人気絶頂のプロレス漫画、アニメ化
「お前は虎だ、虎になるのだっ」という台詞からはじまるオープニング曲(「行け!タイガーマスク」)も印象深いアニメ、タイガーマスク。
当時、TVのゴールデンタイムに中継番組が流れ人気絶頂だったプロレスを、ファンタジーなプロレスワールドとして提供した漫画原作に対して、同じファンタジーでもダークファンタジーとでもいったらよいのか、独自の世界を提供したアニメ版タイガーマスク。とくにその壮絶なラスト(あとでふれますね)がトラウマとなっている人もいるのではないでしょうか。
へえ、覆面レスラーが荒唐無稽な敵レスラーをばったばた倒すだけのアニメじゃないの?という方、
なにかおそろしい記憶を封印したような、、という方、
トラウマなアニメ「タイガーマスク」をいっしょに振り返ってみましょう。
2年にも渡って放送されてたんですね。昔は1クール(3ヶ月間)といわず、一年あるいは数年に渡る人気アニメやドラマ番組があったものでしたなあ。
まだ原作漫画の連載中に、その人気のため早々とアニメ化され、アニメ版が途中で原作連載に追いついてしまい、アニメオリジナルエピソードがつくられるというのは、原作付き番組の常でしたが、このアニメ版タイガーマスクは、ほかにもいろいろと原作漫画との違いが顕著なのでした。
孤独なファイター、タイガーマスク=伊達直人の闘い

タイガーマスク時の伊達直人(左)、ふだんの伊達直人(右)
あらすじ
主人公、伊達直人は孤児院「ちびっこハウス」で育った孤児。
悪役レスラーの養成機関「虎の穴」にスカウトされ日本を出国、死者が続出する過酷な訓練に耐え、アメリカで「黄色い悪魔」と恐れられる悪役レスラー「タイガーマスク」となった直人は、
日本のマットに進出するのです。
だが、ちびっこハウスが借金苦にあることを知った直人は、タイガーマスクの正体を隠してファイトマネーで借金返済を肩代わりすることに 。虎の穴への上納金が用意できなくなった直人は、ちびっこハウスの子どもらに顔向けできる自分であるためにも、虎の穴の掟である悪役レスラーの肩書きも捨てて組織を裏切ることを決意します。
そして、裏切り者を抹殺するために虎の穴から次々と送られてくる刺客レスラーとの壮絶な闘いが始まるのでした。
骨太演出と荒々しい動く劇画
一線で活躍し続けた東映のアニメ演出家勝間田倶治氏らの骨太硬派な演出とともに、荒々しい線の画、「劇画」がそのまま動くようなアニメーションがアクションシーンではかっこよく、人間ドラマにおいては今見るとなんともいえない恐さを醸し出しています。
日本のテレビアニメで初めて、トレースマシンという新機材を駆使した作品だそうです。
哀しきキザ兄ちゃん
伊達直人といえば、2010年の年末からしばし、児童相談所へ「伊達直人」を名乗った人物からの寄付が相次ぐなんてこともありましたね(その後だんだん、伊達直人以外のいろんな架空キャラを名乗る寄付も出てきましたが)。
本家伊達直人もちびっこハウスを蔭で支えるのですが、正体を悟られまいと、外車を乗り回し、ことさらに軽薄を演じてみせ、ちびっこハウスの子どもたちからは「キザ兄ちゃん」と呼ばれているのでありました。
その哀愁帯びた姿、、
だいたいエンディング曲からして「みなし児のバラード」ですよ。オープニング曲との落差。とても子どもが観るアニメの曲とは思えません。
その哀しみを子どもだった筆者などが十分に理解していたかどうかはあやしいですが、しかしアニメ「タイガーマスク」の全体の印象として残り、作品を象徴しているのはこのエンディング曲ですねえ。いまにして思うと直人は戦災孤児だったのかなあ。
タイガーを狙う刺客レスラーたち
原作漫画には、架空の荒唐無稽な虎の穴の刺客レスラーのほかに、実在レスラーたちも数多く登場するのですが、アニメ版では数少ないものとなります。そのぶんタイガー抹殺の虎の穴の包囲網が強調されています。



ザ・エジプトミイラ(右)
みな、すごすぎます、、ルール無用すぎます。
なんだ反則専門て。助監督って^^;
容赦ない最終話
さて、2年の放送の間、続々と送られてきた末の最後の刺客。虎の穴のボス自らが「タイガー・ザ・グレート」としてタイガーマスクの前に立ちはだかることになります。

最終話のあらすじ
とうとうはじまった最後の闘い。タイガー・ザ・グレートの圧倒的な強さの前に、タイガーマスクのあらゆる技が封じられ、成す術もなく血に染まり、ロープに首を挟まれた絶体絶命の場面で終わったのが、最終話前の回でした。
さて最終話、クリーンな闘いを続けるタイガーマスクを、なおも凶悪な反則技で苛み続けるタイガー・ザ・グレート。顔面への凶器攻撃をぎりぎり避けたタイガーマスクでしたが、マスクが脱げてしまい素顔を晒してしまいます。正体が露わとなってしまった伊達直人の涙を流しながら高々と嗤う狂人のような姿。「虎の穴からもらったものをたたき返してやる」と、虎の穴で叩き込まれた反則技のかぎりを尽くしてタイガー・ザ・グレートを嬲り殺しにしていくのです、、
目つぶし、
コーナーポストを使っての急所攻撃、
さらに関節まで捩じ込む目つぶし、
目をロープに押し付けて四方駆け周り、
コーナーポストに脳天逆落とし、
机を叩き付け割れた机を背に突き刺し、
電話線で首締め割れた受話器で脳天を刺し、
パイプ椅子で殴打の連続、
天井照明に吊り下げてゴングで殴打、
最期は照明の下敷きに、、(((( ;゚Д゚)))
(こんなんスポーツでもプロレスでもないっ、虐殺だ>_<)


タイガー・ザ・グレートがぴくりとも動かなくなっても、なおも執拗な攻撃を続けるタイガーマスク。最後の闘いにあってもここまではクリーンファイターであったタイガーとの落差。とても子ども向け番組の主人公とはいえない鬼気迫る狂いぶりに、当時ブラウン管の前の筆者ら子どもは、見てはいけないものを見てしまったというような、居たたまれなさに包まれたものでした、、
試合を終え、我に返った伊達直人は、どこへゆくともなく日本を去り、呆気にとられた筆者ら視聴者をおいて、この物語は終わるのでありました。
車に轢かれかけた子どもを救って死に、最後の力を振り絞ってタイガーマスクの覆面を川へ投げ捨てて、正体を守り通した原作漫画のラストとは正反対なのでありました。

いかがだったでしょうか。原作よりとてつもなくハードコアなアニメ版タイガーマスク。
観てみたくなった、トラウマがよみがえってしまった、など、ご関心いただければ幸いですm(_ _)m
