初タイトル獲得後、後援会が北海道で祝勝会を開催。
内藤大助は、控室で待っている間、隙間から会場をチェック。
すると中学時代に散々イジメられた「アイツ」がいた。
ここまで9勝1分、無敗のチャンピオンは、急に
(なんで!)
(どうしよう)
とオロオロ。
ツラい思い出が蘇り、逃げ出したくなったが、
(こういう日が来たときのためにボクシングを始めたんじゃないか。
アイツらに仕返ししたい、そう思い続けて頑張ってきたんじゃないか)
と自分を奮い立たせ、
(今日、仕返しするんだ)
と決めた。
いよいよ祝勝会が始まり、司会者に
『全日本新人王、内藤大助さんです!』
とコールされ、拍手が鳴る中、
「リングに上がるときより、さらに覚悟を決めて」
舞台へ。
マイクを握り、感謝を述べ、舞台を降りると各テーブルを回って挨拶。
すると不意にアイツが近寄ってきた。
手には、
『元イジメられっ子、全日本新人王に!』
という見出しがついた新聞記事を持っていて、
「おう、お前さ、ここに中学時代にイジメに遭ったって書いてあるけど、お前をイジメてたヤツって誰だ?」
内藤大助は心臓がバクバクさせながら、思い切って、
「お前だよ!」
するとアイツは、ショックを受けた様子で、暗い顔になり、
「やっぱりオレのことかぁ・・」
この瞬間、内藤大助の中で何かが弾け、これまで心に抱えていた昔のトラウマが一瞬で消えた。
「そのときすべてが許せたんだ」
アイツも、この後、内藤大助の試合を観に行くなど応援するようになった。
幼い頃の苦い記憶に長い間、苦しみ
「このままでいたくない」
という気持ちが原動力となって、強さを求め、ボクシングジムに入り、、日本フライ級チャンピオン、東洋太平洋フライ級チャンピオン、WBC世界フライ級にまでなった内藤大助だが、
「結局、弱い自分が自分の中からなくなることはなく、常に弱い自分と必死に戦うしかなかった」
という。