
リュウ三部作、第一部
漫画「原始少年リュウ」は週刊少年チャンピオンに71年から翌72年に連載された石森章太郎(後年、石ノ森章太郎と表記)の作品です。単行本は72、73年に全3巻が発行されています。
筆者もご紹介した同氏作品「番長惑星」で完成を見た、「リュウ三部作」の発表2作目、太古編として三部作の最初となる作品です。
(もっとも三作にはハナシのつながりはなく、「リュウ」という男の子が主人公というところだけが同じなだけなのですが、、まあいずれも、主人公リュウが“世界”に挑む物語とは言えるかも知れません)
ただ、上記のコメントでは石森氏自ら「太古」といいながら、物語は以下のようなト書きから始まります。
〈—「時間」はときおりうそをつく ある人には長く ある人には短く …そしてまた〉
〈あるひとのきのうが あるひとには あすだったりするそれは…〉
〈大都会ニューヨークのドまん中とニューギニアのジャングルの奥地が同じ“現在”という「時間」の中に存在していることでもわかるだろう〉〈だから… この「物語」には「時間」がないといっておこう〉〈はるかな失われた“過去”かもしれないし あんがい近い“未来”かもしれない いや あるいは… …そこにきみがいる“現在”かもしれないのだ—〉
石森氏が今作に「現代性」を持たせようとしたことが伺えますね。それはリュウ三部作のほか二作も同様ともいえますね。“太古”を描いているが、未来かも現在かも知れない、と(もちろん科学的知見では当時もいまも人類と恐竜は同時代に生きてはいなかったとなっていますしf^^;)。
白い赤子

キバトラ一族に産まれた白い肌の嬰児は、呪われた子として「りゅうの王」にいけにえとして捧げられます。生きたまま岩場に置き去りにされるのです。
同じ頃、猿人の母キティは、仲間と我が子がりゅうに殺されているのを見つけます。子どもの泣き声をたどると、そこにはいけにえに置かれた白い赤子が。りゅうは肉食恐竜のようです。そして、りゅうの王とは、ふつうのりゅうたちよりはるかに大きなりゅうなのでした。王の出現に逃げ出したりゅうたちから、キティは赤子を搔き抱いて助けます。
—それから十数年。
成長した白い赤子—リュウは、よそものとして集落の人間たちに捕まります。リュウはキバトラの集落を全滅させた呪いの子とされてしまっているのでした。しかし、そこに再び、りゅうの王が。

なぜ自分を助けたのかと聞くリュウに、ランは自分が村に売られてきた身で、別の村に売られた弟ドンのことを思い出したらかも、と話します。
再度現れたりゅうの王から川に逃れた二人でしたが、タカという男のグループに捕まってしまいます。ランは囚われ、リュウは毒ガスの流れる死の火口に落とされてしまいます。

タカの村は彼が「かしら」となってから戦闘的に、荒んだ集団になってしまいました。そのことを諌める、前のかしらの喉笛をタカは槍で突き刺します。火口から生き延びてランを助けにきたリュウは、彼の死に際に母の手がかりを聞きます。

キバは、リュウが火の山から「槍の石」を持ち帰れたらランを連れて行ってよいという条件を、タカとの間に取り持ちます。火の山までキバはリュウをつけます。折しも噴火を始めた火の山から命からがら戻った二人でしたが、りゅうの王に襲われタカの村は壊滅。ランはいなくなっていました。ランの行方を追うリュウ。

弟が姉に呼ばれたと感じたのと同じく、ランもドンのすぐそばにいることを感じます。再会する姉弟。
ランが売られた村でランを“つま”にしようとしていたヤムが彼女を助け出したのでした。リュウに襲いかかるヤムでしたが、逆に返り討ちにあい殺されそうになるところをランが止め、ヤムは去って行きます。
白い神
呪われ、りゅうの王に追われていると噂されるリュウは、りゅうの王を殺すことを誓います。また、以前からりゅうの王を狙い追っているキバは、りゅうの王を誘き寄せるために、リュウと行動をともにします。
猿人に育てられた片言の発語からどんどん言葉を覚えて喋ったり、火打石の使い方や弓矢を発明したり、リュウは常人ならざる頭の働きをみせます。犬橇を使い、スキーもつくり出し、追っ手を逃れ、りゅうの王に迫ろうとします。

雪原のなか、リュウたちは“小屋”や弓矢や土器が残った村の跡を通り、やがて人々が暮らす村に入ります。彼ら村人はリュウを「白い神」と崇めます。彼らの村は、白い女神—リュウの母と思しき女性によって文明をもたらされた村だったのです。女神は子神を探しているというのです。
神殿
蜥蜴人の先導と毛長族の手下とともに追ってきたタカらは、村に攻撃をしかけます。火を放ち追っ手を撃退し、絶壁の間を抜けて温暖な土地にたどり着いたリュウたちは、白い神々が空から降りてきて住まったという神殿の遺跡を目にします。白い神と崇められ慢心し、自分が率いてきた村人たちを放り出そうとするリュウを、キバは戒めます。最初はたんにりゅうの王を誘き出すためのエサにすぎなかったが、いまは弟のように思い、「人間の未来」をリュウに賭けようとしているのだと語ります。想いを通じさせ和解する二人。そこにりゅうの王が現れます。


リュウはトリに乗って、北から巨大な山が迫り、氷の時代が南へ南へと迫っているのを確かめます。もはや温暖な土地だったここにも寒気が迫ってきます。
動物たちも南へと逃げて行きます。
リュウは村人たちに南へ逃げ続けるように告げ、自分はランとドンとともに“仲間”の知恵を頼りに行くことにします。
アトランチス、そしてその—


探検旅行に出かけたリュウの両親でしたが、飛行艇の事故で父は死に、無事だった母も数ヶ月後に生まれたリュウを原人たちに取り上げられてしまったのでした。
リュウのほんとうの故郷、ここはアトランチスといい、その祖先は空から降りてきたと言われ、、と、突然、地震と大津波が—。脱出しようというところを、飛行艇を奪おうとする男に母は撃たれてしまいます。機上で絶命する母。
第四氷河期が近づきつつある時代のことでした。地殻の大変動でアトランチスは一夜にして海中に没し、現在、有史以前の超文明がその存在の証拠を現しつつある—〈明日—リュウたちの住んだほら穴を発見するのはキミかもしれない—〉と、逃げ延びたリュウ、ラン、ドンがいっしょに暮らし、アルタミラのような壁画を残すようすが示唆され、物語は終わります。
そして、リュウ三部作、最終章へ
唐突な印象のアトランチスの登場と、さらに唐突な印象の登場するなり突然の破局は、打ち切りなど作品外の影響なのでしょうか?それとも読者の驚愕を呼ぶための—?
いずれにしても、古代の超文明というモチーフは、3年後の次作、リュウ三部作最終「番長惑星」へと継がれます。こちらも本編をご一読いただくか、当該の拙文紹介をご参考下さいませm(_ _)m