初代:榊原郁恵(1981年~1987年)

1981年8月、初代ピーター・パンとして舞台に舞い降りたのが榊原郁恵さんです。
新宿コマ劇場の25周年記念作品として上演されました。
1976年に芸能界デビューし、女優として歌手として活動していた榊原郁恵さんですが、ミュージカルは「ピーター・パン」が初めて。
全力で取り組んでいたところ、公演中日あたりに「おっさんみたいな声」になり「このままやっていたら声がでなくなるかもしれない」という不安に襲われたことがあったんだとか。
そんなピンチを救ってくれたのが中村勘九郎さん(後の十八代目・中村勘三郎さん)でした。
ご自身が行きつけの耳鼻科を紹介し付き添ってくれたそう。
そして、郁恵さんはその病院で治療を受けたことで翌日から声が出るように!
以来、ピーター・パンを演じた7年間に渡ってお世話なり大役を果たすことができたんだそうです。
2代目:沖本姉妹(1988年~1997年)

榊原郁恵さんの後を継いでピーター・パンを演じたのが沖本富美代さんと沖本美智代さんの双子の姉妹。
ダブルキャストとして富美代さんが美智代さんが交代で出演していたのかというとそうではなく、二人で一緒に出演されていました。
クライマックスとなるフック船長との決闘シーンでは、フック船長がピーター・パンを見失い追いかけようとすると別の場所からもう一人のピーター・パンが現れるといった感じで、双子だからこそできる楽しい演出となりました。
3代目:相原勇(1992年~1995年)

「ピーター・パンを演じるために芸能界に入った」というのが、3代目を務めた相原勇さん。
2代目の沖本姉妹と共に出演されてたのですが、沖本姉妹は東京公演と大阪公演、相原勇さんは名古屋公演という形で出演されていました。
夏休み期間に上演されることが多かったピーター・パンですが、相原勇さんが出演されていた頃の上演期間は半年以上。
上演回数は100回を超えていました。
おそらく沖本姉妹も体力的に限界を迎えていたのか、予定していた名古屋公演が中止となる危機を迎えたこともあったそう。
そこで抜擢されたのが相原勇さん。
相原勇さんが名古屋公演を務めたことによりピンチを乗り越え、以来4年に渡ってピーター・パンを演じました。
4代目:宮本裕子(1996年~1997年)

4代目ピーター・パンを務めたのが宮本裕子さん。
沖本姉妹の姉・富美代とのダブルキャストで出演されました。
以来、これまで40を超える舞台作品に出演されている他、約60作品のドラマや映画に出演されています。
そんな宮本裕子さんの舞台デビューは1990年。
「ピーターパン」のティンカー・ベル役でした。
ティンカー・ベル役とピーター・パン役。
どちらも演じた貴重な存在です。
5代目:笹本玲奈(1998年~2002年)
1998年から5年間に渡ってピーター・パンを演じたのが笹本玲奈さん。
ピーター・パンとして初めて舞台に上がったのは中学一年生の夏でした。
以来、笹本玲奈にとっての夏休みの思い出と言えばピーター・パン一色に。
また、「ピーター・パン」以降も、「レ・ミゼラブル」のエポニーヌ役や「ミス・サイゴン」の主人公・キム役を務めるなど、舞台と共に歩んだ青春時代となりました。
6代目:中村美貴(2003年~2004年)

大学一年生の時に「ピーター・パン主演オーディション」でグランプリを受賞し芸能界デビューされた中村美貴さん。
「ピーターパン」以降も、「レ・ミゼラブル」や「HAMLET」など舞台を中心に活躍されていますが、中でも「ピーター・パン」は中村美貴さんにとってとても大きな存在となっているようです。
13年経ってもまだ尚セリフを覚えているってすごいですよね。
しかも「唯一かもしれない」ということですから、ファンにとっても、演者の方々にとっても「ピーター・パン」ってすごい作品なんですね。
7代目:宮地真緒(2005年~2006年)

7代目ピーター・パンとして舞台に上がったのが宮地真緒さん。
2002年に芸能界デビューされて以来、ドラマや映画でキャリアを積み重ねてきたものの、初の舞台出演となった「ピーター・パン」では、かなりのプレッシャーを感じていたうえに、お稽古も尋常じゃなく辛かったそう。
しかし、クライマックスで客席の上を飛ぶフライングの時に拍手が沸き起こった瞬間「ああ、やってて良かった」と実感したといいます。
これはもう、ピーター・パン役を演じられた方にしか味わえない特権ですね。
8代目:高畑充希(2007年~2012年)
6年間に渡って8代目ピーター・パンを務めた高畑充希さん。
ご自身にとってピーター・パン役は「財産」としながらも、タイトな公演スケジュールで体力的にはかなりハードだったそう。
さらに、公演終了後には舞台を観に来た子供たち一人ひとりとの写真撮影イベントもあったそうで、その数は100~200人にも及んでいたのだとか!
すでに足腰は限界を感じていたものの、小さな子供は「高畑充希」ではなく「ピーター・パン」だと思っているため「夢を壊してはいけない。かっこよくありたい」という気持ちで対応されていたといいます。

また、公演30周年となった2010年には、5代目ピーター・パンの笹本玲奈さんとのダブルキャストなり注目を集めました。
9代目:唯月ふうか(2013年~2016年)

幼い頃から歌が大好きだったという唯月ふうかさんは、「ホリプロタレントスカウトキャラバン」で審査員特別賞を受賞したことがきっかけとなり、9代目ピーター・パンとして舞台に上がることになりました。
ご自身はウェンディ役だとばかり思っていたそうで、ピーター・パン役だと知った時には「声が高い私がまさか男の子役をやるなんて」と意外に思ったとか。
実は4年目となった2016年の稽古中、スタッフの操作ミスにより、高さ3メートルの宙吊りの状態から逆さまの状態で落下。
唯月ふうかさんは、左目の眼窩底吹き抜け骨折という大怪我に見舞われました。
そして、予定していた大阪公演は急遽中止という事態に。
こうした大変なこともあり得る舞台ですが、カーテンコールで巻き起こる拍手を聞くと「自分がイキイキといられる場所は他にはない」と実感するという唯月ふうかさん。
「ピーター・パン」以降も数多くのミュージカルで活躍されています。
10代目:吉柳咲良(2017年~2022年)
2016年9月開催の「第41回 ホリプロタレントスカウトキャラバン」で歴代最年少の12歳でグランプリを受賞した吉柳咲良さん。
グランプリ受賞者のピーター・パン役起用は、初代・榊原郁恵さん以来36年ぶりとなりました。
実は、吉柳咲良さんは「ピーター・パン」のストーリーもよく知らず、ミュージカルがあることすら知らなかったそうで、ご自身が演じたことで初めて「ピーター・パン」を知ることができたんだとか。
最近では、NHK連続テレビ小説「ブギウギ」の水城アユミ役として出演し、ドラマでも圧倒的な歌唱力を披露されました。
これからも受け継がれていくピーター・パン
1950年代からブロードウェイにて上演されてきたミュージカル「ピーター・パン」。
日本では芸能プロダクション「ホリプロ」が制作を手掛けて、毎年夏休み期間を中心に上演されると、夏の風物詩として多くの人たちに親しまれてきました。

繰り返し再演され、バトンが受け継がれてきたブロードウェイミュージカル「ピーター・パン」。
その歴史あるバトンを受け継ぎ11代目を務めるのは山﨑玲奈さんです。
2023年から出演されており、今年で2年目。
「グレードアップしたピーター・パンをお見せしたい」と気合十分!
これからも新たな歴史を築いていくであろう「ピーター・パン」に期待が高まりますね。