デジタル時代にこそ輝く「紙モノ」の魔力
2025年は、大正から数えて「昭和100年」にあたる節目の年。令和の若者たちの間でも昭和レトロへの関心は高く、当時のデザインや文化を「新しさ」として受け入れる動きが続いています。そんな中、昭和の印刷物が持つ独特の色彩とデザインを詰め込んだ、ファン垂涎の一冊が誕生しました。
株式会社大洋図書より発売された『昭和の[広告・カタログ・絵葉書]紙モノ画報356枚』は、単なる資料集ではありません。それは、私たちが便利さと引き換えに忘れてしまった「モノを所有する喜び」や「プロセスを楽しむ心」を呼び起こしてくれる、タイムマシンのような一冊です。
昭和の[広告・カタログ・絵葉書]紙モノ画報356枚
圧倒的なボリューム!356枚の「みごろ」なコレクション
本書の最大の特徴は、そのタイトルの通り「356(みごろ)」枚にも及ぶ膨大な収録数です。著者の平山雄氏が長年かけて収集したコレクションの中から、以下の内訳で厳選されています。
広告:163枚
カタログ:85枚
絵葉書:98枚
半券:10枚
収録されているのは、高度経済成長期を支えた電化製品やインテリアのカタログ、食卓を彩った食品の広告、そして今や失われつつある日本の原風景を切り取った絵葉書など。これらはすべてフルカラーで掲載されており、当時の印刷技術が醸し出す絶妙な色ムラや、職人の手仕事が感じられるタイポグラフィを細部まで堪能することができます。
【広告…163枚 】
著者・平山雄が実践する「究極の昭和ぐらし」
著者の平山雄氏は、単なるコレクターではありません。1968年生まれの氏は、2005年に昭和中期の一戸建てを購入。家具、電化製品、さらには小物類に至るまで、生活のあらゆるものを昭和製品で揃え、現代の日本において「完全な昭和の家庭」を再現して暮らしている人物です。
そんな「昭和にどっぷりと浸かった」生活を送る氏だからこそ、印刷物一枚一枚に込められたメッセージや、当時の人々の憧れを鋭く読み解くことができます。解説文では、当時では当たり前すぎて気づかなかった魅力や、今見直すべきデザインの面白さが丁寧に綴られています。
【カタログ…85枚 】
現代への問いかけ、12編の「昭和随想」
【カタログ…85枚 】
本書には、画像だけでなく「昭和時代とモノを巡る随想」が12編収録されています。これが単なるノスタルジーに終わらない深みを本書に与えています。
「不完全だからこそ味わえる愉しみ」「進化する電化製品の性能と使い勝手」「欲求を満たすプロセスに感動がある」といったテーマで綴られる文章は、効率と便利さが最優先される現代社会に生きる私たちに、大切な何かを問いかけます。 著者は言います。「できることなら昭和時代へ戻りたいのですが戻ることはできないので、せめて自分の生活だけでも昭和で満たします」。その覚悟にも似た情熱が、本書のページをめくるごとに伝わってきます。
名プロデューサー石黒謙吾氏が仕掛ける「紙を紙で愛でる」意義
本書のプロデュース・編集を手がけたのは、ベストセラー『盲導犬クイールの一生』の著者としても知られる石黒謙吾氏。無類の昭和好きである石黒氏は、デジタルデータが溢れる現代だからこそ、あえて物理的な「本」として、かつての「紙」の文化をアーカイブすることの重要性を強調しています。
「紙を紙で愛でる」という行為。それは、スマホの画面をスワイプするだけでは得られない、重みや質感、そしてページをめくるという体験そのものを楽しむことです。
【絵葉書…98枚 】
昭和を知る世代も、知らない世代も
昭和を実際に生きた世代にとっては「あの頃」の熱狂を思い出す一冊として。そして昭和を知らない若い世代にとっては、画一化されていない自由で力強いデザインに触れるインスピレーションの源泉として。
『昭和の[広告・カタログ・絵葉書]紙モノ画報356枚』は、本棚に置くだけでその一角が昭和の空気感に染まるような、存在感のある仕上がりとなっています。忙しい日常の手を止め、古き良き時代の「紙モノ」に埋もれながら、昭和ぐらしにトリップしてみてはいかがでしょうか。