“初”のロボット 〜バリアブルマシーン
80年代初頭のロボットアニメ状況
機動戦士ガンダムの成功以来、ロボットアニメが新奇や“リアル”さ(この両者は必ずしも対立しないのですね。アニメのなかでのハナシですから^^)を求めてきたことは、ほかのロボットアニメに関する拙文でもふれてまいりました。
ガンダムにおいて、ロボットをそれまでの他アニメに比べてより現実に近い「軍隊」に落としこむ設定にするという“発明”は、たとえば、主人公機がほかとは隔絶した存在ではなく、対して主人公機の「量産型」が登場するという展開として、筆者のような当時の子どもには驚きとともにたいへん印象深い出来事でした。「量産型」なんて言葉、きっとわたしはガンダムで知りました。
まあ、それにしても、主人公アムロのパイロットとしての絶対的な能力や、試作機と量産型のコストの云々などと後付け設定などで、両者の性能能力は雲泥の差のものとなるのですが、、
その後もダグラムやザブングルなど、なんだかんだと主人公機は特別なオンリーワン機体として他とは隔絶した強さを持ち続けます。
そんななか、主人公機が量産型機と並列もしくは近くなるのが、82年の超時空要塞マクロス、83年に半年早く始まった聖戦士ダンバイン、装甲騎兵ボトムズ、そして今回ご紹介する特捜機兵ドルバックではなかったでしょうか。
(82年、83年のこの豊かな状況はすごいですね。正直、今回確認してみて気が付きました。筆者は田舎の出身なのでわたしが観た順番は一二年前後しているかもしれませんが)
マクロスは主人公の先輩であるロイ・フォッカー機は隊長機として少し特別仕様ですが、主人公機は一般的な小隊長仕様で複数存在し、リアルな「軍隊」メカを描いた点では先鞭でしょうね。
ダンバインはそもそもメカというにはどうかということもありますし、主人公の搭乗機ダンバインは、複数機あるとはいえ、主人公含め地上から来た戦士用の特別な機体。
そうなると当初の主人公機が純然と(細かい個人カスタムはあるのかもしれませんが)外観的に量産型同じであるのは、ボトムズということになりますか。
しかし、当初主人公機は一機づつしかないが後に量産型が登場するというかたちは、ドルバックを待つことになり、これが当時子どもの筆者には印象に残っておりました。

また前置きからで前後してしまいましたが、アニメ「特装機兵ドルバック」における変形マシンは、バリアブルマシーンと呼ばれます。



先ほど紹介の通り、それぞれ後に量産型が登場します。
地球を救うレスキュー ドルバック
ここらで作品自体のご紹介をf^^;
ドルバック隊

地球連邦軍の主力 パワードアーマー
アニメ「装甲機兵ドルバック」のメカニック面でのもう一つの大きな特徴は、主人公らが搭乗して活躍するバリアブルマシーンとは別に、味方側地球連邦軍の主力兵器があるということです。
その名もパワードアーマー(PA)、強化倍力装甲服。
大きさ的にも兵士が乗るというより着るかのような兵器で、兵士を装甲で守ると同時に、移動や戦闘を可能としています。要するに、SFファンにはおなじみの、ロバート・A・ハインライン「宇宙の戦士」のパワードスーツですね。
このパワードアーマー、
だ、そうで。
模型誌の「S.F.3.D」はよく記憶しているのに、筆者にはあまりパワードアーマーの方の印象がなかったですね。S.F.3.Dが82年5月からの掲載なので、そのパクリとみなしたのか、プラモデルのクオリティのはるかな違いから(製品としてのS.F.3.Dプラモデルが出たのは84年ですが)か、同誌面掲載は85年12月まで続いてるので、ドルバックのあとにS.F.3.Dを知ったのか、、
やはりS.F.3.Dのパクリなのかなあ、、? パワードアーマー。
(「宇宙の戦士」の有名なスタジオぬえが描いた挿絵のパワードスーツはやや直線的で、ドルバックのパワードアーマーにあまり似てないけど、S.F.3.Dの方は曲線的でそっくりなんですよねえ)





と、たっぷり紹介した、パワードアーマーですが、
これが当初の型では、イデリア人の戦闘メカ「カングライド」には対抗できなかったわけですね。


そう強いようにも見えませんが、、f^^;
、、まあとにかく、太刀打ち出来なかった訳です。PAでは。
そこで、ドルバック隊が密かに開発していたVMでカングライドに対抗するのですが、
早くも第2話ではVMを量産させるべく、ドルバック隊は戦闘でVMの優位を地球連邦軍に訴えかけ、量産決定。随時、量産型が開発、投入されていきます。
敵陣営も複雑 〜意外な展開
ドルバック隊を中心とした闘いは世界各地を転戦します。PAと共闘したり、そこに量産型VMが投入されたりしていき、地球側も徐々にイデリアへの対抗を強めていきます。
ところで、おハナシが進んでいくと、イデリア側は一枚岩ではないことになってきます。

当初、イデリアのゼラー総帥は、睡眠状態にあるイデリア200万の流浪の民に安住の地を与えるために地球侵攻に及んだとされていましたが、イデリア内部でもその真意に疑いが生まれます。総司令官アモフは娘のアロマとともにゼラーの元から離反。ゼラーの下に残ったアロマの恋人イデルが総司令官の任を継ぎます。
その後、アモフと地球連邦軍の調査により、イデリア人と地球人が同じ祖先を持つことが判明。ゼラーの真意は、地球に眠るイデリア大陸に封印された力を手にし、地球人もイデリア人も葬り去ることだったのです。
そんななか、アモフ、それからピエールが戦死。ゼラーは睡眠状態にあるイデリアの民たちの命を見捨てます。多くの民を失いゼラーの真意を知ったイデルは、ゼラーに闘いを挑みその肉体を葬りますが、イデルは命を落としてしまい、ゼラーはエネルギー体として却って力を増します。無人機を操り攻撃を再開したゼラーは、難民となったイデリア人をも葬り、アロマがただ一人の生き残りとなってしまいます。
ドルバック隊や地球連邦軍とともに彼女もイデリア大陸に。そこで完全な復活を遂げてしまったゼラーに対し、彼女は我が身を犠牲にこれを葬り、その精神体は白い鳥の姿になって飛び去ります。
とまあ、なんでこんな展開、こんな幕切れに、、という後半部になっていきます。強烈な印象を残す「トラウマ」的な展開、という訳でもありません。
メカニックに関しての独特の構図や、敵だった民族が難民となったり、敵ヒロインが味方となってからの地球人からの差別意識を描いたりと、いろいろとよいひっかかりを多く持ちながらも、全体としては印象に残らない作品になってしまった感があり、とても残念な感じですね、、
ビデオ化に際して、いちおう新作がつくられたそうですが(筆者は未観です)、数分の短いものでオマケの域を出ないもののようです。
この設定なら、全体としてももっとよいものになるはずではなかったのか、、そんな無い物ねだりを思ってしまうアニメでした^^;
