良までしてしまいます。

フレイザードとの戦いが終わり、一人盃を傾けるクロコダイン。彼は魔物である自分が人間たちと楽しく酒を飲んではいけない、と線を引き、ひとりストイックに飲んでいたのでした。そんな彼にバダックさんが声を掛けます。
「勝利の立役者に怪物も人間もあるかい!!」本来ならば、レオナ姫を襲撃した魔王軍に属していたクロコダインにわだかまりをもってもおかしくないのに、バダックさんはそんな壁など簡単に乗り越え、クロコダインとの間に友情を築いてしまいます。

彼はクロコダインを一流の武人だとまっすぐな視線で眺め、そこに全くフィルターを入れません。この柔軟さは発明家という属性ゆえでしょうか、好奇心も旺盛で気持ちが若く、物事に囚われないキャラクターです。
彼の楽天的で明るいキャラは、深刻になりがちなメンバーに笑顔をもたらします。





最後まで人を利用し、嘲り、挙句の果ては命を奪うことすら躊躇わないザボエラ。かつて同じ軍団長として戦ったクロコダインにすら、彼はあくまでその手段で生き延びようとする。そこには誇りなどなにもない。そんな彼の最後まで卑怯であった生涯にクロコダインは思いを巡らす。

自分はダイたちと戦い、人間の素晴らしさを知ったから今こうしてここにいる。
しかし、その出会いがなかったならば、自分はどうなっていたのだろうか。ザボエラの姿は、ダイと出会えなかったもうひとりの自分の姿だったのではないのか、と。
そんなクロコダインにバダックは声を掛ける。



「ワシの誇るべき友人 獣王クロコダインはたとえ敵のままでであったとしても、己を高めることに生命をかける 尊敬すべき敵であったろうと・・・ワシは思うよ」
友として、クロコダインの高潔さと己を高める意識の髙さを信じている。バダックの「善き力」は、クロコダインの心に刻まれます。


魔法が使えなくても、みんなの盾になれなくても、物事を曇りのない目で見てだれかの心を励ますことができる。バダックさんの武器は、クロコダインが思う「人間の善き力」そのものなのだと思います。

戦場で芽生えた友情

無私の熱血魔法使い~大魔導士マトリフ~

マトリフはかつてアバン先生とチームを組んで、ハドラーを倒した魔法使いでした。ところが相談役として迎え入れられた王宮で、平和になったとたん手のひらを返し、冷淡になった人間の態度に嫌気がさし、バルジ島に隠居していました。彼は気まぐれから、フレイザードから逃れたダイたちを助けることになります。

人間関係に嫌気がさして隠居中

「ルーラなんて覚えたって戦いの役には立たねえじゃんか」と魔法を教えてもらっているのにぶつぶつこぼすポップ。そんな彼をマトリフは一喝。
「生意気ぬかすなっ!!魔法使いの魔法は仲間を守るためのものなんだ!」

マトリフは小さな魔法一つも疎かにせず、どうすれば自分の魔法で仲間を守れるか考えろ、とポップに自覚を促します。

おまえの役割は何だ、とマトリフ激怒

「人間風情がベギラゴンを使うとは」かつて対決したハドラーとマトリフの因縁対決シーン。
「てめぇの専売特許とでも思ってたのか?おめでてぇヤツだ」

ただのすっとぼけたおじさんに見えたマトリフが、かつて大魔王を倒したほどの魔法使いである、という凄みが伝わってきます。マトリフさんのこの憎まれ口が本当にかっこ良い!

「よお・・・三流大魔王・・」・マトリフ因縁の対決

師から教え子へ~受け継がれる魂~

マトリフさんは、ハドラーを倒した時から仲間のために体に負担のかかる禁呪法を使い続けていました。
その無理がたたり、大きな呪文を唱えるとそれに耐えられず、体がボロボロになっていました。
「命が縮まって100年なら長いほうだ。いいかポップ おまえはまだ若い無理せずともいずれは強力な呪文が身につく・・・」
衰弱した体にも関わらず、弟子と見込んだポップのために、マトリフは禁じていた魔法を使うことを決意します。
体を犠牲にして、失敗すればポップも吹き飛び、消滅するという巨大な呪文を。

マトリフさんはアバン先生と違って褒めて伸ばしません。ただ厳しい状況に置いて、相手の生命力で覚えさせるという荒業を使います。ポップが戦友であるアバンの弟子だから、というだけでは自分さえもどうにかなりかねない技の練習など、引き受けるはずもありません。
ポップがそれに値する力を持っていると信じているからこそ、老体に鞭打ってこの特訓を引き受けたのです。

極大呪文、それをポップに授けるために

呪文の大きさに弱腰になるポップ。しかしその魔法を使うために、自分のために、どれだけマトリフが体を酷使しているかということに思い至ると、恐怖を抑えてその魔法に正面から向き合い、一切手加減せずにマトリフにも魔法を掛けることを決意します。

「こいつを避けたら・・・二度とあの人を師匠と呼べねえっ・・・」

「ありがとよ」それを受けて立ち、不敵にほほ笑むマトリフ。
一対一の真剣勝負ができるのは、お互い全力を尽くすと信じているからこそ。

自分が身に着けた力を、若い世代に繋いでほしい、マトリフはそれを継いで行ける相手が現れたことに喜びを感じていたのではないかと思うのです。

こいつを避けたら・・・二度とあの人を師匠と呼べねえっ・・・

なんとマトリフさんとまぞっほは師弟関係だった!
象徴的な一シーンです。かつてポップを奮起させた男、まぞっほ。
「相手の強さで出したり引っ込めたりするのは本当の正義じゃないっ!」という言葉はマトリフからまぞっほ、まぞっほからポップへ受け継がれた言葉だったのです。

彼を通じて出会う前から引き継がれた正義の魂。
黒の核晶を凍らせようとするマトリフ。MPが切れてしまったため、まぞっほにそれを託す。

「最後にチョコッと手を出すだけで英雄になれるんだ。こんなボロイ役はねぇ…!!」

英雄になれなかった男がヒーローになった瞬間。マトリフさんの言葉が沁みます。

おめぇも男なら 一生に一度くれぇ本物の英雄になってみせろ!

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