【史上最強の男】マイク・タイソン 頂点から転落、神話崩壊、そして伝説となる

【史上最強の男】マイク・タイソン 頂点から転落、神話崩壊、そして伝説となる

師:カス・ダマトは亡くなり、唯一タイソンを叱ることのできた兄弟子でありトレーナーだったケビン・ルーニーも、タイソンの生む利益にのみ関心のある者たちによって引き離され、全盛期といわれる1988年以降、マイク・タイソンの神話は崩壊していった。


1989年以降のマイク・タイソン

vs Franklin Bruno(フランク・ブルーノ)

1989年2月25日、
フランク・ブルーノは英国の誇りとまでいわれた実力者
しかしタイソンの敵ではないといわれた
事実、試合は5RでタイソンがKOした
しかしタイソンのボクシングは緩慢で雑だった
そして不用意に右フックを大振りしたタイソンのアゴにブルーノの右がクリーンヒットし
タイソンの腰が落ちかけたシーンもあった
普通のボクサーならともかくタイソンには考えられないことだった
タイソンの兄弟子:ホセ・トーレスはこの試合をみてコメントを残している
「カスが教えたものは何もかも失われていた
左右への動き、
コンビネーション、
タイミング、
忍耐、
最も基本的な左ジャブ・・・
そしてカス・ダマトと深い繋がりのあったコーナーマン達もそこにはいなかった・・・」

vs Carl Williams(カール・ウィリアムズ)

カール・ウィリアムスは
長身のボクサータイプで鋭いジャブとパンチ力を持っている
試合前の会見に30分ほど遅刻して
「ちょっと遅れてしまったよ」
と悪びれた様子も無く淡々とインタビューに答えた
1R
カールは
試合開始早々軽快に動きながら鋭いジャブを繰り出しいいスタートを切った
1分過ぎ、
カール・ウィリアムスの出した左ジャブに対してタイソンはダッキング
反動で伸び上がる力で左フックをカール・ウィリアムスのチン(顎先)にクリーンヒットさせた
カール・ウィリアムスはそのまま崩れ落ちた
カウント途中に立ち上がったがファイティングポーズを取らなかった為、レフェリー:ミルズ・レインがTKO負けを宣告した
カール・ウィリアムスは
TKO負けを宣告され
ふと我に返ったように続行可能を猛烈にアピール
カール・ウィリアムス陣営もリングに流れ込んで猛抗議を行った
が、後の祭りだった
試合があまりにも短時間で終わったため
ブルーノ戦でのタイソンは一時のものかと思われた
しかしその動きにかつてのキレはなく
解説の浜田剛史はタイソンのボクシングに首を傾げる発言をした

vs James "Buster” Douglas(ジェームス“バスター”ダグラス) ロングカウント 初敗北

1990年 、
ドノバン・ラドックとの防衛戦が決定していたが
タイソンが急にキャンセル
相変わらずゴタゴタが続いていた
そしてタイソンとその取り巻きがプロモーションのために来日
ついでに試合でもやろうかというノリで
2月16日の東京ドームのスケジュールがおさえた
そして相手はジェームス“バスター”ダグラスに決まった
試合当日
東京ドームの観衆は51,600人
ピッチャーマウンドがリングだとすると
外野手が守っている位置ぐらいの席が3万円
リングサイドは20万円
試合はアメリカのゴールデン・タイムに合わせ生中継されたため昼の12時半ころから行われ
アンダーカードに予備カードを用意して時間調整がされた
前座でプロ2戦目の辰吉丈一郎がリングに上がった
罵声を飛ぶ
「なんでプロ2戦目で10回戦なんだ」
辰吉は元タイ王者にダウンを奪われたが
辰吉の左のボディでタイ人は深々とリングに沈んだ
「何て凄いボクサーだ・・・」
観客はみんな大器を感じた
ジェームス・ダグラスは、
アメリカオハイオ州コロンバス出身
ニックネームはBuster(バスター、破壊者)"
タイソンは
マネージャーとのトラブル、
離婚、
旧敵と喧嘩、
自殺未遂疑惑
何かとその周辺にトラブルを抱えていた
更に来日後、不調が伝えられた
スパーリングでダウンを喫したという情報もあった
しかし37戦全勝33KOの鉄人が早い回で挑戦者(ジェームス・ダグラス)をKOしてしまうと誰もが信じて疑わなかった
1R
タイソンはいつもの軽快な動きがない
ダグラスに攻め込まれパンチを食い
タイソンの目が腫れ上がった
タイソンはペースを奪えない
しかしこんな状態でも会場の誰もがタイソンの逆転を信じて疑わない
そしてそれは突然やってきた
タイソンのもの凄いアッパーがダグラスの顎を捕らえてダグラス、ダウン
カウントアウト寸前で立ち上がる
しかしカウントが長い
ロングカウントだった
その後、タイソンはぐらつきダグラスの攻撃を受け続けた
10R
ショッキングなシーンが訪れる
「ドーン!!」
タイソンがマウスピースを吹っ飛ばされてリングに沈んだ
タイソンはリングに倒れ込む
そしてKOが宣せられた
タイソンはほとんどなにもできないまま力尽きてマットに落ちた
遠のく意識の下でマウスピースを口にねじ込む姿は無残だった
師:カスはすでに亡くなり
唯一タイソンを叱ることのできたケビン・ルーニーも
タイソンの生む利益にのみ関心のある取り巻きたちによって引き離され
80年代最後の年にタイソン神話は崩壊した
本人の意思とは無関係に
相手に突進しパワーで相手をねじ伏せるという当たり前のブルファイト・スタイルがタイソンの唯一の選択肢となった
試合後、タイソン側から
「ダグラスがダウンした時10カウント入っていた」
とクレームが出た
判定は覆らなかったがビデオでみると
確かにレフェリーのカウントのとりかたにミスがあり
本当は10カウント入っていた
ダグラスは
この4ヵ月後にイベンダー・ホリフィールドの挑戦を受けるが1RKOで敗れ1度も防衛はできなかった

vs Henry Tillma(ヘンリー・ティルマン)

ヘンリー・ティルマンは
かつてアマチュア時代、オリンピック選考会の国内予選の決勝でタイソンを破ってロサンゼルスオリンピック出場し金メダルを獲得した
2人の再戦はプロのリングでタイソンが1RKO勝ちを収めた

vs Alex Stewart(アレックス・ステュワート)

アレックス・ステュワートを1RKO

vs Donovan "Razor" Ruddock(ドノバン”レイザー(カミソリ)”ラドック) 「ピーカーブー」vs「スマッシュ」

1991年3月18日、
タイソンはドノバン”レイザー(カミソリ)”ラドックと戦った
ドノバンは対タイソン用の必殺パンチを持っていた
それは「スマッシュ」といわれる3クォーター(4/3)から放たれるアッパー気味のパンチだった
カス・ダマトが「パンチを打たないときはグローブの親指を噛んでいろ」といったタイソンの「ピーカーブー(いないいないばあ)」スタイル
この鉄壁のピーカーブーにも弱点があった
それはグローブの下にできる隙間だった
ここに下からアッパーを打ち込んでタイソンのアゴを狙うことが攻略法だといわれた
しかしアッパーは接近して打たねばならない
タイソンに接近戦は危険だった
スマッシュは
通常のアッパーよりスリークォーター(4/3)程度上に拳を構え
そこから斜め前方に向かって発射するパンチで
これならアッパーほど近づかなくても顎に向かって下からパンチを放つことができた
試合は7RTKOでタイソンが勝ったが
スマッシュはまったくく予想もしていない間合いとタイミングから突然、物凄いスピードとパワーで放たれタイソンの顎をかすめた

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