内藤大助  イジメに克ち、イジメっ子にリベンジ

内藤大助 イジメに克ち、イジメっ子にリベンジ

日本フライ級、東洋太平洋フライ級、WBC世界フライ級チャンピオン、42戦36勝3敗3分、勝率85.7%、KO率63.9%。恐ろしく強いボクサーなのにオネエを疑われるほど柔和、かつ元イジメられッ子。中学時代に凄絶なイジメに遭い、20歳でジムに入門し、 22歳でプロデビュー。そして24歳で全日本新人王になった後、イジメっ子と再会する。



プロ2戦目は、東日本新人王トーナメント予選だった。
新人王トーナメントの出場資格は、

・4回戦ボクサー
・エントリー時、4勝未満

で、毎年、春から東日本、西日本、中日本、西部日本(九州・沖縄)の各地区で代表決定トーナメントが開始。、
そして中日本新人王と西部日本新人王が対戦。
その勝者が西日本新人王と対戦し、西日本代表を決定。
12月、後楽園ホールで東日本代表(東日本新人王) vs 西日本代表の全日本新人王決勝戦が行われる。
通常、4回戦4勝→6回戦2勝→日本ランカーを倒して日本ランキング入りと進むところ、新人王トーナメントで優勝すれば一気に日本ランキング10位になれるという夢のあるトーナメントだった。
プロ1戦目をフライ級(49.5㎏)で出た内藤大助だったが、東日本新人王トーナメントはジュニアフライ級(48.9㎏)で出場。
減量でフラフラになりながらも、
「同じ体重ならパワーに自信がある」
と1ラウンドからいきなり突っ込んでいった。
しかし強引な攻めのスキを突かれ左フックをもらってプロ初ダウン。
「試合中に急に突然真っ暗になって。
停電?って」
一瞬気を失い、気がつくと尻餅をついて、レフリーからカウントを受けていて、
「ちょっと待ってよ。
できるよ」
と立ち上がった。
そして2ラウンド、39秒でKO勝ち。
「右でチョンッてやったら、顎の先にストンって。
軽いパンチだったけどトンって倒れたの」
内藤大助がプロのキャリアでダウンしたのは2度、この2戦目と世界戦だけ。

この後も毎日、6時に起きてロードワーク。
その後、仕事にいき、仕事が終わるとジムで練習し、試合前になると減量という生活が続いた。
普段、57㎏前後ある内藤大助は、試合前日に行われる計量でまでに、フライ級の上限である50.8㎏、あるいはジュニアフライ級の48.9㎏以下にしなければならず、それは
「ボクサーにとって1番キツい」
という。
「減量はダイエットと違って、体重をただ落とせばいいってものじゃない。
無茶な減量をすれば、試合で動けなくなってしまう。
食事を節制しつつ効果的な練習をしなければならないという矛盾をどう克服するか?
僕の場合、減量中はカロリーを気にするのではなく、すべてグラムに換算する。
ダイエットならノンカロリーの飲料は飲んでもOKかもしれないけど減量中は水もNG。
減量中の体はカラッカラのスポンジと同じで水100gとおにぎり100g、どっちをとっても同じ100gを吸収することになる。
水分でも同じ100g飲めるなら、高カロリーで栄養価の高い飲み物を摂りたい。
同じカップ1杯のコーヒーを飲むなら、ブラックよりミルクと砂糖をタップリ入れた甘いコーヒーを選ぶ。
減量中はガス欠で練習できなくならないように高カロリーのものを少しずつ食べるようにしている。
練習に行く前に飴玉を1個口に入れて、血糖値を上げたり、よく体を動かせるようにいろいろ工夫している」


ボクシングジムといえば鬼コーチの課す厳しい練習をボクサーが黙々とこなすというイメージが強いが、宮田ジムは、指導者と練習生のジョークや笑い声が飛び交い、かつ女性会員も多かった。
ストレス発散をさせながらダイエットができることが人気となり、平日の夜は仕事帰りの女性でいっぱいになる。
ある日、宮田会長に
「大助、かわいい子が見学に来てるぞ」
といわれ、東日本新人王トーナメントを勝ち上がっている最中の内藤大助は、パンチングボールを打ちながらジムの入り口をみて
(かわいい)
と思った。
しかしここまで

プロデビュー戦 1R55秒 KO勝
東日本新人王トーナメント1回戦 2R39秒KO勝
東日本新人王トーナメント2回戦 1R42秒KO勝

と3戦3勝3KOのパーフェクトレコードで、次戦は東日本新人王トーナメント準々決勝という内藤大助は、
(僕はプロボクサーで強くなるために練習してるんだからな!)
と思いながら練習に打ち込んだ。
するとその女性が近づいてきて、いきなり
「ここは夜、何時までやってるんですか?」
と質問してきた。
内藤大助は、
(何ぃ~、今、練習中だぞ。
ちょっとかわいいからって誰もがニコニコして答えると思ったら大間違いだぞ)
と少し憤慨しながら、
「11時」
とそっけなく答えた。
その女性は、友達が宮田ジムに入会していて、OLの仕事で抱えたストレスを発散するために入会を検討していたが
(普通に聞いただけなのに、なんでこんなに愛想が悪いんだ)
と思った。

その後、その女性、宮田ジムに入会。
真弓という名前と、超素直、超天然な性格でみんなから、
「まゆみっち」
と呼ばれるようになった。
内藤大助も、2歳上のまゆみっちと話す度に
「いいコだなあ」
と惹かれるようになり、
「次の試合決まったんだけど、よかったら観に来てくれない?」
と誘った。
そして迎えた東日本新人王トーナメント準々決勝は、ダウンを奪ったものの、攻め切れずドロー(引き分け)
しかもジャッジの採点によって、準決勝に進んだのは対戦相手だった。
落ち込む内藤大助に、まゆみっちは、
「ダイちゃん、カッコよかったよ」
「ホントに?」
「ホントに、ホントに、カッコよかったよ」
「じゃあ勝てなかったけど、一緒に遊園地いってくれる?」
内藤大助は、ドサクサに紛れてデートに誘い、後楽園ゆうえんちに行くことになった。

デート当日、内藤大助は、待ち合わせ場所でローンで買った車に乗って待機。
まゆみっちが歩いてきたので、
「こっち、こっち」
といって運転席から手を振った。
「あっ、ダイちゃん」
まゆみっちは車にかけ寄ってきて、そしていきなり畳んであるドアミラーを両手でつかみ、強引に開き、
「バキッ」
という音と何かが地面に落ちる音がした。
「な、何すんだよ~」
「エエ!
だってカレの車に乗るとき、いつもこうやるもん」
「それって電動ミラーじゃないからでしょ。
俺のは電動だよ」
「エ、そうなの。
キャー、壊しちゃった。
ごめんなさ~い」
まゆみっちは、結婚を前提におつき合いしている会社員の彼氏がいたが、あまりかまってもらえず
「たまには俺以外の男と遊んできたら」
といわれたこともあり、
「ヤキモチを焼いてほしい」
という理由で内藤大助とデートをすることにした。
内藤大助も、まゆみっちに彼氏がいるのは知っていたが、
「もしかしたら僕のことを好きになってくれるかも」
という期待を抱き、遊園地に着くと
「あれに乗ろうよ」
といって手を握ろうとしたが、見事にサッとかわされた。

初デートは、ファミレスでの食事で終了。
ますます好きになった内藤大助は、まゆみっちが練習を終えてジムを離れと
「オッ、まゆみっち。、今帰り?
俺もちょうど帰るところなんだ」
と偶然を装って接近し、、
「どっかでお茶でもしてかない」
とジム近くの商店街にあるドーナツ屋へ誘った。
そうやってドーナツ屋通いを続けていたが、ある日、
「ダイちゃん、私、やっぱりこういうことできません」
といわれ、
「ごめんなさい」
と謝った。
その後、フラれたショックでおかしくなった内藤大助は、
「不良になってやる」
と自動販売機で生まれて初めてタバコを購入。
一瞬、
「タバコを吸っているところをジムの人に見られたらどうしよう」
と躊躇したが
「いいんだ。
俺はもうグレてやるぜ」
とどうしようもないワルになったつもりでタバコををくわえ、火をつけた。
しかし22歳の喫煙は、まったく合法。
しかも煙を吸い込むと、むせて、せき込み、涙が出た。

それからジムでまゆみっちと会っても気まずく、相手から挨拶されたり話しかけられても無視。
しかしまゆみっちは、腹を立てることなく、以前と変わらない態度で接し続けた。
その優しさに内藤大助は、再び惚れ、練習後に偶然を装って近づき、お茶に誘った。
しかし何度目かのドーナツショップで、
「ごめんなさい、ダイちゃん。
私、やっぱりこういうことできない。
こんなこともう2度としません」
といわれ、2度目の
「ごめんなさい」
ドン底へ落ちた内藤大助だが、ジムでまゆみっちに声をかけられると、懲りずにお茶に誘った。
まゆみっちの女友達は、内藤大助のことを粘着質のストーカーだと思って心配したが、まゆみっちは
「この人は、なぜここまで一生懸命になれるんだろう?」
と不思議に思い、再びドーナツショップへ。


しかし2人でドーナツショップにいるとき、まゆみっちの携帯電話に彼から電話がかかってきた。
「もしもし、今どこ?」
と聞かれたまゆみっちは、一瞬で表情が強張った。
罪悪感にさいなまれながら、なんとかごまかして電話を切ったまゆみっちは、泣きじゃくりながら、
「ごめんなさい。
もう帰ります。
本当にごめんなさい」
内藤大助も3度目の
「ごめんなさい」

その後、内藤大助は1人では耐え切れず、ジム仲間に電話。
事情を聞いたジム仲間は
「手紙攻撃、効くよ」
とアドバイスした。
「はあ」
「手紙送られると女の子は効くんだよ」
失うものは何もない内藤大助は、ダメ元でまゆみっちに手紙を書いた。
『一緒にいられてすごく楽しかった。
本気で好きでした。
ずっと一緒にいたかったです』
数日後、あれ以来、ジムを休んでいるまゆみっちから電話がかかってきて
「手紙読んだよ。
ありがとう」
しばらくしてまゆみっちはジムに復帰。
内藤大助は、勇気を振り絞ってお茶に誘い、まゆみっちは、携帯電話の電源を切ってドーナツショップへ。
最終的にまゆみっちは、仕事も収入も社会的にも安定している会社員の彼と別れ、アルバイト生活の4回戦ボクサーを選んだ。



それまで内藤大助は、永作博美の名前を刺繍したトランクスで試合のリングに上がっていたが、まゆみっちによって禁止され、3枚のトランクスがお蔵入り。
ちなみに自分の名前を入れたトランクスを履いて戦っているボクサーがいると知った永作博美は、
「バカじゃん」
といい、それを知った内藤大助は、
「いや、そーいう人だなって、ずーっと思ってたから。
笑顔がかわいくて童顔で、それでキツそうな感じの人が好きだから。
裏表やイヤミがないっていうのかな。
ストレートな感じですよね」
と喜んでいた。

1998年、まゆみっちとつき合い始めた内藤大助は、2度(現在は3度)までエントリーが許される新人王トーナメントに再チャレンジ。

4月23日、1R 1分45秒KO
6月30日、1R 1分24秒TKO
8月7日、1R 2分20秒KO
9月28日、4R判定

と勝ち進み、決勝進出。
北海道の新聞「室蘭民報」が、それを取り上げ、それを読んだ人が
「息子さんのことじゃないのかい?」
と聞くと、母親はそっけなく、
「はあ、まあ、そうです」
それはすぐに人口5000人ほどの小さな田舎町に知れ渡り「内藤大助後援会」が発足。
11月、内地で行われた決勝戦に、母親と再婚した父親と一緒に応援に駆けつけた。
これまでは4ラウンドだったが、決勝戦は6ラウンドで行われ、スタミナに自信がない内藤大助は、
「早く倒せばいいや」
と思いながらリングイン。
実は身長が
「161㎝なんぼ」
と161㎝台の内藤大助は、少し盛ったりサバを読んで164㎝や165㎝と試合登録していたが、決勝戦の相手は177㎝。
「ガンガン前に来られるより、距離をとってくる相手のほうがやりやすい」
という内藤大助にとって177cmの相手はやりやすい方だったが、あまりの懐の深さにパンチが届かない。
結局、まったく早く倒せず、6ラウンドの接戦の末、
「ギリギリで」
判定勝ち。
こうして東日本フライ級新人王になった1ヵ月後の12月、全日本フライ級新人王決定戦が行われた。
相手の西日本新人王は大阪帝拳所属で、試合前に写真をみると眉毛がなく、
「ヤンキーだ!」
と驚いたが、1Rにいきなり2度のダウンを奪ってKO勝ち。
24歳にして4回戦ボクサーの頂点、全日本新人王となった。

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