『ふしぎの海のナディア』

途中から見始めたんですが、絵もギャグも、シリアスもSF要素もクオリティが高すぎです。今でも十分通用するかと思います。何だかノスタルジックな印象のタイトルとは裏腹の、新世紀を迎えんとする空気やジャンの気概、超科学文明と人との関係。微妙な年齢に立っているジャンとナディアにピッタリな感じがしませんか?
概要
あらすじ
時は19世紀も終わりころ。ルアーブルで親戚と暮らしていた少年ジャンは、パリの万博で一人の美しい少女を見かける。
彼女を追ってエッフェル塔まで行くが、自分の故郷を知らないらしいその少女に対し、「ボクが連れて行ってあげる!」
少女はジャンを警戒し、また胸に下げていた宝石を狙う一味からも逃げ去るのだった。
少女の名はナディア。サーカスでは「ジャングルの舞姫」として売れっ子だった。
ナディアの胸に輝く「ブルーウォーター」目当てに、グランディス一味は多額の支度金でナディアを買い取るが、ジャンが自身の発明品で遁走。
「ナディアの故郷探し」のため、ジャンも旅に出る決意をするのだった。
登場人物紹介

ナディア・ラ・アルウォール
ヒロイン。自分の生い立ちを知らず、幼少期からサーカスで育つ。
そのため身体能力はかなりのものだが、家事はまるで駄目。
卵は食べるが、肉や魚を食べるという行為のみならず、他者がそれを行うことさえ嫌う。
「ワガママ」と称されるが、本人いわく「動物と話せる」らしい。
実はタルテソスという失われた超古代文明の国の姫であり、ブルーウォーターの継承者。
地球人ではなく、アトランティス人の末裔。

ジャン・ロック・ラルティーグ
発明好きの少年。
ナディアに一目ぼれし、彼女の故郷探しの協力を買って出る。
両親の死後叔母夫婦のもとに身を寄せていたが、実質親と住んでいた家にて暮らしている。
庭には、彼の作った飛行機の「失敗作」があるが、一機一機に名前を付けるほどの愛着を持っていた。
生活力はあるが、ノーチラス号にお世話になっていた時期は「甘い考え」も垣間見られた。
電池も作れる凄い14歳。

キング
サーカス時代からのナディアの友達というか、相棒のライオンの子。
途中からマリーのおもちゃ、ではなく友達に。
通称「島編」では二本足で歩き、歯で缶詰を開け、荷物しょって家出。滝行までしていた。
理由はナディアとジャンが急接近したから。

マリー・エン・カールスバーグ
出身はマルセイユ。
父親がネオアトランティスの技師だったが、その思想に反対して脱走を図ったため両親と飼い犬を失う。
まだ4歳だが、色々と大人びている。というか、未成年組の中では一番大人びている感がある。「島編」でのキングの扱いはともかく。
グランディス一味
敵から味方に転じた。
『天空の城ラピュタ』におけるドーラ一家のようなもの。

グラタン
水陸両用どころか空も飛べるし、砲撃も備える。
マジックハンドで城旗を振るといった行為もできる。
「グランディスタンク」の略。

グランディス・グランバァ
当初こそ、ブルーウォーターを求めてナディアを追い回していたが、ノーチラス号乗船後は良き相談相手となる。
元は良家のお嬢様だったが年上の男に騙されて無一文になった過去を持つ。

サンソン
すべてを失ったグランディスについてきた、元運転手。
現在は射撃の名手で、細身の体に似合わぬ怪力。そして熱い。
恵まれない幼少期を過ごしたようで、言うことは深い。
普段は気障な優男だが、ジャンに対し男性としてのアドバイスを送ることが多い。

ハンソン
すべてを失ったグランディスについてきた、元修理技手。
機械工学にかけては天才的で、ジャンにとっては発明のライバルにしてよき先輩。
サンソン同様、恵まれない幼少期を過ごした模様。
グランディス一味の乗る「グラタン」は彼の発明。
ノーチラス号乗組員

万能戦艦ノーチラス号
ひょんなことからナディア、ジャンが乗ることとなった船。
超古代文明の粋が凝らされており、電子レンジやエアコンも完備。
一度ネオアトランティスとの戦いで大破し、ニューノーチラス号へと乗り換えることとなる。

ネモ船長(エルシス・ラ・アルウォール)
ノーチラス号の船長。状況に応じては殺人も辞さないが、冷酷な人物というわけでもない。
実はタルテソスの王にしてナディアの父であり、巨大なブルーウォーターを持つ。
ネオアトランティスの目的阻止のためどんな犠牲もいとわない姿勢を見せていたが・・・。
彼らの攻撃を受け、船と運命を共にしたと思われたが、生きていた。

エレクトラ(メディナ)
副船長。タルテソスの生き残りの一人。家族をすべて失いさまよっていたところをネモらに救われる。
父のように慕っていたつもりが、実は異性としての恋であることに気づく。
ネモの目的を知っても尚彼を信じ、ついていくのだが、娘ナディアが現れたことで「裏切られた」と感じる。
自殺を図るがネモに止められて号泣。そのまま船と運命を共にしたかに思われたが生きていた。
ネオ・アトランティス

ネオ皇帝(ビナシス・ラ・アルウォール)
ネオアトランティスの皇帝。ナディアの兄。
13年前、幼いながら擁立された。タルテソスの滅亡時に重傷を負ったが・・・?

ガーゴイル(ネメシス・ラ・アルゴール)
タルテソスの宰相にして、ネオアトランティスのトップ。
人間を見下しており、人類を滅ぼそうとしている。
タルテソスでナディアの母を暗殺後「バベルの塔」を稼働させようとするが、ネモにより頓挫。
最終回
ナディアの「正体」とブルーウォーターの「力」
ある場所に、失われた王国タルテソスの遺跡があり、そこがナディアの故郷と判明。
その後ナディアは「ブルーウォーターの継承者」しか入れない場所へ。
そこで、ブルーウォーターの真の力を知り、驚愕。
自分は神にも悪魔にもなりえる。つまり、世界を救うことも滅ぼすこともできる。
その運命を受け入れたナディアが、遂にネオアトランティスに拉致されます。
ニューノーチラス号でネモ船長らに再会したジャンたちは、「ナディアを助けたい」と、ネオアトランティスの牙城レッドノアへ。舞台は宇宙へと移動しました。
「愛」とは
そこにいたのは、自我を奪われたナディアと、その兄ネオ皇帝。
ジャンの呼びかけにも反応せず、兄妹揃って父であるネモ船長を銃で撃つのです。
ネモ船長は「ナディアを撃て」と言うのですが、銃を構えることこそできても、引き金を引くには至りませんでした。
「できません・・・」目を覚ますように言いますが、何の意味もない。しかしそこにニューノーチラス号の砲撃が。
ネモ船長が瀕死の状態であることを受け、エレクトラが命令を下したのです。
その衝撃で、ネオ皇帝の正体が明らかになりました。
彼の体はほとんどが機械化。ガーゴイル曰く「自身の傀儡」。
しかし、制御装置が壊れたのか、タルテソス王子ビナシスの自我は取り戻されました。
「ナディアの制御装置を壊す」目を覚まさせるにはそれしかないと、父に言われて。ニューノーチラス号突撃の衝撃によりねじが落ちるのも構わず妹に近づきます。
あともう少し・・・そこで、ガーゴイルが電源を抜いてしまいました。
「所詮お前は機械人形」・・・しかし、電力の供給を断たれても尚、ビナシスは動き始め。ナディアの頭部につけられた制御装置の破壊に成功します。
兄妹の再会と、「姫」の決断
ナディアは、自身に呼びかける声に、ふと目を開けます。そこには一人の少年が。
「自分も、人と一緒に生きたかった」そう言ってほほ笑んだ少年は、力尽きた兄、ビナシス。
「お兄さん!」兄妹の真の再会は、ほんのわずか。妹は、機械化された兄の骸骨を見て、悲鳴を上げます。
ここまで来てガーゴイルに協力などできません。先の攻撃でレッドノア自身の制御装置も壊れたため、このままでは大気圏に突入し、皆志望する。
ナディアは「父や兄が新年のため命を懸けた」からと、このままレッドノアを沈める覚悟を告げ、ジャンもそれに同意します。
ガーゴイルはエレクトラを攻撃。それでも言うことを聞かないとみるや、ジャンを殺害します。
帰還
形勢逆転かと思われた時、今度はニューノーチラス号本体が突っ込んできました。
ジャンの死体にすがって泣くナディアに、ネモ船長は言います。
「ブルーウォーターを使えば、生き返らせることができる」と、自身のブルーウォーターを渡して。しかし、それをすれば船長の命が危うい。
「命を奪う」ことを嫌うナディアにとっては苦渋の選択。しかし、船長を愛するエレクトラが優しく語りかけるのです。
「何よりも、自分の好きな男の子を守りなさい。それが女というもの」
覚悟を決め、二つのブルーウォーターに願いを翔けると、両者は融合をし、光を放ち始めました。
そこに、しぶとく生きていたガーゴイルが乱入。
「ブルーウォーターの輝きが失われる!」と無理にでもやめさせようとするのですが、ブルーウォーターの発する光に触れた途端、彼の体は塩となって崩れ始めました。
「その光に触れられるのは、アトランティス人だけ」ガーゴイルはアトランティス人ではなく、人間だったのです。
「数の少ないアトランティス人に何ができる。もう地球は人間たちの物だ」その言葉を受け入れたかのように、ガーゴイルはただ一言別れの言葉を残し塩となって崩れ去りました。
脱出を図るも、エネルギーはあまりなく。それでも「必ず生きて帰す」ことをあきらめないネモ船長はある行動へ。
それは、皆を初代ノーチラス号と同じ船に避難させ、自分はニューノーチラス号に残って主砲を操作、活路を開くというものでした。
グランディスに子供たちを託し、そしてエレクトラに、自分たちの子を託し。
初めて自分を父と呼んでくれた娘に「生きろ」と言い残し、レッドノア、ボロボロのニューノーチラス号共々爆発。立派な最期を遂げました。
目を覚ましたジャンは、地球を見て「あなたたちの星」と言うナディアに「ボクらの星だよ」と優しく言うのでした。
最後、成人したマリーが「その語」を語り、終了します。ラストでマリーが飛ばしたおもちゃの飛行機が、エンディングアニメで飛んでいた飛行機になる、という演出は見事でした。