馳浩の巌流島の決闘はじめ名勝負8選とギブUPまで待てないマジギレ事件!?

馳浩の巌流島の決闘はじめ名勝負8選とギブUPまで待てないマジギレ事件!?

波乱万丈のプロレス人生を送った馳浩の名勝負を振り返る。タイガー・ジェット・シンとの巌流島の決闘。アントニオ猪木との東京ドーム決戦。蝶野正洋との激闘。グレート・ムタとの大流血戦ほか熱戦を再現し馳浩の華麗な大技とタフガイぶりを満喫。そして有名なあのギブUPまで待てない事件にも触れる。


馳浩のプロフィール

馳浩は1961年5月5日、富山県に生まれ、石川県金沢市で育つ。
身長183センチ、体重105キロ。
専修大学文学部国文学科を卒業。
1984年、レスリングでロサンゼルスオリンピックに出場。
馳浩は、母校の星陵高等学校の国語科(古典)の教諭になるが、1985年8月に長州力のジャパンプロレスに入団する。
教師出身のプロレスラーといえば、ドス・カラスやスタン・ハンセンがいる。
佐々木健介がジャパンプロレスに入団したのは馳浩よりも僅か二ヶ月早かった。二ヶ月差の先輩後輩だが、同期のようなものだと思う。
当時、ジャパンプロレスの道場では、アマレス出身の長州力を中心に、グラウンドレスリングの実戦スパーリングをやっていた。これが本番の試合でも役に立つ。
馳浩は自信満々に五輪出場の腕を見せようと思ったが、佐々木健介を決められなかった。健介のレベルの高さを物語るエピソードだ。

馳浩は半年間の練習期間を終え、海外武者修行に出る。
プエルトリコや、カルガリーなどをサーキットして実戦経験を積んだが、ジャパンプロレスが分裂する。
1987年、正式に新日本プロレスに移籍することになった。

馳浩は、1987年12月27日、両国国技館で、小林邦昭をノーザンライトスープレックスで破り、IWGPジュニアヘビー級チャンピオンに輝く。
IWGPタッグ王者も、佐々木健介との馳健コンビで二度獲っているし、武藤敬司とのタッグでも二度、IWGPタッグ王者に君臨した。

馳浩は、プロレスラーとしても七色の華麗な大技で観客を湧かせていたが、現場監督の長州力の補佐としてもその手腕を発揮。
いろいろなアイデアを出して人材育成に尽力。主にレスリング界から優秀な選手を探してはスカウトし、育てていった。
馳浩が指導・教育したレスラーの顔ぶれが凄い。
天山広吉、西村修、小原道由、小島聡、中西学、永田裕志、石澤常光、大谷晋二郎、高岩竜一、安田忠夫、藤田和之。
馳浩は、後に日本マット界を牽引していく逸材を数多く育成したのだ。

巌流島の決闘

馳浩のプロレスラー時代で強く印象に残っているのは、巌流島の決闘だ。
1992年1.4東京ドームでのアントニオ猪木との対戦権を巡り、馳浩とタイガー・ジェット・シンが対戦することになってしまった。
しかも普通のルールではなくデスマッチだ。巌流島にリングを設置し、ノーレフェリー、ノールールの危険な闘い。
巌流島の決闘といえば、もちろん元祖はアントニオ猪木とマサ斉藤。
因縁の対決を繰り広げてきた両雄は、完全決着をつけるため、ついに宮本武蔵と佐々木小次郎のように、巌流島で闘うことを決めた。

1987年10月4日、アントニオ猪木とマサ斉藤は、巌流島で闘う。
レフェリーはいないから立会人が世界の荒鷲・坂口征二。
ノールールなのでマサ斉藤の絞め技に苦しめられる猪木。ロープブレイクがないから猪木が何度も落ちそうになる。
場外に出ての喧嘩殺法なら猪木も得意。最後は猪木が魔性のスリーパーでマサ斉藤を落とし、坂口征二が猪木の勝ちを宣告した。
試合時間は、2時間5分14秒。

それにしても、インドの猛虎、タイガー・ジェット・シンと巌流島の決闘をやろうなんて、馳浩の度胸も相当なものだ。
シンは、駐車場に駐車していた馳浩の愛車を大破させたりと、何でもアリのヒールだ。普通はそこまでやらない。
アントニオ猪木を新宿の街で襲撃したこともある。24時間ヒールなので、シンが日本にいる間は油断できない。
スタン・ハンセンはエッセイの中でタイガー・ジェット・シンのことを絶賛していた。
「あれほどのプロフェッショナルをほかに知らない」
アブドーラ・ザ・ブッチャーもザ・シークも、リングを下りれば紳士だが、タイガー・ジェット・シンは24時間、インドの猛虎なのだ。
故郷へ帰国すれば実業家という顔をもっているシン。プロレスもビジネスの一端なのかもしれない。
だからこそ徹底してタイガー・ジェット・シンに成り切る。ある意味、レスラーはアクターでもある。

思えばタイガー・ジェット・シンは、アントニオ猪木と抗争を繰り返し、猪木の弟子の長州力とも抗争を展開し、長州力の弟子の馳浩とも抗争する。
息が長い。
アントニオ猪木も、シンの底知れないスタミナを褒めていた。シンのハードな猛トレーニングは有名だ。
山本小鉄も放送席でシンを賛嘆していた。
フライングメイヤーからの首4の字固めなど、技のスピードとテクニックは本物だと。

しかし反則が日常茶飯事なのも事実。
頭にカラフルなターバンを巻き、民族衣装のような格好で、サーベルを口に加え、若手や上田馬之助に肩をかつがれて入場してくる。酔っ払いのように真っすぐ歩かない。

アントニオ猪木とのシングルマッチで、突然シンはリング上に絨毯を敷き、真ん中に灰を置き、祈りを捧げ始めた。
猪木は臨戦態勢だったが、儀式の途中に襲いかかるのは良くないかと躊躇している時、シンはいきなりその灰で猪木に目潰し!
さらにブレーンバスター! シンは何でもアリだ。

そんなタイガー・ジェット・シンと、普通の試合でも危ないのに、ノーレフェリー、ノールールのデスマッチをやることがどれほど危険なことか。馳浩は想像以上のアイアンハートかもしれない。

馳浩VSタイガー・ジェット・シン

1991年12月18日、山口県下関市。
13時5分、ボートに乗って立会人のマサ斉藤が登場。巌流島の決闘を経験しているだけに、最も相応しい立会人といえる。
13時13分に馳浩、13時39分にタイガー・ジェット・シンがそれぞれボートに乗って現れる。
シンは頭にターバンを巻き、手にはサーベルを持っている。いつものコスチュームだ。
14時過ぎ、馳浩がリングに上がる。いよいよ試合開始だが、シンはまだ控室として使用しているテントの中。
馳は「タイガー!」とリング上から叫ぶ。
シンは一度テントから出てきたが、スクワットをしたりしてリングに上がらず、またテントに入ってしまう。焦らし作戦か?
馳はなぜかトップロープだけ外した。何かの作戦だろうか。リングのロープは2本だけになる。
何を血迷ったかシンがテントを燃やした。全く理解不能な行動だ。

シンはサーベルをリング下に隠し、ようやくリングイン。煙がリングの方向へ流れてくる。全く余計なことをしてくれたという感じだ。
何しろノーレフェリー、ノールール。反則負けがないというのは、シンに有利か。
早速シンは馳を倒してコブラクロー! チョークでも反則ではない過酷な試合。シンは顔面かきむしりから拳を顔に押し当てる。馳きつい。
シンが攻める。キックに首4の字固め。しかし馳は冷静。シンは腕を取ってアームブリーカー。馳を倒して腕ひしぎ逆十字固め!
馳ピンチか。ロープブレイクはないデスマッチ。馳はブリッジして逃れる。

何度か場外でやり合うが、馳は基本的にリングに戻り、リング上で闘おうとする。
馳がシンの脚を攻める。脚にストンピング。シンのリングシューズが脱げた。シンは馳にキック連打。そしてシューズで馳を殴る! 何でも凶器にしてしまうのがシンだ。
馳をダウンさせてゆっくりシューズを履くと、シンが首4の字固め。馳苦しい。馳の動きが鈍い。
シンが技を外すと、馳は大の字。シンは勝ちをアピール。これは甘いのか作戦なのかは読めない。当然まだ馳は落ちていない。
シンはキックとパンチ。そして場外乱闘。マスコミの脚立を持ち、馳を殴打!
ついにシンはサーベルを手にした。馳の頭部にサーベルの柄で一撃! 二撃! 三撃! 馳浩が大流血だ。
猛虎シンは割れた額にバイク(噛みつき)。空き缶も凶器にして傷口に突き、チョーク攻撃!

馳が怒った。反撃開始だ。ロープに使う留め金を手にした馳は、シンの額に凶器連打! エキサイトした馳がシンの額に凶器を押しつける。
ラフファイトだけでなく、馳はドロップキック! シンも大流血。馳がお返しのバイク! 目には目を歯には牙をだ。
馳はシンをロープに飛ばしてカウンターのスリーパー! 
シンも負けていない。キックにパンチで応戦。場外乱闘。馳を鉄柱に叩きつけ、ダウンすると場外でコブラクロー!
怒りの馳がマスコミのものか、ロープを手にしてシンの首を絞める。その辺にあるもの全てが凶器のデスマッチだ。
リングに戻る両雄。馳が外したトップロープで首絞め。これがやりたかったのか。シンが馳に金的パンチ。馳ダウン。シンがロープを奪った。馳の首を絞める。やはり凄惨な試合になってしまった。
二人とも大流血。馳が起死回生のバックドロップ! 後頭部痛打。さらに必殺技の裏投げ! シンは完全に大の字。動かない。
立会人のマサ斉藤がリングに上がってシンの顔を見る。
「馳の勝ち!」
1時間11分24秒、馳浩の壮絶KO勝ち。最後はプロレス技で決めた。
馳はマスコミに囲まれる。シンは担架で運ばれた。

馳浩VSアントニオ猪木

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