2巻作家の誕生と昇華 〜漫画「ふぁいてぃんぐスイーパー」

2巻作家の誕生と昇華 〜漫画「ふぁいてぃんぐスイーパー」

85年に週刊少年サンデーに連載された、中津賢也の初連載「ふぁいてぃんぐスイーパー」。同作は中津氏にとってたいへん大きな作品になったと思われます。一緒に振り返ってみましょう^^


「ふぁいてぃんぐスイーパー」第1巻の表紙

新人中津賢也のデビュー、連載デビュー作

中津賢也は82年に「小学館新人コミック大賞」の第11回にて少年部門入選を果たしました。その後、84年に週刊少年サンデー(41、42号)に前後編読み切り「にゅうたあHERO」が掲載されデビュー、そして、翌85年の連載漫画デビューが今作「ふぁいてぃんぐスイーパー」です。実は82年に入選となった作品も「ふぁいてぃんぐ清掃人」。同作は中津氏の公になった初作品であり、初の連載作品でもあるわけです。

新人中津氏の「成長」

手塚(治虫)のような「神様」でもそうでしたが、連載、とくに週刊連載ともなれば連載開始のときの画柄は連載が進むに連れ熟れて変化していくのが常です。まして「新人」中津氏の場合、85年12号から30号までと13週の連載でしたが、かなり劇的に画の調子が変わったと見られます。
一部連載開始時と終盤の画柄両方を挙げながら、登場人物とおハナシをご紹介していきます。

登場人物とストーリー

主人公、総司と ヒロイン香奈

左:高内総司
どんな難問でも人物でも“掃除”してしまう、私設拝天狗清掃局のエース「ふぁいてぃんぐスイーパー(闘う掃除人)」。
高内総司(=校内掃除)なんてネーミングセンスが当時を偲ばせますねえ、、さいきん一周廻ってこういうセンスもアリになってます?f^^;
箒などの一見掃除用具が、銃だったりワイヤー銃だったり三節棍だったり爆弾だったり、武器にも使えたりする。
また、人物の排除など以外に、同局は本当の掃除も引き受けるよう。
超人的な強さと体力を誇るが(まあそもそもギャグ漫画なので鉄骨が落ちてきても死ななかったりするのだが、、^^;)、
掃除の方もきちんとしたプロの技術を持っているらしい。

上の同じ人物(第1話)が、最終回前になると、このようにすっかり違う画柄に、、^^;

第1話、総司は、私立大乱高等学校の校長教頭から不良グループの総番、北沢香奈の“そうじ”を依頼されます。

北沢香奈

(実は女性には手を挙げないという)総司は、気が進まぬと“掃除”にかからないで油を売っていると、逆に香奈の手下に倒されてしまいます。香奈らのアジトで目を覚まし、彼女と初めて顔を合わす総司。
そこに人質を取って香奈に一人で出向くように指示した、香奈らグループを狙う近隣男子校グループからの呼び出し状が。
総司は香奈を寝過ごさせ、代わりに出向いて一人で相手グループを倒してリーダーを捕まえます。
駆けつけて、このリーダーを簡単に倒した香奈は、総司と対決。しかし敗れてしまいます。
寝姿の写真もカタにして、香奈をふぁいてぃんぐスイーパーの仲間にする総司。
まんざらでもない香奈とお熱いことなラストシーンで第1話は終わります。

香奈も終盤ではこのように、、またずいぶん違いますね^^;

拝天狗清掃局に加わった香奈ですが、総司以外にも局にはふぁいてぃんぐスイーパーたち(同僚)がいます。

拝天狗清掃局の面々

上:阿久田亜摘
 見かけによらず剛腕。空手八段

右:滝野奉基
 「ふだんはどうということのないやつだが」、、そのハナシで一話あるので、後ほど^^

その左:市川新太郎左衛門(じさま)
 歳の割にはめっぽう強い

ちなみに、彼らも終盤ではこんな感じに、、

そう、奉基は危険に陥ると狼男に変身するんですね^^;

、、すごい顔ですが^^;

拝天狗清掃局の局長(ボス)
すごい顔のほか、とくに作中詳細は出ません、、

人間離れしたキャラクターをなんに説明もなしにとうぜんのように放り込んでくるのも、
中津ギャグ漫画の特徴ですね^^;

高内一聖
総司の兄。総司を含めた皆と折りが合わず拝天狗清掃局を飛び出し、アッパレ清掃社というグループをつくって拝天狗の邪魔を図ったが、総司に敗れる。
総司曰く「女のことなら一聖が得意」という女好き。

内田隆
以前、問題を起こして長野支社に異動していた(とばされてた)が、東京本社に戻る。
高いところが好きで、つい登ってしまう。
本人曰く「なぜおまえは危険をおかしてまでビルにのぼるのかと問われれば、/私は「だって趣味なんだもーん」と答えるだろう。」

ご覧の通りのおっさんだが、亜摘は内田に秋波を送るが靡かない。
奉基はその亜摘に惚れていて、
実は当の内田は、、「おれが好きなのは総司一人だ!!」と、ややこしい相関図f^^;

、、と。
連載の回を重ねて画柄が熟れてきた、と紹介してきましたが、、

第1回の扉は、こんな感じの画柄なんですよねえ、、単行本化であとから描いた扉絵なのかなあ、、たんに中津氏はムラがあるだけなのか?^^;

最終話

といった具合に順次新たな敵とともに、新キャラクターが登場したり、おハナシは進みますが、
最終話!
は、3週をかけたおハナシになっています。
子どものころ親同士で決めた結婚の約束のため、財閥の御曹司が香奈を誘拐します。
そこはさすがに最強総司、さくっと香奈を奪還しますが、全面抗争に発展。拝天狗の社屋も破壊されてしまいます。
まあ最後には自分らを轢き殺そうとする車を、総司が素手で力勝ち、ひっくり返して倒してしまいます。敵方が「き、きさま!!/人間か—っ!?」と叫ぶように、やりたいほうだいですなーf^^;
最後は負傷の総司を甲斐々々しく世話させられる香奈のお二人お熱いことで幕切れとなります。

2巻作家の誕生^^;

連載終了を受け、84年9月に1巻が、続いて翌10月に2巻が出て完結します。

その後、中津氏は翌85年から86年に週刊少年サンデー増刊号で「黄門★じごく変」を連載。これが全2巻の単行本に。
小学館の雑誌で読み切り短篇を3本ほど描いた後、同じく増刊号で87年から88年まで「徳川生徒会」を連載、これも全2巻で単行本化されます。
その「徳川生徒会」2巻の「巻末付録」で「2巻作家の中津です」「別に好きでやってるワケじゃないんだよ/ほんとうは2巻以上出したいと思ってるんだけどね〜。」と作者自身、自虐的にネタにしておりました、、

ところがっ

2巻作家、卒業^^

「徳川生徒会」が春に連載終了した86年、同じ年の夏に、同じく増刊号で「帰ってきたスーパーヒーロー」というタイトルの一話読み切りで「ふぁいてぃんぐスイーパー」が掲載されます。

実は香奈が暴走族時代に、その犠牲となった女の子のために族をたった一人で壊滅に追い込んだのが、総司だったというおハナシになっております、、

総司、香奈はもちろん、一聖、亜摘も少し出番あり、、ずいぶんみんな画柄が違っているように思えますが、、

ちなみに総司はこんな感じ。

その2年も経た88年になんと、「ふぁいてぃんぐスイーパー」の3巻が出ます。2巻発売から数えると実に4年後!
もちろん86年の一話だけで単行本一巻は成り立ちません。
ふぁいてぃんぐスイーパー連載の前年83年に、増刊号に掲載された一話読み切りのふぁいてぃんぐスイーパー(単行本では2話目に「い・け・な・い そうじMAGIC」のタイトルで収録されていますが、これが入選作の「ふぁいてぃんぐ清掃人」ではないでしょうか?)、
これに、全体のハナシの流れには関係しないので量調整に外されていたのか、84年、連載の後半に掲載されていた回「呪われたじさま」(じさま主役(?)回!)、
計3本の単行本未収録だったスイーパーものと、
前述の84年誌面掲載の「にゅうたあHERO」ほか、86年別冊掲載の「ぶらでぃSCHOOL」、87年週刊サンデー掲載の「せいけつ学園戦記」を加えて、一冊になっております。
(作品の時代は前後するけど、かならずしも古い画が拙いともかぎらないのです、、にゅうたあの方がスイーパー第1話より画がしっかりしてたり(連載じゃないから時間かけれたかもですしね)、もろに細野不二彦画が入っていたり森秀樹画が入っていたり、、やっぱ、ムラの人なのか?中津氏^^;)

公に発表された初作品、初連載、2巻作家誕生となった作品、2巻作家を返上した作品、、いずれもスイーパーなわけで、中津氏には大きな作品ですね^^

3巻の表紙

その後、、?

以後、中津氏は角川や少年画報社などで作品を発表しますが(いずれも筆者未読。92年の「戦え!! 清掃人」というのが気になりますね、、やはりスイーパーシリーズなのでしょうか?)、

作品リスト 漫画作品 にゅうたあHERO(『週刊少年サンデー』1984年41.42号) ふぁいてぃんぐスイーパー(1985年 - 1988年、『週刊少年サンデー』連載) 黄門★じごく変(1985年 - 1986年、『週刊少年サンデー増刊号』連載) 桃(『ビッグコミックスピリッツ』1986年3号) 愛と悲しみのマンボ(『週刊ビッグコミックスピリッツ』1986年) せいけつ学園戦記(『週刊少年サンデー増刊号』1987年5月号) 徳川生徒会(1987年 - 1988年、『週刊少年サンデー増刊号』連載) SNOW WHITE 疾風怒濤(1988年、『週刊少年サンデー スペシャル増刊号』) てっぺー参上(1989年、『月刊コミックコンプティーク』創刊号.創刊2号) ちぇりーげいる金(1989年 - 1991年、『月刊コミックコンプ』連載) 源平討魔伝(1988年、『増刊マル勝ファミコン コミックスペシャル』掲載) ハイランダー<悪魔の雀士>(『別冊近代麻雀』1989年2・3月号) めたもる伊助(1990年、『月刊コミックコンプ』連載) 快傑イーピン・ゴッド(『別冊近代麻雀』1989年11・12月号) God(1992年、角川書店) 戦え!! 清掃人(1992年、竹書房) 桃色サバス(1993年 - 1997年、『ヤングキング』連載) ふぁいてぃんぐスイーパー(愛蔵本)(1996年、YKコミックス) 妖怪仕置人(1997年 - 2001年、『ヤングキング』連載) 大江戸せくすぽっぷ(2006年 - 2007年、『ヤングキング』連載)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E6%B4%A5%E8%B3%A2%E4%B9%9F

中津賢也 - Wikipedia

2007年の〈お色気コメディ〉という「大江戸せくすぽっぷ」を最後に、掲載や単行本は見当たりません、、
漫画家活動はもうなさってないのでしょうか、、断定できる情報には行き当たりませんでしたorz

「2巻作家」などとご自身で笑いにされていましたが、短いからよくないということもなく、
2巻くらいがちょうどよい、という作品や資質もあるのだろうと思います。それでは作家当人はたいへんなのかもしれませんが、、
「2巻作家」という称号(?)とともに懐かしい漫画家—。筆者にとっての中津氏はそういう存在であります。

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