色とりどりのトロールたち
 
  	トロール人形が日本でブームになったのは、1990年代のことです。
まっすぐに逆立った色とりどりの髪の毛、くしゃくしゃの顔にぎょろっとした目。
一度見たら忘れられないルックスのトロールたちは、「髪を撫でたら願いが叶う人形」として、その集めやすいサイズや豊富なヘアカラーで注目を浴び、特に女子高生の間で流行しました。
いわゆる平成のコギャルブームとも結びついてブレイクしたため、当時はファッションの一環で、バッグやポケベルにアクセサリー感覚でトロールをつけていた女性も多いでしょう。
 
 
  	一方で、90年代以前にどこかで見たことあるような気がする、という人もいるかもしれません。
確かもっとレトロな雰囲気で、インテリアみたいに部屋に飾られていたような……。
いったいトロール人形って、いつからあるのでしょうか。
 
そもそも『トロール』ってなに?
トロールとは、ノルウェーやデンマークなど北欧の昔話に登場する妖精または怪物の名前です。
北欧では、いわゆる妖怪の総称みたいな言葉なので、お話によって巨人だったり小人だったりと見た目が安定しませんが、おおむね毛深かったり気味の悪いイメージは共通するようです。
 
日本では「三匹のやぎのがらがらどん」に出てくるトロールが印象深いかもしれません。
元々はノルウェーの昔話で、トロールは三匹のヤギを食べようとする怪物として登場します。
もっとも絵本の中では、トロールよりも大きなヤギのほうがよっぽど恐ろしいのですが……。
 
他にもアニメにもなった「ムーミン」シリーズでは、主人公ムーミントロールの名前の由来になったことでも知られています。作者のトーベ・ヤンソンはスウェーデン系のフィンランド人で、子供のころ叔父に聞かされたトロールの話を元に、ムーミントロールと命名したと語っています。
 
 
  	J.R.R.トールキンの小説「指輪物語」で、トロールは力が強いが愚鈍な巨人として登場しました。
指輪物語はファンタジー作品の金字塔となり、トロールも指輪物語に影響を受けた多数の小説やゲームに登場しているため、モンスターとしてのイメージが強い人も多いかもしれませんね。
 
デンマーク生まれのトロール人形
トロールの元ネタを紹介したところで、トロール人形に話を戻しましょう。
カラフルな髪をしたトロールたちは、いつ頃誕生したのでしょうか。
そして、90年代に流行していたトロール人形はどこの会社が作っていたのでしょうか。
 
 
  	結論から言うと、元々トロール人形は1960年代に生まれたダム・シングス社の製品です。
彼らを創造したのは、トーマス・ダムというデンマークの木彫り職人でした。
人形はデンマークで人気となり、やがてダムは自分の会社の工場で大量生産を始めます。
最初は木彫りだった人形はゴム製となり、1960年代には今と同じプラスチック製になりました。
ダムのカラフルな「グッドラックトロール」は「髪の毛を撫でると幸運が訪れる」という歌い文句で売り出され、ヨーロッパ中の子供たちの憧れの的となったのです。
 
  	やがてトロール人形は海を渡り、アメリカでも大人気を博しました。
最初のブームは1970年頃にはいったん落ち着きましたが、80年代に入るとリバイバルヒットし、再びバリエーション豊かなトロールたちの人形が生産されます。
その流れは海を越えて日本に届き、90年代当時の女子高生たちの心を掴むことになったのです。
しかし、トロール人形がアメリカに進出した60年代、とある問題が持ち上がっていました。
当初トロールの著作権を守る手続きは不完全で、大量のコピーが出回ってしまったのです。
80年代以降のリバイバルでも、ダム社以外の会社が大々的にトロールを生産していました。
当時日本で流通していたトロール人形も、様々なメーカーのものが混在していたのでしょう。
ちなみにトロール人形の著作権は、2003年になってようやくダム・シングス社に戻りました。
 
その後2013年に「シュレック」や「カンフーパンダ」で知られるアニメ会社ドリームワークス・アニメーションがダム社から知的財産権を取得したため、現在は(ダム社のお膝元である北欧諸国を除いて)トロール人形はドリームワークスのキャラクターということになっており、映画も制作されています。
まとめ
 
  	90年代に日本の女子高生の間で大流行した「願いを叶える人形」ことトロール人形。
その歴史は意外なほど長く、時代の移り変わりの中で多くの人々の心を動かしてきました。
もしかしたら、いずれ第三のトロールブームが巻き起こる日も近いかもしれません。
 
     
    




