
5年ぶり、少年誌への“帰還”
今回ご紹介する「てりぶる少年団」は、漫画家とり・みきが89年から週刊少年サンデーに連載した作品です。
SFWJ:member-TORI-MIKI
84年に週刊少年チャンピオンでの連載を終了した「クルクルくりん」以来、5年ぶりの少年誌連載。デビュー以来くりんまではチャンピオンでのみで作品発表していた、とり氏の少年サンデーデビューとなったわけですが、、
と、いうように、とり氏はくりんでチャンピオン(秋田書店)を離れて以来、その活躍の場をいわゆるマイナー誌あるいは漫画誌以外の媒体に載る漫画に移しているのです。
このことがなにを意味するのかというと、、それはいましばしお待ち下さいませm(_ _)m
てりぶる少年団の活躍(?)
登場人物とおハナシ、、
さて、今作の登場人物です。



涼美とつづらの学校からの帰り道、突然地中より頭を出したかと思うと引っ込めて見えなくなった奇っ怪な男の子、、(テッキーです^^;)
と、今度は「今どきマンガの中と銀蝿一家以外は都内では完全に死に絶えたと思っていた国宝級の不良よ!?」という絵に描いたような(描いてあるんですがf^^;)不良に絡まれる二人、、
そこに三人組の男の子が茶々を入れて助けて(?)くれます。

そこに、いい大人なのにさらに輪をかけてオカシな人物が入ってきます。
てりぶるの三人曰く、「世紀の天才科学者!!」天本博士です。
これが第1話、てりぶる少年団と博士、涼美とつづらの出会いです。
、、あとは別にすじもなにも。ギャグ漫画ですからf^^;
とり・みきの世界
どなたかも言っておられましたが、ギャグを説明するなんてことほど、野暮で無粋で無駄で愚かなことはありませんね(自己否定)。でも仕方がないので、ちょっと紹介します>_<
こんなんで面白さが伝わる訳ありません。よかったらぜひ作品をご一読下さい!


とか、


え?なにがおもしろいのか分からない?、、そんな方こそ一度とり作品、できればこの「てりぶる少年団」を実際に読んでみて下さいませf^^;
とり作品のスター・システム
とり氏の漫画の登場人物は、ときに他の作品で別の役で出てきたキャラクター、またときにエッセイ漫画などで出てきたとり氏の友人知人だったり(またその逆も)します^^
いわゆるスター・システムの類いです。
とり作品内で、「漫画俳優」などと呼ばれ、とり氏の友人の(漫画のなかでないご本人は)書店店員「たきたかんせい」氏などは初期作品から、そして頻繁に登場しますね。

今作でも、天本博士の“漫画役者”は、金田一耕助のパロディ主人公「猫田一金五郎」としてなど活躍しますし、
テッキーはとり氏の友人で編集などを手がける関智氏、ミッキーはとり氏が自分を描くときに一貫して使用しているキャラクターです。
てりぶる少年団の危機(!>_<)
テッキーとミッキーは聖一角獣学院幼稚舎の生徒、リスキーはそのインターナショナルスクールの生徒。
天本博士は、最後まで立ち退きに反対して団地の真ん中にある「天本研究所」に住み、その周辺で怪しげなことばかり起こるので普通の人々はあまり近づかないなか、テッキーミッキーリスキーの三人組はいつもここに入り浸っているのでした。
そんなわけで、毎度々々の面々が毎度なにかしら騒動を起こしてというスジも物語もないハナシが(ギャグ漫画ですから)進んでいいますが、、


連載打ち切りの報に呆然とする天本博士とてりぶる少年団の3人^^;
理由は単純明快、「読者アンケートの結果がよくないからだ!!」>_<
「アンケート結果は悪くてもけっこう面白いといってくれる人も多かったのに…」
「ふふふ、人気のないやつはみんなそういうんだ」
と自らへの厳しいツッコミ、、
「あれもこれも…まだまだやりたいことはいっぱいあったのに…」
「あんまり変なことばかりやるから読者がついてこなかったんじゃないんですか?」
「そんなことはない、むしろ最初は控え目に…」
「かえってそれがよくなかったのかも。」
「いやしかし。」
とか反省会をやっていたり、身売りを考えたり、、
などとやってきると、編集部からまた電話がかかってきます。
「え?なに?打ち切りをネタにするな?/ちゃんとおハナシを進めろって?」
再び電話を受けた天本博士は電話の向こうへ断言します。
「冗談じゃない!!いいかこの世の中にはなあ…

てりぶる少年団の最後(!?)
翌章「いぬ」はまったく関係ないネタで、打ち切りには触れませんが、最終章「いのしし」は、、


そして、その後、、虚実のあわい
当時のサンデーの読者は、とり氏のハイセンスが理解できなかったのかも知れません。
とり信仰の筆者はそうも思います、、
チャンピオン時代も自作の台詞を「わかりづらい」などと勝手に変えられた(後に単行本収録の際元の台詞に戻したそう)とか、
眼鏡をかけた主人公を設定しただけでずいぶん抵抗があったとか、
チャンピオンの保守性だか、まだまだベテランのキャリアではなかったとり氏への扱いだか、
そういったことがあったそうですが、
それから少し時代を経ても、少なくともサンデーではまだまだ読者は保守的だったということでしょうか。少年誌を離れていた5年間、その先鋭性にさらに磨きをかけていたとり作品、少年誌には受け入れ難かったのでしょうか。少年誌云々ではなく、それはたんに各漫画誌の読者のカラーの違い、棲み分けかもしれませんが、、
先述のとりスターシステムも、とり氏の漫画と世界に対する姿勢と資質をも表現していて、それもその可笑しみの一部なんだと思うのですが、サンデー読者にしてみれば「そんなんわけわからんわ」ということでしかなかったかも知れませんしね、、
ところが、
最終話が掲載され連載が終了したのは89年の47号でしたが、そのわずか1ヶ月後52号に短篇「てりぶる少年団の逆襲」が掲載されます。
東京を脅かす怪物の出現に対抗するために、天本博士とてりぶる少年団の助けが必要とされますが、政府の要請で探偵(?)が彼らを捜すも誰一人行方が知れず、、という、続編怪獣映画のていのハナシですが、もちろん相変わらずの展開とオチとなっていきます。ここでは連載打ち切りや終了、再びの登場となったことなどに関するメタな言及やギャグはありません。
さらに翌年90年12号、今度は4人がてりぶる少年忍者として登場する忍者漫画(?)短篇「てりぶる少年伝」が掲載されます。今度はラストで「もし続編ができたら」という台詞があり、〈果たして彼らのこのあとの活躍を、また、機械船の威力を読者諸君は見ることができるのか!?それは作者にもわからない。わからないったらわからない。なにはともあれ「てりぶる少年伝」ひとまず一巻の終わりでございます…〉というナレーションで終わります。
果たして真相は、、?
これはたんに、連載を打ち切られた漫画家に、その後2回、読み切り短篇のハナシが来ただけなのでしょうか、、?
2編とも連載時と変わらぬ調子で、連載を打ち切りにした読者アンケートに媚びた様子はまったくありません。
ところで、てりぶる本編は「ねの章」で始まり「いのししの章」で終わります。打ち切りなのに、きれいに十二支そろって終了?各話のタイトルに十二支がふられるというスタイル、連載当時もそうだったのか、筆者には思い出せませぬ。12回で終了したから後から単行本化時に十二支をふったのか?たんなる偶然か?
単行本には逆襲、少年伝までが収録されて一冊(一冊だけなのに第1巻「1」の表記があるのは、冒頭でご紹介の通りです^^;)になっていますが、単行本化のために連載後2回の短篇の機会を設けただけなのか、、
まさか、最初から全12回が決まっていて、打ち切りのこともネタにするために、、!いやそんな、、(((( ;゚Д゚)))
今回調べてみても、この真相に関わる記述は見つけることができませんでした。
謎は謎のまま、、
しかしいずれにしても、この機会に「てりぶる少年団」あるいはとり・みき作品にふれていただくなり、読み直していただければと、
とり・みき信仰の筆者としては願う次第ですm(_ _)m
で、また。とり作品が少年誌に載るようなことがあっても面白いなーヽ(‘ ∇‘ )ノ
