戦場のメリークリスマス

戦場のメリークリスマス
この映画を私は姉と一緒に映画館に見に行ったのですが、三度、見ようとしたのを覚えています。
「もう一回、見よう」
と姉に提案すると、
「頭が痛いし、なんでそんなに見るのよ!? 二度も見てるじゃない!?」
と呆れられたのですが…何故、三度も見たかったと言えば、これを見た当時、まだ中学生だったのです…。
「だって二度見ても、なんのことだか、さっぱりわからんのんだもん」
と私(^_^;)
「中学生には早かったかもね…私は帰るし」
と姉、冷たく言い放ち…(^^ゞ
結局、二度、見たわけですが、中学生の私には、この映画をまったく理解できなかったのを覚えています。
が…、その後、高校生になり、やっと「そういう意味があったのか…」と思えたものにも出会えました。
(その辺も後程…)
監督・脚本

大島渚
大島渚プロダクション
脚本にはもう一人、ポール・メイヤーズバーグも参加されています。
キャスト
ジャック・セリアズ英軍少佐

デヴィッド・ボウイ
ヨノイ大尉(レバクセンバタ俘虜収容所所長)

坂本龍一
ハラ・ゲンゴ軍曹

ビートたけし
音楽
音楽は、坂本龍一。
今回は、映像も入っていたので、ジャパン(バンド)のデヴィッド・シルビアンとコラボした「Forbidden Colours (禁じられた色彩)」の方を選びました。
見どころ
出演者が男性ばかり

ロレンス英軍中佐とセリアズ英軍少佐
本当に、男性ばかりでした。男性ばかりの中で起こる様々な人間模様…といった感じで、戦争シーンは出てこない映画です。とにかく広島に修学旅行に行って以来、戦争アレルギーのようになっていた私には、ありがたい映画でした。

こういう場面はあります。
歴史の闇
確かに、日本兵である方が何かとても残酷だったように思います。どんな戦争映画でも捕虜が優遇されるという場面は見たことはあまりないのですが…。
また、セリアズの学生時代を思い起こすシーンで、セリアズの弟が障害者で、学校でいじめられている…にも関わらず、学生であるセリアズは、それを建物の影で見て見ぬふりをするシーンもありました。その時は、
「セリアズ…ひどい奴だ。なんで弟さんを助けないの?」
と思ったのですが、それを一番、悔いていたのは実はセリアズ自身だったのかもな…と思わせてくれたシーン(最後の方)もありました。

処刑されるセリアズ…
メリークリスマス、ミスター・ローレンス!

ロレンスとハラ軍曹
既に、この動画を見て涙が…!
せつないラスト・シーンに、坂本龍一さんのあの音楽…たまらない気持ちになります。
戦争が終わり、敵も味方もなくなり、立場は逆転し、虐待していた方が次は処刑される…という前日に、
「メリークリスマス、メリークリスマス、ミスター・ローレンス」
と言うハラ軍曹(ビートたけしさん)の顏が、なんとも言えない顔…。
このラスト・シーンだけでも見るべき映画だと思います。
「正しい者などどこにもいない」
というロレンス英軍中佐(トム・コンティ)も心に残りました。
禁じられたキス
merry christmas mr lawrence (1983) - the forbidden kiss - YouTube

セリアズとヨノイ大尉
キスの意味
中学時代、映画館でこの映画を三度も見ようとした理由は、このシーンのためです。ボウイと坂本さんがキス(と言っても頬に少し)しているところをもう一度見たいわ…と言った「♡ハートマーク」な理由ではまったくなく、前述通り、
「なんで、セリアズはそこでヨノイさんにキスしたの?、それでヨノイさんがふら~っと倒れて…。???? なんのことかさっぱりわからん…(^_^;)」
という情けない理由からです。
が、高校時代に父が買っていた「文藝春秋」(だったと思います)を読んで、この映画の解説のような記事もあり、それを読んで初めて、「そうだったのか」と納得したのです。
その記事の内容を書いてみようと思いますが、記憶が曖昧ので、うまく書けるかどうかわからないのですが、書きだしてみます。
その雑誌には「戦場のメリークリスマス」を「わかりにくい映画」と書かれていました。まったくもって私もそう思ったので、読んでみたわけです。
「同性愛行為は人間だけがするものだと思っていたけど、猿がその行為をしているのを見たことがある」
と記事に書いてあり、それだけでも高校生の私は興味津々だったわけです。
「ただし、猿の場合、普段の生活ではオスはメスに、メスはオスに…と普通の状態だ。自分がその珍しい猿の同性愛行為を見たのは、オス同士の激しい争いの場だった」
と…。これは、動画を見ていただければわかる通り、映画でも一触即発、ヨノイ大尉は日本刀を持ち出し…という場面でした。
「争いはボス猿と思しき、一際でかい猿と、少々小さ目の猿(以下、小猿)との間で起こった。どう見ても体のでかいボス猿が優勢だった。それは、小猿にもわかったのか、そこで、小猿は何を思ったか、ボスの股間あたりに自分の尻をこすりつけたのだ。あ…と思っている内に、争いは血を流すことなく終わっていた」
とこんな内容だったかと思います。
あ…と思ったのは、この記事を書いた方だけでなく、私もそうでした。
仲間を助けようとしてセリアズがとった行動は、ヨノイ大尉を力づくで押さえつけるという方法ではなく、この猿の争いが終わった方法と同じ、キスという行為で日本刀を持ち荒ぶるヨノイ大尉の緊迫した心を解き放った…という方法だった…?!
「あ、そうだった…かもしれない、あの場面…!」
と合点がいった瞬間でした。
この時、セリアズの頭には学生時代、障害のある弟を助けなかった…という想いもあったかもしれないな…とも思えました。
結果的にその場は、治まりましたが、セリアズは処刑される運命となります。
淀川長治さんの解説
懐かしの淀川さんの解説です。
全ページにセリアズ(ボウイ)は処刑される運命に…と書きましたが、それは、頭だけ出して身体全体を砂の中に埋められる…という残酷な方法でした(残酷でない処刑などないかもしれないですが)。
そこで、ヨノイ大尉(坂本龍一)は、セリアズの髪の毛を一束切って持ち帰ります。それも、やはり「男の友情・愛」だったのかな…。
エピソードあれこれ
たけしさんが、当時の撮影裏話をいろいろとおもしろおかしく話してくれています。
何やら、坂本龍一さんのイメージが…(崩壊していくような^_^;)!
そして、中盤あたり、またもや、
「え、そういう意味もあったの?」
と驚いてしまったことを、たけしさんの口から…!
「坂本龍一(ヨノイ大尉)とデヴィッド・ボウイ(セリアズ)とおいら(たけしさん・ハラ軍曹)の三角関係」
え(~_~;)?
ヨノイ大尉→セリアズ ハラ軍曹→ヨノイ大尉 そしてハラ軍曹は、ジェラシーだったの?!
これはデヴィッド・ボウイが亡くなった時の頃(2016年)です。
ここでも、こぼれ話を聞くことができます。
たけしさんは「戦メリ」時代からすると、今では映画界における「世界の北野武」ですから、観方も変わってきているかもしれないですね。

戦場のメリーさんの羊
最後は、関係あるようなないような、「オレたちひょうきん族」からのパロディです。
たけしさんの大島監督のマネ…歯が…(さんまさんでないのですね)(^^ゞ!
こんなパロディまでできるほどに、当時、「戦場のメリークリスマス」は話題になりました。
カンヌ映画祭ではおしくも賞を逃したとはいえ、この記事を書くにあたっていろいろ調べてみて、当時はわからなかったことも「そうだったのか…」と理解できるようになり、もう一度、やっぱり観たいな…と思う映画でした。