『ふしぎ遊戯』

とかく、絵が美しかったです。そして人間ドラマ。よくある異世界ファンタジーかと思いきや、結構ドロドロ。しかしぐいぐい引き込むストーリー展開は、やっぱりキャラがしっかりしてたからなんでしょうね。カタルシスもあり、愛おしくもあるという、「ふしぎ」な物語です。
概要
あらすじ
受験を控えた中学3年生の夕城美朱と、親友本郷唯。
図書館の書庫で見つけた『四神天地書』なる本に吸い込まれてしまう。
そこは、古代中国を思わせる世界だった。
「何でも願いが叶う」という言葉に釣られて、美朱は「朱雀の巫女」となるのだが・・・?
用語
四神天地書
作中の基本的な舞台となる書物。
元は中国のものだったが、大正時代奥田永之介により和訳されたもの。
原点となる『四神天地之書』では、さらに詳しい事物が書かれている。
唐時代前に書かれたものらしく、世界観は古代中国に似る。
四つの方角にそれぞれ神獣(青龍、白虎、朱雀、玄武)を祀る国がある。
神獣は巫女により呼び出されて、3つだけその願いを叶えるとされる。
玄武、白虎は召喚済み。
巫女
異世界、つまり現実世界から『四神天地書』に吸い込まれた少女たちのこと。
神獣を呼び出し、「交わる」ことで願いを叶える力を手に入れる。
それは引換のように体内に神獣が入り込み、食い荒らすようなものであり、強靭な精神力がないと取り込まれてしまう。
巫女の資格の一つは、「おとめ」であること。
つまり、愛し合っていても男性と深い仲になることは決して許されず、召喚後でも七星士とは「結ばれない」。
白虎の巫女は七星士の一人と恋に落ちたが、「役目を果たした」後に強制送還された。再会が叶ったのは、両者の死後。
巫女が神獣を呼び出した際身に着けていたものは「神座宝」と呼ばれる。
これがあればどこであろうと、またきちんとした儀式でなくとも神獣を呼び出すことができる。
西廊国には白虎召喚時の鏡が、北甲国には玄武召喚時の首飾りがある。
七星士
巫女を守る使命を持つ。
七星士の「証」は、二十八宿のいずれかの文字で、体のどこかに浮かび上がる。
操られる、神獣が封印されるなどすると字は現れず、力も使えない。
登場人物
紅南国(こうなんこく)

夕城美朱(ゆうき みあか)
主人公で、中学3年生。
母子家庭(離婚)で、兄が一人いる。
母から過剰に期待をかけられていたが、志望の難関高校へ行けるほど成績は良くない模様。
明るく前向きな性格。そして大食い。
親友唯と共に『四神天地書』に吸い込まれて朱雀の巫女となる。
七星士鬼宿と恋に落ちる。
17歳。
四神天地書に入ってすぐ、暴漢に絡まれていた美朱と唯を助けた。
からっとしているようで守銭奴。「助けたから金ちょうだい」なんて言っていたが、それは貧乏な上家族が多いため。
その家族は青龍七星士により全員殺害される。
美朱と恋に落ち、朱雀召喚後の結婚を約束していたが、それが叶わないと知る。
それでも美朱を守るために奮闘。
額に「鬼」の字が現れるが、中国語で「鬼」は魂を表すため、幼少期は「おばけちゃん」とからかわれていた。
白虎七星士の一員に武術をたたき込まれた達人。

星宿(ほとほり)
18歳。
紅南国皇帝。
七星士以前に皇太子、皇帝という立場が先行していたため、「一人の人間として」見てほしいという欲求が強かった模様。
皇太子時代からまだ見ぬ朱雀の巫女に想いを寄せており、美朱にプロポーズまでするが、鬼宿と相愛であることから身を引く。
女性と見まがう美形であり、自身もそのことを否定しないナルシスト。
後述の柳宿と似た女性を娶るが、戦を仕掛けてきた倶東国との戦いに自らも参加。致命傷を負う。
身ごもっていた妻と我が子を気にかけていたが、美朱から「星宿みたいなきれいな男の子だよ、きっと」という励ましの言葉をかけられながら死亡。

柳宿(ぬりこ)
素手で馬車を取り除けるほどの怪力。
当初は女性として登場し、鬼宿を誘惑するなどしていたが、真の想い人は星宿。
星宿の気持ちが美朱に向いているからと、嫉妬心から鬼宿をとろうとしていた。
実は男性で、死んだ妹が忘れられずに女装をするようになった経緯がある。
男性の服装をし、美朱と打ち解けて後は彼女に対し恋愛感情を抱くようになる。
神座宝を守るため青龍七星士と戦い死亡。

井宿(ちちり)
朱雀七星士最年長。
飄々としているように見えて、様々な術が使える僧侶。
洪水で親友を亡くしている。
普段は仮面をつけている。

翼宿(たすき)
盗賊団の一員。
女嫌いとのこと。(原作では女系家族で怖い姉がいるとか・・・)
手にしたハリセンのようなもので炎を起こす。
何故か関西弁。というか、所属していた盗賊団全員関西弁。
「翼宿は死亡した前の頭領だった」と嘘をついた。

軫宿(みつかけ)
医者。
治癒能力を持つが、一日に一度しか使えない。
倶東国との戦いの際傷を負い、死亡。
最後に恋人と同じ名を持つ赤子を治し、その場にいた全員の怪我を治してからの死だった。

張宿(ちりこ)
朱雀七星士最年少。
13歳ながら科挙を受け、二次試験にまで進んだ秀才。
青龍七星士に体を乗っ取られるが、精神力を振り絞り、相打ちに持ち込んだ。
倶東国(くとうこく)

本郷唯(ほんごう ゆい)
美朱の親友で、難関高校も余裕で受けられるほどの秀才。
四神天地書を読むこともできる。
共に吸い込まれたが、いったん戻り、また本の中へ。
男たちに襲われ気絶してしまったため、心宿に助けられたにもかかわらず自決を図る。
そのまま心宿の野望に利用されて青龍の巫女に祀り上げられる。
召喚後青龍に「食われる」ことまでは知らなかったようで、足にウロコが浮き出たことや激痛、自身の本心に耐えかね取り込まれる。

心宿(なかご)
青龍七星士のリーダー格。
文字は額に現れる。
剣術、武術に長け、倶東国の将軍を務める。
性格は冷酷残忍で手段を選ばないが、そこには七星士の力で母を殺してしまったことをはじめとする多くの不幸が関係していた。

亢宿(あみぼし)
朱雀七星士のふりをして儀式に紛れ込み、朱雀の召喚を失敗に終わらせた。
双子兄弟の兄。死亡したかに思われたが生きており、息子を失った夫婦の養子となっていた。
弟角宿により記憶を消されるも、その死を感じ取る。
笛が武器であり、その音色により殺すこともできるが、弟曰く「優しい」性分であり、和ませるために笛を吹くことも。

角宿(すぼし)
亢宿の双子の弟。
兄よりも熱血漢。唯に想いを寄せていた。
鬼宿の家族を皆殺しにした張本人。
鬼宿と戦い死亡。
いわゆる「暗器」で攻撃する。
現実世界

夕城奎介(ゆうき けいすけ)
美朱の兄の大学生。
中国哲学を専攻しており、天地書が読める。
友人と協力し、ただ天地書を読み進めるだけでなく白虎の巫女を探し当てたりし、妹を見守っていた。

梶原哲也(かじわら てつや)
奎介の友人。
共に天地書及び美朱らを見守っていた。
最終回
最終回前のあらすじ
青龍の召喚に成功した唯は、「皇帝への義理」として朱雀を封印。
これにより朱雀七星士は字が出なくなり、力も使えなくなります。
第二の願いで「鬼宿と美朱を引き離す」為共に現実世界に戻りますが、鬼宿も一緒に来てしまいました。
美朱と鬼宿はつかの間のデートを楽しみますが、『天地書』内部では、倶東国と紅南国で戦が起こります。
星宿は、身重の妻と我が子のことを気にかけつつ、美朱に天地書越しに声をかけられ看取られながら戦死。
そして、鬼宿も青龍七星士、角宿との戦いが。
残りの七星士が全て呼ばれてのバトルが始まりますが、力の使えない朱雀側は圧倒的に不利。
美朱は唯と接触し、すべての真相を話します。
男たちに捕まったものの、心宿に助けられたため清らかなままであること、心宿が自分の野望のために隠していたこと、神獣召喚を果たした巫女の「その後」などです。
唯は、「鬼宿とあんたの間に居場所が見つからないのが悔しかった」と語り、「心宿にあげる」と約束していた最後の願いを行使。青龍に食われます。
巫女を取り込み実体化した青龍を見て、街はパニック状態に。
美朱は朱雀召喚の呪文を唱えます。全身に七星士と同じ「証」の字を纏いながら、毅然と立ち上がって。
それに答えるように、朱雀が姿を現しました。
唯の最後の願いは、朱雀の封印を解くことだったのです。
美朱は朱雀と契約を交わし、七星士にも力が戻りました。おまけに、死亡したはずの七星士も「帰って」きたのです。
鬼宿は夢を見ていました。美朱との結婚式。死んだ七星士も家族も皆揃っての幸せな式の直前。
父から少年時代の思い出とともに言われます。「お前のいるべきなのはここなのか?」
弟妹、父からの激励の言葉で我に返りました。
少年時代にからかわれた字が、いずれ現れる少女を守る為の宿命の「星」であることを思い出し、心宿に立ち向かいます。
最終回
しかし、青龍は戦いの神。心宿の力は圧倒的であり、鬼宿が力を取り戻しても勝てる相手ではありませんでした。
青龍と朱雀もまた、現実世界で戦いを始めます。
そんな中、美朱は大切なものを取り戻す為に願いを使いました。
まずは、騙されていた、傷ついていた親友の唯を、青龍から奪い返すこと。
それは成功しますが、美朱の体内の朱雀が暴れ出しました。
翼のような亀裂が背中に走り、それでも負けないと、第二の願いを発動。
それにより青龍は封印されて、鬼宿と戦っていた心宿の額の字が消えました。
目を閉じた心宿の顔はどこか安らかで、しかし止まらない鬼宿の拳が体を貫通。
そして、流れ込んでくる心宿の記憶。金髪碧眼である彼はある差別対象の部族だった模様。
「何も悪いことしてないのに」幼い彼の心を引き裂く出来事が次々と起こります。
兵士たちから母を救うため七星士の力が目覚めますが、コントロールできないその力で母をも焼き尽くしてしまったというトラウマ。
皇帝の宮殿では、「七星士だから、そばに置いておこう」という名目での地獄のような日々。
巫女の話を聞き、「巫女が現れるまでに、この力を操れるように」愛らしかった美貌の少年に、歪んだ野望が芽生えました。この世界に復讐すると。
「・・・お前のような甘い奴に、野望を邪魔されるとは・・・」上向けた鬼宿の顔は泣いていました。
力尽きた心宿の魂は、もはや策士でも倶東国の将軍でもない、母と過ごした少年時代に帰っていました。
鬼宿は涙の理由を、「お前に勝てたうれし涙」とうそぶきます。
青龍七星士は、記憶を失くした亢宿以外全員が死亡という結果に。天地書内部での戦争も、紅南国側の勝利で終わった模様です。
倶東国は滅亡同前でも、いずれ新しい国が建つかもしれません。
残った朱雀七星士は「どうやって美朱と鬼宿を結ばせるか」と話し合いますが、美朱は最後の願いを、戦いで傷ついた街や人を元に戻すことに使いました。
「鬼宿と一緒になることは、朱雀に願うほどのことじゃない」として。
受験にしろこの戦いにしろ、自分でやることだからと。
七星士一人一人と別れの言葉を交わし、強い想いを持って鬼宿と抱き合いますが、彼の体もまた消え失せてしまいます。
前向きな気持ちで受験勉強に向き合い、入試を受け、中学を卒業し。
「どんなに時が経っても、お前を探し出す。また会える気がする」との鬼宿の言葉を思い返しながら。
第一志望の難関高校こそ落ちたものの、唯と同じ高校には合格。入学式の日、唯は、心宿のピアスをつけていました。
「あの人も、私たちと同じだったから」として。「あの人は自分たちの中にもいた」ことを感じる、巫女だった少女たち。
そこに、兄奎介が現れます。
「ウチの大学に面白い奴が入った。前世のことを覚えてるらしい」
その「前世」の内容が、モロに七星士。奎介の後輩たる青年が近づいてきます。その指には、美朱が買った指輪。
「必ずお前を見つけ出す」「やっと会えた」鬼宿の生まれ変わりの言葉と、美朱の泣き笑いの表情がホワイトアウト。
中国語で「愛しています」を意味する「我愛你」の文字と、朱雀(原作では不滅の愛の象徴と解釈されていた)の羽が映し出されてEND。